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プロツアー『モダンホライゾン3』

観戦記事

プロツアー『モダンホライゾン3』2日目の注目の出来事

Corbin Hosler

2024年6月29日

 

 ナドゥか、ナドゥでないか?

 「プロツアー『モダンホライゾン3』」の舞台となるアムステルダムに集った250人に迫るプレイヤーたちはみな、この大きな問題を意識していた。その鳥は間違いなく話題をさらっており、それを使うか、それとも対抗するかと誰もが計画を立ててきた。

 大会初日を終えたときに、《有翼の叡智、ナドゥ》がそれだけの注目を集めるに値することが明らかになった。「バント・ナドゥ」を握ったジェイコブ・ナグロ/Jacob Nagroが全勝を果たし、一方で同じく期待されていた「ルビー・ストーム」は苦戦し、そのストームよりも多くの呪文を1ターン中に唱えられるこのバントの傑作を他のどのデッキも打ち破ることはできなかった。

 だがトップ8入賞一番乗りを決めたのは、「ナドゥ」デッキではなかった。その栄誉に浴したのは、マ・ノア/Ma Noahが操る「黒単ネクロ」だったのだ。マのモダン構築ラウンドの走りぶりは圧倒的で、『モダンホライゾン3』ドラフトの切れ味も鋭かった。ドラフト・ラウンド5勝1敗に加えてのモダン7戦全勝で、早々にトップ8の舞台へ上がっていったのだ。

@manoah_mtg選手が#PTMH3トップ8一番乗り! おめでとうございます!

 とはいえ「ナドゥ」も引き離されておらず、すぐに後を続いた。「ナドゥ」でいち早く最終日へ進出したのは、イーライ・カシス/Eli Kassis。第13回戦で勝利した彼は、モダン構築ラウンドでパーフェクト・レコードを達成した――今回のトップ8入賞者の紹介に繰り返し出てくる文言だ。今大会を席巻した「ナドゥ」を使うプレイヤーは、最終的に5人がプレイオフへ進出することになったのだった。

日曜の舞台が整う

 マとカシスは、現在のマジックにおけるビッグネームたちと日曜の舞台に上がることになった。いずれもモダンの腕前で勝ち上がってきた者たちだった。

 今回のトップ8は以下の通りだ。

  • マ・ノア(黒単ネクロ)
  • イーライ・カシス(バント・ナドゥ)
  • ジェイソン・イェ/Jason Ye(バント・ナドゥ)
  • ハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguez(ジェスカイ・コントロール)
  • サイモン・ニールセン/Simon Nielsen(バント・ナドゥ)
  • サム・パーディー/Sam Pardee(バント・ナドゥ)
  • セス・マンフィールド/Seth Manfield(黒単ネクロドミナンス)
  • ダニエル・ゴーチェル/Daniel Goetschel(4色ナドゥ)
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 この面々は物語に満ちている。「プロツアー『カルロフ邸殺人事件』」を制した元世界王者のセス・マンフィールドは、2大会ぶり12回目のトップ8入賞。ジェイソン・イェはこの週末を通して上位卓で戦いを続け、2大会連続のトップ8入賞となった。今やチーム「Sanctum of All」を代表するプレイヤーだ。

#PTMH3トップ8入賞3人目は、@JasonILTG選手です。おめでとうございます! 「プロツアー『サンダー・ジャンクション』」で第7位からの、2大会連続トップ8入賞です!

 それから、ドミンゲスとニールセン。元世界王者のドミンゲスは、昨年夏の「プロツアー『指輪物語』」でトップ8に入賞して以降、これまでトップ16以上の成績を残し続けている。プレイヤー・オブ・ザ・イヤーのニールセンは今大会後ろの方から追い上げ、直近6大会中5回トップ8入賞という信じられない偉業を達成した。パーディーもまた、さらなる優勝トロフィーを狙っている。この「『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップ」王者は「プロツアー『カルロフ邸殺人事件』」でもトップ8ラウンドへ進出しており、今シーズン2回目のトップ8入賞となる。

『モダンホライゾン3』のエンジン

 プレイ・ブースターの導入により、リミテッド・フォーマットの人気は高まっている。『モダンホライゾン3』では小型の「改善」されたクリーチャーから世界(盤面)を喰らう巨大なエルドラージまでユニークなドラフト・アーキタイプが揃い、いち早く取り組んだチームが大きな有利を得るようになっている。

 そのため多くのプレイヤーがオランダで1~2週間を過ごし、リミテッドとモダンに取り組んだ。このセットの大きな特徴とは何なのか?

「このセットは『エンジン』のセットだと僕たちは呼んでいますよ。ゲームの終盤に強力な動きができるデッキを組みたいところです」と語るのは、ベントン・マドセン/Benton Madsenだ。「これが本当に重要で、中盤に先行していても、取り返されて後半に押し込まれるパターンがたくさんあるんです。だからゲームの終盤に機能するエンジンを組み上げたいんです」

 可能性あるパックを渡して解説をお願いすると、マドセンは《存在を盗むもの》のような一見優れたレアながらも構築がゲーム終盤に向かわないレアを低く評価した。マドセンいわく、彼のチーム(「Worldly Counsel」)は《繁殖者のドローン》のようなシナジーに満ちたカードを序盤にたっぷりピックし、《飢餓潮の発生》のようなかなり遅く取るカードと組み合わせて全体のエンジンを組み上げるという戦略を狙っているそうだ。《進化の証人》のような、ゲームの後半にカウンターを移動させるものと組み合わせることで複数回能力を活かせる「順応」持ちのクリーチャーも、ドラフトでは高ポイントになる。強力なカードが何枚も詰まったパックでは、《進化の証人》とカウンターを移動する呪文で《呪われた匪賊》を繰り返し使える可能性もあるとマドセンは指摘する。この環境では、《巣ごもりの地》をピックする可能性もあるのだ。

