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EVENT COVERAGE
プロツアー『タルキール覇王譚』
準決勝:Ari Lax(アメリカ) vs. Thiago Saporito(ブラジル)
Marc Calderaro/ Tr. Chikara AOKI
2014年10月12日
フィーチャーマッチ・エリアにやってきたグランプリ・トロント・チャンピオンのアリ・ラックス/Ari Laxが、ジャッジのリキ・ハヤシ/Riki Hayashiに面白い質問をした。「俺のデッキリストのコピーをもらえませんか? なくしちゃったんです」 ラックスは対戦相手の、Magic Onlineで最も有名かつ恐れられているプレイヤーの一人、ティアゴ・サポリート/Thiago Saporitoを見やって、言う。「あの試合のこともあるから、サイドボーディング中に使いたいんだ」
ラックスは準々決勝で間違えてサイド・インしてしまった、悪名高い《集団の石灰化》のことを言っているのだ。「この大会で初めてサイドインしたんだけど、アクシデントなんだよなぁ」 付け加えて、「一生後悔しそう」
彼は再びサポリートに笑顔を向ける。「2ゲーム目には《集団の石灰化》が入ってないかちゃんと確認しておくよ。そんなことでゲームが決まらないようにね」
ラックスはおしゃべり戦略を取っている。雑談していると気分がいいらしい。彼はゲーム中ずっとおしゃべりしていて、対戦相手も巻き込んでいく。サポリートはその手に乗らないようだ。神聖なるマジック・オンライン・ホールから来たサポリートは石のような静寂を保つ。
ラックスは続けて尋ねる。「もしかしてオンラインのbolov0かい?」
「イエス」 サポリートが初めて言葉を発するが再びだんまり。
「聞いてみただけだよ」
冗談は一方からのみ続くが、サポリートは既に臨戦態勢だ。お互いにとって骨の折れるミラー・マッチだ。カード選択の若干の違いとそれが初手と第1ターンに現れてくることを、サポリートはゲームの前に教えてくれた。
「スイスラウンドで一度当たってるんですよね」 彼は慎重にそれ以上の言及を避けたが、それが何を意味するかは周知の事実だ。(訳注:二人は第13回戦で対戦し、アリ・ラックスが2-1で勝利している)
ラックスが第1ゲームを先手で始めるが、サポリートはそれだけで不利だと感じている。
ゲーム展開
ラックスがマリガン、サポリートがそれに続くと、ラックスは同じ枚数にしてくれたことへのお礼を言って握手を求めた。サポリートは笑顔を浮かべた...わずかな綻びだ。
もう驚くことでもないが、序盤は《包囲サイ》とマナ・サポートに費やされた。お互い2体の《包囲サイ》でライフが上がったり下がったり。サイの赤ちゃんがベビーチェアーでぴょんぴょんしているみたいだ。この流れは《風番いのロック》にジャンプアップする(ぴょんぴょん!戦場が、ね)。
ラックスの戦略はゲーム展開を実況することに変異したようだ。時々、サポリートのプレイを予想したりしている。「鳥トークンに《英雄の破滅》でしょ?」「《風番いのロック》を追放かな?」 ラックスの予言通り《英雄の破滅》と《アブザンの魔除け》を使うサポリート。「ライフは8対17でいい?」 2羽の鳥の攻撃でライフは本当に8対17だ。
お互いのライフ獲得手段は驚異的なもので、特に《真面目な訪問者、ソリン》は次のターンまでライフ獲得を約束してくれる。このレースはライフ・メモの柱1つ分続いた。
「カードを引いて、《疾病の神殿》を出して、一点回復して、《太陽の勇者、エルズペス》を公開だ」 ラックスの実況は露骨に、正確に、激しくなっていく。《包囲サイ》のことも忘れないであげてね。
ビッグ・ターンはサポリートの手札がなくなった後に訪れた。「『暴勇』してる? そのままがいいな」と、からかうラックスは《英雄の導師、アジャニ》を唱える。彼のデッキにはプレインズウォーカーが対戦相手よりも多く入っていて、長期戦に強い。次のターンには《太陽の勇者、エルズペス》を見つけてくる。サポリートの手札に除去は、ない。
+1/+1カウンタ-とトークン、ドローによるアドバンテージはサポリートの手に負えない。実質プレインズウォーカーのような《エレボスの鞭》はあるが、本物には勝てないよね。
ラックス 1 - 0 サポリート
初手の7枚に満足できなかったラックス。ライブラリーに突っ返しながらサポリートに話しかける。「ニヤニヤが見えたよ」 サポリートは壁を崩さないが、壁はたまに剥がれ落ちる。
サポリートは第2ゲームになってもライフ・レースを続ける。2ターン目の《羊毛鬣のライオン》はすぐに怪物化して大きくなり、ラックスのライフを7まで削る。続く《思考囲い》がラックスのデッキに2枚しか入っていない《風番いのロック》を落として道を空ける。
ラックスはすっかり静かになった。サポリートの《クルフィックスの狩猟者》が《対立の終結》をめくると、小さく「OK」とだけ。このゲームでお伝えできるのはそれだけ。
サポリートは3/3呪禁を邪魔する全てを取り除いてラックスをノックアウトできた。決着は最終ゲームへ。
