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プレイヤーズツアー・名古屋2020
決勝:行弘 賢(東京) vs. 原根 健太(東京) ~寿司とフカヒレ~
プレイヤーズツアー・名古屋2020、決勝。日本国内では初となるパイオニア・フォーマットでのプレイヤーズツアーも、残すところあと1戦で全行程が終了する。
今回のトーナメントを一言でまとめるとしたら、「苛烈」といったところだろうか。日本のマジック史を振り返ってみても、トップ8にこんなにも濃いメンバーばかりが集まったトーナメントがあっただろうか。
【PT名古屋20速報】見事トップ8への進出を果たしたのはこちらの方々です!この後の決勝トーナメントもお楽しみに!
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) February 2, 2020
石村信太朗
高橋優太
行弘賢
八十岡翔太
原根健太
浅原晃
リー・シー・ティエン
ドミトリー・ブタコフ
Twitch→https://t.co/OauAwkWeSg
YouTube→https://t.co/ujsCUKu3i3#PTNagoya
日本勢だけでなく、香港からリー・シー・ティエン、ロシアからドミトリー・ブタコフといったスタープレイヤーが入賞しており、このトーナメントのレベルの高さが伺える。そも、このプレイヤーズツアーというトーナメント自体、グランプリのようなオープントーナメントとは異なり、予選を勝ち抜いてきたか、あるいは別の方法で権利を獲得している者しか参加できないクローズドトーナメントである。集まっているプレイヤーもみな一定の水準は満たしているのだが。そうしたトーナメントの性質を加味しても、この8名の顔ぶれはあまりにも破格だ。
世界でも上位に列する猛者たちによる、苛烈極まる激戦の果て。決勝の舞台へと辿り着いた2名のプレイヤー、原根 健太と行弘 賢が、決勝のテーブルで向き合っている。
今さら説明不要かも知れないが、原根 健太はチーム「武蔵」、すなわち八十岡 翔太や行弘 賢、覚前 輝也、市川 ユウキ、山本 賢太郎をはじめとした調整チームの1人だ。この大会のための準備もともに行っていたし、そうでなくとも原根と行弘は気心の知れた友人同士である。昨日の友は今日の敵、ではないが、さっきまでチームメイトだった2人は、今や打ち倒すべき好敵手となったわけだ。
一緒にデッキを調整し、練習し、笑い合い泣き合った……かどうかは分からないが、そうして交流を深めてきた相手と、こうして決勝の舞台で相見えるというのは、さぞや感慨深いに違いない。一体、どんな話をしているのだろうか。その会話に耳を傾けてみると――
原根「勝ったほうがおごりで」
行弘「みんなに気前よくね。寿司、フカヒレ……」
そう、飯の話である。
互いのデッキについては、すでにサイドプランまで知り尽くしているため、今さらリストをじっと見てどうこう言い合うということもない。とすればご飯の話、そしてそのご飯の財布は誰持ちになるのかを話し合うのは、チームメイトとしてごく当然のことだ。
と、そんなふうに冗談を言って笑い合うのが、彼らのスタイルなのだ。互いの強さを知っていて、互いの存在をリスペクトし合っているから。だから、余計な気遣いや気負いは不要だ。
ベストを尽くそう? そんなことをわざわざ言うのはダサいよね。相手のことをよく知っているから、あえて口にする言葉ではない。
そういう2人の戦いを、過剰に演出するのも野暮というものだ。
この決勝は、限りなく透明に近い。
行弘 賢(東京) vs. 原根 健太(東京) |
それぞれの使用デッキ
行弘「ランドないのでマリガンしまーす」
元気にそう宣言して、行弘が手札をライブラリーに戻す。
行弘のデッキは、今大会でも異色を放っていた「タカオーラ」だ。調整メンバーの1人である高尾 翔太が構築したためにこの名で呼ばれているこのデッキは、白黒の2色で組まれた、その名の通りオーラを多用するデッキである。
