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プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』

観戦記事

プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』決勝戦

Corbin Hosler

2025年6月23日

 

 満席のMagicCon。『マジック』の歴史に刻まれるフォーマット。ゲームを魔法のように魅惑的なものにする壮大な祝典。日曜日午後まで続いた「プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』」は、ある一つのもの以外すべてが揃っていた。最後の一つは、プロツアーの王者だ。

 王者は、ゲーム界屈指のエキサイティングなプレイヤー2人による決勝戦から生まれる。1人はベテラン・カードゲーマーのイアン・ロブ/Ian Robbだ。ロブは「プロツアー『霊気走破』」で初のプロツアー・トップ8入りを果たし、今回は2回目のトップ8入りから決勝まで勝ち進んでいる。彼はプロツアーの常連であるコーリー・バークハート/Corey Burkhart、マーク・ジェイコブソン/Mark Jacobsonのリーダーシップの下、 Flexslot Diamondでテストプレイを重ねてきた。このチームはまだチームに所属していなかったトップ・プレイヤーを集めたチームでもある。数週間にわたる計画、準備、テストプレイの成果がイアンのトップ8入賞という結果に繋がった。

イアン・ロブ/Ian Robb

 

 もう一方には、長年『マジック』をプレイしてきた行弘賢が座っている。彼はマジックでほとんどすべてのことを成し遂げてきたが、プロツアー優勝はまだ掴み取っていない。優勝に最も近づいたのは「プレイヤーズ・ツアー名古屋2020」で原根健太に敗れて準優勝となったときだった。「プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』」は、行弘にとってプレイヤーズ・ツアー以降のイベントで最高の成績となり、グランプリ優勝2回を含む経歴に、通算8回目のトップ・フィニッシュを書き加えた。

行弘賢

 

@death_snow(行弘賢)が次の試合に向けて準備をしている間に、ちょっと面白い写真を撮らせてもらいました。
http://twitch.tv/magicで配信中!

 デッキの顔ぶれも実に象徴的であった。トップ8のデッキは、この週末の会場でトップ2として君臨していた2つのアーキタイプに沿った形、イゼット果敢4デッキと赤単アグロ4デッキに分かれたのだ。偶然にも、対戦組み合わせもアーキタイプで山を作る形となった。ロブは準々決勝、準決勝でイゼット果敢同型を操るクリスチャン・ベイカー/Christian Bakerとトニ・ポルトラン/Toni Portolanとの対戦を制し、行弘はアンディ・ガルシア=ロモ/Andy Garcia-Romoとリウ ユーチェン/Yuchen Liuとの赤単アグロ同型対決を突破してきた。

ゲーム開始

 

 この2つのデッキの対戦は瞬く間に決着が着くこともある。初戦はまさにそうなった。行弘の赤単アグロは猛烈な勢いでロブのイゼット果敢を焼き尽くし、アメリカの選手は早々にリードを奪われた。このマッチアップは元からロブにとって分が悪く、さらに、準決勝までのミラーマッチとはまったく異なるプレイングが要求される。赤単アグロ相手には、別次元の戦略を立てる必要があるのだ。

 2ゲーム目はロブにとって有利な展開で始まった。序盤の《選択》のようなキャントリップ呪文で《コーリ鋼の短刀》を2枚引き込んだ。先攻の有利を活かし、ライフ11とある程度残した状態で盤面にモンク・トークンの展開を開始することができた。

 ターンは《嵐追いの才能》から始まった。果敢クリーチャーが戦場に追加され、そして注目されていた採用カード《激しき乗りこなし》が続いてプレイされる。カワウソは即座にモンク・トークンに続く脅威となったが、行弘も手をこまねいて見ているわけではなかった。既に戦場に出ていた《多様な鼠》と《雇われ爪》によってブロックが発生したが、ロブは間髪入れずに《巨怪の怒り》を合わせてダメージを貫通させ、行弘のライフを13まで落とした。

 しかし、大きなスイングの後は大きなスイングを返すチャンスである。行弘は追いつめられていたが、まだアウトにはなっていない。強化されている《心火の英雄》と数体のアタッカーがアンタップし、逆転の準備は整っていた。そして行弘は圧倒的な攻撃を繰り出し、試合を鮮やかなスピードで幕切れさせた。行弘は驚異的な速度でプロツアー決勝を2-0とし、優勝に王手をかけた。


 3ゲーム目は1マナ・クリーチャーの応酬で始まった。行弘が繰り出した《心火の英雄》に対し、ロブは《嵐追いの才能》をプレイした。しかしサイドボードから投入されたもう1枚のカードが、勝負を左右する1枚となった。《声も出せない》が《熾火心の挑戦者》を除去し、カード・アドバンテージの獲得を許さなかった。2枚目の《嵐追いの才能》で盤面を強化し、行弘にライフを11まで減らされつつも、ロブは勝利へと接近していった。

 行弘も負けじと動いた。2枚の《メテオストライク》と共に《熾火心の挑戦者》を展開し、土地3枚から1ターンに1枚ずつ呪文を唱えていく。しかしロブの《コーリ鋼の短刀》が戦場に置かれ。モンク・トークンが置かれ始めたことで、《メテオストライク》による巻き返しはやや心許ないものとなった。

 もっとも、この対戦は戦場の支配を争うものではない。序盤の攻勢に続く決定打として、いかに最後の数ダメージを押し通すかが焦点であった。行弘は決勝で着た「FINAL FANTASY V」のTシャツと一致する、『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』で登場した新たな必須カード《自爆》を引き込んでいた。そして、じっくりと勝ち筋を思案していたのである。

 

 ロブの次の攻撃で行弘のライフは残り僅か6になり、更に次のターンには3体の果敢クリーチャーが攻撃を仕掛けてくる状況だった。行弘は今こそ仕掛けるべきだと理解した。そして積極的な攻撃でロブのライフを残り2まで削りながらも《自爆》を温存し、次は第4ゲームに突入するのが当然だと言わんばかりの雰囲気でターンを返したのである。

 第4ゲームへの突入はロブが強く願っていたことでもあった。次のターンの大攻勢に向けて準備を整えつつ、手札を1枚保持した状態でキャントリップ呪文を使用しデッキを掘り進めていた。その最後の1枚は《洪水の大口へ》だった。そして、ロブは決断を下した。行弘の唯一のブロッカーを《洪水の大口へ》でバウンスし、止めとなる攻撃を放つことにしたのだ。この間、行弘はロブがアクションするたびに優先権を直ぐにパスし、巧妙に罠を仕掛けて待っていた。そして勝利を目指し続ける以外に道のなかったロブは、罠へと誘われていった。

 ロブは手札の最後のカード《洪水の大口へ》を公開し、行弘のブロッカーを指し示した。行弘は即座に自身の最後の1枚のカード《自爆》を公開した。彼は自身の《心火の英雄》を対象に取り、ロブの残り2点のライフを削り取った。そして決勝戦は終わったのである。

 行弘賢、「プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』」優勝おめでとう!

 
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