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プロツアー『サンダー・ジャンクション』

戦略記事

プロツアー『サンダー・ジャンクション』メタゲームブレイクダウン

Frank Karsten

2024年4月26日

 

 デッキリストが揃い、データの準備も整い、2024年2回目のプロツアーが明日開幕する!世界最高のマジック:ザ・ギャザリングプレイヤー207名が、賞金50万米ドル、世界選手権へのいくつかの招待枠、そして栄えあるトロフィーを賭けて競い合うプロツアー『サンダー・ジャンクション』の時間だ。スタンダードは現在3,300枚以上のカードが使用可能なため、競技者たちはこのフォーマットで見たこともないような高いパワー・レベルに挑まなければならない。

 地域選手権、オンライン予選、過去のプロツアーのトッププレイヤーに加え、マジックの殿堂プレイヤーや世界王者に君臨するジャン=エマニュエル・デュプラ/Jean-Emmanuel Deprazも出場している。フォーマットは、金曜日と土曜日の午前中に『サンダー・ジャンクションの無法者』ブースタードラフトが行われ、その後スタンダードが5回戦ずつ行われ、日曜日はトップ8フォーマットもスタンダードで行われる。

 一挙手一投足を追いかけるには、twitch.tv/magic (日本では公式YouTubeチャンネル)を確認しよう。twitch.tv/magicでは金曜日と土曜日の太平洋時間11時から、日曜日は同午前10時から生中継を開始する。より詳細な情報は観戦ガイドからご覧いただける。

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スタンダードメタゲームブレイクダウン

 スタンダードは毎秋ローテーションが行われる60枚のカードによるフォーマットだ。現在使用可能な拡張セットは『イニストラード:真夜中の狩り』以降のものとなっている。スタンダードではミッドレンジデッキが環境を席巻することが非常に多く、今回もその例に漏れない。だが、『サンダー・ジャンクションの無法者』で新たに加わったカードが環境に大きな変化をもたらしている。本プロツアーにおけるメタゲームブレイクダウンは以下の通りだ。

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アーキタイプ 使用者数 使用率
1. エスパー・ミッドレンジ 65 31.40%
2. ボロス召集 22 10.60%
3. ティムール世界魂 19 9.20%
4. 4色レジェンズ 17 8.20%
5. ドメイン・ランプ 14 6.80%
6. アゾリウス・コントロール 10 4.80%
7. ディミーア・ミッドレンジ 9 4.30%
8. ラクドス・アグロ 8 3.90%
9. 赤単アグロ 8 3.90%
10. ゴルガリ・ミッドレンジ 5 2.40%
11. ディミーア・コントロール 5 2.40%
12. ジャンド世界魂 2 1.00%
13. グルール・アグロ 2 1.00%
14. オルゾフ荒馬 2 1.00%
15. ティムール果敢 2 1.00%
16. アゾリウス・アーティファクト 2 1.00%
17. ドメイン・コントロール 1 0.50%
18. バント・コントロール 1 0.50%
19. 青単大釜 1 0.50%
20. ボロス果敢 1 0.50%
21. スゥルタイ・ミッドレンジ 1 0.50%
22. ティムール災厄 1 0.50%
23. エスパー・リアニメイト 1 0.50%
24. 黒単血文字 1 0.50%
25. ジェスカイ・アーティファクト 1 0.50%
26. スゥルタイ・レジェンズ 1 0.50%
27. ディミーア・リアニメイト 1 0.50%
28. 5色レジェンズ 1 0.50%
29. グリクシス・リアニメイト 1 0.50%
30. ラクドス ミッドレンジ 1 0.50%
31. 5色世界魂 1 0.50%

 メタゲームの特徴はエスパー・ミッドレンジが多いことだが、それ以外にもかなり多様性があるようだ。アグロ、ミッドレンジ、コントロール、ランプ、コンボ、そしてたくさんの刺激的なデッキを含む、何十種類ものアーキタイプが存在する。今大会のスタンダード構築デッキリストはすべて、4月26日(金)午後2時(太平洋時間)頃の4回戦開始時にプロツアー『サンダー・ジャンクション』イベントページで公開される予定だ。

 土地でないカードの中で、メインデッキとサイドボード合わせて最もプレイされたカードは《喉首狙い》《切り崩し》、そして《大洞窟のコウモリ》だ。これらのカードは依然としてこのフォーマットの軸であり、さまざまなデッキ、特に黒のミッドレンジ戦略で見かけることができる。《黙示録、シェオルドレッド》のような《喉首狙い》で簡単に死んでしまうクリーチャーを見ることは比較的少なくなった。

