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プロツアー『イクサランの相克』
準決勝:Luis Salvatto(アルゼンチン) vs. 行弘 賢(日本)
Chapman Sim / Tr. Tetsuya Yabuki / Edit. Yusuke Yoshikawa
2018年2月4日
プロツアー・トップ8入賞3回を記録している行弘 賢は、4度目の舞台を迎えた。このグランプリ・シンガポール2013王者はチーム「Musashi」の一員として第1回チーム・シリーズを制している。今大会での彼の活躍により、「Musashi」は今シーズンのチームシリーズでも大きく順位を伸ばすことだろう。
行弘は主にふたつの面で世界に広く知れ渡っている――ひとつは魅力的なキャラクター、そしてもうひとつは魅力的なデッキ構築で。彼は《栄光の目覚めの天使》コンボ・デッキを生み出し、自身初のプロツアー・トップ8入賞を果たした。《ホネツツキ》や《単体騎手》、《ツカタンのサリッド》といった、他に誰も目を向けないカードを信じて使ってきた。そしてこの週末、彼は一風変わった強力なビートダウン・デッキ「黒赤『虚ろな者』」を手にプロツアーを駆け抜け、チーム「Musashi」に行弘ありと証明した。
ルイス・サルヴァット/Luis Salvattoは、昨シーズンあと一歩のところで届かなかったプロ・プレイヤーズ・クラブ「プラチナ」レベル到達まであと2勝と迫った。ここでの勝利はまた、彼が所属するチーム「Hareruya Latin」にとっても大きな意味を持つ。《罠の橋》を擁するサルヴァットの「ランタン・コントロール」は、彼がこの週末を通して見せてきた通り、クリーチャーを中心にしたデッキを圧倒できる。ここで戦う対戦相手の主な勝ち手段もまた戦闘によるものだが、サルヴァットはこの試合の相性をどう考えているだろうか?
「たぶん面白いゲームになるだろうね。でもこちらが有利かな」
同じ質問を行弘にも投げかけると、彼はうつむき加減で悲しそうに(だが可愛らしく)口を尖らせるだけだった。相性は最悪だと伝えたいのだろう。《罠の橋》に対するアーティファクト破壊手段はメイン・デッキになく、サイドボードにも《古えの遺恨》が2枚搭載されているだけだ。行弘にとって厳しい戦いになるのは間違いないだろう。
この試合は彼が示した通り、一方的な試合になったのだろうか。実際の戦いを見てみよう。
ゲーム展開
第1ゲーム、サルヴァットは《植物の聖域》から早速《写本裁断機》を設置。だが迎えた行弘のターンはさらに面白い展開になった。彼は《燃え立つ調査》を放ち、両者の手札を一気に入れ替えたのだ。しかし行弘はここで《虚ろな者》を引き込めず、それ以上の動きはなしにターンを返した。
その後行弘は《炎跡のフェニックス》と2枚の《炎刃の達人》で戦線を組み立てるが、十分なプレッシャーを与えられるとは言い難い。サルヴァットは行弘が対処不可能な《罠の橋》を持っていた。行弘は盤面を見渡すと笑顔を見せ、カードを片付けた。
「ほら、言ったじゃないですか」と行弘はチャンスのなさに笑う。確かにその通りに、第1ゲームはサルヴァットのものになった。
第2ゲーム、行弘は《炎刃の達人》からゲームを始めると続けて《信仰無き物あさり》を唱え、《炎跡のフェニックス》と《グルマグのアンコウ》を捨てた。だが2枚目の土地は引き込めず、行弘は3点のダメージを与えてターンを返す。
一方のサルヴァットは《古きものの活性》と2枚の《ミシュラのガラクタ》で慌ただしく手札を整えると、《コジレックの審問》で《ゴブリンの知識》を抜き去り《洞察のランタン》を設置した。行弘にとって最も恐るべき《罠の橋》が現れると、彼はサルヴァットの残り手札が3枚であることを確認した。しかしサルヴァットは、次のターンに8点のライフを残して手札を使い切った。
行弘の手札に《稲妻》があることを確認済みのサルヴァットは、《発明品の唸り》から《魔女封じの宝珠》を繰り出した。これで火力呪文も無力化された。
「GG」(グッドゲーム)と行弘は小さく口にし、サイドボードに手を伸ばした。後がない状況へ追い込まれた彼は、サイドボーディング後のゲームをすべて勝たなければならない。
サイドボーディング後の第3ゲーム、行弘は初手を見るなり大きく息を吸い、沈思黙考に入った。じっくり初手を検討した彼はやがてキープを宣言すると、すぐさま《通りの悪霊》を2枚「サイクリング」し、新たな2枚を確認する。《樹木茂る山麓》から《踏み鳴らされる地》を持ってくると、《燃え立つ調査》。このターンだけで5枚のカードを入れ替えた行弘だが、しかしそこに《虚ろな者》の姿はなかった。
「マイ・フレンドはどこへ?」
だがそれでも問題はなかった。行弘は2ターン目に「探査」で6枚のカードを追放すると{B}で《グルマグのアンコウ》を唱え、続けて2枚目の《燃え立つ調査》から《黄金牙、タシグル》を繰り出したのだ! サルヴァットの手札に《罠の橋》はなく、ゲームは瞬く間に決着した。
まさかここから行弘の逆襲が始まるのか?
