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プレイヤーズコンベンション横浜2025

戦略記事

スタンダードデッキピックアップ ~『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』~

富澤 洋平


 『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』発売から間もないタイミングで開催されたスタンダードの大型イベント「ジャパンスタンダードカップ:『アバター 伝説の少年アン』 Supported by 楽天ブックス」(以下、ジャパンスタンダードカップ)。こちらはグルール昂揚の優勝で幕を閉じたわけだが、トップ8に新生コンボデッキであるバント・エアベンダーが入賞しており、新たなデッキの萌芽を目の当たりにした大会でもあった。

 今大会の参加者は360名にのぼり、シミック・アグロをはじめ、『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』によってアップデートを果たしたデッキに人気が集まっていた。既存のアーキタイプはデッキパワーが担保されており、前述のシミックアグロにしても《アナグマモグラの仔》とわかりやすくパワーアップしているためだ。

 対照的に独自の調整を施したデッキを持ち込み、戦果をあげたプレイヤーがいたのもまた事実だ。少ない調整時間で膨大なカードプールの中から新たな原石を発掘し、研磨してきたわけである。これらのデッキは今後のスタンダード環境を大きく揺るがす存在となり得るかもしれない。

 本稿ではジャパンスタンダードカップで6勝以上をあげたデッキの内、『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』の影響を受けたデッキを紹介していく。本稿がデッキ構築の参考となれば幸いである。

バント・エアベンダー
Kanegawa, Toshiya - 「バント・エアベンダー」
ジャパンスタンダードカップ:『アバター 伝説の少年アン』 / スタンダード(2025年11月22~23日)[MO] [ARENA]
4 《始まりの町
2 《フラッドファームの境界
4 《繁殖池
4 《マルチバースへの通り道
4 《ハッシュウッドの境界
1 《平地
2 《植物の聖域
-土地(21)-

1 《孔蹄のビヒモス
4 《素早き救済者、アン
4 《ラノワールのエルフ
4 《アナグマモグラの仔
4 《遺伝子送粉機
4 《岐路に立つアン
4 《木苺の使い魔
4 《灰毛の天才、オーロック博士
1 《量子の謎かけ屋
4 《不動の守護者、アッパ
-クリーチャー(34)-
3 《自然の律動
2 《気のベンダーの位に至る
-呪文(5)-
1 《嵐の目、ウギン
1 《聖戦士の奇襲兵
2 《縫い目破り
2 《ティシャーナの潮縛り
2 《群青の獣縛り
1 《鋭い目の管理者
1 《エイヴンの阻む者
2 《天井に隠れろ
2 《アバターの怒り
1 《腹黒茸
-サイドボード(15)-
 

 バント・エアベンダーは、《灰毛の天才、オーロック博士》、《素早き救済者、アン》、《不動の守護者、アッパ》の3枚からなる気の技を使ったコンボデッキである。

回転

 

 戦場に《灰毛の天才、オーロック博士》と《素早き救済者、アン》を出し、手札に《不動の守護者、アッパ》があれば準備完了。《不動の守護者、アッパ》をプレイし、《素早き救済者、アン》を対象に気の技を使用。

 

 追放領域から先ほどの《素早き救済者、アン》をプレイすることで、《不動の守護者、アッパ》の能力が誘発し、同盟者トークンが生成される。《素早き救済者、アン》の戦場に出たときの能力で《不動の守護者、アッパ》を気の技の対象にする。

 

 この際のコストは追放領域から唱えているため、《灰毛の天才、オーロック博士》により0マナとなる。

 

 これにより同盟者トークンが1体追加された状況で、最初と同じ戦場になる。以降は《不動の守護者、アッパ》と《素早き救済者、アン》を交互に追放領域と戦場を行き来させるだけで、同盟者トークンが増えていく。無限トークン生成コンボの完成である。

回転

 

 3枚コンボと聞くと、コンボパーツを集めるのも大変そうだが、クリーチャーを探し出せるカードが多く採用されている。《岐路に立つアン》や《自然の律動》は足りないクリーチャーを探し出す助けとなるカードである。

 新鋭コンボデッキ、ぜひお試しあれ。

ディミーア・セルフバウンス
Makoto, Horiuchi - 「ディミーア・セルフバウンス」
ジャパンスタンダードカップ:『アバター 伝説の少年アン』 / スタンダード(2025年11月22~23日)[MO] [ARENA]
7 《
4 《湿った墓
4 《不穏な浅瀬
4 《グルームレイクの境界
5 《
-土地(24)-

3 《精体の追跡者
4 《孤立への恐怖
-クリーチャー(7)-
3 《不気味なガラクタ
3 《チビボネの加入
2 《保安官を撃て
4 《嵐追いの才能
3 《食糧補充
3 《声も出せない
4 《ブーメランの基礎
4 《逃げ場なし
3 《クルクの伝説
-呪文(29)-
2 《軽蔑的な一撃
2 《戦略的裏切り
1 《保安官を撃て
2 《魂標ランタン
3 《腐食の荒馬
3 《零地点のバラード
2 《迷いし者の骸
-サイドボード(15)-
 