 メタゲームは先週のスタンダード入門で取り上げた『サンダー・ジャンクションの無法者』発売直前のものと多くの類似点があるものの、何百枚もの新カードが登場したことで状況は一変した。それでは、プロツアー『サンダー・ジャンクション』から最も重要な4つのポイント、展開、驚きを詳しく見ていこう。

「エスパー・ミッドレンジ」の支配

 過去数ヶ月間、黒のミッドレンジ戦略は通常スタンダードのメタゲームの30~40%を占めていたが、最良の色の組み合わせが何なのかは明確ではなかった。「ディミーア・ミッドレンジ」は、スムーズなマナ基盤、低いマナカーブ、効率的な打ち消し呪文を活かして『サンダー・ジャンクションの無法者』発売直前には最も優勢だったが、新セットは状況を一変させた。『サンダー・ジャンクションの無法者』の登場後、エスパー・ミッドレンジは決定的に王座を奪還した。

 《秘密の中庭》がマナ基盤を改善し、《安らかなる眠り》と《害獣駆除》がサイドボード後の「ティムール世界魂」や「ボロス召集」といった以前は相手が困難だったマッチアップを揺さぶるようになったことで、白を運用する価値が高まった。多くのプロツアー参加者が同じ結論に達した。つまり、 エスパーは今やディミーアよりも優れているということだ。実際、参加者の3分の1近くが「エスパー・ミッドレンジ」を登録しており、《秘密の中庭》は文句なしの追加カードとして、《害獣駆除》はほぼ普遍的にサイドボードに採用されていた。例えば、「エスパー・ミッドレンジ」のプレイヤーは《婚礼の発表》、《大洞窟のコウモリ》、《精神の決闘者》といったカードを使うかどうかで意見が分かれるなど、構築によって多少の違いはあるが、誰もがこのフォーマット最高の3マナ圏である《策謀の予見者、ラフィーン》を採用している。

4色レジェンズの復活

 ここ数ヶ月、4色レジェンズはスタンダードでは縁の下の力持ちであり、メタゲームの1~2%を占めるのが普通だった。ミッドレンジ、コンボ、ランプの要素を組み合わせたこのデッキは、《伝説の秘宝》から《大スライム、スローグルク》にマナを供給することに長けていた。《大スライム、スローグルク》は、《侵攻の伝令、ローナ》で土地を捨てたり、《太陽の執事長、インティ》、《天上都市、大田原》や《見捨てられたぬかるみ、竹沼》で土地を捨てるたびに成長する。バウンスも反応も簡単なので、毎ターン複数の土地を流して価値を高めることができる。

 『サンダー・ジャンクションの無法者』は《正直者のラトスタイン》という形でこのデッキを大幅に強化した。主要クリーチャーを1マナ軽くし、単体除去に対して耐性を与え、さらには新たな無限コンボを可能にする。もし《伝説の秘宝》と《侵攻の伝令、ローナ》をコントロールしているなら、《正直者のラトスタイン》2枚を無限にループさせることができる。《侵攻の伝令、ローナ》と《正直者のラトスタイン》をタップして《伝説の秘宝》をアンタップし、《正直者のラトスタイン》を唱えて伝説ルールで1枚失い、それを戻すことを繰り返す。これにより、《陽気な擲弾兵、薬瓶砕き》でゲームに勝つことができる。このループを利用するあまり一般的でない方法として《チビボネの加入》《残忍な巡礼者、コー追われのエラス》《機械の母、エリシュ・ノーン》《アニーの加入》などがある。一貫性を保つため、白のカード1枚を含む青黒赤緑の基本デッキはプロツアーでも「4色レジェンズ」と表記される。

「バント毒性」の消滅

 メタゲームの頂点に立つデッキに注目が集まるだろうが、そこにないものを認識することも重要だ。つまり「バント毒性」だ。過去数ヶ月間、このアーキタイプはメタゲームの4~8%程度を推移しており、毒カウンターを利用することで土地によってライフを回復する「ティムール世界魂」や、展開の遅い「ドメイン・ランプ」を食い物にしてきた。しかしプロツアーでは、《敬慕される腐敗僧》や《スクレルヴの巣》を登録したプレイヤーはゼロだった。

 このデッキは最新セットから特筆すべきものを得ておらず、有利なマッチアップは減少し、全体除去は刻々と増えていた。結果として、プロツアー『サンダー・ジャンクション』では、《ミレックス》を除けば誰も毒殺されることはないだろう。

