- HOME
- >
- EVENT COVERAGE
- >
- プロツアー『イクサラン』
- >
- 行進の力
EVENT COVERAGE
プロツアー『イクサラン』
行進の力
Corbin Hosler / Tr. Tetsuya Yabuki
2017年11月3日
『アモンケット』のレア・カードとして産声を上げた《選定された行進》だが、はじめは誰の目にも留まらなかった。人気を博した《似通った生命》の系統でありながら、スタンダードでその姿を見ることは滅多になく、ほとんどのプレイヤーに構築フォーマットで使えるとは思われていなかった。
そこに光を当てたのがサム・ブラック/Sam Blackだ。彼はプロツアー『アモンケット』で《選定された行進》と《地下墓地の選別者》や《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》といったカードを組み合わせ、「アブザン・トークン」を完成させた。ブラックは過去にもこの手のデッキの達人であることを証明しており、そんな彼が《選定された行進》の状況を打開したのは驚くことではないだろう。
しかし『イクサラン』の発売とスタンダードのローテーションにより、プレイヤーたちの興味は「エネルギー」系のデッキと『イクサラン』の部族デッキに移り、《選定された行進》を用いるデッキは脇へ押しやられた。この環境の鬼とされる「ラムナプ・レッド」や、「エネルギー」系およびコントロール・デッキを含め、さまざまな大会のトップ8にさまざまなデッキが登場したが、その中に《選定された行進》を用いるデッキの姿はなかった。
だがプロツアー『イクサラン』でその状況は一変する。多くのテーブルで《選定された行進》はその存在感を示し、盤面は《秘密の備蓄品》が毎ターン吐き出すトークンで埋まっていた。《逆毛ハイドラ》や《牙長獣の仔》といった強力なクリーチャーがはびこる環境では、《選定された行進》の支援を受けるトークン戦略は極めて効果的であり、対戦相手の攻撃を押さえ込みながら盤面を圧倒することができるのだ。
しかも《選定された行進》はひとつのデッキでのみ使われているわけではない。ここアルバカーキには色も形もさまざまなものが登場しているのだ。
最も人気を集めるのは、「アブザン・トークン」。派生型の「エスパー・トークン」と同様に、《秘密の備蓄品》を主なエンジンに据えてそれに頼った形だ。第1ターンの《改革派の地図》から、早ければ2ターン目にはトークンの展開が始まり、やがて占術によって有利を引き出していく。
もちろんそれだけでは不十分だ。1/1のトークンを毎ターン繰り出せるというだけでは、到底スタンダードで活躍できない。だが《選定された行進》と組み合わせることで、突如として手に負えない動きになる。トークンが増えて《秘密の備蓄品》の誘発も増え、「ティムール・エネルギー」のようなデッキに対して地上を制圧できるだけでなく、大量の霊気装置を展開し続けられるのだ。
さらに《秘宝探究者、ヴラスカ》が盤面に加わることで、《選定された行進》の力は大きく引き出される。この『イクサラン』の新プレインズウォーカーは発売以来しばらく雌伏のときを過ごしていたが、ここにきてスタンダードにその名を刻むことになった。冒険的なデッキの数が増えていくにつれて《秘宝探究者、ヴラスカ》はその存在感を増し、「トークン」系のみならず多くの「エネルギー」系デッキで採用されるようになったのだ。
《選定された行進》は、《秘宝探究者、ヴラスカ》の持つすべての能力と相性が良い。[+2]能力を使えば2/2のトークンを2体生み出しながら忠誠度を8に引き上げ、大抵の脅威ではこれに対処できない。また、相手の脅威を除去しながら宝物・トークンを2個生み出す動きも強力なアドバンテージを生み出し、このデッキが呪文を連打して盤面を圧倒する助けになる。
「このデッキに備えているプレイヤーは少ないと思います」と、「エスパー・トークン」を手にこの週末を戦うダン・ウォード/Dan Wardは言う。「ゲームが長引くため、このデッキとの練習に時間を使った人は少ないでしょう。だから小さな有利が本当に多いんです。すべての占術が、すべての選択が積み重なり、うまく使えるプレイヤーの勝率を最大限に引き上げてくれますよ」
ウォードはさまざまなデッキのテストを経て「エスパー・トークン」を選択したが、最終的に青のカードは《アズカンタの探索》だけになった。コントロール・デッキとの対戦では、《排斥》のようなカードによって《選定された行進》が盤面に残りにくい。しかし《アズカンタの探索》と《秘密の備蓄品》の組み合わせもあれば、コントロール側は除去や打ち消しを求めて奔走することになるのだ。
そして《選定された行進》を用いるのは「アブザン・トークン」や「エスパー・トークン」だけではない。このエンチャントを異なる道から活かしたプレイヤーがひとりいるのだ。《秘密の備蓄品》によるアドバンテージ・エンジンの代わりに、そのプレイヤーは「不朽」や「永遠」を持つクリーチャーを採用し、それらが墓地から戻る際にコピーを生成するようにした。
《聖なる猫》はこれ単体ではそこまで優れたカードでばないものの、対戦相手の序盤の攻め手を鈍らせ、のちに「永遠」で4/4になって戻ってくる(《選定された行進》のおかげで、少なくとも1体は増えた状態で戻ってくるだろう)。また、今大会の使用率40%を超える「エネルギー」系デッキを捕食するべく、《機知の勇者》や《選定の侍臣》、《選定の司祭》といったカードも採用されている。
恐竜やドラゴンが飛び交う世界でも、ときに小さな霊気装置が頂点に立つこともある。《選定された行進》は、プロツアー『イクサラン』を定義するカードのひとつになるだろう。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
RANKING ランキング
NEWEST 最新の記事
-
2024.11.12観戦記事
The Week That Was: 熱烈な勇者の帰還|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.27観戦記事
第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 決勝戦|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.26トピック
第30回マジック世界選手権 トップ8プロフィールとデッキリスト|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.26観戦記事
Magic World Championship 30 Day Two Highlights|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.25観戦記事
Magic World Championship 30 Day One Highlights|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.25戦略記事
The Spiciest Decklists of Magic World Championship 30|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権