6 《平地》 1 《沼》 4 《神無き祭殿》 4 《秘密の中庭》 4 《コイロスの洞窟》 1 《マナの合流点》 -土地(20)- 4 《命の恵みのアルセイド》 4 《憎しみの幻霊》 2 《恩寵の重装歩兵》 4 《上級建設官、スラム》 3 《騒音のアフィミア》 -クリーチャー(17)- |
4 《ケイラメトラの恩恵》 4 《結束のカルトーシュ》 4 《天上の鎧》 4 《歩哨の目》 3 《グリフの加護》 4 《きらきらするすべて》 -呪文(23)- |
3 《浄光の使徒》 3 《脳蛆》 2 《死の重み》 2 《思考囲い》 1 《墓掘りの檻》 2 《不可解な終焉》 2 《試練に臨むギデオン》 -サイドボード(15)- |
無論、そうしたオーラを利用する戦略には弱点がある。それは除去呪文に弱すぎるということだ。単純に、オーラを1枚貼ったクリーチャーが除去されてしまったらカード2枚分の損失となる。マジックを覚えたばかりの頃に、オーラというカードを通じてカードアドバンテージの概念を学んだ人も少なくはないのではないだろうか? 「オーラはアドバンテージを失うもの」という認識は、そのくらい普遍的な概念だ。事実として、モダンの「呪禁オーラ」のようにオーラの持つ弱点を何らかの形で克服できるデッキでない限り、オーラを多用する戦略が構築で実績を残すことはほとんどなかった。
行弘のデッキでは、そうした戦略上の弱点を補うためのカードとして《上級建設官、スラム》と、『テーロス還魂記』の新カードである《憎しみの幻霊》が採用されている他、除去そのものをかわす手段として《命の恵みのアルセイド》と《ケイラメトラの恩恵》も入っている。
また、そうした特殊な戦略をテンポよく実現するために、行弘のデッキのメインデッキはすべて1マナ~2マナのカードで構成されているのも特徴的だ。当然、土地の枚数もかなり絞っており、その代償として、ノーランドマリガンを余儀なくされることもあるというだろう。とはいえ1マリガン後の手札は納得のいく内容だったようで、素早くキープしていた。
行弘とは対象的に、原根はじっと熟考しながら7枚の手札をキープする。原根のデッキは「白青スピリット」だ。
2 《平地》 2 《島》 4 《神聖なる泉》 4 《氷河の城砦》 4 《寺院の庭》 4 《繁殖池》 4 《植物の聖域》 -土地(24)- 4 《霊廟の放浪者》 2 《幽体の船乗り》 4 《鎖鳴らし》 4 《無私の霊魂》 4 《至高の幻影》 4 《天穹の鷲》 4 《ネベルガストの伝令》 4 《呪文捕らえ》 2 《厚かましい借り手》 -クリーチャー(32)- |
4 《集合した中隊》
-呪文(4)- |
2 《蔓延するもの》 4 《拘留代理人》 1 《大天使アヴァシン》 2 《安らかなる眠り》 1 《軽蔑的な一撃》 4 《神秘の論争》 1 《残骸の漂着》 -サイドボード(15)- |
スタンダードやモダンでも活躍していたこのデッキは、その名の通り「スピリット/Spirit」クリーチャーを多く利用する飛行ウィニーデッキである。人によっては緑をタッチして《集合した中隊》を採っていることもあり、原根もその形のリストを使用している1人だ。よって厳密には「白青スピリット」ではなく「バント(白青タッチ緑)スピリット」ということになるだろう。
今大会では決してシェア率が高かったというわけではないものの、スピリット・デッキを選択したプレイヤーのうちの半分が2日目に進出しているという事実を鑑みるに、今回のプレイヤーズツアーではなかなか悪くない選択肢だったのかもしれない。
《呪文捕らえ》や《厚かましい借り手》など対戦相手に干渉する手段を持ちながら《至高の幻影》と《天穹の鷲》の2種類の「ロード」を擁するこのデッキは、攻守のバランスの良さが売りで、《集合した中隊》による爆発力も備えている。