斬新な戦略の数々

 『サンダー・ジャンクションの無法者』本体と「ビッグスコア」ボーナス・シートによって、最新セットは過去最大規模のスタンダードセットとなり、新しい構築手段が豊富に登場した。最もエキサイティングな選択肢は、明日のプロツアーから最も刺激的なデッキリストを案内する記事で紹介するが、ひとつ確かなことは、西海岸でのスタンダード・ラウンドは荒れ狂うということだ。

 あるプレイヤーは《限りない強欲》で《終末の影》をライブラリーの一番上に置き、《腐食の荒馬》で対戦相手に15点分ものダメージを与えるだろう。また、《アクロゾズの放血者》と《戦慄の奔出》を組み合わせて、対戦相手のライフをすべて失わせることを狙うプレイヤーもいる。一方、数テーブル向こうでは、《精鋭射手団の目立ちたがり》の一撃が《身代わり合成機》専用デッキと対戦するかもしれない。そしておそらくフィーチャーマッチエリアでは、《事件現場の分析者》のプレイヤーが土地を何十枚も生け贄に捧げて《無慈悲な殺戮》をプレイし、対戦相手の《ケラン・ザ・キッド》と《デジェルとハゾレト》の組み合わせに敗れるかもしれない。確かに、プロツアーのスタンダードのメタゲームには「エスパー・ミッドレンジ」が多いが、革新的なデッキの多様性も見せている。

『サンダー・ジャンクションの無法者』で最もプレイされたカード

 既存のスタンダードのカードプールが設定した高いハードルにもかかわらず、『サンダー・ジャンクションの無法者』はこのフォーマットにかなりの影響を与えた。以下の表は、プロツアーのデッキリストの中でスタンダードに新規採用されたカードをすべて分類したものである。非常に多い数だ。

カード名 総使用枚数 メインデッキ サイドボード
秘密の中庭 197 197 0
害獣駆除 163 6 157
安らかなる眠り 154 0 154
精神の決闘者 97 97 0
感動的な眺望所 94 94 0
三歩先 61 60 1
正直者のラトスタイン 56 56 0
精鋭射手団の目立ちたがり 45 45 0
花盛りの湿地 44 44 0
乱伐者、ボニー・ポール 35 1 34
見捨てられた鉱夫 32 32 0
すりのチビボネ 32 32 0
腐食の荒馬 28 28 0
保安官を撃て 27 27 0
養育するピクシー 25 25 0
悪魔の大騒動 19 19 0
敵意ある調査員 19 8 11
砂塵の憎悪 16 4 12
苦難の収穫者 16 7 9
泥沼の略奪 15 15 0
焦熱の射撃 15 11 4
自ら運を掴め 14 14 0
尖塔断の運河 14 14 0
陽気な擲弾兵、薬瓶砕き 13 13 0
同化の神盾 12 9 3
身代わり合成機 12 12 0
植物の聖域 11 11 0
限りない強欲 11 10 1
エイヴンの阻む者 10 0 10
倦怠の宝珠 9 0 9
無慈悲な殺戮 8 8 0
古のヤギ角 8 8 0
懲罰者、ケアヴェク 8 7 1
幻影の干渉 7 7 0
チビボネの加入 7 7 0
蛇皮のヴェール 6 6 0
厄介者、ギサ 6 5 1
戦慄の奔出 6 3 3
フォモーリの宝物庫 5 5 0
棘を播く者、逆棘のビル 4 0 4
侵略の大梟 4 4 0
タンブルウィードの踊り 4 4 0
軍団の成形機械 3 3 0
最後の決戦 3 3 0
落星の学者、ロクサーヌ 3 0 3
ケラン・ザ・キッド 3 3 0
新たな血族、ヴァドミル 3 3 0
没収の強行 3 0 3
陽気な哀歌 3 3 0
しっぺ返し 2 0 2
冷静なスフィンクス 2 0 2
束縛の交渉術 2 0 2
金脈のハイドラ 1 1 0
貪欲な乗りもの、ギトラグ 1 0 1
護衛の制圧 1 0 1
百戦錬磨、アニー・フラッシュ 1 0 1
乾燥地帯のアーチ道 1 1 0
アニーの加入 1 1 0
略奪者の荷物 1 1 0

