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プロツアー『ファイレクシア』

戦略記事

プロツアー・ファイレクシア メタゲームブレイクダウン

Frank Karsten

2023年2月16日

 

 プロツアーが帰ってきた!2月17日開幕の「MagicCon: Philadelphia」にて開催されるプロツアー・ファイレクシアでは世界最高のマジック:ザ・ギャザリングの219名のプレイヤーが、総額500,000ドルの賞金と、世界選手権への出場権、そして名誉あるトロフィーを懸けて戦うことになる。ほとんどの参加者が地域チャンピオンシップでの成績により参加権利を獲得した一方で、マジックの殿堂顕彰者、オンラインのトッププレイヤーたち、そして最も勢いのあるプレイヤーも参加している。すなわち、現世界王者のネイサン・ストイアもだ。プロツアーはまさに世界レベルのテーブルトップの競技マジックの最高峰なのだ。

 フォーマットは『ファイレクシア:完全なる統一』ブースタードラフトが金曜日と土曜日の午前中に行われ、その後パイオニア5回戦が各日行われる。パイオニアは日曜日に行われるトップ8のフォーマットでもある。すべての戦いは、金曜日と土曜日は現地時間午前11時(日本では翌日午前1時)、日曜日は現地時間午前9時(日本では午後11時)に始まるtwitch.tv/magicでご覧いただける。(訳注:日本では公式TwitchおよびYouTubeチャンネルにて配信いたします。詳細はこちら

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パイオニアメタゲームブレイクダウン

 パイオニアは『ラヴニカへの回帰』以降の拡張セットと基本セットによるローテーションのないフォーマットであり、もっとも目を引く禁止リストのカードは「フェッチランド」だ。10,000枚近い使用可能なカードたちによる多種多様な強力な戦略が特徴であり、新たに『ファイレクシア:完全なる統一』のカードが追加され、競技的な多様性がさらに増すことになった。

 このプロツアーでのメタゲームの内訳は以下の通りだ。

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アーキタイプ 使用者割合 使用者数
1. ラクドス・ミッドレンジ 15.10% 33
2. 緑単信心 13.70% 30
3. グルール機体 9.60% 21
4. ロータス・コンボ 7.80% 17
5. 白単人間 6.80% 15
6. アゾリウス・コントロール 6.40% 14
7. ラクドス・サクリファイス 6.40% 14
8. イゼット独創力 6.40% 14
9. イゼット・フェニックス 5.00% 11
10. セレズニア天使 3.20% 7
11. オムナス白日 1.80% 4
12. アブザン脂牙 1.80% 4
13. アブザン・オーラ 1.80% 4
14. マルドゥ・サクリファイス 1.40% 3
15. エニグマ・ファイアーズ 1.40% 3
16. ディミーア・コントロール 0.90% 2
17. セレズニア・オーラ 0.90% 2
18. アゾリウス・パワーストーン 0.50% 1
19. セレズニア中隊 0.50% 1
20. ジャンド城塞 0.50% 1
21. エスパー・コントロール 0.50% 1
22. アゾリウス・スピリット 0.50% 1
23. ゴルガリ・エルフ 0.50% 1
24. アゾリウス・ロータスコンボ 0.50% 1
25. バント・オーラ 0.50% 1
26. ゴルガリ信心 0.50% 1
27. ティムール機体 0.50% 1
28. グリクシス・ミッドレンジ 0.50% 1
29. 黒単ミッドレンジ 0.50% 1
30. イゼット精神接合器 0.50% 1
31. 《嵐の伝令》コンボ 0.50% 1
32. 青単スピリット 0.50% 1
33. エスパー脂牙 0.50% 1
34. バント人間 0.50% 1
35. 《にやにや笑いのイグナス》コンボ 0.50% 1
36. アタルカ・レッド 0.50% 1
37. オルゾフ・オーラ 0.50% 1
38. アゾリウス・ヨーリオン 0.50% 1

 メタゲームを彩る多種多様なアーキタイプの中にはアグロ、ミッドレンジ、コントロール、ランプ、コンボ、そして多くの刺激的なデッキが含まれている。本トーナメントの構築デッキリストは2月17日のおよそ午後2時(日本では18日午前4時)、第4回戦の開始時にプロツアー・ファイレクシアイベントページで公開される予定だ。(訳注:日本ではマジック日本公式サイトのイベントカバレージにて公開されます)