第4ゲーム、サルヴァットは最高のスタートを切った。《思考囲い》で行弘の《虚ろな者》を落とすと、《真髄の針》で《血染めのぬかるみ》を封じる。さらに《墓掘りの檻》が盤面に加わると、行弘の希望は絶たれていくように見えた。
それでも行弘はベストを尽くした。《炎刃の達人》を素早く2体展開すると、サルヴァットのライフを削っていく。《思考囲い》によるライフ損失と《炎刃の達人》による攻撃、「増呪」で唱えた《集団的蛮行》――サルヴァットが《罠の橋》を設置し手札を空にしたときには、残りライフは7点になっていた。
行弘に残された勝ち手段は、この7点を直接削り切ることのみ。
《渋面の溶岩使い》の能力を4回起動すれば届く点数だが、彼の墓地にはカードが3枚しかない。《稲妻》か《集団的蛮行》を引き込めれば、勝利はぐっと近づくだろう。
緊張の場面が訪れた。サルヴァットの盤面には《写本裁断機》があるものの、行弘のトップ・デッキを防いでも、その行動自体が自身の死を近づけることになる。
「ターン終了時に2点」 行弘は《渋面の溶岩使い》の能力を起動し、これで彼の墓地に残るカードは1枚になった。
《洞察のランタン》によって行弘のライブラリー・トップが《燃え立つ調査》であることが見えているサルヴァットは、より被害の小さい方、つまり《燃え立つ調査》を墓地へ送ることを選んだ。これで行弘は再び《渋面の溶岩使い》の能力を起動できるようになり、サルヴァットの残りライフは3点に落ち込んだ。その後もサルヴァットは《写本裁断機》で危険なカードを2度退けたが、残りライフ1点まで追い込まれることになった。
そして行弘のライブラリー・トップに再び現れる《燃え立つ調査》。サルヴァットはこれを「裁断」せざるを得ない。行弘の墓地にもう1枚カードが落ちれば、行弘の勝ちだ。次のライブラリー・トップは?
「マイ・フレンド! サイクリングしていいですか?」 行弘は確認する。
サルヴァットは頷き、《渋面の溶岩使い》が止めの一発を放つのを見届けてカードを片付けた。彼は最高の動きを見せたにも関わらず困難な状況へ追い込まれ、ついに干し草の中から(真髄の)針を見つけることはできなかった。事前の予想に反して、行弘はスコアを0-2から2-2へ持ち直したのだった。
決着の第5ゲーム、サルヴァットは初手で《産業の塔》、《オパールのモックス》、《洞察のランタン》、《写本裁断機》を手に入れ、瞬く間に行弘のドローを操作できる体制を整えた。
それでも行弘は1ターン目に《炎刃の達人》を繰り出すと、続けて《信仰無き物あさり》から《虚ろな者》。さらに次のターンには、《ゴブリンの知識》で墓地を肥やし《グルマグのアンコウ》まで展開した。
行弘の盤面には合計10点分のダメージ源が並び、ゲームは一瞬で終わり得る状況だった。しかし行弘が攻撃宣言に入ろうとすると、サルヴァットは手札に残る最後のカード、《発明品の唸り》を見せた。「即席」も合わせて6マナ分を捻出すると、インスタント・タイミングで《罠の橋》を設置したのだ。
それで勝負は決まった。
《墓掘りの檻》がある以上、行弘は《古えの遺恨》でもこの状況を打破できない。彼は自身の運命を悟ると大きく息を吐き、サルヴァットの決勝戦での健闘を祈り笑顔で右手を差し出した。それでも行弘は今大会の活躍により保有プロ・ポイントが30点を超え、プラチナ・レベル維持への道を着実に進んだのだ。
ルイス・サルヴァットが行弘 賢を3勝2敗で下し、決勝戦へ!
1 《島》 3 《闇滑りの岸》 1 《涙の川》 3 《植物の聖域》 4 《空僻地》 4 《産業の塔》 1 《アカデミーの廃墟》 1 《発明博覧会》 -土地(18)- -クリーチャー(0)- |
4 《オパールのモックス》 4 《ミシュラのガラクタ》 4 《洞察のランタン》 4 《写本裁断機》 2 《伏魔殿のピュクシス》 2 《真髄の針》 1 《墓掘りの檻》 1 《黄鉄の呪文爆弾》 4 《古きものの活性》 4 《コジレックの審問》 3 《思考囲い》 1 《突然の衰微》 3 《罠の橋》 1 《魔女封じの宝珠》 4 《発明品の唸り》 -呪文(42)- |
2 《溶接の壺》 1 《墓掘りの檻》 1 《真髄の針》 1 《自然の要求》 1 《突然の衰微》 1 《古えの遺恨》 1 《集団的蛮行》 1 《紅蓮地獄》 1 《アズカンタの探索》 1 《大渦の脈動》 2 《神聖の力線》 2 《ボーラスの工作員、テゼレット》 -サイドボード(15)- |
1 《沼》 2 《山》 3 《血の墓所》 1 《踏み鳴らされる地》 4 《血染めのぬかるみ》 2 《樹木茂る山麓》 1 《乾燥台地》 1 《沸騰する小湖》 3 《黒割れの崖》 -土地(18)- 4 《炎刃の達人》 4 《恐血鬼》 4 《炎跡のフェニックス》 4 《虚ろな者》 4 《通りの悪霊》 1 《黄金牙、タシグル》 3 《グルマグのアンコウ》 -クリーチャー(24)- |
4 《燃え立つ調査》 4 《信仰無き物あさり》 4 《稲妻》 4 《ゴブリンの知識》 2 《集団的蛮行》 -呪文(18)- |
3 《渋面の溶岩使い》 2 《大物狙い》 2 《致命的な一押し》 2 《古えの遺恨》 1 《集団的蛮行》 2 《血染めの月》 3 《虚空の力線》 -サイドボード(15)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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