噛み合っていなす。並べて押し切る。原根がこのどちらかを満たすゲーム展開を実現できるのかどうかが、このマッチの最大の争点となるだろう。
ゲーム1:魔法にかけられて
第1ターンに《恩寵の重装歩兵》をプレイすると、続くターンに《天上の鎧》、第3ターンに《歩哨の目》と、好調な滑り出しを見せる行弘。原根のライフは、わずか3ターンの間に9点も削られることとなった。
原根は《至高の幻影》をプレイし、行弘がプレイした2枚目の《歩哨の目》を《呪文捕らえ》で追放するが、どうしても後手後手に回ってしまっている感は否めない。
《歩哨の目》は追放されたが、《恩寵の重装歩兵》の「英雄的」能力は解決され、クリーチャーサイズは圧倒的だ。これをレッドゾーンに送り込むと、いよいよ原根のライフは土俵際まで追い詰められることとなる。
行弘に遅れを取りながらも、原根も《天穹の鷲》をプレイしつつ《至高の幻影》と《呪文捕らえ》の2体で攻撃を仕掛ける。とはいえ行弘にとってはこれが初ダメージ。ライフはまだ14も残されており、あまりにも遠い。しかも次のターンには、行弘の攻撃を《天穹の鷲》で止めなくてはならない。「ロード」クリーチャーをチャンプブロッカーに回すというのは、原根にとって望ましい展開とは言えない。
ギリギリのところで耐えている原根に、行弘は冷静に攻撃を仕掛け、さらに2枚目の土地を置いて《上級建設官、スラム》。
行弘が2体目のクリーチャーを出したことで、チャンプブロックで稼げるターンのカウントも確実に減る。原根にとって幸いなのは、飛行クロックは止まっていないということだけ。苦しい状況であっても攻撃を仕掛けないことには自身の勝ちの目を残すこともできないため、原根は《至高の幻影》のみで攻撃をし、行弘のライフを11まで削る。
返す行弘は《上級建設官、スラム》に《歩哨の目》と《グリフの加護》の2枚をプレイする。これで《上級建設官、スラム》のパワーも4。原根は《上級建設官、スラム》と《恩寵の重装歩兵》の両方をチャンプブロックしなければならない。
原根はその筋書き通り、《鎖鳴らし》をプレイして行弘の2体のクリーチャーの攻撃を止めるのだが、これによってロードもいなくなり、手札も尽きて、勝利は一気に遠のく。
力なくライブラリートップに手をかけ、引いたカードがこの状況を打破するには及ばないものであったことを確認すると、第2ゲームに望みを託して盤面のカードを片付け始めた。
圧倒的なサイズのクリーチャーを驚異的なスピードで生み出す「タカオーラ」の真骨頂。行弘が、優勝に王手をかけた。
行弘 1-0 原根
第1ゲームのシビアな展開に苦々しい表情を浮かべることも多かった原根だが、サイドボード中には再び和やかな雰囲気が戻ってくる。
特に、互いにカードを入れ替え終え、デッキをシャッフルし始めた瞬間の一幕では――
行弘「あ、やっべえ大事なカード入れ忘れたw」
と、行弘が慌ててサイドボードから1枚カードをライブラリーに加える。それを見た原根も、「いいよ忘れててwどうせ1枚でしょ、引かん引かんw」と行弘にジョークを飛ばす。
原根「これで刺さって負けたらキレそうw」
笑いを交えつつ、しかしベストなゲームを目指して会話を交わす。マジックの原体験、「楽しい」という気持ちを、彼らは忘れることはない。
どうせ優勝するなら、楽しみながら優勝しよう。
ゲーム2:月は東に日は西に
原根が第1ターンにプレイしたのは《蔓延するもの》。
筆者もこのとき初めて知ったのだが、実はこのクリーチャーもスピリットだ。飛行がないため《天穹の鷲》の恩恵を受けることはできないが、《至高の幻影》による修整を受けることはできる。
対する行弘は第1ターンに《思考囲い》。原根の手札には上述した《至高の幻影》の姿もあったが、それ以上に厄介な1枚、《ネベルガストの伝令》を捨てさせる。