 最もプレイされた新カードは、《秘密の中庭》、《害獣駆除》《安らかなる眠り》《精神の決闘者》で、これらはすべて「エスパー・ミッドレンジ」の優勢について話したときにすでに触れたものだ。《精神の決闘者》は、2022年の世界選手権で優勝したネイサン・ストイア/Nathan Steuerがモデルのカードであり、エキサイティングな1枚だ。相互作用的で悪事を働くカードが満載のデッキで有効にするのは簡単で、そのパワーアップ能力は《策謀の予見者、ラフィーン》と特にうまくシナジーする。「エスパー・ミッドレンジ」に追加されたこれらのカード以外にも、様々なアーキタイプのカードが目立っている。

 対抗色のファストランドは、アグロデッキの序盤のマナの安定性に大きな変化をもたらす。以前は、「ボロス召集」が《ひよっこ捜査員》や《ヴォルダーレンの美食家》を1ターン目に安定して唱えることは難しかった。《感動的な眺望所》があれば、このデッキのマナの一貫性は数%上昇し、マリガンの回数が減り、パイオニアのそれにさらに近づく。何名かの「ボロス召集」プレイヤーは、《イーオスの遍歴の騎士》や《門道急行の事件》を戻すことで価値を生み出すことができる《養育するピクシー》も採用していた。

 青のプレイヤーもいくつかの新しいツールを得た。コントロール・プレイヤーにとって、《三歩先》はその柔軟性とカード・アドバンテージの可能性から《謎めいた命令》を彷彿とさせる。これは間違いなく史上最高の《取り消し》の亜種であり、アゾリウス・コントロールの台頭を可能にした。一方、サイドボード後の墓地ヘイトをかわす副次的なゲーム・プランとして、《乱伐者、ボニー・ポール》は「ティムール世界魂」のプレイヤーに人気がある。

 赤のアグロ・プレイヤーにとって、《精鋭射手団の目立ちたがり》は新セットで最もエキサイティングなカードの1つだ。速いクロックを提供し、単体除去や全体除去をかわすために配置することができ、ほとんどのブロッカーを飛び越える。デッキを大量の非クリーチャー呪文で満たし、安定して誘発させるのは簡単だ。「赤単アグロ」が7人、「グルール・アグロ」が2人、「テムール・アグロ」が2人、そして「ボロス・アグロ」が1人。その多くには《悪魔の大騒動》も含まれており、《精鋭射手団の目立ちたがり》をブーストしたり、場合によっては対戦相手のクリーチャーを焼いた後にカードを1枚引くこともできる。

 黒のデッキもいくつかの新しいツールを得た。《保安官を撃て》は、《正直者のラトスタイン》や《すりのチビボネ》、《見捨てられた鉱夫》のような新しい無法者は対象に取れないため、《喉首狙い》ほど人気がない。同時に、この除去呪文は《太陽降下》の培養器・トークンを処理できるため、様々なプレイヤーがこの2つの除去呪文を混ぜて採用している。その一方で、《見捨てられた鉱夫》のおかげで、素早く展開し悪事を働いて優位に立つことができる「ラクドス・アグロ」デッキの新潮流が生まれた。

第30回マジック世界選手権への道

 プロツアー『サンダー・ジャンクション』では、36マッチポイントを獲得してトップ8に入賞した選手全員に、2024年に開催される第30回マジック世界選手権への招待権利が送られる。10月下旬に開催されるその大会までの数週間をカウントダウンしながら、毎週過去のマジック世界選手権から素晴らしいデッキを紹介する。前の週で1994年1995年1996年1997年1998年の世界選手権を振り返った後、1999年まで時間を遡ろう。

 この年の8月26日から28日にかけて東京で開催された1999年のマジック世界選手権では、32カ国から208名のプレイヤーがロチェスター・ドラフト、スタンダード、エクステンデッドに分かれて戦った。日曜日に行われたスタンダードによるトップ8プレイオフでは、ドイツのカイ・ブッディ/Kai Buddeがプロツアー通算7勝目となる優勝を飾った。

 決勝戦でブッディはマーク・ル・パイン/ Mark Le Pineを3勝0敗で破り、世界選手権史上最速の約20分で優勝を決めた。「決勝のゲームは接戦ではなかった」とブッディは振り返る。「私はただ《通電式キー》《厳かなモノリス》《スランの発電機》を毎回持っていただけだ。彼は《投火師》をプレイしていて、私は《欲深きドラゴン》をプレイしていたんだ」。

カイ・ブッディ - 「Red Artifact Wildfire」
スタンダード(1998年8月4日)[MO] [ARENA]
3 《古えの墳墓
4 《裏切り者の都
13 《
-土地(20)-

