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プロツアー『ローウィンの昏明』

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プロツアー『ローウィンの昏明』初日の注目の出来事

Corbin Hosler

2026年1月31日

 

 雪に包まれたバージニア州リッチモンドへようこそ。ビッグマナが主役のスタンダード、プロツアー 『ローウィンの昏明』、そして2026年競技マジックシーズンの幕開けだ。

 週末は、カイ・ブッディ/Kai Buddeを偲ぶ黙祷という形でマジックの過去に敬意を表するところから始まった。続いて現在を祝う場として、2025年のプレイヤー・オブ・ザ・イヤーである行弘 賢にカイ・ブッディ プレイヤー・オブ・ザ・イヤートロフィーが授与され、そこから『ローウィンの昏明』、そしてマジックの未来へと深く踏み込んでいった。

 こうしてプロツアー 『ローウィンの昏明』の舞台は整った。雪に閉ざされたリッチモンドの街には300名を超える選手が集結。悪天候により欠航や調整不足も相次いだが、金曜日のドラフトが始まる頃――視聴者が世界王者セス・マンフィールド/Seth Manfieldの難解なドラフトを見守る中――決して平常ではなかった1週間は、再びプロツアーおなじみのリズムを取り戻した。カードをシャッフルする音、「ジャッジ!」と呼ぶ声が会場に響き、2026年のプロツアーシーズンが正式に幕を開けた。

 

 大会は二度の世界王者であるセス・マンフィールドのドラフトから始まった。サポートされているアーキタイプが比較的少ないドラフト環境を探る中で、王者は1-2という厳しい立ち上がりを強いられることになる。『ローウィンの昏明』は従来の2色ペア中心の構造ではなく、5つの主要なリミテッド・アーキタイプを軸に設計されており、一見すると分かりやすいものの、経験豊富なチームが突ける隙も多いリミテッドラウンドの舞台が整えられていた。

 そこから舞台は、ここ数か月で最も興味深いスタンダード・メタゲームの一つへと移る。最近台頭した《アナグマモグラの仔》が話題をさらい、《自然の律動》系デッキの一部として、フォーマット最強とされてきた「イゼット講義」をほぼ完全に追い越す勢いを見せていた。大会前の時点でスタンダード環境に対する評価は選手ごとに大きく割れていたが、5回戦のスタンダードを経て、すべてのプロツアー出場者に突きつけられていた問い――ランプするべきか、それとも否か――に答えが示された。

 最終的に首位に立ったのはマルコ・ベラッカ/Marco Belaccaだった。イタリア人プレイヤーである彼は、クリーチャーがわずか1枚しか入っていない「ジェスカイ・コントロール」で一度もゲームを落とすことなくフィールドを驚かせ、2日目へ向けて単独トップとして先頭に立つことになった。

マルコ・ベラッカ/Marco Belacca

 

『ローウィンの昏明』を学ぶ

 「最初は『ブルームバロウ』みたいに、部族がレールに乗って進む環境だと思っていたけど、実際は違った」とCosmos Heavy Playのキャプテン、アンソニー・リー/Anthony Leeは語る。「非サポートのアーキタイプにも十分に入っていけるし、実際にそうしたドラフトをすることも多かった。」

 『ローウィンの昏明』は、プレイヤーにこれまでとは異なる種類の挑戦を提示した。プロツアーは常にドラフトから始まるが、今回のドラフト環境はユニークで、しかもリリース直後だったため、例年以上に注目を集めた。最も人気の高い2色アーキタイプは、競技者の間では概ねエルフ、キスキン、マーフォーク、ゴブリンの順で評価されていた。フェアリーを軸とする青黒アーキタイプも存在したが、フェアリー向けの見返りが少なく、他のクリーチャータイプほど安定したパワーは発揮できなかった。

 一方で、《刈り柳》や《あばら家投げ》のようなカードが、別の組み合わせへと引っ張る力も持っていた。ドラフトが難しい青赤の「色彩」デッキですら、3~5色になることが珍しくない。アレクセイ・パウロット/Alexey Paulotはまさにその道を選び、ドラフト3-0を達成した。

 「自分のドラフトには本当に満足している」と彼は語る。「席は厳しく、何も開いていなかった。5色色彩をドラフトして、それを成立させたんだ。」

 「成立させる」という感覚は、プロツアーのドラフトではしばしば重要なテーマとなる。MTGアリーナやMagic Onlineで見かけるような超高出力のリミテッドデッキは存在せず、競争相手のレベルが高すぎて、そうした甘いミスは許されない。その結果、プロツアーのドラフトデッキは粘り強く、スローなものになりがちだ。だからこそ、《燃え盛る好奇心》のように長期戦で真価を発揮するカードの価値が高まる。