 ディミーア・セルフバウンスは、《チビボネの加入》や《逃げ場なし》などの戦場に出たときに効果を誘発するパーマネントを、《孤立への恐怖》や《ブーメランの基礎》で手札へ戻して使い回す、中速タイプのコントロールデッキである。

 

 手札破壊、クリーチャー除去といった状況に応じたパーマネントを使用し、ゲームをコントロールしていく。それらのパーマネントを《孤立への恐怖》や《ブーメランの基礎》で手札へ戻して、再度プレイすることでアドバンテージを稼いでいく

回転

 

 全体的に軽いカードが多く、手札の消耗が激しいものの、中盤以降に良質なドローエンジンが揃っている。《精体の追跡者》はデッキにフィットした1枚であり、瞬速と違和感を持ち、対戦相手の隙をついてプレイ可能。着地後はエンチャントとシナジーを形成し、追加のカードを引かせてくれる。

 クルクの伝説》も追加ドローできる英雄譚であるが、変身するとトークン生成付きのフィニッシャーへと早変わり。この2種類のドローカードに加えて《食糧補充》まで採用されており、戦力が途切れず戦えるデッキに仕上がっている。

スゥルタイ・リアニメイト
Ishii, Hiroyuki - 「スゥルタイ・リアニメイト」
ジャパンスタンダードカップ:『アバター 伝説の少年アン』 / スタンダード(2025年11月22~23日)[MO] [ARENA]
1 《
2 《ウィローラッシュの境界
1 《
3 《地底の遺体安置所
2 《迷路庭園
3 《繁殖池
2 《魂の洞窟
4 《ウェイストウッドの境界
1 《地底街の下水道
3 《湿った墓
2 《グルームレイクの境界
-土地(24)-

4 《最後の贈り物の運び手
4 《スーペリア・スパイダーマン
3 《簒奪者、アーデン
4 《繁殖蜘蛛
2 《マラング川の執政
2 《破壊の嵐孵り
2 《ベイルマークの大主
4 《蒸気核の学者
-クリーチャー(25)-
4 《誉れある死者の目覚め
3 《苦々しい勝利
4 《幻獣との交わり
-呪文(11)-
1 《最深の裏切り、アクロゾズ
2 《ティシャーナの潮縛り
1 《乱伐者、ボニー・ポール
2 《群れの巣人
2 《逃げ場なし
2 《漁る軟泥
1 《災厄の占い師、グラルブ
2 《死人に口無し
2 《受け継ぎし地の開墾
-サイドボード(15)-
 

 スゥルタイ・リアニメイトは《スーペリア・スパイダーマン》で《最後の贈り物の運び手》を選ぶリアニメイトデッキ。

 

 スーペリア・スパイダーマン》を唱えることで《最後の贈り物の運び手》の条件を満たし、能力が誘発する。戦場を一掃しつつ、墓地からクリーチャーを出せるわけだ。

 ほかにも《簒奪者、アーデン》がリアニメイト候補であり、1枚で脅威を展開し続けてくれる。

 

 コンボの軸が墓地ということで、残るは枠は切削やルーティングなどの墓地を肥やす要素となっている。《ベイルマークの大主》は一度に掘れる枚数が多く、《蒸気核の学者》は手札に来てしまった《最後の贈り物の運び手》を捨てるには適したクリーチャーだ。

 《誉れある死者の目覚め》は除去、切削、さらに墓地へ落ちてしまった《スーペリア・スパイダーマン》や前兆を拾う役割を兼ねている。

 墓地に依存したコンボであるため墓地対策を苦手としていたが、アガサの魂の大釜》が減った今、追い風となっている

イゼット講義
Saito, Daichi - 「イゼット講義」
ジャパンスタンダードカップ:『アバター 伝説の少年アン』 / スタンダード(2025年11月22~23日)[MO] [ARENA]
1 《轟音の滝
2 《始まりの町
1 《
4 《
4 《マルチバースへの通り道
4 《リバーパイアーの境界
4 《尖塔断の運河
-土地(20)-

4 《ばあば
-クリーチャー(4)-
4 《嵐追いの才能
4 《ブーメランの基礎
4 《爆裂の技
1 《アイローの表演
4 《火の技の修行
4 《「占星術師」の天球儀
4 《積み重ねられた叡智
4 《愛着を捨てる
4 《飲めば潤う!
3 《美術家の才能
-呪文(36)-
3 《否認
1 《塔の点火
2 《咆哮する焼炉 // 蒸気サウナ
2 《洪水の大口へ
2 《轟く機知、ラル
3 《紅蓮地獄
2 《魂標ランタン
-サイドボード(15)-
 

