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プロツアー・フィラデルフィア11
(翻訳記事)Deck Tech: Brad SheppardのNext Level Blue
By Blake Rasmussen / Translated by Keita Mori
「コントロール不在、コンボとビートダウンの海」
DCI認定フォーマットとしてデビューしたばかりのモダンという環境については上記のような総括が行われようとしているわけだが、ひとりのプレイヤーがこのアンチ・コントロール的風潮に異を唱えるべく、青緑白のNext Level Blue(以下NLB)を駆り、果敢に戦った。とかく決着の速さが強調されがちなモダン環境において、NLBは《タルモゴイフ》、低コストの除去呪文、打ち消し呪文等を活用してゲームの展開を長引かせ、《饗宴と飢餓の剣》や《ヴィダルケンの枷》によってゲームを制圧しにかかるというゲームプランを持った、まさしくコントロールデッキという内容である。
ところで、本稿は革新的なデッキを紹介するという類のデッキテック記事ではない。むしろ、"Next Level"、"Previous Level"をはじめ、「〜レベルブルー」という命名の青を主体としたコントロールデッキは様々なフォーマットで活躍しており、デッキコンセプトそれ自体は目新しいものではなく、各構築フォーマットで結果を残している強力なカードをモダン流にパッケージングしたもの、と言い換えることもできるかもしれない。
では、ブラッド・シェパードの何が新しかったか? それは、ほとんどのプロプレイヤーが「コントロールデッキではモダンの世界で天下を獲ることは不可能だ」と述べている中で、「あえてど真ん中のコントロールで勝負してきた」という、その志こそが、という話になる。彼はコントロールデッキでモダン形式に勝ち越している数少ないプレイヤーであり、モダンを7ラウンド戦った本稿執筆段階で6勝1敗と健闘しているのだ。
ブラッド・シェパード |
もっとも、現在のモダン環境でコントロールデッキが直面する課題は山積されており、その件については「特集記事:コントロールの消滅」にも詳しく触れられている。この環境のコントロールデッキにとって第一の課題は、環境最大勢力でもあった《雲上の座》デッキ(12-Post)とどのように戦うかということで、この圧倒的マナ加速力をほこるデッキは、コントロールデッキ側が制御不可能なマナ域へとやすやすとたどり着いてしまうのだ。コントロールデッキを構築・運用する上では、上記を踏まえた上で、高速で仕掛けてくるコンボやビートダウンを制御するすべを十分数投入する必要があり、さらに、すぐれたアドバンテージ獲得エンジンのない状況下で、中長期的なゲーム展開に持ち込んだ際にきちんと勝ちきるためのカードも用意しなければならないということになる。厳しい注文だ。
そこで、《饗宴と飢餓の剣》投入。シェパードのデッキの呪文のほとんどがインスタンド・スピードで詠唱できるものとなっており、タップアウトせずに対戦相手にプレッシャーをかけるというコンセプトを持ったこの強力な装備品はマッチしていると言えるだろう。
シェパードがメインフェイズにマナをタップするに値するようなシーンはいついかなる場合かと問われれば、それは彼がモダン環境下のNLBにおけるキーカードと挙げた《定業》の使用が代表的なものとなる。先ほどあげた12-Post、ビートダウンのどれをとっても、それぞれに有効な妨害手段や効果的に機能する脅威は異なるため、各対戦における不要カードをスキップしつつ有効なカードを探しに行くというアクションは重要なのだ。
高速で低コスト呪文がひしめくフォーマットにおける《呪文づまりのスプライト》はシェパードいわく「ほぼ確定カウンター」として機能するが、場合によってデッキに4枚投入されている《変わり谷》がサポートして2マナ域以上の呪文を打ち消すことになる。このマンランド(*クリーチャー化する特殊土地)はクリーチャー変化のコストが安いため、《饗宴と飢餓の剣》を持ってアタックをしかけるケースも少なくないという。もっとも、《変わり谷》から色マナが出ないために《謎めいた命令》を打ちたいタイミングで打てない場合があることを彼は強調してもいる。
シェパードいわく、彼のNLBは対コンボ戦でかなり有利であり、ルイス・スコット=バーガス(Luis Scott-Vargas)の青入りZoo "Counter Cat"にこそ1敗しているが、一般的なZooとのマッチアップにも分があるという。環境最多勢力であった《雲上の座》デッキにも1マッチ勝利した上での通算戦績6-1を飾っているシェパードだが、対12-Postとのマッチアップについては、一本目は(相手のブンまわりパターンに抗えないことを含めて)かなりムラがあり、二本目以降は《広がりゆく海》、《エイヴンの思考検閲者》、《瞬間凍結》、《袖の下》といった有効なサイドボードカードを展開できれば五分五分には持ち込めるという感触だそうだ。また、このNLBは《罰する火》デッキにも弱い部分があるが、シェパードはなんとかこれを実際に倒すことに成功している。
シェパードのサイドボードは《雲上の座》デッキとの相性を改善するためのカードが相当数含まれているが、思っていたほどには活躍できなかったカードもあるという。たとえば同系対決を想定した《火と氷の剣》については、そもそも青系コントロールがフォーマットにあまり存在しなかったし、《クローサの掌握》についても《欠片の双子》対策としての役目を果たしてくれたものの、ミラーマッチで強いはず、という事前シミュレーションはあてが外れている。加えて、墓地対策も《大祖始の遺産》ではなく《トーモッドの墓所》を入れていれば、あと1ゲームは勝てていたはずだという。
また、これからのビートダウン対策用サイドボードとしては、スタンダードでおなじみの《機を見た援軍》をよく見るようになるはずで、半面、Zooが《流刑への道》を標準搭載するようになればなるほど、画一的に使われがちな《台所の嫌がらせ屋》が機能しなくなっていくだろうと語っている。
現時点ではシェパードにも今後のNext Level Blueの改良の指針は定まっていないとのことで、それはこのデッキが今回のプロツアーのメタゲームに照準を定めた調整が施されていることにも起因するという。それでも、彼が想定していたほどは活躍しなかったカードたち、具体的には《変わり谷》、《大祖始の遺産》、《火と氷の剣》、《ルーンのほつれ》などは再考の余地がありそうだという。たとえば、《ルーンのほつれ》は《マナ漏出》に素直に変更して良いだろうとのことで、この大会以降も12-Postが人気アーキタイプである限り、枚数も4枚から3枚に変わるかもしれないという。
3 《繁殖池》 2 《神聖なる泉》 7 《島》 4 《霧深い雨林》 4 《変わり谷》 4 《沸騰する小湖》 -土地(24)- 2 《呪文づまりのスプライト》 4 《タルモゴイフ》 3 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《造物の学者、ヴェンセール》 -クリーチャー(11)- |
4 《謎めいた命令》 2 《仕組まれた爆薬》 4 《流刑への道》 4 《定業》 4 《ルーンのほつれ》 3 《呪文嵌め》 2 《饗宴と飢餓の剣》 2 《ヴィダルケンの枷》 -呪文(25)- |
2 《エイヴンの思考検閲者》 1 《袖の下》 1 《瞬間凍結》 2 《クローサの掌握》 2 《大祖始の遺産》 1 《呪文づまりのスプライト》 3 《広がりゆく海》 1 《火と氷の剣》 2 《機を見た援軍》 -サイドボード(15)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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