 「まずは明確に空いているレーンを見つけることを目標にしている。それができなければ『色彩』を探す」と語るのは、プロツアー 『ローウィンの昏明』のDiscord内「#looking-for-team」チャンネルで結成されたTeam #LookingForTeamのキャプテン、ドリュー・デベヴォイズ/Drew Debevoiseだ。「そこから先は多相・クリーチャーの価値が上がっていく。最終的に一番良いと分かったのはエルフだった。」

 デベヴォイズはTeam #LookingForTeamのためにテストハウスの手配も行った。これはプロツアー初参加者が過半数を占めるチームにとって、初めての経験でもあった。その副次的な影響と、過去10年ほどの競技マジックコミュニティの入れ替わりにより、プロツアー出場者の多くは、時間制限付きでコールされるドラフトを実際に経験したことがなかった。実際にやってみると、これは思っている以上に難しい。そこでチームは、サイモン・ニールセン/Simon NielsenがドラフトをコールしているYouTube動画を見つけて練習した――広告が流れて、最もコミカルな形でタイミングが崩れるまで。

 とはいえ心配は無用だ。大会直前、チームはプロツアーのジャッジを招いて最終調整を行い、このチームは少なくとも金曜朝のドラフトに万全で臨める状態となった。土曜の2日目ドラフトを終えればフォーマットの全貌がさらに見えてくるだろうが、現時点でも、このセットが当初の想定以上に奥深いことは明らかだ。

スタンダードの現在地

 『ローウィンの昏明』は、少し前まで「解かれた」と思われていたスタンダード環境を大きく揺さぶった。昨年の第31回マジック世界選手権では、Team TCGplayerが「イゼット講義」で環境を攻略したように見えた。しかしその支配が進むにつれ、世界は追いつき、状況は変化していく。ここ1か月で《アナグマモグラの仔》デッキが台頭したのがその結果であり、特に『ローウィンの昏明』のリリースと《幽愁》がイゼットの厄介な盤面を抑制したことが追い風となった。直近の各地の地域チャンピオンシップでも、《ばあば》の退潮と《アナグマモグラの仔》の台頭が反映されている。

 こうして金曜日のスタンダード5回戦の舞台は整い、フォーマットは期待を裏切らなかった。

スペレメンタルの登場

 チーム名は「The Boulder」、そして彼らのデッキはイゼット・スペレメンタル(Spellemental)だ。16人からなるこのテストチームは、シーシュポスの岩にちなんで名付けられ、その努力は大会で最も興味深い坂を登る結果につながった。《刻み群れ》を用いて完成させたイゼット Spellementalsは、名前もパワーレベルも誇りに思えるデッキだ。

 

 上位域に《かまどの精》と《渦泥の蟹》を据えたこの《刻み群れ》軸のデッキは、《自然の律動》以降の次なる進化形を示している――少なくとも彼らはそう考え、The Boulderの全員がこのデッキを登録した。

 「初期から有力候補だった。多くのメンバーが早い段階で移行したのは、その証拠だ。未知数だが良いデッキだと思っていた。提出前日に一部で不安が広がったが、最終的には全員が戻ってきた」と語るのは、元プロツアー王者でチームキャプテンのアンドリュー・エレンボーゲン/Andrew Elenbogenだ。「《アナグマモグラの仔》デッキに対しては勝率65%、それ以外には45%。メタゲームの内訳を見たときは本当に満足した。」

Andrew Elenbogen - 「Izzet Spellementals」
プロツアー『ローウィンの昏明』 / スタンダード(2026年1月30~2月1日)[MO] [ARENA]
6 《
2 《マルチバースへの通り道
4 《リバーパイアーの境界
4 《蒸気孔
4 《尖塔断の運河
-土地(20)-

4 《刻み群れ
4 《渦泥の蟹
4 《かまどの精
-クリーチャー(12)-
4 《選択
4 《噴出の稲妻
2 《スパイダーセンス
1 《跳ね弾き
4 《冬夜の物語
1 《呪文貫き
1 《洪水の大口へ
3 《呪文嵌め
2 《愛着を捨てる
2 《氷河の龍狩り
4 《手練
-呪文(28)-
1 《軽蔑的な一撃
2 《液状の重罪犯、ハイドロマン
1 《今のうちに出よう
2 《無効
1 《削剥
1 《氷河の龍狩り
2 《紅蓮地獄
1 《轟く機知、ラル
2 《魂標ランタン
1 《舷側砲の一斉射撃
1 《否認
-サイドボード(15)-

