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プロツアー『機械兵団の進軍』

戦略記事

プロツアー・機械兵団の進軍 メタゲームブレイクダウン

Frank Karsten

2023年5月5日

 

 プロツアーが帰ってきた!5月5~7日に「MagicCon: Minneapolis」において開催されるプロツアー・機械兵団の進軍では252名の世界最高のマジック:ザ・ギャザリングのプレイヤーが、総額500,000ドルの賞金と、世界選手権への出場権、そして名誉あるトロフィーを懸けて戦うことになる。ほとんどの参加者が地域チャンピオンシップでの成績により参加権利を獲得した一方で、マジックの殿堂顕彰者、オンラインのトッププレイヤーたち、そして最も勢いのあるプレイヤーも参加している。すなわち、現世界王者のネイサン・ストイアもだ。プロツアーはまさに世界レベルのテーブルトップの競技マジックの最高峰なのだ。

 フォーマットは『機械兵団の進軍』ブースタードラフトが金曜日と土曜日の午前中に行われ、その後スタンダード5回戦が各日行われる。スタンダードは日曜日に行われるトップ8のフォーマットでもある。すべての戦いは、金曜日と土曜日は現地時間午前11時 (日本では翌日午前1時) 、日曜日は現地時間午前9時(日本では午後11時)に始まるtwitch.tv/magicで観戦することができる。より詳細な情報はこちらからご覧いただける。 (訳注:日本では公式TwitchおよびYouTubeチャンネルにて配信いたします。詳細はこちら

スタンダード  メタゲームブレイクダウン

 スタンダードは毎秋ローテーションが行われる60枚のカードによるフォーマットだ。現在使用可能な拡張セットは『イニストラード:真夜中の狩り』以降のものとなっている。スタンダードではミッドレンジデッキが環境を席巻することが非常に多く、今回もその例に漏れない。だが、『機械兵団の進軍』で新たに加わったカードが環境に大きな変化をもたらしている。本プロツアーにおけるメタゲームブレイクダウンは以下の通りだ。

アーキタイプ 使用者数 使用率
1. ラクドス・ミッドレンジ 47 18.70%
2. グリクシス・ミッドレンジ 39 15.50%
3. エスパー・レジェンズ 30 11.90%
4. ラクドス・リアニメイト 23 9.10%
5. グリクシス・リアニメイト 18 7.10%
6. 版図コントロール 12 4.80%
7. 白単ミッドレンジ 9 3.60%
8. 5色ランプ 9 3.60%
9. ジェスカイ・コントロール 8 3.20%
10. ラクドス・ブリーチ 7 2.80%
11. 赤単アグロ 6 2.40%
12. グリクシス・シンギュラリティ 6 2.40%
13. アゾリウス兵士 5 2.00%
14. アゾリウス ・コントロール 4 1.60%
15. グリクシス培養 3 1.20%
16. 青単テンポ 3 1.20%
17. セレズニア毒性 3 1.20%
18. マルドゥ・リアニメイト 3 1.20%
19. 4色レジェンズ 2 0.80%
20. セレズニア・エンチャント 2 0.80%
21. オルゾフ毒性 1 0.40%
22. アブザン・レジェンズ 1 0.40%
23. ラクドス・アグロ 1 0.40%
24. オルゾフ・ファイレクシアン 1 0.40%
25. オルゾフ・ミッドレンジ 1 0.40%
26. ディミーア・ミッドレンジ 1 0.40%
27. 黒単ミッドレンジ 1 0.40%
28. セレズニア・カウンター 1 0.40%
29. アブザン毒性 1 0.40%
30. ボロス ・ミッドレンジ 1 0.40%
31. ナヤ・カウンター 1 0.40%
32. ラタブレード・コンボ 1 0.40%
33. ディミーア毒性 1 0.40%

 メタゲームを彩るのはアグロ、ミッドレンジ、コントロール、ランプ、コンボそして多くの刺激的なデッキなど数十種類ものデッキだ。本トーナメントにおけるすべてのスタンダード構築のデッキリストは、プロツアー・機械兵団の進軍イベントページ内で5月5日の第4回戦開始時(現地時間午後3時頃)に公開予定だ。

