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EVENT COVERAGE
プロツアー『カラデシュ』
準々決勝ステージ1:Ben Hull(カナダ) vs. Lee Shi Tian(香港)
Adam Styborski / Tr. AOKI Chikara
2016年10月16日
ベン・ハル/Ben Hull(赤白「機体」) vs. リー・シー・ティエン/Lee Shi Tian(マルドゥ「機体」)
地域予選で権利を手に入れたベン・ハルは、初めてのプロツアーでトップ8入りを果たした。エキゾチックな場所への訪問と、世界中のトッププレイヤーの中を駆け上がったことは、傍から見ればまるで夢のようである。『アヴァシンの帰還』で競技的プレイに目覚めたものの、子供の頃に『アンティキティー』でこのゲームを始めていた彼にとってプロツアー『カラデシュ』は努力の延長にある。
「プロツアー前にスタンダードは文字通り1ゲームもやりませんでした。仕事が忙しかったのでスタンダードのテストをハワイ入りするまでに延期せざるを得なかったのです。現地入りしたあとも食中毒になってしまい、何もまともにできませんでした。スタンダードのテストはクリス・ファンメーター/Chris VanMeterのリストを見ることでした 」
体調がかんばしくないまま迎えた金曜日だが、ハルは初日と2日目を駆け抜けて、攻撃的な機体デッキがいまだ環境最高のデッキであることを証明しつつトップ8入りを果たし、同郷のカナダ人を熱狂させた。
ハルのトップ8入り後の道のりは、まず、百戦錬磨の対戦相手であるリー・シー・ティエンを倒すことを要求される。香港出身のリーはアジア太平洋地域において、最も偉大なプレイヤーのひとりとして名声をすでに確立している。2012年のプロツアー『ラヴニカへの回帰』を皮切りに、続く3年にトップ8入りを3回増やした。この週末に4年連続5回目としたリーは、現役続行中のプレイヤーの中でもプロツアー殿堂入りの適格性を強調した。
プロツアー優勝はリーがこれまでに獲得した戦績に冠するこの上ないものである。
それぞれのデッキ
赤白機体はプロツアー『カラデシュ』前に最も目立ったデッキである。ハルのバージョンは最も人気のある最初期のものから実質変わっていない。《無私の霊魂》と《密輸人の回転翼機》は攻撃しながら搭乗員を確保するのに協力する。《ピア・ナラー》は一時的ではあるもののやっかいなブロッカーを排除しつつ、どんなアーティファクト、主に機体と飛行機械・トークンをパンプアップできる。
準備不足の対戦相手を圧倒することが目的の速攻デッキで、適切にゲームを減速できない相手を打ち倒してきた。
リーは一般的な機体デッキには満足していなかった。齋藤友晴たちとのテストの結果、色を足してより多くの力を手に入れることにした。マルドゥと銘打ってはいるものの、サイドボードまで含めると4色フルに使っている。メインデッキの《屑鉄場のたかり屋》は機体に搭乗し続け、《耕作者の荷馬車》に乗るのにも十分なサイズである。《耕作者の荷馬車》は他の機体デッキに差をつける出発点で、追加の2色を供給しつつ、《領事の旗艦、スカイソブリン》や《高速警備車》のようなサイズで攻撃できる。
《無許可の分解》は、ほとんどのクリーチャーに対するインスタントの確定除去であり、追加でダメージも与えてくれる。サイドボードの4枚の《儀礼的拒否》は風変わりな道具だ。《霊気池の驚異》や《金属製の巨像》、もちろん各エルドラージにも役に立つ1マナの打ち消しをアグレッシブなデッキに使われるのは対戦相手もいやらしく感じる。他の機体デッキができもしないようなこういったトリックで、リーは駆け抜けてきた。
ゲーム展開
「スタンダードは全くやってませんでした」 ゲーム開始前のリーとの会話でハルは認めた。
「StarCityGames Openの時のままなの?」 そのままのリストでプロツアートップ8に入ったことを疑った様子で尋ねるリー。
「クリス・ファンメーターのリストを何も変えずに持ってきました。ラッキーでした」
「プロツアーでこのリストが結果を出せたことをは驚きだね。」 リーは同意する。
「アグレッシブなデッキを探していたんです。Star City Gamesのトップ8に3人が入賞してしまい、みんなが赤白機体を意識してしまったのは残念でした」
「神経質にもなれないほど体調が悪かったんです。何も感じられないのは悲惨でした。とはいえ、いいこともありました。あなたは何度もプロツアーサンデーに来ていて、この場で神経質になんてならないでしょうし。」
