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プロツアー『霊気走破』

戦略記事

「プロツアー『霊気走破』」のドラフト:コーナーには何がある?

Marshall Sutcliffe

2025年2月17日

 

 11日間。

 シカゴで開催されるプロツアーに出場するプレイヤーが『霊気走破』ドラフトを練習できるのは、たったこれだけの期間だけです。MTGアリーナでセットがリリースされた後、彼らがシカゴに移動し、パックを開封してトップ8を目指しドラフトを開始するまでの期間です。

 私も同じような立場に居ます。ポール・チェオン/Paul Cheontoと共に金曜日の朝から試合の実況を務める予定であり、出場者と同様に、ドラフトを短い期間で理解しようと努めています。

 この限られた時間で戦略を組み立て、経験則に頼り、迅速に判断を下す必要があります。そこでこの記事では私が初期段階のドラフト分析を行い、イベント前にある程度の結論を導き出す過程を紹介します。

指標アンコモン

 嬉しいニュースとして『霊気走破』は伝統的な2色セットであり、多くのプレイヤーにとって馴染みやすい環境です。各2色の組み合わせにはそれぞれ明確な戦略が割り当てられています。一部のカードは複数のアーキタイプにとって有用ではあるものの、特定の色の組み合わせに特化したカードも多いです。以下に各アーキタイプの簡単なガイドを示します。

 

 デザイナーは、各組合せ別に1枚ではなく2枚の指標アンコモンを用意してくれています。初心者向けに解説すると、指標アンコモンは次のようなカードを指します。

 

 《ガスタルのスリル探し》を見れば、これは黒赤のデッキが何をするかのヒントになっていることがわかります。黒赤はエンジン始動!に重点を置いておいています。絶対ではありませんが、黒赤デッキはエンジン始動!と最高速度に達することを優先すべきでしょう。

 《轟雷のブルードワゴン》は少し曖昧です。サイクリング・コストが安いことは簡単に墓地に送れることを意味します。このことから、墓地を利用するサブテーマがあることが推察できます。これは後で解説します。

 《帰還航路》ば直接的で分かりやすいです。アーティファクトやカードを引くこと、ロングゲームを重視しています。

 これらの指標アンコモンは各アーキタイプの出発点として適切ですが、セットの入り口に過ぎません。

スタート地点に立つ

 セットを分析する際は、最初のスタート地点を決めておくことが大事です。ドラフトが研究されていくと条件も変わるため、スタート地点は固定ではありません。しかし何もわからない状態から始めるのは一歩遅れたところに立っているのと同じです。

 とはいえ、最近のフォーマットにおける速さは「非常に速い」傾向にあるでしょう。最近のセットは早いゲームに重点が置かれています。つまり、1マナと2マナのカードや、攻撃的なカラーパイ、低コストの除去に注目するべきです。

 攻撃的なデッキから始めるもう1つの理由は、シナジーベースのデッキよりもドラフトが簡単なためです。プロツアーまでの短い期間で分析する場合は優先順位を決めておく必要があります。この短期間で繊細なデッキを仕上げるのは難しいでしょう。

 アグレッシブなデッキの最もわかりやすいスタート地点は赤白です。さっそく指標アンコモンを見てみましょう。

 

 《クラウドスパイアの統括者》と《クラウドスパイアの飛空二輪車》はテーマが明確に伝わってきます。想像力を必要としません。統括者は乗騎や機体を多用することを望んでおり、飛空二輪車は戦場に出ると即座にあなたの盤面を強化し、その後も使いやすい機体として空を駆けていきます。

 次は乗騎を見ていきます。乗騎は単なる追加の能力を持ったクリーチャーであり、攻撃的なデッキはとにかくたくさんのクリーチャーを必要とします。機体は乗るためのクリーチャーが必要になるため、ちょっと注意が必要です。どの機体をデッキに入れるかは慎重に選ぶのが賢明でしょう。

 では、この色でよく使われる乗騎はなんでしょうか?

 

 興味深いことに、これらのコモンの乗騎はあまり強力には見えません。アーキタイプが機能しないという意味ではなく、乗騎と機体の戦略が強力とは言えなくなりそうだという意味です。軽い乗騎はデッキの動きをスムーズにするために必要なためです。

 とはいえ、乗騎ではない低マナコストで強力な攻撃的カードは何枚か存在します。

 

 《稲妻の一撃》はほとんどのセットで最高のコモンの1枚であり、最も効率的な除去呪文の1枚でもあります。《免れぬ激突》は攻撃的なデッキやたくさんのアーティファクトが存在するフォーマットに適しています。

 全体的に、赤白にはあまり心が惹かれません。この分析に基づくと、このセットは最初の想定よりも遅い環境であると考えられます。

2回の試行

 この記事を書き始めてから、『MTGアリーナ』でドラフトを2回行うことができました。その経験から、2回のドラフト両方でピックしたアーキタイプについて、大胆(で恐らく無謀)な仮説を立てようと思います。

