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プレイヤーズコンベンション横浜2025

決勝:奥野 篤哉(富山) vs. 堀 優太(北海道) ~新たなる挑戦者たち~
プレミアイベントの決勝戦は特別な戦いだ。ましてや、それが競技マジックをプレイし始めてから初めて至った舞台であればなおさらだ。
チャンピオンズカップファイナル シーズン4ラウンド1。日韓最強の座をかけて2日間に渡って繰り広げられた激戦は、あと1試合──決勝戦を残すのみとなった。そして、その至高の舞台へと並ぶプレイヤーたちは、いずれもプレミアイベントでの目立った戦績を持たない。何事にも最初があり、彼らにとって、それがこの日となった。

頂点へあと一歩。フィーチャーマッチテーブルを取り巻く空気は、緊張と興奮に包まれていた。ここで己の思考の限界へと挑戦する2人のプレイヤーたちを紹介しよう。

奥野 篤哉(富山)。
地元・富山でモダンやレガシーを中心にプレイしているという奥野にとって、公式のプレミアイベントで大舞台に立つのは初めての経験だ。しかしながら、それは今大会で奥野が"マグレ"を引いたということを意味しない。準決勝では新潟の強豪プレイヤーである木原 惇希を下してこの席にたどり着いており、その実力は今大会を通して証明され続けてきた。
このチャンピオンズカップファイナルに向けて様々なデッキを試し、試行錯誤の末に地元の友人が使用していた「繁殖鱗コンボ」のデッキリストに天啓を受けて今大会に持ち込んだという。通常の「繁殖鱗コンボ」と異なる点として、《運命を貪るもの》を不採用として代わりに《真実を溺れさせるもの》を採用しており、わずかにデッキの安定性が増しているという。予選ラウンド13回戦に加えて決勝ラウンドという長丁場を戦う上で、上振れよりも安定性を重視したこの調整は功を奏したのだろう。

堀 優太(北海道)。
普段は晴れる屋札幌店で腕を磨く堀は、地元の友人たちとともに今大会に出場。調整仲間である半藤 進之介とともにトップ8入賞を果たした。日本国内における最高峰のトーナメントの一つに位置づけられているこのチャンピオンズカップファイナルにおいて決勝のスポットを浴びる堀。その姿を、同郷の仲間たちが見守っていた。
その使用デッキは、今大会でも最も使用者数の多かった「ジェスカイ・ブリンク」。人によってリストに細かな違いが出やすいデッキタイプだが、堀のリストは『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』の新カードである《司書、ワン・シー・トン》も採用した意欲作だ。このリストもまた仲間たちとの研鑽の末に生み出された珠玉の75枚であり、堀のプレイングと洞察がその真価を引き出している。決勝が始まる前から対戦相手である奥野のデッキを分析し、マッチアップの相性がよいことも確認済み。あとは卓上でそのロジックを証明するだけだ。

両者がここまでの戦いで示してきた実力には一片の疑いもない。デッキへの理解、環境への読解、緻密なプレイング。そのすべてが、いま目の前の決勝テーブルへと収束する。
フィーチャーエリアでは、静かにシャッフルの音が響いていた。決勝へと挑む挑戦者たちの視線は、ただ対面の相手だけに向けられる──。
ゲーム1
フェッチランドの起動から《轟音の滝》、《行き届いた書庫》を探し、諜報を繰り返しながら《量子の謎かけ屋》を「ワープ」でプレイ。静かにドローを操作する堀。

対する奥野は《苛立たしいガラクタ》をプレイして奥野の《孤独》を封じ込めながら、第3ターンに《難題の予見者》をプレイ! 明かされた堀のやや土地過剰な手札から2枚目の《量子の謎かけ屋》を追放し、ゲームを制圧しにかかる。
堀は手札に 《電気放出》を抱えているが、タフネス4の《難題の予見者》には届かない。無人の盤面を、奥野の《難題の予見者》が駆けていく。
とはいえ堀のライフはまだ13点残っており、この《難題の予見者》も喫緊を要する状況ではない。まずは自分の動きを、と《鏡割りの寓話》をプレイ。そのターン終了時に奥野が唱えた《コジレックの命令》は《記憶への放逐》で打ち消して、簡単にはゲームの手綱を握らせない。

