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プレイヤーズコンベンション静岡2024
スタンダードデッキピックアップ ~『ダスクモーン:戦慄の館』~
『ダスクモーン:戦慄の館』発売から間もないタイミングで開催されたスタンダードの大型イベント、ジャパンスタンダードカップ:『ダスクモーン:戦慄の館』 Supported by 楽天ブックス(以下、ジャパンスタンダードカップ)。こちらはゴルガリ・ミッドレンジの優勝で幕を閉じたわけだが、トップ8にアゾリウス・エンチャントが入賞しており、新たなデッキの萌芽を目の当たりにした大会でもあった。
今大会の参加者は244名にのぼり、グルール果敢をはじめ、ディミーア・ミッドレンジや版図ランプに人気が集まっていた。既存のアーキタイプはデッキパワーが担保されており、グルール果敢にしても《残響の力線》とわかりやすくパワーアップしているためだ。
対照的に独自の調整を施したデッキを持ち込み、戦果をあげたプレイヤーがいたのもまた事実だ。少ない調整時間で膨大なカードプールの中から新たな原石を発掘し、研磨してきたわけである。これらのデッキは今後のスタンダード環境を大きく揺るがす存在となり得るかもしれない。《忌まわしき眼魔》を軸にしたアゾリウス眼魔はこの筆頭であり、事実、トップ8に複数名を送り込むことに成功している。
本稿ではジャパンスタンダードカップで5勝以上あげたデッキの内、『ダスクモーン:戦慄の館』の影響を受けたデッキを紹介していく。本稿がデッキ構築の参考となれば幸いである。
アゾリウス・エンチャント
6 《平地》 2 《島》 4 《金属海の沿岸》 4 《アダーカー荒原》 4 《フラッドファームの境界》 3 《不穏な投錨地》 -土地(23)- 4 《精体の追跡者》 3 《グレムリンを手懐ける者》 4 《知りたがりの光霊》 3 《永劫の無垢》 4 《静かなる広間這い》 4 《呑気な物漁り》 -クリーチャー(22)- |
2 《フェイの飛行》 4 《幽霊による庇護》 4 《破片魔道士の救出》 4 《天上の鎧》 1 《プロフトの映像記憶》 -呪文(15)- |
2 《安らかなる眠り》 2 《第三の道のロラン》 2 《魂の仕切り》 1 《エファラの分散》 1 《洪水の大口へ》 3 《否認》 2 《ティシャーナの潮縛り》 2 《仔狸寝入り》 -サイドボード(15)- |
上記の通り、トップ8入りを果たしたアゾリウス・エンチャントは、エンチャントとシナジーを形成するクリーチャーで構成された中速タイプのデッキである。
《知りたがりの光霊》でエンチャント呪文のマナコストを引き下げ、《吞気な物漁り》と《グレムリンを手懐ける者》の違和感により展開したエンチャントをダメージソースへと転化していく。
とはいえ片っ端からエンチャントをプレイしていけば手札が途切れてしまうが、ご安心を。《精体の追跡者》と《永劫の無垢》と、この戦略のために用意されたかと思えるほど良質なドローエンジンが揃っている。特に前者はいくらエンチャントをプレイしようとも手札は減ることがない。
相手の脅威に対しては《幽霊による庇護》が用意されている。
ダメージソースや手札などのリソースを伸ばすものから除去にいたるまで、デッキ内のほとんどがエンチャントでまとめられており、土地以外のどこを引いてもほかのカードとシナジーを形成するように構築されている。1、2マナと軽いカードが多いもののシナジーが強く、粘り強く戦えるデッキとなっている。
赤単ミッドレンジ
18 《山》 4 《ミシュラの鋳造所》 2 《噴水港》 -土地(24)- 4 《雇われ爪》 4 《僧院の速槍》 4 《逸失への恐怖》 4 《陽背骨のオオヤマネコ》 1 《ボイラービルジの大主》 -クリーチャー(17)- |
4 《ウラブラスクの溶鉱炉》 3 《レジスタンスの火、コス》 4 《ショック》 4 《稲妻の一撃》 3 《抹消する稲妻》 1 《焦熱の射撃》 -呪文(19)- |
4 《熾火心の挑戦者》 2 《除霊用掃除機》 1 《抹消する稲妻》 1 《焦熱の射撃》 3 《兄弟仲の終焉》 2 《焦熱の交渉人、ヤヤ》 2 《叫ぶ宿敵》 -サイドボード(15)- |
