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EVENT COVERAGE
プロツアー『破滅の刻』
準々決勝:佐々部 悠介(日本) vs. Samuel Pardee(アメリカ)
By 矢吹 哲也
この戦いに臨む両者の実績の差は明白だ。
サミュエル・パーディー/Samuel Pardeeはグランプリ・ロサンゼルス2009でのグランプリ・デビュー以来、実に12回のグランプリ・トップ8入賞とそのうち2回の優勝を記録している。プロツアーの方では長きにわたり飛翔のときを待っていたが、プロツアー『異界月』で自身初のトップ8入賞を遂げると彼の才能は完全に花開き、プラチナ・レベル・プロとして出場した今大会にて2度目のトップ8入賞を果たすことになった。今大会の見事な結果により来期のプラチナ・レベルも確定させた彼の実力を今や疑う者はなく、「トップ・プロ」と形容するにふさわしいプレイヤーになっている。
一方の佐々部 悠介は、グランプリの「参加回数」が12回――パーディーのトップ8入賞回数と同じである。しかし彼はグランプリ・静岡2017春で自身初のグランプリ・トップ8入賞を記録すると、そこで得た今大会への参加権利を手に、あまりに大きな跳躍を果たした。初出場のプロツアーで初のトップ8入賞という成績は、誰もが羨むサクセス・ストーリーだろう。
この試合のマッチアップについて、佐々部は事前に瀧村 和幸と研究を行っており、先手と後手の差が大きいことを指摘する。
「先に展開を進めることができていれば《闇の救済》のようなカードが効果的に使えます。逆に押されている盤面だと除去が間に合わず、そのまま押し込まれてしまう。そこをどうにかできるかが勝負ですね」
佐々部 悠介(黒単ゾンビ) vs. サミュエル・パーディ(黒緑「巻きつき蛇」)
両者キープで開幕した準々決勝第4試合、佐々部は序盤から積極的に仕掛けていった。《戦慄の放浪者》を2枚続けて繰り出すと、《残忍な剥ぎ取り》を繰り出したパーディーに向けて早速攻めていく。
佐々部は続くターンにも2体の《戦慄の放浪者》で攻撃を加えると、《無情な死者》を盤面に加えた。パーディーはそれを《致命的な一押し》で対処し、《残忍な剥ぎ取り》の攻撃で墓地を肥やすと《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》を着地させた。
こうなると、土地が2枚で止まった佐々部は苦しい展開。2枚目の《無情な死者》を繰り出したものの、パーディーの戦場には《新緑の機械巨人》が着地する。「昂揚」も達成し巨大なサイズになった《残忍な剥ぎ取り》、《新緑の機械巨人》、そして《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》。パーディーの戦線はまさに盤石だ。
佐々部は3枚目の土地を引きこみ、ターンを返した。パーディーはさらに《ピーマの改革派、リシュカー》を加えると《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》の[-2]能力も起動し、厚みのある面で佐々部へ襲いかかる。この攻撃をブロックと《致命的な一押し》で最小限の被害に抑えた佐々部だが、パーディーはそこへ《闇の掌握》も撃ち込み、佐々部の盤面を壊滅させた。最後のドローを確認した佐々部はカードを片付け、次のゲームへ向かう。
第2ゲーム、初手を確認した両者はしばし手札を見つめ、やがてキープを選択。パーディーは再び《残忍な剥ぎ取り》でゲームを始めると、佐々部はそれを《致命的な一押し》で退場させた。迎えたターンに《呪われた者の王》を展開した佐々部だが、パーディは《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》を繰り出し盤面の優位を得る。
佐々部は《呪われた者の王》で《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》を攻撃し、パーディーはこれをスルー。その後放たれた《闇の救済》が植物・トークンを払い、ゾンビ・トークンが佐々部の盤面に加わる。
佐々部はその後パーディーが繰り出した《不屈の追跡者》へ2枚目の《闇の救済》を放ち、ゾンビの群れを作り上げた。パーディーは「サイクリング」と手掛かり・トークンの起動で回答を探すが、続々と現れるゾンビの群れに押し込まれていく。
《イフニルの死界》と除去呪文による盤面への干渉も強力であり、パーディーは立ち並ぶゾンビの群れの前に屈することになった。
佐々部は赤アグロや「王神の贈り物」デッキ用の《ゲトの裏切り者、カリタス》を抜き、《不帰 // 回帰》と《領事の旗艦、スカイソブリン》を投入。のちに「正直入れるものが少なかった」と語る佐々部だが、このわずかなサイド・カードが彼に力を与えることになる。
再び「Good Luck」の声をかけ合って始まる第3ゲーム、パーディーは初手を見るなり「No」とライブラリーへ送り返し、佐々部も「マリガン」と苦笑を漏らす。続く6枚をキープした両者は改めて激戦に身を投じた。
佐々部が《戦慄の放浪者》で口火を切ると、パーディーは《巻きつき蛇》でそれを受けてかかった。佐々部は《闇の掌握》でそれを除去したのちにクリーチャーを展開し続けるが、パーディーも《闇の掌握》2連打で佐々部の展開を阻む。さらに追加された《呪われた者の王》にも《進化する未開地》起動からの《致命的な一押し》を差し向け、盤面の優位を握らせない。
パーディーは自身の盤面に《新緑の機械巨人》を降り立たせ、《戦慄の放浪者》2体を墓地から戻した佐々部に対して攻撃を敢行。一気に佐々部のライフを削り取ると、2体目の《新緑の機械巨人》!
