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プレイヤーズコンベンション横浜2023
第12回戦:中島 駿一(東京) vs. 原根 健太(東京) ~鏡の中のバブル・マッチ~
勝てば決勝トーナメント進出、負ければ敗退。スイスラウンド最終戦の運命の分かれ道だ。
こうした当落線上に立つことを、英語の慣用句で「on the bubble」と表現するそうだ。泡の上に立つかのような際どい状態、この言葉が転じて、マジックではこの状況のスイスラウンド最終戦を「バブル・マッチ」と呼ぶ。
今大会、そんなバブルマッチのテーブルへと足を踏み入れるのが二人が中島 駿一(東京)と原根 健太(東京)だ。
原根 健太はプレイヤーズツアー・名古屋2020での優勝経験もあるプロプレイヤーだ。J-SPEEDのハンドルネームでも知られ、配信者としても活動をしているため、競技マジックに興味の薄い者でも名前くらいは見たことがあるという方も多いのではないだろうか。
この日、花粉症による鼻炎で体調があまりよくないと語る原根。万全ではないときこそ真の実力が見えるものだが、体調不良によるビハインドを押してこのバブルマッチの舞台まで勝ち進んでくるその実力はさすがと言うほかない。
対する中島はプレミアイベントでの入賞経験はないものの、フィーチャーテーブルに着く姿に怖じ気は見られない。いい意味で緊張感を持って、冷静に、原根のグリクシス・リアニメイトのデッキリストを見つめて分析する。
中島の使用するデッキはラクドス・リアニメイト。原根のグリクシス・リアニメイトは《死体鑑定士》が入りアドバンテージとクロックを確保しているのに対し、ラクドスは色を減らすことによってメインデッキから《強迫》や追加の除去呪文を採用していることが特徴だ。
《偉大なる統一者、アトラクサ》のリアニメイトを目指すという、ほぼ同じ戦略を取る両者のデッキ。果たしてこのバブル・マッチで勝利するのはどちらになるのか。
中島 駿一(東京) vs. 原根 健太(東京)
ゲーム1
先攻の原根は2ターン目に《勢団の銀行破り》。返す中島は1ターン目にタップイン土地を処理しつつ第2ターンに《強迫》をプレイする。
明かされた原根の手札にあったのは《偉大なる統一者、アトラクサ》と《死体鑑定士》、そして《かき消し》、《ギックスの残虐》。ここから中島は《かき消し》を捨てさせて露払いを終えると、続くターンに《鏡割りの寓話》をプレイしトークンを戦場に生成する。が、このゴブリントークンは原根が引いてきた《削剥》によって除去される。
カードアドバンテージを失うことを恐れず、すぐにトークンへ除去を撃つのはこのマッチにおいて非常に重要なプレイだ。このゴブリントークンを生かしておけばたちまち宝物トークンが溜まり、中島の《偉大なる統一者、アトラクサ》の素出しプランが成立しやすくなってしまう。このマッチでは墓地からのリアニメイトプランに気を配ることはもちろんのこと、マナが伸びることにも警戒を巡らせ、《偉大なる統一者、アトラクサ》がプレイされるターンを遅らせることが焦点となる。
中島は2枚目の《強迫》をプレイし、今度は原根の手札から《ギックスの残虐》を捨てさせる。さらに2枚目の《鏡割りの寓話》をプレイして原根に対処を迫っていく。
未だ《勢団の銀行破り》のプレイしか能動的なアクションが取れていない原根。3回目の《勢団の銀行破り》の起動をしつつ、《税血の収穫者》をプレイする。対する中島はゴブリントークンの攻撃によって宝物トークンを得て、原根に先んじて《偉大なる統一者、アトラクサ》を叩きつけた。
これにより中島は《黙示録、シェオルドレッド》や《ギックスの残虐》など強力なカードを大量に手札に加え、盤面には次のターンの変身を控えた《鏡割りの寓話》と《キキジキの鏡像》、そして《偉大なる統一者、アトラクサ》という3枚のフィニッシャーが並べている。アドバンテージもボードも完成されつつある。
