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プロツアー『霊気走破』

観戦記事

プロツアー『霊気走破』2日目の注目の出来事

Corbin Hosler

2025年2月23日

 

 エンジン再始動!

 熱狂の渦の中、引き続き「プロツアー『霊気走破』」の2日目が過ぎていった。会場の「MagicCon: Chicago」に17,000人以上のマジックファンが訪れている中、初日を突破した200人強のプレイヤーが再集合し熱い対戦を繰り広げた。新セットのカードはドラフト・ラウンドでその活躍する姿を披露し、続くスタンダード・ラウンドでは難解な環境に対する各自の回答がぶつかり合い、トップ8進出を懸けたバブル・マッチが始まった。

 金曜日の時点でここ数年で最大級の参加者数を誇った今回のプロツアーだが、2日目に駒を進めるためには壁を超える必要がある。それでも、2日目には219名のプレイヤーが残った。ベン・スターク/Ben Starkとマット・ナス/Matt Nassは初日に無敗のリードを築いたが、日曜日のトップ8への進出を掴むには、どのプレイヤーもミスが許されない状況だったのは間違いないだろう。

 そして、壮絶な戦雲が迫っていた。土曜日の朝一番、ドラフトの最上位ポッドに集まったプレイヤー達は、初日のドラフト戦績合計がなんと43勝1敗であり、最強のドラフト巧者のみが顔を突き合わせて座っていた。これは世界最高峰の大会を歴史の中でも前代未聞の出来事だった。しかしプロツアー2日目は止まることなく進行されていく。ドラフトの後はスタンダード5回戦が行われ、予想外の展開が続いていった。そして、8名のプレイヤーが日曜日の決勝トーナメントへの切符を手に入れた。

 しかし、驚くことにマット・ナスはたったの13ラウンドでトップ8進出を確定させた。マットはコンボデッキの名手(アイアンワークスの使い手として名高い)として知られているが、今回は初日から通算10連勝を果たし、13回戦目には12勝目を刻み込んだ。マットはこの勝利で3度目となるトップ8を確定させた。

 マットは版図大主を手に取り、最初にトップ8進出を確定させた。Ultimate Guardチームとのリミテッド練習と版図デッキの圧倒的な活躍が彼を押し上げた。すぐに残り7つの席も埋まり、2025年最初のプロツアーの王者を掴む戦いが始まろうとしている。

 見事トップ8に進出したのは次の8名だ。

「プロツアー『霊気走破』」トップ8デッキリストはこちら

  • マット・ナス/Matt Nass(版図大主)
  • ゼヴィン・フォースト/Zevin Faust(ゴルガリ墓地利用)
  • 原根健太(ジェスカイ眼魔)
  • ルーカス・デュコウ/Lucas Duchow(グルール力線)
  • クリストファー・レナード/Christopher Leonard(版図大主)
  • ジェームズ・ディミトロフ/James Dimitrov(版図大主)
  • リウ・ユーチェン/Yuchen Liu(グルール・マウス)
  • イアン・ロブ/Ian Robb(赤単アグロ)

 以下で、トップ8に到達するまでの過程を見ていく。

『霊気走破』で自分だけのコースを見つける

 かつては当たり前の時代もあったが、最新セット発売直後のプロツアーは非常に難易度が高くなる。プロツアーは『霊気走破』発売から僅か10日後に開催されたため、プレイヤーや調整チームは普段よりも短い期間で準備を進める必要があった。調整用ハウスで2週間合宿ができると最高だが、それでもフォーマットのすべてを理解するには時間が足りなくなる。

 そこで、マット・スパーリング/Matt Sperlingは創造的路線でプロツアーの準備を行った。彼は2019年のプロツアーで準優勝もしており、「プロツアー『霊気走破』」のスケジュールはタイトであることから独自の計画を立てた。

 スパーリングは次のように述べた。「ドラフトは出発前に数回しかプレイする時間がなかったため、できるかぎり多くのコンテンツから情報を得るようにしました。公園で子供と遊びながらドラフト動画を視聴したり、チームメイトからの情報をメモしてまとめたりしました」

 この戦略は成功し、スパーリングは今週末のリミテッドをたったの1敗で駆け抜け、最終的に11勝5敗の戦績を収めた。惜しくもトップ8には届かなかったが、彼はサム・ブラック/Sam Blackのドラフト・アーキタイプ解説やLimited Level-Upsといったコンテンツがフォーマットへの早期理解に役に立ったと語った。スパーリングはチームの知識を最大限活用し、そしてドラフト・ガイドとして10の指針を作成した。この指針に沿って、スパーリングはドラフトを進めていた。

