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プロツアー『アモンケット』

戦略記事

プロツアー『アモンケット』 ドラフト・ラウンド全勝者たち

矢吹 哲也
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Frank Karsten / Tr. Tetsuya Yabuki

2017年5月13日


 昨日は47人のプレイヤーが最初のドラフト・ラウンド3回戦を全勝で切り抜けた。そして本日、6人のプレイヤーが再び『アモンケット』ドラフトで全勝を果たし、今大会のドラフト・ラウンド6-0の大成功を収めた。私は6人のドラフトの達人に話を聞き、彼らの成功の理由に迫った。

レイモンド・ペレスJr/Raymond Perez, Jr.

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 2013-2014年シーズンにルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞したレイモンド・ペレスJrは、現在チーム「Hotsauce Games」所属のシルバーレベル・プロだ。彼はリミテッドの攻略は練習量にあると信じており、Magic Onlineへの『アモンケット』の実装が早かったことを活かして今大会に向けて50回ほどドラフトの練習を行った。だが彼にとって3-0は珍しいことらしい――いわく、「Magic Onlineのドラフトで3-0できたのはたった3回ですよ!」とのことだ。

 今大会のドラフト部門では、ペレスは両日とも《サンドワームの収斂》を有する「緑青」のランプ・デッキに少し他の色をタッチした形を組み上げた。しかし彼自身は「緑青」が最強のアーキタイプであるとは考えていないようだ。「最強が『赤白』であるのは変わらないですね。でも同郷の相棒であるジョシュ・バウアー/Josh Bauerがいつも空いている『緑青』をドラフトしていて、その勝ちっぷりを自慢してくるんです」

 ペレスの言葉を要約すると、「緑青」をやる場合はマナ加速(《ナーガの生気論者》や《楽園の贈り物》がベスト・コモンだ)と大型クリーチャーや重いエンチャントなどのマナの注ぎ込み先をバランス良くドラフトしなければならないという。また「緑青」における特に優れたカードとして、彼は《楽園の贈り物》を挙げた。「3パック目で《楽園の贈り物》を1周させることができました。戻ってきたときは『完璧だ!』と思いましたよ」

 『アモンケット』ドラフトにおいては、広く構えて流れを読むことが他の環境に比べてずっと大切だと、ペレスはアドバイスを締めくくった。「この環境では、特定のアーキタイプだけを狙うプレイヤーが多くいると考えています」と彼は言う。その理由として、他の環境に比べて万能カードが少ないことを挙げた。そのため、空いている色の組み合わせやアーキタイプを見極めることが非常に重要になるのだ。

 第11回戦を終えた今、ペレスは9勝2敗の成績で残るスタンダード・ラウンド5回戦へ挑む。

ジョシュ・マクレーン/Josh McClain

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 ペレスと同様に、ゴールドレベル・プロのジョシュ・マクレーンもMagic Onlineでドラフトの練習を重ねた。「35回ほどでしょうか。『アモンケット』の実装が早かったので、普段より多くドラフトをしました。こうやって全勝できたのは、普段より早くこの環境に触れることができ、練習を重ねられたのが大きいですね」

 マクレーンの今大会初日のドラフト・デッキは、堅実なマナ・カーブを備えたアンタップ・ギミック満載の「赤白」。2日目は彼いわく「不思議な『緑青』ができました。なんて呼べばいいのか――中型クリーチャーと《知識のカルトーシュ》、《驚異への入り口》を採用したものです。自分ではこれまでで一番ひどいデッキだと思っていたのですが、どうやら卓全体の流れが悪かったらしく、遅いデッキばかりになっていました」

 印象的な場面を尋ねると、彼は齋藤 友晴との一戦で膠着した盤面から《戦闘の祝賀者》と《驚異への入り口》で一挙20点を与えたことを挙げた。「齋藤選手に一気に20点ダメージを与えたことですね。このドラフトでは2パック目の途中ですでにデッキが悪くなる予感がしていたので、ゲームを取るためにすべてのカードを駆使しました」

 マクレーンのこのフォーマットに対する所感は、ペレスと同じだった。いわく、「赤白『督励』」や「赤緑『督励』」がベスト・デッキとなるが、どのアーキタイプにもスムーズに行けるようにしておくのが大切だという。「この環境では、他に比べて広く構えておきたいですね。空いていれば、どのアーキタイプでも良いです」