 これは危険な領域に踏み込んでいます。たった2回のドラフトからざっくりとした結論を導き出すのは推奨されません。しかし私は非常に感動したため、このアーキタイプの分析を行うことにしました。率直に言うと、素晴らしいアーキタイプです。

 もし私がプロツアーのためのテスト・チームに所属していたら、このアーキタイプを最も強力なデッキの1つであると伝えるでしょう。

 しかし、私はテスト・チームの一員ではなく、新セットを非常に楽しんでいる一人のプレイヤーとしてこの記事を書いているため、単純に「これは素晴らしいアーキタイプだ」と宣言し、あとは流れに任せようと思います。

黒緑リアニメイト

 前置きはこれくらいにしておきます。私がドラフトで2回作成したデッキは黒緑リアニメイトです。これは素晴らしいデッキでした。正確に言うと、素晴らしすぎて驚きました。黒緑はここ最近の数セットでは中々活躍の場を得ることはできませんでしたが、今回は非常に強力だと感じています。

 リアニメイト戦略は、次の3つの要素から成り立っています。

  • リアニメイト呪文
  • リアニメイトする対象
  • 墓地にリアニメイト先を送り込む方法

 『霊気走破』にはアンコモンに2枚のリアニメイト呪文があり、どちらもとても強力です。

 

 《ブルードハート・エンジン》は素晴らしいカードです。毎ターン諜報を行うことで墓地にクリーチャーを落としたり、不要なカードを弾いたりできます。さらに、わずか4マナでクリーチャーか機体を蘇生することができるため、優れて効率的なリアニメイトをいつでも使うことができます。

 《軌道修正》には小さなボーナスが付いています。1/1の操縦士・トークンを作成します。この追加のクリーチャーはブロック要員としても機能し、盤面の劣勢に抗うのに役立ちます。

 このセットではクリーチャー(または機体)を墓地に送り込むのも簡単です。自身を墓地に送るカードも存在しています。通常の環境では手札からカードを上手に捨てる方法を探す必要がありますが、このセットではライブラリーを切削したり、諜報したり、サイクリングしたりして送り込むことができます。

 

 このリストからわかるように、切削が主な送り込む手段であり上手く働いてくれることがわかります。《道穴のモグラ》はこのデッキにとって非常に強力なコモンのエンジン役です。カードを3枚削り、ほとんどの場合に土地を入手でき、さらにブロッカーとてしてもよいスペックです。このアーキタイプにぴったりなカードです。

 《巡回する軟泥》も見た目以上に使い勝手がよいです。これ自身がリアニメイトの手段かつそこからボーナスを得る存在だからです、唯一の弱点として、誘発した切削能力がスタックに乗っている間は2/2のため、《屑鉄圧縮機》や《路上の暴走》のようなインスタントの軽量除去に弱い点があります。それでも、少し墓地を肥やして準備をしておくだけで、6/6や7/7の巨大サイズになってくれます。

 このセットには、特に魅力的なリアニメイト対象が何枚も存在します。重要なのは、それらのうち何枚かはサイクリングを持っており、自身を墓地に捨てつつカードを1枚引けることです。

 

 どれもがサイクリングを持ち、アンコモンであり、リアニメイトするべき強さを持っています。どれか1枚を4ターン目に蘇生する動きを想像してみてください。2ターン目に《ブルードハート・エンジン》を置き、3ターン目にどれか1枚をサイクリングし、4ターン目にエンジンの能力を起動してそれを戦場に戻す。リミテッド環境でこれほど強力な動きをしてよいのは、まさしく驚異的と言えるでしょう。

 そしてこれらすべてはアーキタイプの基本的な部分に過ぎません。コモンとアンコモンのみを取り上げていました。ここにセットのとても強力なレアや神話レアを混ぜると、何が起きるのか想像してみてください。

 

ちょっとだけ味見

 ここでは、新しいリミテッド環境を分析する際の初期段階がどのようなものかを簡単に説明しましたが、実際には、多くのドラフト、プレイ、コミュニケーション、そして理論構築を伴う非常に綿密なプロセスが必要となります。

 私はこのアーキタイプで決着をつけましたが、プロツアーでプレイヤー達が対戦テーブルに着席した後、何が本当のトップなのかわかるでしょう。もしかしたら、このクレイジーなリアニメイト・デッキが環境を支配するかもしれません。

 放送は土曜日午前2時(日本時間)に始まり、現地時間の午前中は『霊気走破』ドラフト、午後に暫くしてからスタンダード構築の対戦が行われます。ご自宅からtwitch.tv/magicまたは『マジック:ザ・ギャザリング』公式YouTubeチャンネルで視聴できます。詳細は「プロツアー『霊気走破』」観戦ガイドをご確認ください。それでは生放送、またはシカゴの「プロツアー『霊気走破』」現地でお会いしましょう!

@Marshall_LR

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