《イフニルの死界》で1体の《新緑の機械巨人》を6/6にした佐々部だが、暴力的なまでのサイズ差は覆し得ない。束になって必死に守ろうにも《歩行バリスタ》と除去がブロッカーを次々と撃ち落とし、パーディーの《新緑の機械巨人》はゾンビの軍勢とともに佐々部のライフも蹴散らしていったのだった。
第4ゲームは互いに2ターン目まで動きがない落ち着いた滑り出し。佐々部が3ターン目に繰り出した《呪われた者の王》がファースト・アクションとなり、パーディーはそれを《進化する未開地》から《致命的な一押し》で対処した。
迎えたターンに《最後の望み、リリアナ》を繰り出すと、ゲームの決定打となり得る「奥義」までのカウントダウンが始まる。佐々部は《戦墓の巨人》を繰り出して攻撃の準備を整えるが、パーディーの《不屈の追跡者》がその行く手を阻んだ。
佐々部は《闇の救済》で障害を取り除き、さらにゾンビを増やすことに成功した。だがパーディーは《闇の掌握》で《戦墓の巨人》を除去しつつ、《最後の望み、リリアナ》の[+1]能力で再び佐々部の攻勢を押しとどめる。
ここで佐々部は《領事の旗艦、スカイソブリン》を着地させ、《最後の望み、リリアナ》の忠誠度――つまり奥義までの時間を減らした。パーディーは《新緑の機械巨人》を8/8で繰り出し、盤面を固める。
そして佐々部は《リリアナの支配》を貼り、天秤を一気に傾けた。3/3となったゾンビが《領事の旗艦、スカイソブリン》へ「搭乗」し、《最後の望み、リリアナ》を退場させつつ空から6点のダメージを与える。
パーディーは《ウルヴェンワルド横断》で2枚目の《新緑の機械巨人》を繰り出すと、10/10になった1体目で反撃。佐々部のライフは一撃で半分を削られた。
佐々部は《領事の旗艦、スカイソブリン》を含めた全軍で反撃。《領事の旗艦、スカイソブリン》の3点と《闇の掌握》でパーディーの盤面に立つ2体目の《新緑の機械巨人》(6/6)を除去すると、12点もの大ダメージを与えた。
そして渾身の《不帰》が、残ったもう1体の《新緑の機械巨人》をも墓地へ送った。勝ち手段を失ったパーディーは最後のドローを確認し、カードを片付けることになった。
迎えた最終ゲーム。しかしキープを宣言したパーディーに対し、佐々部はここでもマリガンを喫し6枚でゲームを始める。
パーディーは1ターン目《ウルヴェンワルド横断》でマナ基盤を整えると、2ターン目《巻きつき蛇》で序盤の攻勢を組み立てた。
その攻撃に《闇の掌握》で応じた佐々部だが、盤面にクリーチャーを展開することができない。パーディーは《豪華の王、ゴンティ》を繰り出し、佐々部のライブラリーから1枚を追放。そのカードは、次のターンにパーディーの盤面に出現することになる。
《豪華の王、ゴンティ》での攻撃を行ったのちに、パーディーは《不屈の追跡者》、そして奪った《墓所破り》を展開。《イフニルの死界》で《不屈の追跡者》を除去した佐々部だが、ついにパーディーの元へ《新緑の機械巨人》が着地してしまう。
《不帰》で《新緑の機械巨人》を墓地へ送った佐々部だが、強化された《豪華の王、ゴンティ》の攻撃が痛い。瞬く間にライフは残りひと桁まで落ち込み、そこへ追い打ちのごとく2枚目の《新緑の機械巨人》が投入される。
佐々部は《リリアナの支配》でブロッカーを用意したが、パーディーの《不帰》で1体を除去されると、右手を伸ばし頭を下げたのだった。
佐々部 2-3 パーディー
「さすがに1卓だけだと緊張しますね」と、試合を終えた佐々部はヘッドセットを外し、深く息を吐いた。事前の予想通りの結果となり、寂しさを感じながらもどこかやり切った表情だ。
「もちろんこの舞台に立てただけでも十分なので、悔いはないです」
佐々部はこの3日間の体験と経験を胸に、フィーチャーマッチエリアを後にするのだった。
サミュエル・パーディーが佐々部 悠介を3勝2敗で下し、準決勝へ!
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