 メタゲームは先週の「Standard primer」で取り上げた地域チャンピオンシップと多くの類似点があるが、変化がないということではない。では、プロツアー・機械兵団の進軍での5つの重要な収穫、進化、サプライズを見ていこう。

 

 黒赤ベースのデッキによる支配:全デッキのメインデッキで最も使用された土地でないカードは《鏡割りの寓話》《喉首狙い》そして《税血の収穫者》であり、これらのカードは「ラクドス・ミッドレンジ」「グリクシス・ミッドレンジ」「ラクドス・リアニメイト」「グリクシス・リアニメイト」「ラクドス・ブリーチ」「グリクシス・シンギュラリティ」「グリクシス培養」そして「マルドゥ・リアニメイト」に満場一致で採用されている。全メインデッキにおいて次点で多く使用されたカードは《勢団の銀行破り》《黙示録、シェオルドレッド》そして《切り崩し》であり、これらもまた同様のことを物語っている。つまり黒赤軸のデッキは依然としてスタンダードにおいて傑出しており、参加者の半分以上が使用しているのだ。純粋な効率とカードの質という点では、シンプルに環境内で最高のものだ。

 本プロツアーでは《税血の収穫者》と《鏡割りの寓話》からスタートする試合が多くなることが予想される。

 

 新たなフィニッシュ手段の登場:多数のデッキが同様黒赤軸のカードを使用しているが、中盤~後半にかけてのアプローチのバリエーションは多彩なものがあり、『機械兵団の進軍』は選択可能なオプションを増加させた。《絶望招来》や《ギックスの残虐》だけではない。例えば、斬新な「ラクドス・ブリーチ」デッキはマナ加速し《希望の標、チャンドラ》《多元宇宙の突破》や《原初の征服者、エターリ》といった刺激的なフィニッシュ手段へと至ることができる。さらに言えば、《アモンケットへの侵攻》のような新たなリアニメイトに使えるカードが新登場したことで、新たな角度からの攻撃が可能になり、ほとんどのリアニメイトデッキのリストは《原初の征服者、エターリ》と《偉大なる統一者、アトラクサ》を散らして採用し、より多くの選択肢を持つことができている。マッチアップによっては例えば《多元宇宙の突破》が《原初の征服者、エターリ》と《偉大なる統一者、アトラクサ》の両方を引き当て、一見すると対戦相手を圧倒する……が、その直後のアンタップ後に《希望の標、チャンドラ》と《夜を照らす》のコンボがバーンのようなフィニッシュを決めゲームを掌握するといった不条理なプレイが見られるかもしれない。これこそが、プロツアーが私たちのために用意してくれているかもしれない素晴らしいマジックの姿だ。

 

 新コンボの出現:『機械兵団の進軍』は、グリクシスカラーのデッキに強力な新コンボを組み込むことを可能にした。もっともわかりやすいのは私が「グリクシス・シンギュラリティ」と呼んでいるアーキタイプだ。6名のプレイヤーが望んでいるのは、《碑出告と開璃》を唱え、何らかの手段でそれを死亡させた後、デッキトップから《爆発的特異性》を公開することだ。「グリクシス・シンギュラリティ」デッキのリストの中にはこの代名詞的なバーン呪文を1枚しか採用していないものもあるが、1枚あれば十分であり、このコンボを過小評価するべきではない。もうひとつの新コンボはいわゆる「グリクシス培養」と呼ばれるデッキに見られるものであり、《金属の徒党の種子鮫》と《肉体の裏切者、テゼレット》のコンボだ。《肉体の裏切者、テゼレット》により培養器は自由に変身することができるようになり、彼の[-2]能力はそれらを巨大の脅威へと変える(+1/+1カウンターが基本のパワー/タフネスに加算されるからね)。このコンボは即座にゲームに勝つことはできないだろうが、4ターン目に8/8が無料で出てくるというのは悪いスタートではないし、ゲームの中終盤におけるアプローチの多様性を高めてくれる。

 