 このガイドラインの1つに、特定の色の組み合わせを強く推奨する内容がある。プロツアーの前から緑が最も優れた色であることは誰もが知っていたが、スパーリングは黒も同レベルで強力だと主張している。緑と同様に、黒も強力で使いやすいコモンが揃っているとのことだ。

 別の観点は『霊気走破』には機体が満載されている点だ。機体はクリーチャー以外の呪文の枠を奪う存在でもある。『霊気走破』のコンバット・トリック呪文は強力なものが揃っているが、それらを使うためにはクリーチャーが必須となる。機体のピックはそれらを上手く使うデッキ構築と競合するパターンへ着目している。スパーリングは2回のドラフト両方で準備した戦略に沿う自分だけの道を発見した。最初に《爆弾車》をピックした後、これをタッチしつつも中心に据えたデッキ構築の計画を立てていた。

 スパーリングは次のように説明してくれた。「このセットは、色のタッチが非常にやりやすいです。ドラフト中にタッチすると決めたら、土地をピックしていきましょう」「土地を取れば、安心してタッチすることができます。実際、私のドラフトでは2回とも4枚か5枚の基本でない土地を入れていました。タッチを意識して土地を取ることによって、最初にピックしたカードがメインの色と合わなくてもそれを入れることができました」

これが最高のドラフトデッキです。投稿するのを忘れてました

 次の6人が週末のリミテッド・ラウンドで6-0の完全勝利を収めた。リウ・ユーチェン、ゼヴィン・フォースト、マシュー・ジャイデス、ヘレナ・ブレイク、中原大貴、そして一目でわかるアンドレア・メングッチだ。ドラフトの結果は、プロツアーでの戦績を大きく左右する。何故なら、両日とも最初に行うのはドラフトのため、多くのベテランプレイヤーはここでライバルに差をつけるのが最も重要だと考えている。

『霊気走破』ドラフトで6-0したドラフト名手達!
初日と2日目の両日で素晴らしい活躍を披露した6人のプレイヤーに拍手をお送りください!

ドラフト6-0です!!!
リミテッドのために最高の準備をしてくれたチーム@worldlycounselに感謝を申し上げます。
私は今8-3であり、版図で残りのスタンダード5ラウンドをプレイします!

 何人かはリミテッドの力によりトップ8に勝ち進んでいますが、多くの選手はスタンダードでの勝利でトップ8を掴み取りました。

スタンダードは驚きの連続

 「プロツアー『霊気走破』」が金曜日に開会したとき、私達はスタンダードの環境を知り尽くしていると考えていた。『ブルームバロウ』のネズミがスタンダードのスタート地点に立ち、続いてデーモンを中心にしたデッキ、『MTGアリーナ』の挑戦的なプレイヤーが生み出したセルフバウンスを活用したデッキ、そして最近一新された版図デッキなど、多くの変遷を体験してきた。私達はある3つのデッキ、ビッグスリーがシカゴの中心になり、それらで約半数を占めると予想していた。メタゲームを完全に把握できていたはずだった。

 しかしこれは大きな勘違いだった。初日の終了段階で、この3つのアーキタイプのうち勝率が50%を超えたのは版図デッキだけだった。2日目のスタンダードが終わりに近づくにつれ、想像より遥かに多様なデッキが活躍していたことが明らかになった。最終的に日曜日のトップ8には6つのアーキタイプが残ったが、放送からこの週末を通してスタンダードでいくつもの挑戦的なデッキが成功を収めたのがわかる。

 その中でもとくに注目を集めたのがゼヴィン・フォーストのゴルガリ墓地利用デッキだ。

独自のゴルガリ墓地利用を駆使し、ゼヴィン・フォーストが初めてのプロツアーでトップ8進出!

ゼヴィン・フォースト/Zevin Faust - 「ゴルガリ墓地利用」
プロツアー『霊気走破』 / スタンダード(2025年2月21~23日)[MO] [ARENA]
4 《
4 《花盛りの湿地
3 《ラノワールの荒原
4 《地底の遺体安置所
4 《ウェイストウッドの境界
1 《
-土地(20)-

4 《鞘破りの群れ
4 《虚ろなる匪賊
2 《キチン質の墓地歩き
2 《苦難の収穫者
4 《ベイルマークの大主
4 《迷いし者の魂
4 《かじりつく害獣
4 《脱皮の世話人
4 《陥没穴の偵察
-クリーチャー(32)-
4 《やり場のない悔恨
4 《豆の木をのぼれ
-呪文(8)-
1 《苦難の収穫者
2 《強情なベイロス
1 《飢えた亡霊
4 《屑鉄撃ち
2 《機能不全ダニ
3 《恐怖の潮流
1 《強迫
1 《切り崩し
-サイドボード(15)-

