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プレイヤーズコンベンション横浜2024
デッキテク:中道 大輔の「ボロス・トークン」 ~召集に擬態せしデッキ~
メタゲームブレイクダウンでご紹介した通り、いわゆるトップメタに位置するデッキは『カルロフ邸殺人事件』で大幅に強化されたボロス召集である。フィニッシャーの《戦導者の号令》、《上機嫌の解体》を安定させる《ひよっこ捜査員》を獲得し、一大勢力まで成長したわけだ。
そんな中、同じボロスカラーでありながら召集を一切採用していないデッキを使用しているプレイヤーがいる。ジャパンオープン2023優勝などの輝かしい経歴を持ち、スタンダードを得意としているBIGMAGIC所属プレイヤー、中道 大輔である。
中道が構築したのは同じボロスでもクリーチャー・トークンを多用したボロス・トークン。《忠義の徳目》や《婚礼の発表》といったお馴染みのカードを使い、戦線を構築していくデッキだ。
今回は召集と違う、新たなボロスデッキの正体を見ていこう。
2 《山》 4 《平地》 4 《反逆のるつぼ、霜剣山》 1 《皇国の地、永岩城》 4 《戦場の鍛冶場》 3 《眠らずの露営》 4 《日没の道》 4 《ミレックス》 -土地(26)- 4 《ヴォルダーレンの美食家》 4 《ひよっこ捜査員》 4 《毅然たる援軍》 -クリーチャー(12)- |
2 《邪悪を打ち砕く》 4 《忠義の徳目》 4 《婚礼の発表》 4 《戦導者の号令》 4 《上機嫌の解体》 2 《トーテンタンズの歌》 2 《トカシアの歓待》 -呪文(22)- |
3 《石術の連射》 4 《スクレルヴの巣》 1 《邪悪を打ち砕く》 4 《稲妻のらせん》 3 《太陽降下》 -サイドボード(15)- |
ボロス・トークンとは
──「ボロス・トークンとはどんなデッキでしょうか」
中道「《上機嫌の解体》や《婚礼の発表》などでクリーチャー・トークンを生成し、《戦導者の号令》で強化していきます。ボロス召集が2~3ターン目に勝負するデッキに対して、こちらはワンテンポ後ろにズレて4~5ターン目に攻守を入れかえるイメージです。軽いカードは多いものの、カードを引き増す《トカシアの歓待》があり、中~長期戦を狙うデッキですね」
──「このデッキの着想はどのように得たのでしょうか」
中道「『カルロフ邸殺人事件』の中で自分の注目カードが《戦導者の号令》でした。元々アグロ寄りのデッキが好きですぐに目に留まりました。{R}{W}とマナシンボルは緩く、マナ総量は3と軽め。むしろ本当に3マナでいいの?なんて思ったほどでした。最初は召集で試したんですが、マナベースの弱さから断念。パイオニアと比べショックランドやファストランドなどのアンタップ状態で戦場に出る2色土地が少ないんです。カードは得たもののマナベースが改善されておらず、長丁場の大会を戦うのは難しいと判断しました」
中道「《戦導者の号令》は戦線を横に広げていく戦略と相性が良いため、トークン生成カードと相性は良いはず。並べればそれだけで脅威になるはずと、とにかくクリーチャー・トークンを生成するカードを検索したところ、《トーテンタンズの歌》に目が留まりました。《戦導者の号令》と《トーテンタンズの歌》が揃えば、+1/+1修正とダメージ効果が上乗せされるため、3倍の打点になります。この組み合わせからボロス・トークンへと辿り着きました」
──「ほかのカードはどのように選択されたのでしょうか」
中道「フィニッシュブローは決まったので《婚礼の発表》や《忠義の徳目》といった相性の良いカードを選定して、マナカーブを整えながらスロットを埋めていきました」
デッキ詳細
──「デッキの強みとしてはどんな点があげられますか」
中道「1枚で複数のクリーチャー・トークンを生成するため、仮に単体除去の対象となったとしても戦線を維持しやすいなど除去への耐性があげられます。クリーチャー・トークンを並べて強化するだけ。《戦導者の号令》や《婚礼の発表》を重ねて、最終的にクリーチャー・トークンのサイズでもって対戦相手を圧倒します。ややゆっくりとしたデッキであり、単体除去による減速は問題ではありません。単体除去1枚でキルターンがズレてしまう召集デッキとは、明確に違う点ですね」
中道「今大会がデッキ非公開制ということもあり、対戦相手が適切なサイドボードを選択できない、ミスリードできるのも利点ですね。本日ゴルガリミッドレンジとマッチアップした際、サイドボード後に相手は除去が無駄になって勝てました。1~2ターン目の動きは召集デッキと誤認しやすく、それはメリットといえます」
中道「また、このデッキは相手の戦略に合わせて可変的なプランをとることが可能です。クリーチャー主体のデッキでありながら、対クリーチャー戦ではサイドボード後に《太陽降下》を入れるなど相手からすると想定外のカードも採用されています」
──「ほかに目を引くカードとしては4枚の《反逆のるつぼ、霜剣山》がありますね」