 

 これは、何十とドラフトを経験した者にしか得られない洞察だ。そしてその知見こそ、他から抜け出し特に優れたドラフト・プレイヤーになる助けになるものなのだろう。

#PTMH3では、3人の選手が6戦全勝を果たしました。@death_snow選手、@SethManfield選手、ロレンツォ・プッチ/Lorenzo Pucci選手、おめでとうございます!

 ドラフトはトップ8への第一歩であり、その一歩はときに重大なものになる。プロツアーは初日と2日目がドラフト・ラウンド3回戦で幕を開け、それはその大会の調子を左右するのだ。マンフィールドはここアムステルダムでドラフト・ラウンドを全勝し、日曜日の舞台へ上がったのだった。

鳥が高く飛ぶ

 

 もちろん、すべてが「ナドゥ」だったわけではない。「ルビー・ストーム」や「ネクロドミナンス」も既存のデッキに切り込み、今大会でも多くのプレイヤーがドローステップを飛ばしたりストーム・カウントを増やしたりしていた。しかし「ルビー・ストーム」は苦戦を強いられた一方で、「ネクロドミナンス」デッキは少なからず活躍し、マ・ノアとセス・マンフィールドをトップ8へ送り込んでいる。

マ・ノア - 「黒単ネクロドミナンス」
プロツアー『モダンホライゾン3』 / モダン(2024年6月28日)[MO] [ARENA]
1 《汚染された三角州
1 《血染めのぬかるみ
1 《大音声の劇場
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
1 《ファイレクシアの塔
1 《湿地の干潟
3 《ロークスワイン城
7 《
1 《新緑の地下墓地
-土地(17)-

3 《マルコフ家のソリン
4 《悲嘆
3 《黙示録、シェオルドレッド
1 《ボガートの獲物さらい
4 《オークの弓使い
2 《ダウスィーの虚空歩き
-クリーチャー(17)-
4 《思考囲い
4 《魂の撃ち込み
2 《不敬者破り
1 《塵へのしがみつき
3 《マラキールの再誕
4 《致命的な一押し
3 《不憫な悲哀の行進
1 《まだ死んでいない
4 《ネクロドミナンス
-呪文(26)-
2 《毒の濁流
3 《氷砕き
1 《集団的蛮行
2 《シェオルドレッドの勅令
3 《外科的摘出
2 《減衰球
2 《真髄の針
-サイドボード(15)-

 

 だが圧倒的だったのは「ナドゥ」だ。初日は最も高い勝率を記録し、大会が進行するにつれて他との差は開くばかりだった。トップ8に5人ものプレイヤーを送り込んだこの大ブレイク中のアーキタイプは、倒すべき相手で間違いないだろう。

#PTMH3
@karsten_frank

イーライ・カシス - 「バント・ナドゥ」
プロツアー『モダンホライゾン3』 / モダン(2024年6月28日)[MO] [ARENA]
1 《ドライアドの東屋
4 《ウルザの物語
4 《吹きさらしの荒野
4 《霧深い雨林
1 《寺院の庭
1 《天上都市、大田原
2 《
1 《草萌ゆる玄関
1 《迷路庭園
1 《神聖なる泉
1 《冠水樹林帯
1 《変容する森林
1 《繁殖池
1 《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ
2 《耐え抜くもの、母聖樹
-土地(26)-

1 《コーの先導
4 《有翼の叡智、ナドゥ
1 《忍耐
2 《根の壁
2 《棘を播く者、逆棘のビル
4 《春心のナントゥーコ
4 《喜ぶハーフリング
1 《貴族の教主
1 《森を護る者
2 《機能不全ダニ
-クリーチャー(22)-
4 《召喚の調べ
2 《召喚士の契約
2 《一つの指輪
4 《手甲
-呪文(12)-
2 《時を解す者、テフェリー
1 《ドラニスの判事
2 《陽光浄化者
1 《荒れ模様のストームドレイク
1 《ブレンタンの炉の世話人
1 《活性の力
1 《四肢切断
2 《夏の帳
2 《減衰球
1 《苛立たしいガラクタ
1 《影槍
-サイドボード(15)-

 

「カイ・ブッディ」プレイヤー・オブ・ザ・イヤー賞

 マジックの伝説であるカイ・ブッディ/Kai Buddeがマジックで成し遂げたことについては、文字通り何十年にもわたって語り継がれてきた。だがそれでも、マジックにとっての、そしてあまたのマジック・プレイヤーにとっての「ジャーマン・ジャガーノート」という存在を表現するには足りないだろう。アムステルダムの地には、ブッディの他にプレイ・ディレクターのウィリアム・ジェンセン/William Jensenを含む殿堂顕彰者が16人集まり、ブッディの名を永遠にプロツアーに刻む発表が行われたのだった。

 

さらなる戦いへ

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 最終日にはいよいよトップ8ラウンドを迎え、8人のプレイヤーがタイトルを狙う! 王者が決まるモダン3回戦を、ぜひTwitch.tv/Magicで最後まで見届けてほしい!

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