確かにリーはプロツアートップ8を何度も経験しているが、そうは思っていないようだ。「準々決勝で3回、準決勝で1回負けてるから、トップ8の成績はとても悪いんだ」
「きょうはあなたの日では?」
「だといいんだけどね! このデッキ気に入ってるし!」 リーは笑う。
リーの《スレイベンの検査官》で始まったゲームに、ハルは《無私の霊魂》で応じる。対戦相手により多くのダメージを与えるためにお互いのプレイヤーはゲームとマッチを費やす。
《密輸人の回転翼機》とアンタップ状態の《スレイベンの検査官》がハルの飛行クリーチャーを止めるが、《スレイベンの検査官》と2枚目の《無私の霊魂》でリーにプレッシャーを返す。《密輸人の回転翼機》が搭乗されて、リーが攻撃しハルが最初のダメージを受ける。
リーが《耕作者の荷馬車》を戦場に出して一番大きな「クリーチャー」になる。ハルはリーを攻撃してライフを15にし、《ピア・ナラー》と《スレイベンの検査官》を追加。
リーがクリーチャーサイズを大きくしたので、ハルは横に広げていく。
《模範操縦士、デパラ》と2枚目の《密輸人の回転翼機》を出したリーは攻撃を行う。ハルは《石の宣告》で《模範操縦士、デパラ》を追放するが、彼女は去る前に搭乗していく。
ハルは攻撃せず、リーは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》で騎士・同盟者トークンを生成する。ハルは自身の《密輸人の回転翼機》に搭乗し、飛行機械・トークンとともにギデオンを落としにかかる。リーは《密輸人の回転翼機》にひとつ搭乗してブロック。《無私の霊魂》がハルの《密輸人の回転翼機》を守り、《ピア・ナラー》の能力が2度起動されてギデオンの忠誠値は1に。
リーの《経験豊富な操縦者》が大きな《耕作者の荷馬車》に搭乗し、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》とともに攻撃する。ハルは《耕作者の荷馬車》をチャンプブロックしてライフを12にする。ハルは《密輸人の回転翼機》で攻撃しつつ、リーの《密輸人の回転翼機》を《蓄霊稲妻》でブロック指定前に除去して《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を倒す。
リーの反撃。《耕作者の荷馬車》がチャンプブロックされ、トークンがライフを10に。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》と騎士・同盟者・トークンが追加されるが、ハルは飛行クリーチャーで間髪入れずにプレインズウォーカーを落とす。チャンプブロッカーとして《経験豊富な操縦者》を置き、リーの次の攻撃でハルのライフは6に。
《耕作者の荷馬車》がクリーチャーでなくなる前に《蓄霊稲妻》で致死ダメージを受ける。《石の宣告》がトークンを一掃すると、リーの打てる手はほとんどなくなった。《領事の旗艦、スカイソブリン》がハルの元に到着すると、勝利まで急浮上した。
第2ゲーム、アーティファクトのない《模範的な造り手》を2ターン目に出したリーは、《スレイベンの検査官》、《密輸人の回転翼機》と続けたハルにリードを許す。2枚目の《模範的な造り手》がリーの元に現れて、アーティファクトさえあれば多くのダメージを叩き出せる。
ハルの《経験豊富な操縦者》が次に欲しいものを探し、《密輸人の回転翼機》に乗り込んで4点のダメージを稼ぐ。ハルは大きくなる要素を持った《模範的な造り手》を続ける。
リーは《蓄霊稲妻》で《模範的な造り手》を倒してアンタップを迎え、《発明者の見習い》を出したがアーティファクト入手のめどは立たない。ハルはこの隙にプレッシャーを掛けたいところだが、《無許可の分解》で《密輸人の回転翼機》を潰され、ハルの《模範的な造り手》が通ってリーのライフは13に。
リーは1/1数体で攻撃してハルのライフを18にしてから《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》で騎士・同盟者・トークンを生成する。ハルは《蓄霊稲妻》でトークンを焼き、《高速警備車》を《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》への回答とする。残りのクリーチャーでリーのライフは9に。
さらなる《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》とトークンを出して、戦場の均衡を試みるリー。出したばかりの《密輸人の回転翼機》を搭乗してから搭乗に使ったうえで、ハルはプレインズウォーカーを倒すために総攻撃をする。リーはすべてが相討つようにブロックを行ったが、《高速警備車》は《蓄霊稲妻》で守られてしまう。
