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プレイヤーズコンベンション横浜2024

戦略記事

チャンピオンズカップファイナル シーズン2ラウンド2 メタゲームブレイクダウン

Hiroshi Okubo

 「チャンピオンズカップファイナル シーズン2ラウンド2」、開幕!!

 『カルロフ邸殺人事件』リリース直後に開催される本イベントは、予選ラウンドを勝ち抜いた日韓のプレイヤーたちがモダンフォーマットで競う競技プレイヤーの登竜門だ。新カードが追加されたばかりのモダン環境を見事解明し、上位12位進出──そしてその先に続くプロツアー参加資格を得られるのはいったい誰になるのか!?

 ここでは、本大会の行方を追う手がかりとしてメタゲームブレイクダウンを見ていこう。20年半分の広大なカードプールを使用できるフォーマット、モダンの最新環境ははたしてどうなっているのか?
 

チャンピオンズカップファイナル シーズン2 ラウンド2 メタゲームブレイクダウン

デッキタイプ 使用者数 割合
ラクドス想起 35 13.6%
カスケード・クラッシュ 26 10.1%
ボロス・バーン 19 7.4%
イゼット・マークタイド 18 7.0%
ゴルガリ・ヨーグモス 18 7.0%
リビングエンド 18 7.0%
ドメイン・カスケード 15 5.8%
4色オムナス 12 4.7%
アミュレット・タイタン 10 3.9%
ドメイン・ズー 9 3.5%
緑単トロン 9 3.5%
5色独創力 6 2.3%
ディミーア・コントロール 6 2.3%
ハンマータイム 5 1.9%
硬化した鱗 5 1.9%
ヘリオッド・カンパニー 4 1.6%
黒単貴重品室 4 1.6%
アスモフード 3 1.2%
アゾリウス・コントロール 3 1.2%
御霊ブリンク 3 1.2%
その他 29 11.3%

※使用者2名以下のデッキは「その他」に計上しています。
※ラストチャンストライアル通過者4名は集計に含まれていません。
※デッキ登録段階の集計のため、数字にズレがある可能性があります。ご了承ください。
 

トピック:《ギルドパクトの力線》は本大会の台風の目となるか?

 まず今大会で注目したいのは『カルロフ邸殺人事件』で登場した新カード《ギルドパクトの力線》の存在だ。

 ラヴニカ次元ではおなじみの、ゲーム開始時に手札にあるとき、それを戦場に出した状態でゲームを開始できる「力線」サイクルの最新カードである。今回追加されたこの《ギルドパクトの力線》のテキストを要約すると、

*全ての土地が全ての基本土地タイプを持つ
*全てのパーマネントが全ての色を持つ

という状態でゲームを開始することとなる。これだけを見れば「色マナ事故がなくなるカード」くらいの評価になりそうが、モダンの広大なカードプールの中では驚異的なパフォーマンスを発揮する。

 その最たる例が《ドラコの末裔》との組み合わせだ。《ギルドパクトの力線》の影響下であればマナ軽減によってわずか2マナで着地し、自身が5色を持つことによって警戒・呪禁・絆魂・先制攻撃・トランプルを持った化け物として戦場を制圧する。しかも《ドラコの末裔》自身のみならず、脇にいるクリーチャーたちも同様の能力を持つこととなる。

 元々「版図/Domain」を用いたクリーチャーアグロである「ドメイン・ズー」はモダン環境で一定の存在感のあるデッキだったが、《ギルドパクトの力線》の登場によってさらに強化されることとなる。

 また、Magic Online上では既存デッキの「カスケード・クラッシュ」に《ギルドパクトの力線》+《ドラコの末裔》のパッケージを突っ込んだ新たなアーキタイプ「ドメイン・カスケード」も好成績を収めている。

 『カルロフ邸殺人事件』の新カードの中でもとりわけ注目されている《ギルドパクトの力線》。このカードがモダン環境に与えるインパクトはどうなるのだろうか?

「ラクドス想起」
加藤 健介 - 「ラクドス想起」
チャンピオンズカップファイナル シーズン2 ラウンド2 / モダン (2024年2月11〜12日)[MO] [ARENA]
4 《血の墓所
3 《血染めのぬかるみ
3 《汚染された三角州
2 《湿地の干潟
1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼
3 《黒割れの崖
3 《
1 《大音声の劇場
-土地(20)-

4 《悲嘆
4 《オークの弓使い
4 《敏捷なこそ泥、ラガバン
1 《黙示録、シェオルドレッド
4 《ダウスィーの虚空歩き
1 《砕骨の巨人
1 《死の飢えのタイタン、クロクサ
-クリーチャー(19)-
3 《鏡割りの寓話
3 《致命的な一押し
2 《稲妻
3 《溶鉄の崩壊
4 《まだ死んでいない
4 《思考囲い
1 《死せざる邪悪
1 《軍団の最期
-呪文(21)-
1 《血染めの月
2 《虚無の呪文爆弾
2 《虚空の杯
1 《軍団の最期
1 《仕組まれた爆薬
1 《碑出告が全てを貪る
2 《コラガンの命令
2 《月の大魔術師
1 《未認可霊柩車
1 《兄弟仲の終焉
1 《呪われたトーテム像
-サイドボード(15)-

 今大会で最も多いアーキタイプとなったのは「ラクドス想起」だ。手札破壊と除去によって対戦相手のゲームプランを崩壊させながら、《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《ダウスィーの虚空歩き》といった軽く優秀な軽量クリーチャーで攻めるアグロ寄りのミッドレンジデッキである。