ラックス 1 - 1 サポリート
序盤の2枚の《思考囲い》がラックスを苛む。貧乏揺すりを始め息を吐きデッキケースをいじる。《クルフィックスの狩猟者》と《風番いのロック》が墓地に落とされて、手札に残るのはもう1枚の《風番いのロック》と《太陽の勇者、エルズペス》。サポリートの2枚の狩猟者が黒魔法で落ち込んだライフを取り戻す。
サポリートのライブラリー・トップに3枚目の《思考囲い》が公開されるとラックスは苦笑い。公開された2枚の白いカードを見ながら、サポリートが初めておしゃべり攻撃を開始した。
「悩ましいね」と、ため息をつく。
結局《太陽の勇者、エルズペス》が選ばれる。サポリートには2枚の《クルフィックスの狩猟者》しかいないが、手札には《風番いのロック》が数枚控えている。
しかしここには猶予があった。ラックスが急に元気を取り戻す。《砂塵破》がライブラリー・トップに現れると椅子の上で軽く跳ねて手を打ち鳴らした。《対立の終結》と《英雄の破滅》で徐々にゲーム進行を遅らせていけそうだ。実際そうしていく。
ここから数ターンの間、1対1交換が続く。戦場をコントロールしきれなくなるとラックスがリセットを行う。お互いが、できる時にダメージと擬似アドバンテージを稼ごうとするが、猫が鏡を前足で叩いているように、相手の行動をなぞっていく。
必要な物を探してくれる上に、サポリートの手札を捨てさせていく《リリアナ・ヴェス》のお陰でラックスが優位に立つ。「教示者」された《完全なる終わり》で《エレボスの鞭》が破壊されると、サポリートはガス欠に陥った。一見、最悪の状況ではあったが、トップデッキした《思考囲い》と《対立の終結》で全てをリセットし直す。
お互いの手札が空になり、土地以外のパーマネントもなくなった。ここからはライブラリートップに祈る時間だ。
そしてラックスの打ち鳴らした手の音が当てずっぽうのように会場に響き渡る。ドロー・ステップに《太陽の勇者、エルズペス》を引き当てたのだ。鈍い音を立てて戦場に舞い降りるプレインズウォーカー。サポリートにはもう何も残されていない。トークンが3体。トークンがもう3体。
さぁさぁ、お立ち会い。これがプロツアー準決勝の勝ち方だ。10秒ほども笑いが止まらなかったアリ・ラックスはフィーチャーマッチ・エリアを出て行った。彼は決勝へ駒を進めたのだ。
アリ・ラックスがティアゴ・サポリートを2-1で破り決勝へ!
4 《砂草原の城塞》 4 《疾病の神殿》 4 《吹きさらしの荒野》 3 《森》 2 《コイロスの洞窟》 2 《ラノワールの荒原》 2 《平地》 1 《マナの合流点》 1 《静寂の神殿》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(24)- 2 《エルフの神秘家》 4 《森の女人像》 4 《クルフィックスの狩猟者》 4 《包囲サイ》 2 《風番いのロック》 -クリーチャー(16)- |
4 《思考囲い》 4 《アブザンの魔除け》 3 《英雄の破滅》 2 《真面目な訪問者、ソリン》 2 《完全なる終わり》 2 《英雄の導師、アジャニ》 3 《太陽の勇者、エルズペス》 -呪文(20)- |
3 《胆汁病》 1 《霊気のほころび》 3 《悲哀まみれ》 2 《残忍な切断》 2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》 1 《対立の終結》 1 《リリアナ・ヴェス》 1 《砂塵破》 1 《集団の石灰化》 -サイドボード(15)- |
4 《ラノワールの荒原》 4 《砂草原の城塞》 4 《静寂の神殿》 4 《吹きさらしの荒野》 2 《森》 2 《平地》 1 《マナの合流点》 1 《沼》 1 《疾病の神殿》 1 《豊潤の神殿》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(25)- 4 《羊毛鬣のライオン》 4 《森の女人像》 4 《クルフィックスの狩猟者》 1 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 4 《包囲サイ》 4 《風番いのロック》 -クリーチャー(21)- |
1 《思考囲い》 2 《胆汁病》 4 《英雄の破滅》 3 《アブザンの魔除け》 1 《悲哀まみれ》 2 《真面目な訪問者、ソリン》 1 《エレボスの鞭》 -呪文(14)- |
3 《思考囲い》 1 《消去》 1 《自然に帰れ》 1 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 1 《エレボスの代行者》 1 《完全なる終わり》 4 《対立の終結》 1 《精神染み》 2 《太陽の勇者、エルズペス》 -サイドボード(15)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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