ここまでのゲーム展開では中島にいいようにやられてしまった原根だったが、挽回を目指して一手ずつ手を進める。《税血の収穫者》で《キキジキの鏡像》を除去し、原根も《偉大なる統一者、アトラクサ》をプレイ。追加の《偉大なる統一者、アトラクサ》と《ギックスの残虐》を手札に加え、中島に対抗する。
だが、先に《偉大なる統一者、アトラクサ》をプレイした中島は原根よりも先んじてその手札を使うことができる。まずは2枚目の《鏡割りの寓話》を変身させ、さらに《ギックスの残虐》をプレイ。
2章の能力によってサーチを行い、原根の《偉大なる統一者、アトラクサ》に《喉首狙い》。さらに戦闘ステップで原根に強烈な猛打を加え、第2メインフェイズには《強迫》を唱えて原根の手札から《喉首狙い》を捨てさせる。
ならばと原根は2枚目の《偉大なる統一者、アトラクサ》をプレイする。しかし、めくれた10枚はなんと8枚の土地と《税血の収穫者》と《偉大なる統一者、アトラクサ》。
ただでさえ劣勢の状況で、頼みの綱の《偉大なる統一者、アトラクサ》にすらそっぽを向かれ、中島の《偉大なる統一者、アトラクサ》も《キキジキの鏡像》も対処できない原根は依然として厳しい状況の中で戦っていかねばならない。
返す中島のターンには《ギックスの残虐》の3章能力が誘発。原根の墓地から《税血の収穫者》をリアニメイトすると、《キキジキの鏡像》でコピーし、原根の《税血の収穫者》を除去。さらに《魂転移》で原根の《偉大なる統一者、アトラクサ》も除去し、再び攻撃を行う。
いよいよ原根のライフは残り4でもうあとがない。《ギックスの残虐》をプレイして《偉大なる統一者、アトラクサ》をリアニメイトすると、今度こそは《喉首狙い》と《兄弟仲の終焉》を含む5枚のカードを手札に加えることに成功。ようやく中島の《偉大なる統一者、アトラクサ》を除去することができた。
だが、中島の脅威は《偉大なる統一者、アトラクサ》だけではない。《キキジキの鏡像》がアドバンテージを稼ぎ続けており、《税血の収穫者》によって原根の《偉大なる統一者、アトラクサ》はすぐに除去されてしまう。
さらに中島は《黙示録、シェオルドレッド》。原根はドローステップを迎えるとの残りライフは2となってしまい、万事休す状況だ。しかし、それでも諦めることなく原根は《兄弟仲の終焉》と《削剥》の組み合わせで中島の2枚の《税血の収穫者》と《黙示録、シェオルドレッド》を除去してゲームを継続する。
ここまでにずっと押されてきた原根だったが、《偉大なる統一者、アトラクサ》のプレイ回数は3回。さらに《勢団の銀行破り》によるドローもあって、手札の枚数だけは常に中島を凌駕し続けていた。反対に中島は原根の攻め手を着実に削ぎ続けてきたが、手札の多い原根と1対1交換を続けていれば、いわんや中島も息切れする。いつの間にか2枚のみとなってしまった手札に、原根の3度目の《偉大なる統一者、アトラクサ》を対処する手段はなかった。
原根は2枚の《死体鑑定士》でさらに手札を整え、《偉大なる統一者、アトラクサ》による反撃を行う。風前の灯火だった原根のライフも絆魂によって見る見る回復していき、奇跡的な大逆転で原根が勝利をもぎ取った。
中島 0-1 原根
ゲーム2
中島が第2ターンに《勢団の銀行破り》をプレイすると、続くターンには《墓地の侵入者》をプレイして《勢団の銀行破り》に搭乗。原根はこれを《削剥》で除去する。
返す原根は《鏡割りの寓話》を設置し、まずは前哨戦が終了といったところだろうか。
中島は《強迫》。原根の手札にあった《偉大なる統一者、アトラクサ》、《否認》、《未認可霊柩車》、《兄弟仲の終焉》の中から《兄弟仲の終焉》を捨てさせ、《削剥》でゴブリントークンを除去。さらに《墓地の侵入者》で攻撃し、原根のライフを削り始める。
2枚目の《鏡割りの寓話》をプレイする原根に、中島はさらに《墓地の侵入者》で攻撃しつつ、《燃え立つ空、軋賜》を戦線に追加して原根を攻める。
原根もまた3枚目の《鏡割りの寓話》と《未認可霊柩車》をプレイする。1つ目の《鏡割りの寓話》は変身もしており、アドバンテージ面ではリードする原根だったが、しかし中島の盤面のクリーチャーには触ることができず、《燃え立つ空、軋賜》の攻撃によって着実にライフが失われていく。
