- HOME
- >
- EVENT COVERAGE
- >
- プロツアー『ニクスへの旅』
- >
- プロツアー『ニクスへの旅』メタゲーム分析
EVENT COVERAGE
プロツアー『ニクスへの旅』
プロツアー『ニクスへの旅』メタゲーム分析
Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki
2014年2月23日
41のアーキタイプが巻き起こした2,668もの試合が、プロツアー『ニクスへの旅』での『テーロス』ブロック構築のメタゲームを完成させた。今大会の参加者全員がみな一様に同じ相性差だったとは(お世辞にも)言えないが、各人とも最高の舞台に最高のゲームをもたらしたことは予想に難くない。
その結果は、人気のあるアーキタイプに明らかな集中がありながらも、多様性に溢れた素晴らしいものだった。以下が最終的なアーキタイプ・リストとそれぞれの勝率だ。
アーキタイプ | 勝率(%) | 試合数 |
赤緑エルズペス | 50.68 | 392 |
黒単アグロ | 46.94 | 365 |
白黒緑「星座」 | 47.65 | 333 |
黒青緑コントロール | 57.46 | 315 |
白青「英雄的」 | 42.25 | 157 |
黒緑「星座」 | 52.96 | 141 |
赤単「英雄的」 | 46.83 | 126 |
白黒緑リアニメイト | 50.00 | 120 |
エスパー・コントロール | 53.92 | 102 |
白赤「英雄的」 | 46.95 | 71 |
赤緑モンスターズ | 55.00 | 60 |
白黒緑ミッドレンジ | 64.74 | 52 |
赤緑アグロ | 59.57 | 47 |
白単「英雄的」 | 48.89 | 45 |
青黒「神啓」 | 58.14 | 43 |
ジャンド・モンスターズ | 48.72 | 39 |
無限開花 | 40.40 | 33 |
白黒アグロ | 48.00 | 25 |
青黒コントロール | 50.00 | 22 |
青単信心 | 31.58 | 19 |
緑単「星座」 | 35.29 | 17 |
バント「英雄的」 | 53.33 | 15 |
黒青緑「星座」 | 28.57 | 14 |
5色ミッドレンジ | 60.00 | 10 |
バント・コントロール | 53.33 | 10 |
バント・プレインズウォーカーズ | 70.00 | 10 |
黒緑リアニメイト | 50.00 | 10 |
白黒赤ミッドレンジ | 50.00 | 10 |
白青コントロール | 60.00 | 10 |
白黒ミッドレンジ | 25.00 | 8 |
白黒赤コントロール | 37.50 | 8 |
バント・ミッドレンジ | 20.00 | 5 |
白黒緑モンスターズ | 20.00 | 5 |
白黒「英雄的」 | 40.00 | 5 |
白緑信心 | 80.00 | 5 |
白青難局 | 20.00 | 5 |
黒赤ミッドレンジ | 0.00 | 3 |
グリクシス・コントロール | 0.00 | 3 |
白緑モンスターズ | 0.00 | 3 |
白単アグロ | 0.00 | 3 |
バント「星座」 | 0.00 | 2 |
このままでも今週末に使われたデッキの幅広さが十分にわかるが、中でも人気を集めた――少なくとも30試合は行われた――ものを見てその勝率に着目すると、より信頼できるデータが表れてくる。勝率上位のデッキを見てみよう。
アーキタイプ | 勝率(%) | 試合数 |
白黒緑ミッドレンジ | 64.74 | 52 |
赤緑アグロ | 59.57 | 47 |
青黒「神啓」 | 58.14 | 43 |
黒青緑コントロール | 57.46 | 315 |
赤緑モンスターズ | 55.00 | 60 |
大差をつけて1位になったのは、今大会の優勝者であり殿堂顕彰者、パトリック・チャピン/ Patrick Chapinも持ち込んだデッキだ。彼のチームメイトたちが選んだコントロール寄りの、あるいはアグロ寄りのデッキではなく、チャピンはその間を取ることを選択した。素早くプレッシャーをかけられる強力でマナ効率の良いクリーチャー(《羊毛鬣のライオン》と《世界を喰らう者、ポルクラノス》)と、このフォーマットが持つ最高の除去の数々(《英雄の破滅》と《信者の沈黙》)、それから最強の呼び声高いプレインズウォーカー(《太陽の勇者、エルズペス》)、そして極めて多くのデッキの核となったマナ安定コンビ(《森の女人像》と《クルフィックスの狩猟者》)が見事に織り成すこのデッキは、単にベスト・カードの束というだけではない――将来のスタンダードでも優れたデッキを組み上げることだろう。
