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EVENT COVERAGE
プロツアー『久遠の終端』

デッキ・ビルディングとチーム・ビルディング
2025年10月4日
マイケル・デベネデット=プラマー/Michael DeBenedetto-Plummerはジレンマを抱えていた。
マサチューセッツ州出身の彼は、「MagicCon: Atlanta」で開催された「プロツアー『久遠の終端』」に向けて、旅行の手配に余暇時間の多くを費やしていた。大会に向けた様々な手配は目立たないことではあるが、準備の中でも最も重要だ。
マイケルは言う。「私は生活が多忙であり、マジックに費やせる時間の殆どは、素晴らしいプレイヤーを集め一週間宿泊させる手配をすることで消費してしまった。」
これはヘラクレスの試練のように難しいことだ。プロツアーのテストハウスを経験したものなら、誰もがこれを知っているだろう。サイドボーディングの技術を突き詰める以上の仕事をする者が必要なのだ。第31回世界選手権を控え、シーズン最後のプロツアーに挑むマイケルはすべてを掌握していた。「Team Serious Player Only」の宿泊環境と調整環境は完璧であった。
しかし、タクシーの手配やタコスの調達に時間を費やした代償として、彼には1つだけ未解決問題が残っていた。それはアトランタに到着した時点で、つまり『久遠の終端』ドラフトとモダン構築を戦う300人の競技者の1人として現地入りした時点で——
「どのデッキを使うのか、まだ決まっていなかった」ということだ。
「時間があるときに色々なデッキを試したんだけど、最終候補はちょうどPaxtiが「Magic Online Challenge」で優勝したアゾリウス・コントロールか、ネオフォーム、ベルチャーだったよ」とマイケルは振り返る。「デッキリスト提出期限の朝にはネオフォームを選びかけていたんだけど、エルドラージ・トロンに何連敗もしてしまって。あれはネオフォームが有利なデッキの1つのはずだったんだけどね。」
ネオフォームは選択肢から消えた。ではアゾリウス・コントロールか(スペシャルゲストの《現実の設計者、タメシ》を入れた)ベルチャーか?
「テストハウスに着いたとき、チームメイトのラウリ・トーンストロム/Lauri Törnströmがベルチャーをめちゃくちゃ推してて、僕に使わせようとあの手この手で説得してきたんですよ」とマイケルは続ける。「彼は各マッチアップでの立ち回り方やサイドボーディングについて、すごく詳細な解説をしてくれました。ラウリは僕よりずっとこのデッキを研究してくれていたので、本当に感謝しています。」
これには誰も反論できまい。マイケルがフライトスケジュールを調整している間、トーンストロムはテゼレットとタメシを使ったサイドボーディングの細部を詰めていたのだ。彼はその知見をチームに共有し、初日のドラフトが始まる頃には2人は見事なデッキを完成させていた。この傑作デッキは、ある意味で22年前(《ゴブリンの放火砲》の初印刷時)にまで遡り、また別の意味では、ベルチャーファンのオースティン・デシーダー/Austin Decederが『Magic Online』で初めて載せた5-0リストの現代までの(モダンな)系譜を辿るものだった。
それ以来、このデッキは『モダンホライゾン3』発売以降のモダン・フォーマットとともに、数々の変遷を経てきた。そして今、ベルチャーはエスパー御霊、ボロス・エネルギーと並ぶ環境トップ3のデッキとしてプロツアーに姿を現したのである。もちろん『神河:輝ける世界』での《現実の設計者、タメシ》の登場によって、まったく新しいプレイ方法が生まれたことも大きい。例えば、墓地の《水蓮の花》をタメシで何度も戻して、とても大きい《海門修復》を叩きつけることができる、というのはご存じだろうか? タメシによって、デッキはかつてないほどの冗長性を手に入れ、そしてモダン・フォーマットの中でリスト全体をひとつにまとめ上げる確かな軸を得たのだ。今週末、《現実の設計者、タメシ》が《水力発電の検体》や《稲妻罠の教練者》と共に攻撃していく姿が何度も見られた。それは《石の脳》で《ゴブリンの放火砲》をすべて抜かれた後の光景であり、いささか滑稽に見えるかもしれない。だがこんな勝利も、4ターン目にカウンター2枚を構えつつコンボで勝つ試合と同じ価値があるのだ。
こうして、マイケルは決断を下した。それは土壇場での選択だったかもしれない。だが、失敗作か傑作か。この紙一重の境界こそが、プロツアーの夢が形になる瞬間なのだ。
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-土地(0)- 4 《ファラジの考古学者》 4 《水力発電の検体》 4 《現実の設計者、タメシ》 4 《稲妻罠の教練者》 -クリーチャー(16)- |
4 《撹乱する群れ》 3 《拒絶の閃光》 2 《否定の力》 4 《ゴブリンの放火砲》 4 《ジュワー島の撹乱》 4 《睡蓮の花》 4 《海門修復》 4 《朦朧への没入》 2 《厳しい説教》 1 《大梟の小夜曲》 4 《鎮圧光線》 4 《水浸しの教え》 4 《発明品の唸り》 -呪文(44)- |
4 《記憶への放逐》 2 《狼狽の嵐》 1 《否定の力》 2 《洪水の大口へ》 1 《島》 1 《厳しい説教》 1 《食糧補充》 2 《知りたがりの学徒、タミヨウ》 1 《求道者テゼレット》 -サイドボード(15)- |
「プロツアー『久遠の終端』」のようなイベントや、マイケルの見せたトーナメントでの活躍こそ、「プロツアーの夢」が実現したと言えるだろう。マサチューセッツ州ウースター出身の奇才が見せたのは、誰もが記憶に刻むべき活躍だった。モダン・フォーマットではベルチャーを駆り、8勝1敗という圧倒的な戦績を叩き出して第16回戦を待たずにトップ8入りを確定させた。しかも2日目では一度もゲームを落とすことなくそのまま快進撃を続投していたのだ。