ハルが2ゲーム目を取るのに十分な速度であった。
サイドボードが使われ始める第3ゲームはお互いに対戦相手を邪魔するものが増える。《模範的な造り手》、《屑鉄場のたかり屋》と続けたリーは序盤から重く素早く殴っていく。ハルは2枚めの土地を置くもののクリーチャーを展開せず、代わりに《蓄霊稲妻》で《屑鉄場のたかり屋》を除去する。リーは2枚目の《模範的な造り手》を出すが、アーティファクトがないためペースを遅い。
ハルは《密輸人の回転翼機》を出すものの、《スレイベンの検査官》がリーを再び加速させる。次の攻撃でハルのライフは10に。
ハルのサイドボードの《稲妻織り》が、ゲームをスローダウンさたいまさしくちょうど必要な場面で登場した。リーの攻撃で、ブロックするために《密輸人の回転翼機》に搭乗させたハルだが、《無許可の分解》でブロックはできず。
ハルはライフとブロッカーが心許なく、リーがこのマッチ最初のゲームを取った。
第4ゲームはより多くのダメージをどうやって稼ぐかが争われた。《密輸人の回転翼機》を2ターン目に出し合い、続く《発明者の見習い》が殴り始める。《経験豊富な操縦者》に続いた《スレイベンの検査官》がハルの《密輸人の回転翼機》に搭乗し、レースをリードしていく。
《密輸人の回転翼機》に修整を与えるリーの《模範操縦士、デパラ》は《蓄霊稲妻》で退場させられた。彼女の代わりの《経験豊富な操縦者》も、次のリーのターンの戦闘前に《蓄霊稲妻》されてしまう。
ハルは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》で騎士・同盟者トークンを生成し、空から《密輸人の回転翼機》で攻撃する。クリーチャーがおらず、ライフも8のリーはアンタップして、どうすれば生き残れるかを一旦停止して考える。土地を置くだけでターンを返すが、ハルは《密輸人の回転翼機》を《断片化》。
ハルは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をクリーチャーにして全軍攻撃、リーは《蓄霊稲妻》で《密輸人の回転翼機》を除去。それはマッチが決まるのを防ぐが、これでリーのライフは1になってしまう。
リーは息を吐きだし、カードを引き、そのままハルに手を差し出した。
「あなたに勝ってしまうのは申し訳ない。この場にふさわしいプレイヤーなのだから」とハル。
「ゲーム1と2のギデオンがよくなかったね。小型クリーチャー全然引けなかったし。」 リーが答える。
リーのプロツアー優勝への旅はまたも一歩足りず、ハルの途方もない勝利が準々決勝ステージ2へと続く。
ベン・ハルがリー・シー・ティエンを3-1で下して準々決勝ステージ2へと進む!
10 《平地》 6 《山》 4 《感動的な眺望所》 4 《鋭い突端》 -土地(24)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 4 《経験豊富な操縦者》 3 《無私の霊魂》 3 《模範操縦士、デパラ》 2 《ピア・ナラー》 -クリーチャー(20)- |
4 《石の宣告》 3 《蓄霊稲妻》 4 《密輸人の回転翼機》 2 《高速警備車》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(16)- |
3 《稲妻織り》 4 《流電砲撃》 2 《断片化》 1 《蓄霊稲妻》 2 《空鯨捕りの一撃》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
3 《平地》 3 《山》 4 《秘密の中庭》 4 《感動的な眺望所》 4 《尖塔断の運河》 4 《霊気拠点》 -土地(22)- 4 《発明者の見習い》 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《経験豊富な操縦者》 3 《模範操縦士、デパラ》 -クリーチャー(23)- |
4 《蓄霊稲妻》 2 《無許可の分解》 4 《密輸人の回転翼機》 3 《耕作者の荷馬車》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(15)- |
4 《儀礼的拒否》 4 《流電砲撃》 2 《断片化》 2 《空鯨捕りの一撃》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -サイドボード(15)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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