何しろ、行弘のデッキは1~2体のクリーチャーにオーラを貼って一点突破を目指すデッキだ。タッパーである《ネベルガストの伝令》はそんな一点突破を阻害し得るカードであり、厄介この上ない。そうでなくとも原根はすでにクロックを展開しており、すれ違いのダメージレースになることが予想されるのだから、自身の勝ち筋を残すためには、《至高の幻影》以上にプレイされたくないカードと言えるだろう。
原根は第2ターンを開始すると、当然のごとく《至高の幻影》をプレイ。+1/+1の修整を受けた《蔓延するもの》が、行弘のライフを削り始める。対する行弘は《上級建設官、スラム》。先手後手の差がダメージレースのスピード感に直結する中ではあるが、行弘も勝利に向けて動き出した。
原根の攻撃にライフを失いながらも、行弘は《上級建設官、スラム》に《グリフの加護》をプレイしようとする。が、これには原根の《呪文捕らえ》が刺さる。原根としては、せっかく飛行クロックが止まらない盤面なのに、《上級建設官、スラム》が飛び始めてしまっては困る。
ならばと行弘は《上級建設官、スラム》に《結束のカルトーシュ》を貼りながら《命の恵みのアルセイド》を並べ、3/3の《上級建設官、スラム》を横向きに……
行弘「……! 危ない危ないw」
原根の盤面には、さきほど《グリフの加護》を追放した《呪文捕らえ》がアンタップ状態で居座っている。印刷されているサイズは2/3だが、《至高の幻影》がいる今、《呪文捕らえ》のサイズは3/4。いかに《上級建設官、スラム》が《結束のカルトーシュ》によって先制攻撃を得ていても、サイズの差は如何ともし難い。
原根「これ3/4。緊張してんのか~?」
行弘「エンドw!」
行弘のミスプレイ未遂を見逃さず、原根はすかさず煽る。勝負のさなかにも、コミュニケーションを通してゲームを楽しもうという姿勢は、両者に共通しているようだった。
しかし、依然行弘にとってはヘビーな展開だ。原根のスピリットたちにタコ殴りにされ、ライフは7。そろそろ反撃したいところだが……
行弘の手札には《きらきらするすべて》! これにより、《結束のカルトーシュ》から出てきた戦士・トークンをきらきらさせたところで、さらに《グリフの加護》。
原根はこれが解決する前に《集合した中隊》で応じ、ライブラリートップから2枚の《拘留代理人》を戦場に並べる。あまりに強烈なクリーチャーが集合したことで、行弘も思わず表情を硬くしていた。
対象はトークンと《上級建設官、スラム》。トークンは《命の恵みのアルセイド》が守るが、アドバンテージ源である《上級建設官、スラム》は失われてしまう。いよいよゲームは佳境。行弘が次のターンを迎えられるかどうかは、原根に委ねられていた。
原根「さすがに何かあるでしょ」
ターンを受けた原根は、そう呟きながらメインフェイズに《集合した中隊》をプレイ。何かは……
あった。これによって《天穹の鷲》がめくれ、行弘はその姿を認めるやいなやや「3本目、3本目!」とカードを畳んで次のゲームに望みを託した。
行弘 1-1 原根
ゲーム3:面白うてやがて悲しき鵜舟哉
第1ゲーム同様、先攻を得た行弘。さきほどの第2ゲームでは先手後手の差がはっきりと出てしまったため、今度こそ挽回したいところだ。
まずは第1ターンに《命の恵みのアルセイド》を送り出し、2ターン目には《天上の鎧》と《歩哨の目》を貼って攻撃を仕掛ける。
行弘「5点」
原根「はい」
2ターン目の5点クロックという、《野生のナカティル》が可愛く見えてくるほどの強打を受けて、しかし原根はまったく動じることはない。
返す原根は《厚かましい借り手》を出来事としてプレイ。これによって行弘の《命の恵みのアルセイド》は手札へと戻され、虎の子の《天上の鎧》と《歩哨の目》は墓地へと落ちてしまった。
行弘は気を取り直して《命の恵みのアルセイド》を出し直し、《結束のカルトーシュ》2枚を貼り付けるが、先のクロックと比べるとやはり見劣りする感は否めない。