序盤をドロー操作に費やし、着実に見えない優位を築いてきた堀に対し、緑マナが出ない奥野はここに来て動きが鈍る。2枚目の《苛立たしいガラクタ》をプレイしつつ片方をドローに変え、《まばゆい肉掻き》を出して堀の手札に控えていた《電気放出》を引き出す。
序盤の攻防を終え、マナが伸びた堀が動き出す。追放領域にいた《量子の謎かけ屋》をプレイすると、返すターンに奥野がプレイした《ウルザの物語》には《冥途灯りの行進》、「X=2」でプレイされた《歩行バリスタ》に《電気放出》をプレイし、《鏡割りの寓話》を「変身」させながら《量子の謎かけ屋》でクロックを刻み始める。
さらに《孤独》を通常プレイして奥野の《難題の予見者》を追放し、堀の盤面には《量子の謎かけ屋》と《孤独》、《キキジキの鏡像》が並んだ状態。完全にウィンコンディションが整い、堀が第1ゲーム自らの掌中に納めた。
奥野 0-1 堀
ゲーム2
第2ターンに《まばゆい肉掻き》をプレイする奥野。対する堀は第1ゲーム同様フェッチランドの起動から《行き届いた書庫》を探し、デッキトップの《火の怒りのタイタン、フレージ》を墓地に落としながら着実にドローの質を高めていく。
堀は《孤独》で《まばゆい肉掻き》を除去するが、ならばと奥野は《難題の予見者》。
これで堀のサイドボードしたカードを抜き、ゲームの主導権を奪いたいところだ。祈りが通じたか、明かされた堀の手札にはまさに奥野にとってのキラーカード、絶対に追放すべき《黒曜石の焦がし口》が──
2枚。
奥野は表情こそ変えなかったものの、唖然としたことには違いあるまい。最低でも1枚は確実に土地を破壊──それも、十中八九《ウギンの迷宮》を破壊されてしまう未来が確定している。仕方無しに《難題の予見者》が《黒曜石の焦がし口》を1枚追放する。
対する堀は追加の《難題の予見者》がプレイされてしまう前に《黒曜石の焦がし口》をプレイ。誰もが予想した通り《ウギンの迷宮》を破壊し、4/4飛行が盤面を睨めつける。

奥野は《日を浴びる繁殖鱗》をプレイするが、返す堀はフェッチランドを起動。ちょうど《火の怒りのタイタン、フレージ》の「脱出」に必要な墓地の枚数を満たしてこれをプレイすると、その誘発型能力によって奥野の《日を浴びる繁殖鱗》を除去する。
万事休する奥野は、《四肢切断》で《黒曜石の焦がし口》を除去してなんとか命のロウソクに灯った火の勢いを抑えるが、ならばと堀は《鏡割りの寓話》をプレイし、次々に脅威となるパーマネントを戦場に追加していく。

奥野は2枚目の《難題の予見者》をプレイして《火の怒りのタイタン、フレージ》をダブルブロックできる状況を整えるが、あくまでそれも延命措置に過ぎない。そうしている間にも、対戦相手をリング際に追い詰めた堀は一手一手確実に奥野の選択肢を奪っていく。
数ターン経ち、ついに《鏡割りの寓話》も変身。盤石な体勢を整えていた堀に対する解答を引き込めなかった奥野は、この日ともに決勝の舞台を戦ったライバルへと右手を差し伸ばした。

奥野 0-2 堀
プレミアイベントの決勝戦は特別な戦いだ。ましてや、それが競技マジックを始めてから初めて踏み入る舞台であればなおさらだ。
北海道から横浜のチャンピオンズカップファイナルへ、そしてその決勝の舞台へと勝ち進んだ堀は、さらなる次のステージ──"世界"への挑戦権を得た。
敗退した奥野もまた同様にプロツアーと世界選手権2026の権利を獲得している。ここでの決着は堀の勝利となったが、彼らが競技プレイを続けている限り、堀と奥野の2人が再び相見える日も決して遠くないことだろう。
何事にも始まりがある。同様に終わりも必ずあるのだろうが、しかし終わらせようとしなければいつまでも続けられるのがこの競技マジックという旅路だ。
世界で大立ち回りを見せる日本国内のトッププレイヤーたちも、最初からタイトルを持っていたわけではない。全てのプレイヤーに始まりがあり、奥野と堀、2人のプレイヤーもまた、この日競技プレイのさらなる高みへと至る旅路の出発地点にたどり着いた。
さあ、次は世界が相手だ。新たなる戦いへと漕ぎ出した船。そのデッキの先頭で、チャンピオンズカップファイナルのトロフィーを掴んだプレイヤーの名をここに刻もう。

チャンピオンズカップファイナル シーズン4サイクル、優勝は堀 優太(北海道)!おめでとう!
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