 特に「想起」を持ったクリーチャーである《悲嘆》は攻撃と妨害の要で、1ターン目にこれを「想起」でプレイしながら《まだ死んでいない》で蘇らせることで、相手の手札を2枚捨てさせながら自身の盤面に4/3威迫を残すことができる。どんなデッキであれ初期手札から2枚ハンデスされてしまえば機能不全に陥るのは必至であり、何もできなくなった相手をタコ殴りにするという寸法だ。

 無論として毎回そのようなコンボが決まるわけではないが、このデッキはグッドスタッフデッキとしての側面も持ち合わせており、消耗戦にもつれ込ませて手数とカードアドバンテージで圧殺する戦略を取ることもできるこのデッキではいぶし銀の活躍をすることだろう。

 『カルロフ邸殺人事件』の新カードは土地のみとデッキリストに大きな変化はないが、フェッチランドから諜報1を誘発させることで確実にドローの質を高めることができる。ミドルゲームでトップデッキ勝負に持ち込ませるこのデッキではいぶし銀の活躍を見せてくれることだろう。

「カスケード・クラッシュ」&「ドメイン・カスケード」
加茂 里樹 - 「カスケード・クラッシュ」
チャンピオンズカップファイナル シーズン2 ラウンド2 / モダン (2024年2月11〜12日)[MO] [ARENA]
1 《商業地区
1 《天上都市、大田原
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《
1 《迷路庭園
1 《踏み鳴らされる地
1 《轟音の滝
2 《
1 《蒸気孔
1 《繁殖池
2 《変わり谷
4 《樹木茂る山麓
4 《霧深い雨林
-土地(21)-

3 《ティシャーナの潮縛り
3 《緻密
2 《濁浪の執政
4 《断片無き工作員
-クリーチャー(12)-
2 《アノールの焔
4 《否定の力
4 《火 // 氷
1 《神秘の論争
1 《四肢切断
4 《ロリアンの発見
3 《死亡 // 退場
4 《暴力的な突発
4 《衝撃の足音
-呪文(27)-
1 《血染めの月
2 《神秘の論争
1 《月の大魔術師
3 《忍耐
2 《活性の力
2 《アーテイの嘲笑
2 《兄弟仲の終焉
1 《アノールの焔
1 《好奇心の神童、ケラン
-サイドボード(15)-

 今大会のメタゲームブレイクダウンの二番手となったのは「カスケード・クラッシュ」だ。「続唱」を持った《断片無き工作員》や《暴力的な突発》によって《衝撃の足音》をめくり、3ターン目に2体の4/4を並べるデッキである。

 過去にモダンでは「続唱」を使ったデッキとして《死せる生》などが活躍していたが、《死せる生》デッキは墓地を利用するという性質上墓地対策に弱かったり、事前準備としてサイクリングを行う必要があるなどのデメリットがあった。その点「カスケード・クラッシュ」は何の下準備も必要なく「続唱」さえすればいつでも《衝撃の足音》によってトークンを出すことができる手軽さが魅力だ。

 また、このデッキには『カルロフ邸殺人事件』から鳴り物入りで加入した《ギルドパクトの力線》を用いるパターンのリストも見られる。

齋藤 慎也 - 「ドメイン・カスケード」
チャンピオンズカップファイナル シーズン2 ラウンド2 / モダン (2024年2月11〜12日)[MO] [ARENA]
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《樹木茂る山麓
1 《寺院の庭
1 《蒸気孔
2 《宝石の洞窟
1 《
4 《霧深い雨林
1 《平地
1 《神聖なる泉
1 《
1 《繁殖池
1 《ザンダーの居室
4 《溢れかえる岸辺
1 《轟音の滝
-土地(21)-

4 《断片無き工作員
4 《ドラコの末裔
3 《緻密
-クリーチャー(11)-
4 《衝撃の足音
4 《力線の束縛
4 《ギルドパクトの力線
4 《否定の力
4 《ロリアンの発見
4 《火 // 氷
4 《暴力的な突発
-呪文(28)-
1 《耐え抜くもの、母聖樹
2 《ドラニスの判事
3 《忍耐
3 《活性の力
2 《月の大魔術師
2 《ティシャーナの潮縛り
1 《緻密
1 《神秘の論争
-サイドボード(15)-

 「続唱」デッキの都合上軽量カードを採用できず、決して強いとは言えないが仕方なく採用されていた《死亡 // 退場》や初手であまり強くない《濁浪の執政》といったカードが抜けて、《ギルドパクトの力線》+《ドラコの末裔》のパッケージを突っ込んだリストである。元々「カスケード・クラッシュ」はティムールの3色で組まれていたデッキだったが、沼・平地タイプを持ったカードを採用することで5種類の「版図」を満たすことができるようになっている。

 《ギルドパクトの力線》のバックアップがない場合でも《ドラコの末裔》を2ターン目にプレイすることが可能だ。追加パッケージは「続唱」の邪魔になることもなく、2ターン目に《ドラコの末裔》+3ターン目に《衝撃の足音》で4/4警戒・呪禁・絆魂・先制攻撃・トランプルを3体展開することもできる。『カルロフ邸殺人事件』の新カードが猛威を振るう、今大会で最注目すべきデッキの一つと言えよう。


 この記事では紹介できなかったが、従来の「版図」メカニズムを用いたデッキとして「ドメイン・ズー」なども《ギルドパクトの力線》によって強化されている。さすがに『カルロフ邸殺人事件』リリースから日が浅すぎることもあってその他のデッキで新カードはあまり見られないが、今大会の結果は間違いなく今後のモダン環境の指標となっていき、研究が進むにつれて新カードにスポットが当たる場面もあるだろう。

 久しぶりに開催された国内のモダン・フォーマットでのプレミアイベント。今大会の勝ち組となるデッキははたしてどのデッキなのか?これからの動向も記事でお伝えしていきたい。

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