まずは急場を凌いだ原根は、落ち着いて《天穹の鷲》をプレイ。返す行弘は2枚目の《結束のカルトーシュ》を《命の恵みのアルセイド》につけて、再び原根のライフを詰め始める。原根のライフが12まで減るのと同時に、絆魂によって行弘のライフは28まで回復していた。
だが、原根は4枚目の土地をセットして悠然と《天穹の鷲》でクロックを刻む。まだ慌てるほどライフを失ってはいないし、《命の恵みのアルセイド》のサイズも小さい。何より、4マナまで伸びたことで《集合した中隊》を唱えられるようになった。
ターンが返ってきた行弘はコンバット宣言を行おうとするが、このタイミングで原根は《集合した中隊》。出てきたのは《拘留代理人》と《呪文捕らえ》の2枚。
《拘留代理人》の対象はもちろん《命の恵みのアルセイド》を指定。しかし、行弘も《集合した中隊》からの《拘留代理人》は読めていたと、《ケイラメトラの恩恵》で応じて攻撃を続行する。
原根のライフは7まで減っていたが、問題はここから先だ。黒マナが出ない行弘は手札のカードを活用することができず、原根に攻撃を通し続けるためのタネも物足りない。やむなしと墓地にある《歩哨の目》を「脱出」して攻撃宣言を行おうとするのだが、原根は《命の恵みのアルセイド》を《ネベルガストの伝令》でタップし、いよいよ反撃の狼煙を上げる。
原根の盤面は《天穹の鷲》と《呪文捕らえ》、《拘留代理人》、《ネベルガストの伝令》という状況。これまで地道に絆魂でライフを回復し続けてきた行弘だったが、この飛行軍団の猛攻を耐えるのは苦しい。まして《ネベルガストの伝令》がいる今、すれ違いのダメージレースさえ許されそうにないのだ。
行弘は祈るような気持ちで《きらきらするすべて》をプレイ。原根はじっくりと《きらきらするすべて》の修整値(+5/+5)を確認し、その解決を許す。その後、コンバットの宣言を行おうとしたところで、原根は《鎖鳴らし》を瞬速で唱える。
《ネベルガストの伝令》が行弘の《命の恵みのアルセイド》をタップし、続いて《鎖鳴らし》の能力によって瞬速を得た《無私の霊魂》が《きらきらするすべて》のついたトークンをタップすると、行弘の攻撃は完封され、返すターンの攻撃でライフを詰め切られてしまうのだった。
行弘 1-2 原根
Ep:The Collected Company
行弘は原根に右手を差し出し、固く握手をかわす。
開始前やゲーム中に軽口を叩きあっていた2人も、この瞬間ばかりは何も言うことはない。
握手の時間はわずかだったが、それは勝利を噛みしめる者と、それを讃える者による、決して笑い飛ばしてはいけない神聖な儀式だった。
やがて手を解くと……
行弘「あ~~~しんどかった~~~~!! もう一生《沼》引かんww」
行弘はいつも通りの行弘に戻った。対して、原根は表情をあまり崩さない。喜んでいないというわけではないだろうが、むしろその表情は安堵に近い表情だったように思える。
原根は、トップ8プロフィールの中でこのようなやりとりをしている。
Q. プレイヤーズツアーファイナルに出場できることはあなたにとってどのような意味を持ちますか?
A. 最高のチームメイトと再び目的を共にできることを嬉しく思う
彼にとって、最高の舞台、最高の相手と戦うということは、すなわち最高のチームメイトとともに在るということなのだ。
マジックは1人だけで遊ぶことはできない。自分の目の前か、あるいは画面の向こうか。いずれにせよ、必ず対戦相手がいる。そして、勝利の喜び、敗北の悔しさ、勝つための準備を共有できる仲間がいる。
そんな仲間と、この決勝の舞台で戦えたこと。そしてこれからも一緒に戦えること。その事実こそが、原根にとってかけがえのないものなのだ。
だから喜ぶのはこの後。
大切な仲間たちに気前よく、寿司なり、フカヒレなりを振る舞っているときでいい。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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