4 《欲深きドラゴン
1 《銀のゴーレム、カーン
3 《マスティコア
-クリーチャー(8)-
4 《呪われた巻物
4 《緋色のダイアモンド
4 《厳かなモノリス
2 《ミシュラのらせん
4 《束の間の開口
4 《スランの発電機
4 《通電式キー
2 《摩滅したパワーストーン
4 《燎原の火
-呪文(32)-
2 《沸騰
3 《地震
1 《ミシュラのらせん
1 《ファイレクシアの処理装置
2 《荒残
2 《破壊的脈動
4 《呪文ショック
-サイドボード(15)-

 ブッディのデッキには30枚以上のアーティファクトが入っており、大量のマナを生み出してゲームを加速させていた。これによって彼は《マスティコア》や《欲深きドラゴン》のような大型クリーチャーを素早く展開することができ、それらは《燎原の火》を生き延びることができた。タイミングよく《燎原の火》を放てば、対戦相手のパーマネントを皆無にしてゲームから締め出し、その間に自分はマナロックを数枚とクリーチャーを残してとどめを刺すことができる。莫大なマナを《ミシュラのらせん》や《束の間の開口》に注ぎ込むこともでき、ゲームを支配することができる。このアーキタイプは1999年の世界選手権ではスタンダードのメタゲームの8%を占め、ブッディはそれを見事に操った。

 2024年のスタンダードと1999年のスタンダードはかなり対照的だ。今年は、アグロ、ミッドレンジ、コントロール、ランプ、コンボのすべてがマクロ戦略として有効であり、フォーマットは良い状態にある。4枚のカードが禁止されているが(《食肉鉤虐殺事件》《鏡割りの寓話》《絶望招来》《勢団の銀行破り》)、過去3年間のカード・デザインは概ねバランスが取れており、フェアで、双方向的であった。

 対照的に、1999年のスタンダードは良い状態ではなかった。私が競技マジックを始めた98年から99年の「コンボの冬」の間、誰もがウルザ・ブロックのオーバーパワーなカードを使って無限やコンボを繰り出していた。ウルザ・ブロックは史上最も壊れたブロックのひとつで、そのフリースペルと驚異的なカードドローがデッキの破綻を招いた。ライブラリーを破壊し、ターンの間に途方もない量のマナを生み出し、早ければ1ターン目から退廃的なコンボを組み立てることができた。

 「コンボの冬」はフリースペルのエラッタと、信じられない数のスタンダード禁止をもたらした。つまり《トレイリアのアカデミー》《意外な授かり物》《ドリーム・ホール》《大地の知識》《波動機》《水蓮の花びら》《繰り返す悪夢》《時のらせん》《記憶の壺》《精神力》などだ。現在、これらのカードの多くはレガシーでさえ禁止されている!シャッフルが序盤戦、マリガンが中盤戦、そして1ターン目が終盤戦というジョークがまかり通っていた。

 1999年の世界選手権までには、これらの禁止によってフォーマットはよりバランスの取れた状態に回復し、マジックの R&D は将来のカード・デザインのための貴重な教訓を学んだ。しかし、これらの禁止にもかかわらず、《厳かなモノリス》《通電式キー》《スランの発電機》《古えの墳墓》、《裏切り者の都》は依然として使用可能であったため、2ターン目の《欲深きドラゴン》や3ターン目の《燎原の火》は当時よく見られたカーブアウトであった。《暗黒の儀式》《ヨーグモスの意志》《吸血の教示者》も当時はすべてスタンダードで使用可能だった。現在では、スタンダードのフォーマットはよりフェアであり、マナランプを先行させるにはデッキ構築の労力がはるかに必要となる。

 しかし、ブッディの勝利が示すように、高速マナは常に壊れる可能性を秘めている。現在のスタンダードでは、《事件現場の分析者》デッキ《伝説の秘宝》デッキは同じ原理で構築されている。対戦相手よりはるかに多くのマナにアクセスできるなら、相手を圧倒するのは簡単だ。「エスパー・ミッドレンジ」のプレイヤーは、ディスカードやカウンター呪文を相互作用として持っているかもしれないが、それでも自分の2倍のマナを持っている相手に勝つのは難しい。プロツアー『サンダー・ジャンクション』でどのカードが頂点に立つのか、そして誰が世界選手権30への出場権を獲得するのか、今週金曜日、4月26日から始まるtwitch.tv/magicでの実況をお見逃しなく!

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