 イゼット講義は非クリーチャー呪文と相性の良い《嵐追いの才能》と《「占星術師」の天球儀》を軸に、大量の講義カードでバックアップしていくデッキ。講義カードを墓地にためることで、ボーナス効果を得られる

 

 《嵐追いの才能》や《「占星術師」の天球儀》を展開し、攻防の起点とする。特に《「占星術師」の天球儀》はトークンを育てるため、優先的にプレイしたいカードである。

 

 《火の技の修行》や《飲めば潤う!》で対戦相手の脅威を除去していく。

 ゲームがスローダウンすれば《美術家の才能》や《愛着を捨てる》で手札の質をあげ、同時に墓地に講義カードをためていくチャンス。

 

 墓地に3枚以上の講義カードがたまればいよいよこのデッキの本領発揮。《積み重ねられた叡智》で圧倒的なアドバンテージを稼ぎ、手札の枚数で優位に立つことができる。2マナで3枚ドローのハイリターンカードへと生まれ変わる

 強力なクリーチャーに対しては《爆裂の技》の出番。講義カード分ダメージがプラスされるため、ほとんどあらゆる脅威へ対処できる。

 また、同じ戦略でありながら、フィニッシャーを《トレイリアの恐怖》などのクリーチャーへと変更した構築があったため、併せてご覧いただきたい。

神戸, 翔平 - 「イゼット講義」
ジャパンスタンダードカップ:『アバター 伝説の少年アン』 / スタンダード(2025年11月22~23日)[MO] [ARENA]
3 《轟音の滝
6 《
3 《始まりの町
4 《リバーパイアーの境界
4 《尖塔断の運河
-土地(20)-

4 《渦泥の蟹
2 《トレイリアの恐怖
4 《峠の大蛇
-クリーチャー(10)-
4 《火の技の修行
1 《洪水の大口へ
4 《嵐追いの才能
4 《積み重ねられた叡智
4 《愛着を捨てる
4 《飲めば潤う!
4 《ブーメランの基礎
4 《爆裂の技
1 《アイローの表演
-呪文(30)-
1 《洪水の大口へ
2 《否認
2 《呪文貫き
4 《紅蓮地獄
3 《ティシャーナの潮縛り
2 《魂標ランタン
1 《アイローの表演
-サイドボード(15)-
 
アゾリウス・フラッシュ
Akiyama, Taichi - 「アゾリウス・フラッシュ」
ジャパンスタンダードカップ:『アバター 伝説の少年アン』 / スタンダード(2025年11月22~23日)[MO] [ARENA]
3 《不穏な投錨地
3 《始まりの町
4 《フラッドファームの境界
3 《
3 《マルチバースへの通り道
2 《行き届いた書庫
1 《放棄された気の寺
4 《平地
2 《魂石の聖域
-土地(25)-

4 《フラッドピットの溺れさせ
3 《素早き救済者、アン
4 《エイヴンの阻む者
4 《勝利の楽士
4 《永劫の好奇心
3 《遠眼鏡のセイレーン
2 《ティシャーナの潮縛り
-クリーチャー(24)-
3 《アンの氷山
2 《アバターの怒り
3 《失せろ
3 《喝破
-呪文(11)-
2 《軽蔑的な一撃
4 《縫い目破り
3 《永劫の無垢
2 《除霊用掃除機
1 《スパイダーセンス
1 《アバターの怒り
2 《鳴り渡る龍哮の征服者
-サイドボード(15)-
 

 アゾリウス・フラッシュは瞬速を持つクリーチャーやインスタントを中心に構築された、妨害と展開を同じタイミングおこなえるトリッキーなデッキである。対戦相手視点では打ち消しや除去を構えているのか、瞬速を持つクリーチャーが出てくるのか判別がつきにくく、適切な対処が難しい強みがある。

回転

 

 《エイヴンの阻む者》と《素早き救済者、アン》はこのデッキの要といえるクリーチャー。3マナで対戦相手の呪文に干渉しつつ、同時にクリーチャーを展開できる。《素早き救済者、アン》は場に出ているクリーチャーも対処でき、汎用性が高い点も見逃せない。

 

 《永劫の好奇心》は展開していたクリーチャーにドロー能力を付与するフィニッシャーであり、追放除去以外では対処できません。場持ちが良く、飛行クリーチャーの多いこのデッキに適している。

 軽量クリーチャーデッキに対して後れを取りがちだが、その隙を《アバターの怒り》が補完している。気の技による疑似的な全体除去だが、「次のあなたのターンまで、対戦相手は自分の手札以外から呪文を唱えることはできない」の一文により、追放領域からのプレイを禁止される。

 また、エイヴンの阻む者》は気の技と非常に相性が良く、戦場にいるだけで気の技の対象となったカードをプレイするコストを引き上げられる。《アバターの怒り》とセットで運用したい組み合わせである。

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