 The Boulderは、自分たちには勝ち筋があると信じている。もっとも、先週末の地域チャンピオンシップで準優勝を果たしたメイソン・ブオナドナ/Mason Buonadonnaが指摘したように、同じことは先週末(《アナグマモグラの仔》が勝ったとき)も、その前の週(やはり《アナグマモグラの仔》が勝ったとき)にも、無数のプレイヤーが考えていた。

 エレンボーゲンのチームだけが、《自然の律動》や他の《アナグマモグラの仔》デッキに対する対策を掴んだと考えているわけではない。マット・スパーリング/Matt Sperlingは、ガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassif主導のクラシックな「ディミーア・コントロール」で全勝を記録し、0-2という最悪のスタートから、金曜日を6-2で終えるところまで巻き返した。彼は前年、別の予定のためにプロツアー『久遠の終端』を欠場せざるを得なかったが、ここでその鬱憤を晴らした形だ。

 他にも、盤面を一掃するために《審判の日》系のデッキを選ぶプレイヤーや、特にリアニメイトを強化した『ローウィンの昏明』の新カードに活路を見出す者がいた。そして話は、2023年の世界王者ジャン=エマニュエル・ドゥプラへと繋がる。今週末の会場で彼は多忙を極め、《並外れた語り部》にサインをしつつ、自らそれを唱えてみせている。

 

 《最後の贈り物の運び手》を捨てて《スーペリア・スパイダーマン》をサーチするにせよ、勝負を決める《孔蹄のビヒモス》を掘りにいくにせよ、《並外れた語り部》は「想起」持ちエレメンタルサイクルととも『ローウィンの昏明』をフォーマットへ大きく持ち込んだ存在だ。ドゥプラがその好機を逃すはずもなかった。

「みんなが僕にそれを使うのを期待しているし、僕も本当に使いたかった」と、ジャン=エマニュエル・ドゥプラは世界選手権優勝者のカード、《並外れた語り部》について語った。「でも、そのカードを使うためにわざと弱いデッキでプレイするべきだったろうか? 幸いにもそれは非常に強力で、調べる必要がなかったよ。」

 最終的に、初日のリーダーボード上位は、フィールドの30%が《自然の律動》デッキだったことから想像される光景とはまったく異なるものとなった。7勝1敗以上の成績を残した《自然の律動》使いはわずか2人にとどまり、代わってエレメンタルが複数の形で台頭。松浦 拓海の「ボロス・ドラゴン」、ルイス・サルヴァット/Luis Salvattoのディミーア《終末の加虐者》、さらにはリッチモンド以前には多くが見限っていたアーキタイプ──つまりコントロール──までもが結果を残した。

Marco Belacca - 「Jeskai Control」
プロツアー『ローウィンの昏明』 / スタンダード(2026年1月30~2月1日)[MO] [ARENA]
1 《コーリ山の僧院
1 《轟音の滝
2 《湧霧の村
2 《優雅な談話室
4 《フラッドファームの境界
4 《神聖なる泉
2 《行き届いた書庫
2 《リバーパイアーの境界
1 《平地
4 《蒸気孔
3 《サンビロウの境界
-土地(26)-

1 《キヨシ島の大ウナギ
-クリーチャー(1)-
1 《削剥
4 《星間航路の助言
4 《失せろ
4 《ジェスカイの啓示
2 《呪文嵌め
4 《喝破
2 《審判の日
4 《稲妻のらせん
4 《食糧補充
2 《安らかなる眠り
2 《古代魔法「アルテマ」
-呪文(33)-
2 《ティシャーナの潮縛り
1 《悪魔祓い
2 《跳ねる春、ベーザ
2 《無効
1 《紅蓮地獄
1 《奔流川の記念碑
1 《審判の日
2 《勝利の楽士
2 《倦怠の宝珠
1 《キヨシ島の大ウナギ
-サイドボード(15)-

 ベラッカはドラフトを全勝でスタートし、その後は「ジェスカイ・コントロール」でスタンダードを快走、ついに唯一の無敗プレイヤーとして残った。彼のジェスカイリストは、クリーチャーがわずか1枚(《キヨシ島の大ウナギ》)という構成で、《ジェスカイの啓示》を軸に勝利を重ねていった。この快進撃や、スパーリングが「ディミーア・コントロール」で4-1を記録したことも踏まえると、スタンダードのメタゲームは──少なくとも現時点では──まだ解き明かされたとは言えない。

今後の展望

 こうして2日目へ向けた舞台が整った。土曜日の競技に参加する資格を得たのは192名。もう一度のドラフトと、スタンダードでの最終スプリントを経て、日曜日のトップ8へと進むことになる。2日目の配信は、1月30日(土)午前11時(ET)開始だ。(日本公式配信の情報はこちらから)

 
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