 「クレイジーだ、信じられない!」フォーストはスタンダードで圧倒的な勝利を決めた後、驚きの表情とともに発言した。この勝利により、フォーストはNerd Rage Gamingの調整チームの一員として、プロツアー初出場でのトップ8を果たした。

 このようにどのデッキにも成功の機会がある環境では、何が起こっても不思議ではない。フォーストは《虚ろなる匪賊》と《鞘破りの群れ》を完璧に使いこなした。

 ジェスカイ眼魔に《逸失への恐怖》と《太陽の執事長、インティ》を加えたミッドレンジとコンボの両刀デッキはどうだろうか?トップ8を決めた原根健太は、見事に両刀を使いこなした。

 《全知》や《ファイレクシアの抹消者》も面白そうだ。クリストファー・ラーセン/Christoffer Larsenはこのファイレクシアを象徴する4マナのクリーチャーを暴れさせ、スタンダードで9勝1敗の戦績を収め、最終的に11勝5敗でプロツアーを終えた。

 
クリストファー・ラーセン/Christoffer Larsen - 「ゴルガリ抹消者」
プロツアー『霊気走破』 / スタンダード(2025年2月21~23日)[MO] [ARENA]
4 《ウェイストウッドの境界
4 《ラノワールの荒原
4 《眠らずの小屋
7 《
4 《花盛りの湿地
-土地(23)-

1 《苦難の収穫者
1 《強情なベイロス
4 《ファイレクシアの抹消者
2 《分派の説教者
4 《名もなき都市の歩哨
4 《苔森の戦慄騎士
1 《腐食の荒馬
-クリーチャー(17)-
1 《ギックスの命令
3 《大渦の脈動
3 《強迫
4 《薮打ち
3 《喉首狙い
2 《苦痛ある選定
4 《切り崩し
-呪文(20)-
1 《強情なベイロス
2 《ドロスの魔神
1 《温厚な襞背
1 《ギックスの命令
1 《締めつける瘴気
1 《強迫
2 《羅利骨灰
2 《石の脳
4 《不浄な別室 // 祭儀室
-サイドボード(15)-

 レースはまだゴールしていない。スタンダードにどんな対戦が起こり、ゴールに誰がたどり着くのか、白熱する試合を見守りたい。

プロツアーの熱気と興奮

 プロツアーの本質は、マジックというゲームが生み出すコミュニティが集まり、祝う場である。数百人のプレイヤー、ジャッジ、スタッフが数ヶ月ごとに一堂に会し、共通した情熱を分かち合い、友人や同郷のプレイヤーを応援する。

 ニュースデスク担当のライリー・ナイト/Riley Knightが楽しんでいるのも当然だろう。

 その他のニュースとして《巨大化》カードがスタンダードに帰ってきた。具体的には《巨怪の怒り》が数ヶ月に渡ってフォーマットを覆い尽くしており、飛び交う強化呪文でマウスが強大に育っていく試合を何度も目にしてきた。

 しかし、ネズミがチーズに辿り着く方法は複数ある。トップ8のルーカス・デュコウは独自の方法で日曜日の決勝トーナメントの席を確保した。

ルーカス・デュコウは機転を利かせて対戦相手のクリーチャーを強化し、ギリギリでゴールを踏み「プロツアー『霊気走破』」トップ8に進出!

 上位卓にいたのは新顔だけではなく、真の古参や殿堂入りプレイヤーも2日目に上位進出を果たしており、マット・ナスはトップ8に、ベン・スターク、マット・コスタ/Matt Costa、ポール・リーツェル/Paul Reitzlも2日目に好成績を収めた。

 これは長年プロツアーに関わっている常連にとっても非常に嬉しい出来事だった。

昨晩、@Smdster(Sam Pardee/サム・パーディ)のためにこのメモを作りました。
今日、少なくとも@MatthewLNass(マット・ナス)が勝っていて嬉しいです!

親愛なるサムへ
サムなら勝てます!
もしサムが勝てなかったとしてもマット・ナスがやってくれます!
頑張ってください、大切なあなた!
キャロリン

ハーフパンツを履いた二人が返ってきた

最後の展開

 「プロツアー『霊気走破』」も3日目かつ最後の直線に差し掛かっている。すでに今年後半にある世界選手権への出場は確約されており、『霊気走破』に優れた8人の最終ゴールは明確である。優勝、それだけだ。

 感動の瞬間を一緒に味わおう。2月22日米国東部標準時11時(日本時間25時)にtwitch.tv/magicまたは『マジック:ザ・ギャザリング』公式YouTubeチャンネルで視聴できる。詳細は「プロツアー『霊気走破』」観戦ガイドをご覧あれ!

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