 土地以外のカードですべてのメインデッキとサイドボードの中でプレイされたカードは《鏡割りの寓話》、《思考囲い》、《致命的な一押し》、《ラノワールのエルフ》、《エルフの神秘家》そして《砕骨の巨人》だ。

 これらの定番カードは依然としてこのフォーマットの軸であり、様々なデッキで見かけることになる。もしこのフォーマットをより深く知りたいのであれば、先月の私のパイオニア入門記事(訳注:英語公式ページでの記事です)をおすすめする。記事内では全主要アーキタイプにおけるゲームプラン、マッチアップ、そして地域チャンピオンシップでの展開が掲載されている。

 プロツアー・ファイレクシアにおいて最もプレイされたアーキタイプは「ラクドス・ミッドレンジ」(全体の15.1% )と「緑単信心」(全体の13.7%)だ。これは昨年末の地域チャンピオンシップのメタゲームに類似している。実際、地域チャンピオンシップを経てささnnka権利を手にしたプレイヤーのうち、大多数が同じアーキタイプをこのプロツアーに持ち込むことになった。しかしながら、本プロツアーのメタゲームはいくつかの展開と驚きをもたらしてくれた。

「グルール機体」の台頭:「グルール機体」は地域チャンピオンシップで優れた勝率を残したアーキタイプのひとつであり、その後のメタゲーム内でのシェアはさらに拡大している。《ラノワールのエルフ》から2ターン目に3マナ域のカードを展開するプランはそのままに、《銅線の地溝》や《迷宮壊し、ミグロズ》といった『ファイレクシア:完全なる統一』の追加カードの恩恵を受け、プロツアー・ファイレクシアでは3番手の勢力のアーキタイプとなった。21人の「グルール機体」使用プレイヤーのうち、8人が《群れ率いの人狼》を搭載しており、残る13人はその代わりに《湧き出る源、ジェガンサ》および(または)《変わり谷》を増量している。

「ラクドス・サクリファイス」の復権:「ラクドス・サクリファイス」もまた、地域チャンピオンシップで素晴らしいパフォーマンスを見せ、勢いを増したアーキタイプの一つだ。このデッキは通常3マナ以上のカードをプレイすることがなく、《黒割れの崖》がマナ基盤を強固なものにしている。14個のラクドスバージョンに加え、《忘却の儀式》と《スカルドの決戦》をタッチした刺激的なマルドゥの構成も3個存在する。両者を合わせた合計では4番目に人気のアーキタイプとなる。

「イゼット独創力」の驚愕:「イゼット独創力」の地域チャンピオンシップでのパフォーマンスは並程度であったが、本プロツアーでは6.4%をも占めるに至った。新たなカードを活用しているわけではないが、安定した強力なコンボを搭載している。構築の最大の目的は、《不屈の独創力》をX=2で唱え、《世界棘のワーム》と《歓楽の神、ゼナゴス》を戦場に送り出すことだ。結果として、トランプルと速攻を持つ30/30のクリーチャーが速やかに勝利をもたらすことになる。

オーラの魅力:『ファイレクシア:完全なる統一』の《剃刀境の茂み》と《離反ダニ、スクレルヴ》を採用したことにより、《皇の声、軽脚》を中心にしたデッキが再浮上した。様々なカラーコンビネーションを合計すると、8名のプレイヤーがこの種のデッキの使用を決定し、その中でも「アブザン・オーラ」が最多となった。私のアーキタイプ判断においては、デッキに少なくとも2枚以上のその色のカードかつ少なくとも2枚以上の2色ランドがメインデッキとサイドボードに入っている場合、デッキにその色を加えることにしている。すなわち、「アブザン・オーラ」は「セレズニア・オーラ」をベースとし、数種類の黒いカードを白黒の2色ランドによってタッチしている形となる。しかしながら、《皇の声、軽脚》デッキにおける《マナの合流点》によってのみ唱えられる1枚挿しのカードは色分けに影響していない。