 「エスパー・レジェンズ」と「白単ミッドレンジ」の衰勢:「エスパー・レジェンズ」は地域チャンピオンシップにおいて優れた勝率を残したデッキのひとつだ。サイクル全体を通してその人気はうなぎ上りであり、『機械兵団の進軍』で《侵攻の伝令、ローナ》まで手に入れた。しかしながら、本プロツアーのメタゲームにおいてはたった11.9%の使用率だ。さらに驚くべきことに、「白単ミッドレンジ」は地域チャンピオンシップを何度も優勝し、全体を通じて最も人気を集めたアーキタイプのひとつだが、今週末のメタゲームではわずか3.6%の使用率なのだ。この進展の原因は『機械兵団の進軍』の新カードたちだろう。《石術の連射》は赤マナひとつで《策謀の予見者、ラフィーン》を死亡させることができる。新セット全体のカードの中でもっともプレイされたカードであり、その存在によって「エスパー・レジェンズ」は弱体化した。一方、「白単ミッドレンジ」はラクドスやグリクシスが使用できるようになった強硬手段用の6~7マナの新カードに苦戦している。白のデッキにはそれらへの回答となる手札破壊呪文やカウンター呪文がなく、多くのプレイヤーが船から降りることになったのだ。

 

 「5色ランプ」の魅力:私の新しいお気に入りデッキは《装飾庭園を踏み歩くもの》と《ゼンディカーへの侵攻》のシナジーを活用した「5色ランプ」だ。4ターン目の《ゼンディカーへの侵攻》により3ターン目に出しておいた《装飾庭園を踏み歩くもの》がすぐに攻撃へ向かうことができ、即座に戦いを終わらせることができるだろう。このマナカーブを使えば、5ターン目に9マナへアクセスすることができる。その時点で、世界は思いのままだ。《力線の束縛》を構えた状態での《偉大なる統一者、アトラクサ》はどうだい?この美酒は「版図コントロール」と似た展開になるが、強力なマナ加速要素によってキーとなる呪文を前倒して唱えることができる。「5色ランプ」を登録したのは9名のプレイヤーだ。

『機械兵団の進軍』の使用カードランキング

『機械兵団の進軍』はデッキ登録期限のおおよそ2週間前に発売され、スタンダードに相当な衝撃を与えた。以下の表はプロツアー・機械兵団の進軍でスタンダードに新登場した全カードのリストである。

カード名 総使用枚数 メインデッキ使用枚数 サイドボード使用枚数
石術の連射 364 0 364
希望の標、チャンドラ 146 125 21
原初の征服者、エターリ 112 98 14
救済の波濤 102 2 100
ぎらつく氾濫 92 0 92
侵攻の伝令、ローナ 71 71 0
多元宇宙の突破 70 19 51
太陽降下 65 48 17
金属の徒党の種子鮫 61 51 10
フェアリーの黒幕 40 21 19
ゼンディカーへの侵攻 36 36 0
碑出告と開璃 31 31 0
ゴバカーンへの侵攻 28 14 14
ナヒリの戦争術 27 24 3
アモンケットへの侵攻 26 25 1
光素を漁る者 17 5 12
シェオルドレッド 13 9 4
アラーラへの侵攻 12 12 0
二重視 12 4 8
ヴォルダーレンの興奮探し 11 11 0
イーオスの遍歴の騎士 10 10 0
大天使エルズペス 9 3 6
植物の喧嘩屋 8 8 0
忍耐の繋守り 8 8 0
打ち砕かれた尖塔、オゾリス 8 8 0
雪花石の徒党の仲裁者 8 8 0
サリアとギトラグの怪物 7 7 0
生体融合の解体者 7 7 0
ギラプールの守護者 6 6 0
クロクサとクノロス 6 6 0
過去と未来の剣 6 3 3
新ファイレクシアへの侵攻 5 5 0
加護をもたらす戦乙女 5 0 5
血羽根のフェニックス 4 4 0
決定的瞬間 4 4 0
猛り狂う猛竜 4 4 0
レガーサへの侵攻 4 4 0
イニストラードへの侵攻 4 4 0
ふくれた昇華者 4 4 0
太祖の総督 4 4 0
ドゥームスカールの戦士 4 4 0
方程式の改変 4 4 0
世渡り上手の交渉人 4 4 0
タルキールへの侵攻 4 4 0
エルズペスの強打 4 0 4
呪文槍のケンラ 3 3 0
ズルゴとオジュタイ 3 3 0
エリシュ・ノーン 3 3 0
火山の悪意 3 3 0
薄暮軍団の決闘者 3 3 0
本質の同化 3 3 0
カーサスへの侵攻 3 1 2
エファラの分散 3 0 3
全軍突撃 2 2 0
レンの決意 2 2 0
侵略樹、次元壊し 2 1 1
存在の封印 2 0 2
セゴビアへの侵攻 1 1 0
ウラブラスク 1 1 0
ファイレクシアの検閲官 1 0 1
割込み 1 0 1