さらに《削剥》で原根の《キキジキの鏡像》を除去され、中島も《未認可霊柩車》をプレイしたことで、原根はリアニメイトによる逆転も封じられることとなった。
そろそろライフも厳しい原根。《ギックスの残虐》の1章の能力で中島の手札から脅威を取り除かんとするが、そこにクリーチャーの姿はなく不発に終わる。返す中島は再び《燃え立つ空、軋賜》で攻撃し、いよいよ原根のライフは6まで減ってしまう。
返す原根、《ギックスの残虐》の2章能力によって残りライフ3となるも、《税血の収穫者》をプレイして《キキジキの鏡像》でコピー。2つの血トークンを得たことで、《税血の収穫者》の起動型能力で《燃え立つ空、軋賜》を除去することに成功する。
のだが、《燃え立つ空、軋賜》の死亡時の誘発型能力によって、中島は《黙示録、シェオルドレッド》を追放。これが唱えられ、再び原根がターンを迎えると残りライフは1となってしまう。
《キキジキの鏡像》で《税血の収穫者》をコピーし、3枚目の血トークンを得て起動型能力でかろうじて《黙示録、シェオルドレッド》を除去するが、中島は《絞殺》で《税血の収穫者》を除去。《墓地の侵入者》で攻撃し、誘発型能力が原根の残り1のライフを摘み取ろうとする。
これに《未認可霊柩車》を起動してなんとか1点ルーズの能力を透かす原根だったが、墓地対策を使わせた中島は第2メインに《黙示録、シェオルドレッド》をリアニメイト。これにより、たまらず原根が敗北を認めた。
中島 1-1 原根
ここまでの熱戦により、試合時間は残り3分となっていた。ジャッジにより、原根と中島の2人にも残り時間の通達と延長ターンの説明、そして決着がつかなかった場合に引き分けになることが伝えられる。
引き分けになれば両者ともにトップ8には進出できない。バブル・マッチの思わぬ幕切れが迫り、2人は急いで次の対戦の準備を行う。緊張と焦燥が2人の思考を蝕む中、第3ゲームが開始される。
ゲーム3
互いに第2ターンに《税血の収穫者》をプレイし、先攻の原根が中島の《税血の収穫者》を除去。さらに《鏡割りの寓話》を唱える。
中島は《切り崩し》でゴブリントークンを始末するが、原根は2枚目の《鏡割りの寓話》。中島は2枚目のゴブリントークンに《喉首狙い》までをも使わされる羽目になるが、自身も《鏡割りの寓話》をプレイすることでなんとか原根に追いつこうとする。
だが、原根は《死体鑑定士》で手札を整え、《強迫》。中島の手札にあった2枚目の《鏡割りの寓話》を捨てさせ、リードを広げていく。
中島が《鏡割りの寓話》と血トークンによるルーティングでターンを終えるのみとなったのに対し、原根の盤面では2枚目の《鏡割りの寓話》が変身し、リソースは十分。というより、中島はこの《キキジキの鏡像》のどちらか1枚だけでも処理できなければそのまま負けてしまう。
思わずドローをする手にも力がこもるが、デッキは中島に微笑まなかった。有効なアクションを取れなかった中島のターンエンドの宣言を聞き遂げた原根は、2枚の《キキジキの鏡像》の能力起動で一気に4枚の《キキジキの鏡像》と1枚の《死体鑑定士》トークンを並べる。
これぞ《鏡割りの寓話》がスタンダード最強カードの一角と呼ばれる所以だ。わずか3マナという元手の軽さに加え、《キキジキの鏡像》2枚が揃ったときにはコンボパーツにもなり、一瞬でゲームを終わらせることが可能となるのだ。
先にも伝えたとおり、第3ゲーム開始の時点ですでに残りの試合時間は3分となっており、原根が《キキジキの鏡像》によるコンボを決めた時点ですでに延長ターンの3ターン目だ。
ここまで凄まじいスピードでプレイしてきた2人がたどり着いた結末、フィナーレを飾るのは原根の盤面の《キキジキの鏡像》と《死体鑑定士》のコピーたち。原根による一斉攻撃の号令により、焦燥の中で行われたバブル・マッチの第3ゲームに幕を下ろした。
中島 1-2 原根
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