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プロツアー『ローウィンの昏明』

観戦記事

プロツアー 『ローウィンの昏明』2日目の注目の出来事

Corbin Hosler

2026年2月1日

 

 《アナグマモグラの仔》は檻に捕らわれた。

 これが、2日間の競技を終えたプロツアー 『ローウィンの昏明』を象徴する見出しだ。デッキ提出数で首位に立ち、大きな脅威と見なされていた《アナグマモグラの仔》は、それを打倒するために特化して調整された複数のデッキの前に失速した。その過程で、さらに5ラウンドにわたる見応えのあるマジックが展開され、多彩な顔ぶれのトップ8が出揃い、日曜の舞台でタイトルとトロフィーを懸けた決着を迎えることになった。

 2026年最初のプロツアーには、大きな期待が寄せられていた。先月の第31回マジック世界選手権以降だけでも大きく動いた刷新直後のスタンダード環境のもと、300人を超えるプレイヤーが雪をかき分けてヴァージニア州リッチモンドに集い、3日間の競技に臨んだ。そして2日間・16ラウンド、数え切れないほどの重要なスタンダードのゲームを経て、一つの構図が浮かび上がった――この週末は、《アナグマモグラの仔》への挑戦者たちのものだった。

 トップ8には、初進出の選手とトップ8の常連が入り混じった顔ぶれが揃った。そこに至るまでの道のりを振り返っていこう。

トップ8進出者が決定

   

 行弘 賢がカイ・ブッディ・プレイヤー・オブ・ザ・イヤー・トロフィを授与された週末、最初にトップ8への切符を掴んだのは、かつてのプレイヤー・オブ・ザ・イヤーだった。ルイス・サルヴァット/Luis Sarvattoはラウンド14で、初日無敗のマルコ・ベラッカ/Marco Belaccaを下し、いち早く進出を決めた。2025年に最後のプロツアーを欠場せざるを得なかったサルヴァットにとって、年間招待を確保するために少なくとも8勝が必要な状況での、まさに好機だった。

 しかし、ドラフト5-1、そして予想外のディミーア《終末の加虐者》でスタンダード7-1という完璧に近い成績を収めたことで、サルヴァットは招待を積み重ねる心配から解放された。ここでのトップ8進出により、今シーズン残りすべてのプロツアーへの出場権を確保したのだ。

 サルヴァットの勝利には大歓声が沸き起こり、Team Cosmos Heavy Playの仲間たちからの力強いハグが、この年最初のプロツアー・トップ8進出者の誕生を祝った。Team Double Infinity(その名にふさわしく)からは2人のキャプテンが名を連ねる。殿堂入りプレイヤーのウィリー・エデル/Willy Edel、そして二度のトップフィニッシャーであり、2人目のトップ8進出者となったフランシスコ・サンチェス/Francisco Sánchezだ。

 こうして最終2ラウンドは、開けたメタゲームの中で、残るトップ8枠を懸けた短距離走となった。すべてが終わったとき、最終的なトップ8は次の顔ぶれとなった。

  • ルイス・サルヴァット(ディミーア加虐者)
  • フランシスコ・サンチェス(イゼット講義)
  • トニ・ポルトラン/Toni Portolan(ティムール調和者)
  • エドゥアルド・サイジャリク/Eduardo Sajgalik(イゼット・エレメンタル)
  • シプリアン・トロン/Cyprien Tron(バント気の技)
  • グリエルモ・ルーピ/Guglielmo Lupi(5色律動)
  • クリストファー・ラーセン/Christoffer Larsen(ディミーア加虐者)
  • マルコ・ベラッカ(ジェスカイ・コントロール)

 トップ8には7種類もの異なるアーキタイプが並び、重複は雪の中では誰も予想していなかったニッチなデッキのみだった。歴史に残るレベルのサプライズと言えるトップ8であり、記憶に残る日曜の舞台を用意する結果となった。

『ローウィンの昏明』を振り返る

 大会を迎えるにあたり、『ローウィンの昏明』のドラフト環境は近年のセットとは一線を画すものとして注目されていた。分かりやすい10種類の2色ペアではなく、5つのサポートされた種族テーマを中心に構成されており、そのうちの一つであるエレメンタルは、可能な限り多くの色をタッチすることを促していた。その結果、このドラフトはスキルを強く要求されるものとなり、『ブルームバロウ』のような「クリーチャータイプ重視」のセットとはまったく異なる展開を見せた。

 多くの成功者がオーソドックスな路線を選ぶ一方で、型破りな選択をしたプレイヤーもいた。初日の注目選手アレクセイ・パウロット/Alexey Paulotは、初日ドラフトを全勝した5色色彩デッキを誇らしげに語っている。またトップ8進出者サルヴァットは単色白で初日3-0を達成し、さらに新たにプレイヤー・オブ・ザ・イヤーに輝いた行弘 賢も、赤緑デッキで3-0という結果を出して周囲を驚かせた。

