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プロツアー『イクサランの相克』
準決勝:Gerry Thompson(アメリカ) vs. Pascal Vieren(ベルギー)
Frank Karsten / Tr. Chikara Aoki / Edit. Yusuke Yoshikawa
2018年2月4日
《タルモゴイフ》、《瞬唱の魔道士》、《闇の腹心》、《石鍛冶の見習い》。すべての色には象徴的な2マナのクリーチャーがいる。このリストに名を連ねる赤のクリーチャーが《若き紅蓮術士》だ。
チーム「Cardmarket」のパスカル・フィーレン/Pascal Vierenとチーム「MetaGame Gurus Sun」のジェリー・トンプソン/Gerry Thompsonは、ともに2/1の人間・クリーチャーを《稲妻》で誘発させてきたものの、デッキの内容には大きな隔たりがある。
プロツアー『アモンケット』チャンピオンであり、これが3度目のプロツアートップ8であるジェリー・トンプソンは、《若き紅蓮術士》を《信仰無き物あさり》や《未練ある魂》といったフラッシュバック呪文で焚き付ける「マルドゥ・パイロマンサー」を使用している。もうひとつのキーカードが《騒乱の歓楽者》で、3/4クリーチャーではあるものの、ゲームの後半に手札が空の状態から2マナで唱えられて、3枚のカードを反動なしに引くことができうる。
このプロツアーを通して未だマッチを一度も落としていないパスカル・フィーレンは、兄であるピーターがデザインした青赤デッキを使う。彼らのデッキには《祖先の幻視》、《血清の幻視》、《選択》といったドロー操作呪文が数多く入っており、それらで《謎めいた命令》と《瞬唱の魔道士》にたどり着いて、ゲーム後半のトンプソンのフラッシュバック呪文に対抗する。
こういったミッドレンジ/コントロールデッキ同士の対戦は時間がかかるものだ。どちらも数多くの対応呪文と比較的少ない勝ち手段、そしてゲームを長引かせる数多くの要素があるからだ。
今回のマッチアップには2つ重要なポイントがある。1つはフィーレンの《氷の中の存在》が《目覚めた恐怖》になっても、トンプソンの《騒乱の歓楽者》はホラーでもあるために戦場に残り続けることだ。2つはトンプソンのデッキには白マナ源が1枚しか入っていない点である。フィーレンが《廃墟の地》で《聖なる鋳造所》を破壊するのは大きな影響があるだろう。
ゲーム展開
第1ゲームは序盤からお互いに手札を整え始める。フィーレンが《血清の幻視》から始めると、トンプソンは《信仰無き物あさり》で、墓地に送るのは捨てることに価値のある《未練ある魂》だ。
1ターン目にドロー呪文を打ち合った両名は、ともに2ターン目にクリーチャを出す。フィーレンは《氷の中の存在》、トンプソンは《若き紅蓮術士》を戦場に送る。ここでフィーレンは対処手段を持っていたが、トンプソンはそうではなかった。トンプソンのメインデッキに《氷の中の存在》を対処できるカードは2枚の《致命的な一押し》、1枚ずつの《終止》と《戦慄掘り》、《ヴェールのリリアナ》で、この時点ではどれも引いていない。
トンプソンはスピリット・トークンによるチャンプブロックで時間を稼ぎ、最終的には《騒乱の歓楽者》で《終止》を引いたものの、時すでに遅し。フィーレンは《若き紅蓮術士》と《祖先の幻視》を解決しており、戦場の圧力でトンプソンを圧倒した。
第2ゲーム、トンプソンは初手を《信仰無き物あさり》で少しだけ改善する一方で、フィーレンは《島》から《祖先の幻視》のドリームスタートを決める。コントロールデッキのミラーマッチにおいては後者のほうがよりよいものだ。トンプソンにとって悪いことに、《コジレックの審問》で覗いたフィーレンの手札には、1枚でも2枚でもなく、3枚の《謎めいた命令》があったのだ。
それでも低コスト呪文を墓地に送り込み続けた結果、トンプソンは4ターン目に2マナで《騒乱の歓楽者》を唱えることができた。非常に強い動きではあったが、3枚の《謎めいた命令》を持つフィーレンの手札は全世界の青いコントロールプレイヤーの垂涎の的だろう。
数ターン後、フィーレンの有利は安定的になった。《若き紅蓮術士》が大量のトークンを生み出し、ライフはまだ二桁あって、トンプソンはトップデッキ頼みである。
最終的に、フィーレンは《氷の中の存在》を唱えて簡単に変身させる。自分の《瞬唱の魔道士》を戻し、《謎めいた命令》を再利用してアドバンテージを稼ぐと呪文が足りなくなることもない。さらに《騒乱の歓楽者》が手札に戻らないこともフィーレンに有利に働く。トンプソンに唱え直されて新しいカードを引かれる心配もないのだ。
トンプソンはゲームを長引かせたかったが、《目覚めた恐怖》がライフを奪っていく。数ターンが経過し、ゲームカウントはフィーレンの2-0となった。トンプソンがマッチを取るためには3ゲームを連取する必要がある。
第3ゲームは比較的素早く決着がついた。トンプソンの先手2ターン目の《若き紅蓮術士》が除去されなかったのだ。フィーレンが何もできないうちに《信仰無き物あさり》、《魔力変》、《集団的蛮行》で3体のトークンを生み出した。
トンプソンは《集団的蛮行》でフィーレンの《若き紅蓮術士》を除去しつつ《謎めいた命令》を捨てさせて有利を盤石なものにする。《騒乱の歓楽者》がとどめだ。フィーレンは戦場の脅威に対抗することができず、トンプソンが1ゲームを取り返した。