Congratulations to Michael DeBenedetto-Plummer, the second player to make the #PTEOE Top 8! pic.twitter.com/mrnKoHFOyX
— PlayMTG (@PlayMTG) September 27, 2025
マイケル・デベネデット=プラマー、2人目の「プロツアー『久遠の終端』」トップ8確定おめでとうございます! #PTEOE
トップ8での戦いも、それに劣らぬ印象的な激戦となった。日曜日の試合はすべてが異例の展開を見せ、準々決勝と準決勝の全6マッチがフルの5ゲームまでもつれ込むという稀有な光景となった。その中には、マイケルがノエ・オフマン/Noé Offmanのネオフォームと繰り広げた「フリー・スペルの嵐」のような準々決勝、そしてミッコ・アイラクシネン/Mikko Airaksinen と激闘を繰り広げたミラーマッチの準決勝も含まれている。
こうしてマイケルは、ここ数年のマジック人生で積み重ねてきた数々の歩み——「Modern Star City Games Open Series」優勝、そして今年初めの米国地域チャンピオンシップでの準優勝と、多くを積み重ねてきたにも関わらず、依然としてまさか自分が立つとは思っていなかった舞台へと辿り着いた。
では、マイケルを決勝で待ち受けていたのは誰だったのか? 彼とトロフィー、そしてマジックの歴史の間に立ちはだかる最後の壁とは?
その正体は、Magic Onlineでラスボスとして知られるPaxti(フランシスコ・サンチェス/Francisco Sánchez)が操るアゾリウス・コントロールだった。「Team Pluto」の一員でもある彼は、古典的な除去と打ち消し呪文、そして新たなドロー呪文《星間航路の助言》を駆使し、挑戦者たちを次々と退け、モダンに新たな恐怖を刻んできたのだ。
Two MTGO giants - killah_suv and Patxi - in the finals of the Pro Tour is an excellent advertisement for the best online MTG platform.
— barczek (@barczeek) September 28, 2025
Want to win the PT? Train with the best - @MagicOnline is truly the best way to get better at the game! pic.twitter.com/IqChrFWZgX
プロツアー決勝戦にMTGOの2人の強豪、killah_suvとPaxtiが出場したことは、オンライン・プラットフォーム「MTGO」の絶好の宣伝になりました。
プロツアーで優勝したいですか? 最高のプレイヤーたちと練習しましょう!
@MagicOnline は、まさにゲームを上達させる最高の方法です!
ベルチャーvs《オアリムの詠唱》+《等時の王笏》、これ以上のモダン決勝戦の組み合わせは望めまい。そして、その日初めて、日曜ステージでの試合がストレート勝ちで決着する。ここ数年の努力がすべて結実し、マイケル・デベネデット=プラマーは史上11人目のモダン・プロツアー王者となったのだ。
「コロナ禍以降、ここ数年は紙でのイベントをひたすら回ってプロツアーに戻ろうとしてきたんです。去年のダラスの地域チャンピオンシップあたりから、準備の仕方が本当に噛み合い始めた感覚がありました。」と彼は語る。「サイドボードプランだけじゃなく、各マッチアップでどう試合を運びたいか、どうすればそう運べるかという全体像を持っていました。」
「その大会ではタイブレーカーでプロツアーに出場できて、その後のイベントでも同じレベルの準備を心がけてきました。そのおかげで、今年は全てのプロツアーに出場することができたんです。」
シーズン開幕当初、彼の目標は「全プロツアーへの出場」であり、これは実に現実的なものだった。だが、今の目標は?
「トロフィー1つで満足するつもりはありません。世界選手権と来年のプロツアーに向けて、さらに時間をかけて準備しますよ。」
Congratulations to Michael DeBenedetto-Plummer, winner of #PTEOE!
— PlayMTG (@PlayMTG) September 28, 2025
He maintained a level head under immense pressure and piloted his Tameshi Charbelcher deck to perfection, defeating a wide Modern field on his way to hoisting the trophy.
Congratulations again, Michael! pic.twitter.com/pPlkeG5n8f
#PTEOE 優勝者はマイケル・デベネデット=プラマー、おめでとうございます!
彼は大きなプレッシャーの中でも冷静さを保ち、タメシ・ベルチャーデッキを完璧に操り、すべてのモダンプレイヤーを圧倒してトロフィーを掲げました。
マイケル、改めておめでとうございます!
そして最後にもう一人、オースティン・デシーダーを見てみよう。《ゴブリンの放火砲》の起動コストを腕にタトゥーで刻んだデッキ・ビルダーだ。
もちろん、彼は新しいタトゥーを入れた。
Man of my word, ig lmao pic.twitter.com/X77PIkdgih
— Austin Deceder, The Binder Grinder (@binder_grinder) September 30, 2025
約束は守る男なんだ
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