その直後に続く4つのデッキも、勝率で他を大きく上回る。「白赤緑モンスターズ」は、「白黒緑」と同じく優秀なクリーチャーを用いてミッドレンジの方向性をたどるデッキだ。マナ加速によって切り札となる《太陽の勇者、エルズペス》を呼び寄せる交渉を進めつつ、《神々の憤怒》や《稲妻の一撃》といったカードにも手を出せるようになっている。「赤緑アグロ」は、《アクロスの十字軍》とその仲間たちで一団となって攻め込みとどめに火力を撃ち込む、という極めて前のめりなデッキだ。環境にマナの安定までこなす偉大なブロッカーが――《森の女人像》と《クルフィックスの狩猟者》のコンビが――溢れているが、それでも大きく広く展開されるトークン軍団は敵の防御を包囲したのだ。
「黒青緑コントロール」の人気の秘訣は、いくつものトップ・チームがそれぞれにこのデッキの趣向を凝らしたためであった。もはや公然の秘密となったものの、「白黒緑」デッキの「黒緑」の部分を「青」に合わせるという選択が強力なものであったことは明白だ。ひとたび戦場に出ればほぼ無敵の《予知するスフィンクス》が、環境に溢れる除去を見事に打ち破った。また白を使わないことで、《悪夢の織り手、アショク》と《荒ぶる波濤、キオーラ》がその力を発揮する場所を見つけた。《悪夢の織り手、アショク》は対戦相手のデッキからカードを「ドローし」それを使うという敏腕ぶりを見せ、《荒ぶる波濤、キオーラ》は[+1]能力でダメージを抑えつつ[-2]能力でマナ加速とドローを進める働きをこなした。《太陽の勇者、エルズペス》の流行はすでに知られていたため、「白黒緑」のように《思考囲い》でゲームを始めてカード・アドバンテージと情報アドバンテージを得ながら、《太陽の勇者、エルズペス》を使うデッキに狙いを定めた「黒青緑コントロール」がプレイヤーを集めたのだ。
「青黒『神啓』」は、恐らくこの週末を通して特別目立つデッキではなかっただろう。しかしこのデッキは多くのチームが意識していたものだった。世界ランキング4位に名を連ね、今大会もトップ4に入賞したジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leytonも、彼の所属するチームのプレイテスト中このデッキに興味を示していた。《バネ葉の太鼓》、モダンの「親和」デッキを思い起こさせるこのカードにより、マナの安定とクリーチャーをタップさせることが容易になる。これで様々な「神啓」を駆使し、ゲームを支配するのだ。《果敢な泥棒》が戦力にならないクリーチャーと対戦相手の強力なものを交換し、残りは《黄金の呪いのマカール王》が追放する。この週末に見たどのデッキとも一線を画した、エキサイティングなデッキと言えるだろう。
アーキタイプ | 勝率(%) | 試合数 |
エスパー・コントロール | 53.92 | 102 |
黒緑「星座」 | 52.96 | 141 |
赤緑エルズペス | 50.68 | 392 |
白黒緑リアニメイト | 50.00 | 120 |
白単「英雄的」 | 48.89 | 45 |
ジャンド・モンスターズ | 48.72 | 39 |
白黒緑「星座」 | 47.65 | 333 |
勝率上位と下位の間に収まったデッキは、上位のデッキと似通ったものが多い。それでもデッキの鍵となる部分は異なっている。「エスパー・コントロール」は「黒青緑」の青の部分に、《太陽の勇者、エルズペス》や《払拭の光》、《神討ち》など多くのツールのため白を混ぜたデッキだ。そして例のごとく、デッキの真価が発揮されるまでの時間を確保するのは、主要な黒の除去である。「黒緑『星座』」は、カードを引くための《開花の幻霊》のみ採用するだけではなく、《破滅喚起の巨人》による一方的な全体除去を加えたものだ。ここでも、生き延びるための黒の除去は欠かせない。
上記リストのデッキには、その他のデッキのほぼすべてに見受けられるものが採用されていないものがある。それは《森の女人像》と《クルフィックスの狩猟者》のコンビだ。この2枚は「赤緑エルズペス」、「ジャンド・モンスターズ」、「白黒緑『星座』」で重要な役割を演じているのだ。「赤緑エルズペス」は「赤緑モンスターズ」に《太陽の勇者、エルズペス》を加えたものだ。「白黒緑『星座』」は「白黒緑ミッドレンジ」を調整したもので、《開花の幻霊》と《脳蛆》を加えることでコントロール力を高めると共にカード・アドバンテージを捻出している。「ジャンド・モンスターズ」は「モンスターズ」系デッキに黒の除去の力を加え、さらに《思考囲い》を使えるようにした形だ。