第4ゲームは2枚の《氷の中の存在》をめぐる戦いになった。戦場に2枚の《氷の中の存在》がいて、片方は1つ、もう片方には2つのカウンターが置かれている。フィーレンは《騒乱の歓楽者》に《焙り焼き》を打ち、《氷の中の存在》の片方を変身させてトンプソンのライフを4にする。アメリカのプロツアー王者にとっては悲惨な状況だ。
しかし、続くターンにすべてがドラマチックに変わる。トンプソンが《ヴェールのリリアナ》をトップデッキして《目覚めた恐怖》のうち1体を除去し、《信仰無き物あさり》が《致命的な一押し》を引き当てると、フィーレンの恐ろしい圧力は壊滅してしまった。
このプロツアーで最もありえないターンだった。瞬く間に、トンプソンは直面していた巨大なホラーによる死の淵から救出された。天地が逆さまになったようなものだ。
フィーレンは続く数ターンのうちに《電解》から《稲妻》を引けば迅速に勝利できたのだが、それは叶わなかった。トンプソンが《若き紅蓮術士》と《騒乱の歓楽者》をレッドゾーンに送り込み、接戦を速やかに終わらせた。
ゲームスコアは2-2となり、フィーレンにとっては劇的に勝利がすり抜けていくかのようである。のるかそるか。無敗を保持し続けるには最後のゲームを勝たなければならない。
第5ゲーム、フィーレンはマリガンしたが、6枚の中に最高の初手である《祖先の幻視》があった。トンプソンもまた、《信仰無き物あさり》で2枚の《未練ある魂》を捨てる理想的なスタートを切った。両者のデッキが総力戦を開始した。
続く数ターン、フラッシュバックされた《未練ある魂》がフィーレンのリソースを蝕んでいくものの、《祖先の幻視》が解決されるまで戦場をコントロールする。待機が明け、2枚目の《謎めいた命令》がもたらされると、4枚の土地をアンタップ状態でターンを返す。
トンプソンの《思考囲い》に対してフィーレンは2つの選択肢がある。1つ目は、タップアウトしながらも打ち消しつつカードを引く。2つ目は4マナを立たせたまま手札破壊を受け入れて1枚目の《謎めいた命令》を捨て、トンプソンの次の呪文に備えるというものだ。フィーレンは前者を選択したが、これはトンプソンの《騒乱の歓楽者》を通してしまう羽目になってしまった。
3/4が提供した追加のカードは最終的にトンプソンがこのゲームを逃げ切る手段となった。除去と手札破壊でフィーレンの勝ち手段と手札を取り除き、《コラガンの命令》で《騒乱の歓楽者》を手札に戻してカードアドバンテージをつなげていく。
現実的にフィーレンが逆転できる手段はなく、今週末初めての負けを認めるために手を伸ばすまで、そう時間はかからなかった。
トンプソンは、ルイス・サルヴァット/Luis Salvattoの「ランタン・コントロール」を倒して2度めのプロツアーチャンピオンになるために前進した。
ジェリー・トンプソンがパスカル・フィーレンを3勝2敗で下し、決勝に進出!
3 《山》 2 《沼》 2 《血の墓所》 1 《聖なる鋳造所》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《湿地の干潟》 4 《黒割れの崖》 -土地(20)- 4 《若き紅蓮術士》 4 《騒乱の歓楽者》 -クリーチャー(8)- |
4 《信仰無き物あさり》 4 《コジレックの審問》 4 《稲妻》 3 《思考囲い》 2 《致命的な一押し》 2 《集団的蛮行》 1 《戦慄掘り》 1 《魔力変》 1 《終止》 4 《未練ある魂》 3 《コラガンの命令》 2 《血染めの月》 1 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(32)- |
1 《大爆発の魔道士》 3 《外科的摘出》 2 《虚無の呪文爆弾》 2 《集団的蛮行》 2 《溶鉄の雨》 1 《神々の憤怒》 2 《摩耗 // 損耗》 1 《ヴェールのリリアナ》 1 《幽霊街》 -サイドボード(15)- |
1 《島》 4 《冠雪の島》 1 《冠雪の山》 3 《蒸気孔》 4 《沸騰する小湖》 2 《溢れかえる岸辺》 1 《霧深い雨林》 1 《汚染された三角州》 1 《尖塔断の運河》 1 《硫黄の滝》 3 《廃墟の地》 -土地(22)- 4 《瞬唱の魔道士》 3 《氷の中の存在》 3 《若き紅蓮術士》 -クリーチャー(10)- |
3 《祖先の幻視》 4 《稲妻》 4 《選択》 4 《血清の幻視》 1 《呪文嵌め》 2 《マナ漏出》 2 《差し戻し》 2 《焙り焼き》 1 《削剥》 1 《電解》 3 《謎めいた命令》 1 《論理の結び目》 -呪文(28)- |
1 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《儀礼的拒否》 2 《払拭》 1 《大祖始の遺産》 1 《呪文嵌め》 1 《削剥》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 2 《神々の憤怒》 1 《電解》 1 《溶鉄の雨》 1 《塵への崩壊》 -サイドボード(15)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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