 最も重要な新規追加カードは、色対策カードだ。サイドボードのみとはいえ、《石術の連射》は新セットの中で使用されたカードとしては断トツの枚数だ。その力の源は《策謀の予見者、ラフィーン》や《輝かしい聖戦士、エーデリン》といったカードに対するマナ効率の高い解答策であることだ。このカードは打ち消されないため、《策謀の予見者、ラフィーン》を対象に取った時に「護法」コストを支払う必要すらないのだ。したがって、《石術の連射》は「エスパー・レジェンズ」を食い止める役割を一手に担っているのかもしれない。他に重用されている色対策カードは《ぎらつく氾濫》だ。「アゾリウス兵士」や「セレズニア毒性」といったデッキに対して一方的に盤面を一掃できる可能性を秘めえており、そのせいでそういったデッキの人気がおちている。一方、《救済の波濤》は《切り崩し》や《兄弟仲の終焉》といったカード、さらには《絶望招来》までも無効化することができ、ほとんどすべての白系デッキで定番となっている。

 メインデッキの新カードとしては《希望の標、チャンドラ》と《原初の征服者、エターリ》がブレイクした。ゲーム後半の新しい可能性をもたらしてくれた。《希望の標、チャンドラ》は6ターン目に降り立ち2体のクリーチャーを死亡させ、戦場を安定させてくれ、その後自分のアンタップを迎えれば強力なインスタントやソーサリー呪文をコピーし、ゲームの趨勢を確固たるものにしてくれる。《原初の征服者、エターリ》は13マナ相当の呪文を唱えたり、毒ダメージでゲームに勝利したり、完全にぶっ飛んだ動きで思い出に残るカバレージの瞬間を作ることだろう。ビンゴシートを用意しておこう。

 『機械兵団の進軍』ではまったく新たなカード・タイプも導入された。「バトル」はそれなりにプレイされている。例えば、《ゼンディカーへの侵攻》は新しい「5色ランプ」の中心的存在だ。さらに、《ゴバカーンへの侵攻》は様々なデッキに居場所を見つけており、「ナヤ・カウンター」や「セレズニア・カウンター」はこのバトル・カードの第2面と《植物の喧嘩屋》のシナジーを活用できる。さらには、《アラーラへの侵攻》が話題となっており、プレイヤーたちは《墓所の冒涜者》でこれを倒そうとするだろう。最後に、《アモンケットへの侵攻》は本大会で必ずその力を見せつけることだろう。《ラゾテプの改宗者》に変身した際には、《原初の征服者、エターリ》か《偉大なる統一者、アトラクサ》のコピーとして戦場に出て(これは対象を取らないので《敬虔な新米、デニック》も許してくれる)、「戦場に出た時」の強力な誘発型能力の恩恵を受けることができる。この変身した時の能力を考えると、《アモンケットへの侵攻》は事実上対戦相手のライフを4にすることと等しく、3マナのカードとしては驚くべき取引だといえる。

 これらの目玉カード以外にも、『機械兵団の進軍』は様々なデッキに新しいツールを大量に追加した。例えば、《侵攻の伝令、ローナ》は「エスパー・レジェンズ」を大きく後押しし、《太陽降下》は「ジェスカイ・コントロール」を人気の選択肢へと押し上げ、元世界チャンピオンの高橋優太は《フェアリーの黒幕》が「エスパー・レジェンズ」「アゾリウス兵士」「青単テンポ」、そしてその他のデッキで相当数プレイされているのを見て満足することだろう。

 どんなカードが、どんな戦略が頂点に立つことになるのか。そして一体だれが競技マジックの歴史に名を刻むのか。見届けたい方は生放送をお見逃しなく。中継は5月5日金曜日にtwitch.tv/magicにて開始予定! (訳注:日本の放送情報詳細はこちら

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