「白黒緑リアニメイト」もまた大会前からMagic Onlineで姿を見せていたデッキのひとつであり、これは『テーロス』ブロック・ドラフトの緑黒デッキを超強化したバージョンと言える。《サテュロスの道探し》と《神々との融和》がマナを安定させると同時に、《灰燼の乗り手》のようなファッティを含むクリーチャーを墓地へ送る。そうなれば《死の国からの救出》や《エレボスの鞭》、《定命の者の宿敵》、そして《夜の咆哮獣》でアドバンテージを取ることができるのだ。
上記のリストの中だと「白単『英雄的』」デッキも目新しいデッキであり、これは他のいくつかのデッキの基本形となった。小型の「英雄的」クリーチャー(《恩寵の重装歩兵》や《密集軍の指揮者》、《イロアスの英雄》、《威名の英雄》)からなる超アグレッシブなマナ・カーブと、「英雄的」を誘発させるのに優れた呪文(《神々の思し召し》、《アジャニの存在》、《船団の出航》)を用いる。「白単『英雄的』」は今大会を前に知られていたアグロ・デッキのひとつであり、別の色を使った派生系も生まれている。
アーキタイプ | 勝率(%) | 試合数 |
白赤「英雄的」 | 46.95 | 71 |
黒単アグロ | 46.94 | 365 |
赤単「英雄的」 | 46.83 | 126 |
白青「英雄的」 | 42.25 | 157 |
無限開花 | 40.40 | 33 |
勝率下位のグループには、「英雄的」デッキが多く見受けられた。白赤のバージョンは《アクロスの十字軍》や《統率の取れた突撃》で横に広く展開するデッキであり、今大会、世界ランキング14位のスタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifkaをアグレッシブなデッキでは唯一のトップ8へ滑り込ませた。赤単色のバージョンは《モーギスの軍用犬》などを用い、サイズと火力の数で他のタイプを上回る。白青のバージョンは、《戦識の重装歩兵》や《液態化》でドロー整えたりブロッカーの有無に関わらず攻撃を通したりすることで、アドバンテージを稼ぎ出すデッキだ。
黒単アグロはこの週末を迎える前に知られていたアグロ・デッキであり、Magic Online上で注目を集めていた。代表的な除去と妨害手段がほぼどんな対戦相手でも対処を可能にする一方、このデッキの狙いは機先を制することだ。《苛まれし英雄》や《責め苦の伝令》、《饗宴の主》、そして《悪意に満ちた蘇りし者》などがこのデッキの核となる。
そして今週末最後に挙げるのは、まず間違いなく最も検討しがいのあるデッキだろう。それは《市場の祝祭》や《タッサの激憤》、そして《キオーラの追随者》を用いて無限マナを生み出すデッキだ。他に「神啓」持ちを組み合わせれば、大軍団を築くことから好きなだけライフを得ることまで、何でも可能になるのだ。
これらのデッキは確かにあまり活躍できなかったかもしれない。それでも、今年の秋に新たなスタンダード環境を迎える頃には、大きな変化があるはずだ。君たちは近い将来、どのデッキを組もうと考えているだろうか?
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
RANKING ランキング
NEWEST 最新の記事
-
2024.11.12観戦記事
The Week That Was: 熱烈な勇者の帰還|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.27観戦記事
第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 決勝戦|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.26トピック
第30回マジック世界選手権 トップ8プロフィールとデッキリスト|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.26観戦記事
Magic World Championship 30 Day Two Highlights|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.25観戦記事
Magic World Championship 30 Day One Highlights|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.25戦略記事
The Spiciest Decklists of Magic World Championship 30|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権