 これらすべてのデッキ選択が勝利への鍵となる可能性を秘めている。特に世界最高のプレイヤーたちが駆るのであればなおさらだといえる。

『ファイレクシア:完全なる統一』の使用カードランキング

 デッキリスト提出期限のわずか2週間前に本フォーマットに登場した『ファイレクシア:完全なる統一』は、パイオニアに少なからぬ影響を与えた。以下の表はプロツアー・ファイレクシアの全デッキリストにおいて最もプレイされたパイオニア新登場カードの内訳だ。

カード名 総使用枚数 メインデッキ使用枚数 サイドボード使用枚数
黒割れの崖 129 129 0
銅線の地溝 81 81 0
剃刀境の茂み 60 60 0
離反ダニ、スクレルヴ 44 41 3
迷宮壊し、ミグロズ 38 38 0
沈黙を破る者、スラーン 15 0 15
免れ得ぬ破滅、ルーカ 15 4 11
金線の酒杯 14 0 14
金属海の沿岸 13 13 0
鉱炉と前線の剣 13 3 10
骨化 11 8 3
闇滑りの岸 11 11 0
機械の母、エリシュ・ノーン 10 7 3
シェオルドレッドの勅令 9 9 0
腐れ花 7 2 5
盲信者の確信 7 4 3
向上した精霊信者、ニッサ 6 2 4
予言のプリズム 4 4 0
滅殺の眼差し 4 4 0
偉大なる統一者、アトラクサ 4 0 4
青の太陽の黄昏 4 0 4
精神接合器 4 4 0

 最も重要な新カードは、友好色のファストランドだ。縦倍、《黒割れの崖》は「ラクドス・ミッドレンジ」「ラクドス・サクリファイス」「マルドゥ・サクリファイス」のマナ基盤を強化した。加えて、《銅線の地溝》は1ターン目《ラノワールのエルフ》から2ターン目《無謀な嵐探し》の流れを容易にした。さらに、《剃刀境の茂み》は「セレズニア天使」、「アブザン脂牙」そして様々なオーラデッキの序盤のマナの安定性を改善した。

 土地以外のカードでは、《離反ダニ、スクレルヴ》が最も多くプレイされており、主に「アブザン・オーラ」のような《皇の声、軽脚》デッキに見ることができる。このデッキにおいて《離反ダニ、スクレルヴ》はカギとなるクリーチャーを守るだけでなく、《きらきらするすべて》のアーティファクトとして、また《モックス・アンバー》の伝説としてカウントされる。数人の「白単人間」使用プレイヤーも《離反ダニ、スクレルヴ》を数枚採用している。

 「グルール機体」で最も重要な土地以外の追加カードは《迷宮壊し、ミグロズ》だ。《迷宮壊し、ミグロズ》は優秀な能力の3マナ圏で、警戒で《放浪皇》をかわし、威迫で《大釜の使い魔》を避け、+2/+2能力で戦場に立ちはだかり、最後の能力で対戦相手の《アクロス戦争》や《鉱炉と前線の剣》を破壊する。これがなければこの新たに登場した「剣」は赤緑デッキに大きな問題を引き起こすだろう。

 最後に、《金線の酒杯》と《機械の母、エリシュ・ノーン》は重要な2つのシルバーバレットだ。《金線の酒杯》は《大いなる創造者、カーン》の「教示者」のターゲットであり、それが表しているのは《漸増爆弾》のちょっとした改良版だが、《ビヒモスを招く者、キオーラ》で繰り返しアンタップすることにより、10点のダメージを与える能力を解き放ち、勝利条件を達成することもできる。
機械の母、エリシュ・ノーン》は《奇怪な具現》や《白日の下に》の「教示者」のターゲットであり、彼女をコントロールしていれば《力線の束縛》の効果が2倍になり、対戦相手の《エシカの戦車》や《茨の騎兵》の効果が弱体化する。《機械の母、エリシュ・ノーン》を採用しているデッキではたった1枚挿しであっても、彼女は「教示者」能力によりしばしば戦場に降り立つことになるだろう。

 どんなカードが、どんな戦略が頂点に立つことになるのか。そして一体だれが競技マジックの歴史に名を刻むのか。見届けたい方は生放送をお見逃しなく。中継は2月17日金曜日にtwitch.tv/magicにて開始!(訳注:日本では2月18日午前1時より、日本公式TwitchおよびYouTubeチャンネルにて配信いたします。詳細はこちら

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