 最終的に、ドラフトラウンドで3-0を記録したアーキタイプの内訳は以下の通りだ。

  • 白青マーフォーク:15
  • 黒緑エルフ:14
  • 青赤および多色エレメンタル:11
  • 黒赤ゴブリン:8
  • 緑白キスキン:7
  • その他:6

 これはやや意外な結果だった。大会前はエルフが最も安定して強力だと考えられていたが、自己修正が働くドラフト環境の中で、白青マーフォークが予想以上の好成績を収めた。また黒と白が、最も成績の良いアーキタイプと悪いアーキタイプの双方に含まれているという興味深い二面性も見られる。総じて、『ローウィンの昏明』のドラフト環境は、多くのセットでは味わえない形でプロツアーのプレイヤーたちに挑戦を突きつけた。

#PTECLでの4人の全勝ドラフトプレイヤーたち、クリストファー・ラーセン、アレクセイ・パウロット、行弘賢、そしてステファン・シュッツ/Stefan Schützに祝福を! 彼らのが来年初となるリミテッド・チャンピオンシップを目指しているのであれば、素晴らしいスタートとなっています!

彼らのデッキリストは以下の通りです。

 ドラフトラウンドはスタンダードへの舞台を整えた。そして、今大会では開幕前から戦線がはっきりと引かれていた。つまり、《アナグマモグラの仔》 対 世界である。

打倒《アナグマモグラの仔

 

 プロツアー開幕前の評価は、控えめに言っても千差万別だった。先週ポートランドの地域チャンピオンシップで台頭した《自然の律動》デッキこそが、フォーマットで断然最強だと考えるプレイヤーもいた。新戦力である《幽愁》の存在も追い風となり、この1か月で同デッキは「イゼット講義」を王座から引きずり下ろし、世界選手権を席巻したリストはプロツアー 『ローウィンの昏明』の時点では大きく後退。直近の主要スタンダード大会は、緑系デッキが次々と制する流れとなっていた。

 リッチモンドでは、フィールドのほぼ半数が「最強のデッキを使え」という古くからの格言を信じ、《アナグマモグラの仔》のデッキリストを登録した。残る半数は、それに対抗できると確信したデッキを選択。そして、その結果は――。

 

 混沌だ。2日目の中盤に差しかかった時点で、大会トップ10のプレイヤーは実に9種類もの異なるアーキタイプを使用していた。《自然の律動》系デッキは歴史的とも言える低調な成績に終わる一方、全員が同一リストを登録したThe Boulderのようなチームは、ブレイクした「イゼット・スペレメンタル」で躍進。初日は合算勝率70%超を記録した。土曜日にはその数字もやや落ち着いたが、それでも複数のチームメンバーを上位に送り込むには十分だった。

The Boulderの最終結果は以下。

15人中15人が2日目進出。
15人中12人が次のプロツアーの権利獲得。
俺? 10勝6敗。

なんてプロツアーだ!

 彼らだけが緑系デッキの綻びを見抜いたわけではない。会場で《終末の加虐者》を登録したのはわずか7人だったが、そのうち2人(サルヴァットとラーセン)がトップ8へ進出した。また、Team Sanctum of Allも例によってローグデッキを持ち込み、成功を収めた。チームのティムールデッキでは《強靭形態の調和者》が《氷耕しの探検家》と並んで活躍し、その結果、トニ・ポルトランはトップ8へ進出。これは、プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング — FINAL FANTASY』で準決勝に進出して以来、キャリア2度目のトップフィニッシュとなった。

 フォーマットの質感を最も大きく変えた要素は何だったのか?――それは、『ローウィンの昏明』の「想起」持ちエレメンタルだ。

 

 エレメンタルの柔軟性は、「講義」に後れを取っていたほぼすべてのデッキにとって穴を埋める鍵となった。『ローウィンの昏明』でショックランド・サイクルが完成し、マナベースが改善されたことで、プレイヤーは自由に実験できるようになった。そして実際にそうした。中には《うろつく玉座》を採用し、エレメンタルの誘発を倍化させるところまで踏み込むプレイヤーもいた。別のチームは《刻み群れ》をフィニッシャーとして据え、さらにこの週末は、従来型のジェスカイや「ディミーア・コントロール」ですら全体除去で盤面を一掃し、結果を残している。

 その結果生まれたのは、極めてオープンなメタゲームだった。トップ8には7種類の異なるデッキが並び、トップ16に目を向けても15種類もの異なるリストが存在していた。

トップ8の冒険へ

 こうしてトップ8が出揃った。そこに並ぶのは、誰一人として事前に予測できず、十分なテストも不可能だったマッチアップばかりだ。トップ8進出者にとっては準備に追われる長い土曜の夜になるかもしれないが、その先には近年でも屈指の注目を集める日曜の舞台が待っている。配信は2月1日(日)午前11時(ET)開始。Play MTG公式YouTubeチャンネル、またはtwitch.tv/magicでぜひご覧あれ。(日本公式配信の情報はこちらから)

 
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