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プレイヤーズコンベンション静岡2024

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準々決勝:豊田 弘記(岡山) vs. 中原 大貴(愛知) ~今昔のデッキが火花を散らす~

大久保 寛


 全国で開催される厳しい予選を勝ち抜いた猛者たちが集う、チャンピオンズカップファイナル。

 出場するだけでも大変なこの大会のスイスラウンドを勝ち抜いた8人の猛者たちが、いよいよこの決勝ラウンドで"日韓最強"の座をかけて戦う。ここではそんな決勝ラウンドの最初の試合、準々決勝で行われた試合の1卓をテキストでお伝えする。

 ここまでの長い戦いの末にフィーチャーマッチテーブルへと足を運んだのは、豊田 弘記中原 大貴の2名だ。

豊田 弘記

 

 豊田は長いマジック歴を持つ古豪だ。過去にはグランプリでのマネーフィニッシュの経験などもあるようだが、プロツアー権利を手にするのは今回のチャンピオンズカップファイナルが初だという。予選ラウンドでは日本が誇るトッププロ、八十岡 翔太を下し、9勝1敗2ID(両者の同意の上で行われる引き分け処理)という圧倒的な戦績でトップ8へと入賞を果たした。

 使用デッキはこれまた古き良き(?)赤単アグロ。ラクドス果敢は戦場のクリーチャーにバフ呪文を唱えてパワーを上げてダメージを増加させる戦略だが、こちらはクリーチャーでライフを削って火力呪文でトドメを刺すという伝統的なアグロ・バーンデッキだ。

中原 大貴

 

 対する中原は普段はリミテッドを専門にプレイしているプレイヤーで、東海地方のカードショップで日々その腕を磨く。競技的なイベントで入賞するのは今回が初めてということだが、本人の性格なのかあまり気負った様子は見られない。

 中原の使用デッキはラクドス・ミッドレンジだ。豊富な手札破壊と除去で確実に1対1交換を繰り返して消耗戦に持ち込み、《鏡割りの寓話》などの良質なカードでゲームを圧倒する。特に中原のデッキには《不浄な別室 // 祭儀室》+《変わり谷》、《ドロスの魔神》といったデーモンシナジーもある、ラクドスの最も新しいデッキリストと言える。

 クラシカルな赤単アグロと最新のラクドス・ミッドレンジ。チャンピオンズカップファイナルの準々決勝では、2人の対称的なデッキがぶつかり合う。

豊田 弘記(岡山) vs. 中原 大貴(愛知)

 
ゲーム1

 先攻の豊田が第1ターンに《》から《僧院の速槍》という滑り出しを見せる。返す中原は自分のターンを迎えると、この《僧院の速槍》を即座に《致命的な一押し》で処理する。

 

 ならばと続く豊田の2枚目の《僧院の速槍》をプレイし、ここだけを切り抜くと好調なスタートなのだが、2枚目の土地を置くことができない。ならばと中原は《砕骨の巨人》を「出来事」で唱え、果敢するおそれのない《僧院の速槍》をしっかりと踏みつける。

 2枚の《僧院の速槍》がしっかりと対処されてしまった豊田。このまま土地を引けない状況を放置するわけにもいかないと自身のターンを迎えるとアップキープに《火遊び》をプレイ。占術を行って2枚目の土地を探しにいくが、これも実らない。

 

 対する中原は予定通り最序盤に盤面を捌くことができ、豊田がしびれている間に《鏡割りの寓話》を設置。さらに続くターンには《ドロスの魔神》をプレイする。

 第5ターンを迎えてなおも土地が1枚で止まってしまっている豊田。中原のライフはまだ十分に残されており、《ドロスの魔神》と《鏡割りの寓話》という強烈なフィニッシャーも並べられてしまい、第1ゲームはなすすべなく中原へと勝利を明け渡すこととなった。

豊田 0-1 中原

ゲーム2

 値千金の先攻でゲームを開始したものの、土地事故の不運に見舞われて思うように動けなかった豊田。第2ゲームではしっかりと複数枚の土地がある手札をキープし、《熊野と渇苛斬の対峙》からプレイを開始する。

 

 返す中原は《思考囲い》で豊田の手札を確認し、《熊野と渇苛斬の対峙》と《僧院の速槍》、そして2枚の《損魂魔道士》という手札の中から《僧院の速槍》を抜くと、続くターンは《強迫》で《熊野と渇苛斬の対峙》を抜く。

 中原が手札を攻める間に、豊田は2枚の《損魂魔道士》をプレイしつつ《熊野と渇苛斬の対峙》を変身させ、盤面にカードを並べて中原のライフを削っていく。

 