 また、マクレーンも《楽園の贈り物》を入れた「緑青ランプ」を高く評価した。「『緑青』の《楽園の贈り物》は良いですね。私もMagic Onlineでの練習中に《楽園の贈り物》を3~4枚採用して《栄光をもたらすもの》や《賞罰の天使》をタッチした形を組みましたが、凄まじい力でしたよ」

 第11回戦を終えた今、マクレーンは7勝3敗1分の成績で残るスタンダード・ラウンド5回戦へ挑む。

エリック・フローリッヒ/Eric Froehlich

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 殿堂顕彰者にしてチーム「Channel Fireball Ice」の一員であるエリック・フローリッヒ/Eric Froehlichは、他の全勝者と比べれば今大会に向けたドラフトの練習回数は少ない。それでも、20回に迫るほどの回数はこなしている。

 初日は「黒赤」デッキをドラフトしたフローリッヒだが、彼自身も「レアに何もなかった」と言うように、そこに目を引くカードは入っていない。それでも《グレイブディガー》や《ホネツツキ》、《蓋世の誉れ》、《無慈悲な投槍手》3枚など初手級のアンコモンを多く集めることができ、仕上がりには満足していた。弱点といえば、4マナ以上のカードばかりになった点だろうか。「2マナ域も3マナ域もなかったけれど、対戦相手がマナ・カーブ通りに展開できなければ負けることはなかったよ」

 2日目のドラフト・デッキには満足できなかったようで、彼はしきりに「格好悪い」とか「質が悪い」と評していた。《鱗ビヒモス》から《ロナスの勇者》、《頭巾の喧嘩屋》とスタートした彼のデッキは、最終的に《潰滅甲虫》を含む「黒緑」の形に仕上がった。しかしマナ・カーブが重い方に膨れ上がった「格好悪い」デッキを、フローリッヒはその巧みなプレイ技術で補い、見事全勝を果たしたのだった。

 この環境の攻略法を尋ねると、彼は特に爆弾レアを引き当てられなかった場合にアグレッシブな戦略を取ることを挙げた。「でもそれを実践するのは極めて難しい。他の人も同じことを考えているから、もし1マナ域や2マナ域をピックできなければ手に入れたもので戦うしかない」

 第11回戦を終えた今、フローリッヒは10勝1敗の成績で残るスタンダード・ラウンド5回戦へ挑む。彼の経歴にプロツアー・トップ8入賞をさらに加える絶好の位置だ。

マルク・トビアシュ/Marc Tobiasch

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 次はチーム「EUreka」所属のシルバーレベル・プロ、ヨーロッパのグランプリ・シーンで注目を集めるドイツのマルク・トビアシュだ。

 初日に「緑白」のアグレッシブなデッキをドラフトした彼は、2日目は《天導 // 先導》を3枚採用した「黒緑」を組み上げた。「《扇持ち》はなんとかして除去しなければいけないけれど、《天導 // 先導》は本当に強いよ。盤面が膠着した状態で対戦相手が除去を持っていないとわかれば、一斉攻撃を通して勝てるんだ」

 この環境の攻略法については、他の全勝プレイヤーと同様に「広く構えること」を挙げた。またトビアシュはこの環境を土地16枚で戦えると感じており、「サイクリング」持ちを含めて24枚のカードを採用できると考えている。両日とも緑を含むデッキをドラフトした彼は「緑青」を非常に強力なアーキタイプだと考えていたが、それは実現しなかった。それでも「緑白」と「黒緑」はともに彼の狙い通りだったようだ。

「緑は見た目以上に強いと思う。序盤の小競り合いの後に大型クリーチャーで圧倒できるからね。アグレッシブな戦略が本当に強いこの環境で、『黒緑』は『受け』ができる貴重な色の組み合わせだと思う」

 『アモンケット』ドラフトで過小評価されているものと過大評価されているものを尋ねると、トビアシュは過小評価されているものとして《野望のカルトーシュ》を挙げた。「最強のコモンの一角なのに、6手目で取れたよ」

 そして過大評価されているものは「赤」だと彼は答えた。「決め打ちするチームまであったし誰もが赤を狙ってるようだけれど、『誰もが狙っている』ところへ飛び込むのはリスクが大きいね」