中道「通常のデッキですと伝説の土地カードは1~2が妥当ですが、《婚礼の発表》と《戦導者の号令》合わせてクリーチャー強化が8枚あるので、複数枚の採用に踏みきりました。3枚からはじめて徐々に増えていき、サイドボード後にやや重くなるため土地は多くても無駄になりにくいことから、4枚に落ち着きました。このカード自体読まれにくいのがポイントで、生成されるクリーチャー・トークンは速攻持ちのため《戦導者の号令》との相性も抜群。《戦導者の号令》のみの戦場から1枚で6点分のライフを削ってくれるわけですからコンバットトリックとしても使えて、相手のターン動けたりと器用に戦えるカードです」
各デッキとの相性
──「今回のメタゲームブレイクダウンの上位デッキとの相性を教えてください。まずはボロス召集からお願いします」
中道「メインはボロス召集側の動きが早く、不利です。いいように展開されて押し込められてしまいます。ですが、サイドボード後は改善されます。《稲妻のらせん》や《石術の連射》、《太陽降下》を投入して、コントロールのように立ち回ります。軽いカードを抜き、受けるプランをとるわけですね。相手の攻め手を抑えて、各種エンチャントでアドバンテージを稼ぎ、戦場の掌握を狙います」
──「ドメイン・ランプはいかがでしょうか」
中道「中速デッキに強いドメイン・ランプですが、《戦導者の号令》のおかげで意外とメインボードから戦えます。 序盤からライフを詰めておけば、あとは《戦導者の号令》の直接ダメージ効果で削りきることも可能です。《太陽降下》は厳しいものの、エンチャントを多用しているためリカバリーは可能です」
中道「また、ドメイン・ランプ側がソーサリーのアクションが多いため、《トーテンタンズの歌》が効果的です。それこそ《偉大なる統一者、アトラクサ》が早期に着地しない限り、主導権はこちらにあります。
中道「サイドボード後は《スクレルヴの巣》を入れ、さらにトークン生成へと寄せます。ドメイン・ランプやコントロールといった守り一辺倒のデッキには効果的なカードです。直線的なイメージの強いボロスカラーながら、相手のゲームレンジに合わせて器用に立ち回れるわけです」
──「では、攻めが早く太いエスパー・ミッドレンジはどうでしょう」
中道「除去呪文がほとんどないので相手のクロックを止められず、メイン微不利です。特に《黙示録、シェオルドレッド》は《邪悪を打ち砕く》できない限り、敗着濃厚。2枚しかありませんが、頑張って引き込みましょう。中~長期戦狙いのデッキなので、序盤からライフを詰めてくる相手はキツイですね」
中道「そのためサイドボードには《敬虔な新米、デニック》や《策謀の予見者、ラフィーン》専用カード対策として、《石術の連射》を多めに採用しています。《太陽降下》は重いものの、決まれば一気に挽回できるのでこちらも入れかえます」
──「最後にラクドス・ミッドレンジについてもお願いします」
中道「《黙示録、シェオルドレッド》など致命的なカードもありますが、カラー的に戦場に出てしまったエンチャントに触れないので五分という感覚です。《婚礼の発表》や《戦導者の号令》が着地すれば理想の戦場を構築可能です。相手は《大洞窟のコウモリ》でプランを崩すしかありません。手札を見ないことには単体除去を使うタイミングも難しいでしょうし」
中道「サイドボード後は軸をずらします。クリーチャーデッキには基本的に《太陽降下》入れてコントロールプランをとります。相手に単体除去が多く、クリーチャーなどの恒久的なダメージソースが少なければ《スクレルヴの巣》は入れますが、基本的にミッドレンジに対してはコントロールプランを選択します」
──「解説いただいた以外に苦手な戦略はありますか」
中道「弱点はこちらよりもアグレッシブなデッキですね。このデッキはスピードを重視していないため、赤単やグルールアグロ、速攻クリーチャーを苦手としています。サイドボード《稲妻のらせん》を4枚採用していますが、相性を改善するまでにはいたっていません」
──「アグロが苦手となるとMTGアリーナのBo1ではやや使いにくそうですね」
中道「苦手と言いましたが、展開次第です。クリーチャー・トークンを並べて耐えられれば、最終的にはサイズアップした自軍で勝てますし。速攻デッキとのマッチはいかに耐え忍ぶかであり、アドバンテージを取れるカードを駆使して立ち回ります。早さこそはないものの、爆発力を考えれば勝機は十分にありますね」
―ありがとうございました。
中道はボロス・トークンの真髄を懇切丁寧に語ってくれた。カードの選択肢の意図、動き、弱点など新環境を勝ち抜くための情報を余すことなく教えてくれたのだ。
一見すると召集デッキと見間違ってしまうボロス・トークンだが、その実、多くのリソース回復手段と柔軟なゲームプランを持っているまったく別のデッキであるとわかった。《戦導者の号令》の使用を検討中の方は、一度触れてみてはいかがだろうか。
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