 手札破壊にマナを使っている分クリーチャーの除去では一手遅れてしまう中原。なんとか《熊野の食刻》と《損魂魔道士》のうち1枚は除去するが、その間にも豊田は引き込んだ3枚目の《熊野と渇苛斬の対峙》をプレイしつつ、《ギトゥの溶岩走り》と《魔術師の稲妻》を中原へと差し向ける。

 

 《血の墓所》のタップイン処理などもあって完全に後手後手に回ってしまった中原のライフは、1ターン目にプレイした《思考囲い》のライフ損失もあって見る見る間に溶けていく。最後のドローを確認し、除去が間に合わないことを悟って投了を宣言した。

豊田 1-1 中原

ゲーム3

 先攻の中原が第2ターンに《税血の徴収者》をプレイ。対する豊田は《熊野と渇苛斬の対峙》をプレイしつつ自身のアップキープに《火遊び》。

 

 この対象は《税血の収穫者》ではなく、中原。あくまでライフを詰める姿勢を見せながら占術でドローを整え、2枚目の土地を置いて《僧院の速槍》をプレイ。攻撃を宣言する。

 《熊野と渇苛斬の対峙》の第Ⅱ章の能力によって、《僧院の速槍》のサイズは2/3になっている。《税血の収穫者》でブロックすれば相打ちを取れるが、3/2というサイズを活かして攻めの起点とすることや、先々除去としての役割を担わせることもできる。中原は「難しいですね……」と漏らし、小考しながらこれをブロックすることを選ぶ。

 

 そして第3ターンを迎えた中原はまず《思考囲い》。これによって、豊田のサイドボードカードである《真紅の鼓動の事件》を捨てさせる。

 返す豊田はドローの後《熊野と渇苛斬の対峙》を変身させると、《ギトゥの溶岩走り》と《魔術師の稲妻》を続けてプレイ。墓地にインスタントが2枚になったことで、速攻を持った《ギトゥの溶岩走り》がさらに攻撃を行い中原のライフを苛烈に攻め立てる。

 

 だが、中原もまた《ギトゥの溶岩走り》に《致命的な一押し》をプレイし、確実に豊田の攻撃のペースを落とさせる。さらに、序盤の猛攻を凌いだ中原は《ドロスの魔神》で今度は豊田へとカウントダウンを開始する。

 

 しかし、《ドロスの魔神》は4マナ6/6飛行という凄まじいマナレシオの代償として、4ターン以内にゲームの決着をつけなければコントローラーをゲームに敗北させるという強烈なデメリットを持つ。つまり、カウントダウンが始まったのは中原にとっても同じことだ。

 

 豊田はそのことをいち早く察知し、《損魂魔道士》をプレイして《ドロスの魔神》へと《砕骨の巨人》の「出来事」をプレイ。この2点のダメージは2つの-1/-1カウンターという形で《ドロスの魔神》の上に置かれる。これの意味することとは、中原が《ドロスの魔神》による攻撃のみで豊田のライフを削り切るためのターンが1ターン伸びたということ──つまり、このままターンが経過すればドロスの魔神》の能力によって中原が自滅することを意味する。

 

 自身の残りライフから猶予ターンを考え、中原のライフを削り切るだけでなく《ドロスの魔神》のデメリット能力すらも勝ち手段にするというプランを素早く組み立てた豊田。中原も自身の命のロウソクがかなり短くされてしまったことに焦りつつ、《鏡割りの寓話》を設置すると豊田の《損魂魔道士》を除去。《ドロスの魔神》のライフルーズ能力が誘発し、豊田へと決死のライフレースを挑む。

 

 臨むところだとばかりに豊田は《砕骨の巨人》をプレイし、続くターンに攻撃。中原も負けじと《鏡割りの寓話》によって手札を入れ替えながら《ドロスの魔神》で攻撃し、豊田も《砕骨の巨人》で反撃を行う。

 ノーガードの攻防の末に、互いのライフは5点まで削れていた。そして迎えた中原のターン、《ドロスの魔神》の油カウンターを1つ減らし、残るカウンターはあと1つ。つまり、中原にとってはこれが最後の1ターンだ。

 

 まずはドローを確認し、《鏡割りの寓話》の第Ⅲ章の能力の解決。《鏡割りの寓話》はひとたび追放され、《キキジキの鏡像》となって戦場へと舞い戻る。

 中原は《ドロスの魔神》で攻撃を宣言し、豊田のライフを1まで減らすと、このターンに引き込んだ《致命的な一押し》を唱える。対象は《砕骨の巨人》だ。

 

 そう、《鏡割りの寓話》が変身したことにより《致命的な一押し》の「紛争」を達成しているのだ。これが解決されると、《砕骨の巨人》は墓地へと置かれ《ドロスの魔神》の能力が誘発。残りライフ1点の豊田が、2点のライフを失う。これが意味することとはすなわち──

 中原が、赤単アグロとラクドス・ミッドレンジの極限のライフレースを制したということだ。

豊田 1-2 中原

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