 第11回戦を終えた今、トビアシュは9勝2敗の成績で残るスタンダード・ラウンド5回戦へ挑む。

行弘 賢

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 チーム「Musashi」所属でプロツアー・トップ8入賞2回を誇るゴールドレベル・プロ行弘 賢は、Magic Onlineではなく紙のカードを用いたドラフト練習を好んだ。彼は今大会に向けて20回ほど『アモンケット』ドラフトをプレイしているが、Magic Onlineでは一切やっていないらしい。

 行弘は両日とも、彼が最高の色の組み合わせだと考える「黒赤アグロ」をドラフトした。彼はこの環境では緑を好まず、その理由として「特別に強い点がない」ことを挙げた。「アグロにいくなら赤の方が良いし、コントロール寄りにするなら青の方が良いです」

 成功の秘訣を尋ねると、行弘は「ドラフト全体を通して評価基準に左右されない」ことを挙げた。「ドラフト中のデッキに必要なものだけを考えます。自分のアーキタイプに合ったものを見かけたら、たとえそれが低評価のカードでもピックします」

 彼がドラフトした「黒赤」についても、黒の除去は決して評価の高いものではなく、通常なら代わりに攻撃的なクリーチャーを採用するという。だが彼は《超常的耐久力》や《悪運尽きた造反者》、《魂刺し》のシナジーに目をつけた。「この3枚が鍵でしたね。これらを組み合わせることで、さらに力が引き出されるんです」

 第11回戦を終えた今、行弘は9勝2敗の成績で残るスタンダード・ラウンド5回戦へ挑む。

ダニエル・グラーフェンシュタイナー/Daniel Gräfensteiner

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 最後はドイツのシルバーレベル・プロ、ダニエル・グラーフェンシュタイナーだ。彼はチーム・リミテッドで行われたグランプリ・バルセロナ2014に兄弟のトビアス・グラーフェンシュタイナー/Tobias Gräfensteinerとクリスティアン・セイボルド/Christian Seiboldとともに出場し、優勝を果たしている。

 今大会へ向けて、彼は自身がドラフトを行うよりも他のプレイヤーのドラフトを見て学ぶことに時間を割いた。さらに「赤白を決め打ちしろ」という、そのアーキタイプで高い勝率を記録した兄弟の言葉を信じた。

 それは初日のドラフトで功を奏した。グラーフェンシュタイナーはピックに恵まれ、最終的に《アン一門の壊し屋》や《結束の試練》といった思わず「ヤバイ」と漏らすほど噛み合うアンコモンを含む、強力なデッキを組み上げることができた。

 2日目のドラフトでは《象形の守り手》を引き当て、この強力なレアを前に「赤決め打ちの方針」を変えて《マグマのしぶき》を諦めた。その結果右隣のプレイヤーが「赤白」を組み上げることになったが、それがグラーフェンシュタイナーにとって良い形になった。彼の「青黒」デッキは卓内の「赤白」より強く、彼に全勝という結果をもたらしたのだ。

 第11回戦を終えた今、グラーフェンシュタイナーは8勝3敗の成績で残るスタンダード・ラウンド5回戦へ挑む。

プロツアー『アモンケット』後の「ドラフト・マスター」ランキング

 今大会のドラフト部門全勝者は、2016-2017年シーズン「ドラフト・マスター」獲得への歩みを進めた。「ドラフト・マスター」とは、シーズン内のプロツアー全試合におけるドラフト部門にて最も多くのマッチ・ポイントを獲得したプレイヤーに与えられる称号であり、これを獲得したプレイヤーは世界選手権2017へ招待される。

 以下に、今シーズンのこれまでに行われたプロツアーにおけるドラフト部門の獲得マッチポイント・ランキングから、37点以上を抜粋して掲載する。次回プロツアー『破滅の刻』にて「ドラフト・マスター」が決定するが、現時点で非常に熾烈なレースが繰り広げられている。

順位氏名マッチポイント
1Travis Wooアメリカ46
2Martin Juzaチェコ45
2Owen Turtenwaldアメリカ45
4Christian Calcanoアメリカ42
4Timothy Wuアメリカ42
4Makis Matsoukasギリシャ42
7Matthew Nassアメリカ39
7Donald Smithアメリカ39
7Paulo Vitor Damo da Rosaブラジル39
7八十岡 翔太日本39
7Martin Mullerデンマーク39
7山本 賢太郎日本39
7Marc Tobiaschドイツ39
7Eric Froehlichアメリカ39
7行弘 賢日本39
16Petr Sochurekチェコ37
16Martin Dangデンマーク37
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RESULTS

対戦結果 順位
最終
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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