赤単と聞けば軽量クリーチャーと火力で構成されたものや、流行の果敢に特化した構築を思い浮かべがちだが、ここではクリーチャー以外の脅威を採用したミッドレンジをご紹介しよう。
《雇われ爪》と《僧院の速槍》からスタートするが、その後のダメージレースを受け持つのは《陽背骨のオオヤマネコ》をはじめ、《ウラブラスクの溶鉱炉》や《レジスタンスの火、コス》などの赤にしてはやや重く、変化球ともいえる角度の異なる脅威である。
メインボードに《ウラブラスクの溶鉱炉》と《レジスタンスの火、コス》を採用することで、対処手段の異なる攻め手が用意できるのは赤単ミッドレンジの魅力のひとつ。黒系ミッドレンジ定番の《切り崩し》や《喉首狙い》では時間こそ稼げるものの、根本的な解決にはいたらない。
さらにアクセント程度に思える《逸失への恐怖》が見逃せない。速攻こそないものの、最低限以上のスタッツであり、赤では貴重なルーティング効果がついている。昂揚を達成すれば追加の戦闘フェイズを得られるため、《ウラブラスクの溶鉱炉》との相性もバッチリ。
無条件で昂揚を達成することは難しいものの、ここで《逸失への恐怖》のルーティング効果が生きてくる。墓地へ落ちにくい土地カードを捨てることで昂揚へのハードルを格段に下げてくれるのだ。
序盤のマナカーブを埋めながら、《ボイラービルジの大主》と併せてフィニッシャー的な役割を持つ2マナ域なのである。
ザ・オーバーロード
4 《魂の洞窟》 1 《不穏な大草原》 2 《寓話の小道》 4 《草萌ゆる玄関》 3 《迷路庭園》 3 《平地》 4 《行き届いた書庫》 1 《森》 1 《薄暗い裏通り》 1 《ハッシュウッドの境界》 1 《島》 -土地(25)- 4 《ミストムーアの大主》 2 《フラッドピットの大主》 3 《ホーントウッドの大主》 1 《偉大なる統一者、アトラクサ》 1 《永遠の策謀家、ズアー》 -クリーチャー(11)- |
2 《巻物変容》 3 《太陽降下》 3 《豆の木をのぼれ》 1 《巣ごもりの季節》 4 《失せろ》 3 《一時的封鎖》 3 《力線の束縛》 4 《軍備放棄》 1 《お別れの突風》 -呪文(24)- |
3 《安らかなる眠り》 1 《一時的封鎖》 2 《羅利骨灰》 3 《否認》 1 《温厚な襞背》 1 《石の脳》 1 《跳ねる春、ベーザ》 2 《完成化した精神、ジェイス》 1 《ティシャーナの潮縛り》 -サイドボード(15)- |
ザ・オーバーロードと銘打ったこのデッキは、その名の通りオーバーロード=大主が多く採用されている。白青緑の大主を兆候コストを支払って唱え、早期にその恩恵にあずかろうというのだ。
デッキのベースとなっているのは版図ランプでお馴染みの《豆の木をのぼれ》であり、これを設置後に兆候コストで唱えればカードが1枚おまけでついてくる。例えば《ホーントウッドの大主》ならば遍在地によりマナ加速しつつ、カードを1枚引けるわけだ。加えて、この遍在地により版図戦略と同じく《力線の束縛》を採用できる点も見逃せない。
まるで版図ランプのようだが、ザ・オーバーロードにはまだまだ大主が採用されている。攻防を支える《ミストムーアの大主》に、必要牌を引き込むのに適した《フラッドピットの大主》である。前者はアグロやミッドレンジに対して大主がクリーチャー化するまでの時間を稼ぎ、後者はデッキの潤滑油となる。《豆の木をのぼれ》の次のターンに兆候コストを支払ってプレイできるのは《フラッドピットの大主》と《ホーントウッドの大主》の利点である。
兆候コストで唱えれば《太陽降下》の巻き添えになるリスクが低く、それでいて《永遠の策謀家、ズアー》により急角度からのダメージ源ともなる。
見慣れぬ《巻物変容》は大主を二足飛びでクリーチャー化させる1枚。揃ったならば積極的にクリーチャー化を狙っていきたい。
黒単デーモン
20 《沼》 1 《噴水港》 2 《ミシュラの鋳造所》 2 《魂の洞窟》 -土地(25)- 4 《大洞窟のコウモリ》 2 《黙示録、シェオルドレッド》 4 《止められぬ斬鬼》 4 《ドロスの魔神》 3 《アクロゾズの放血者》 -クリーチャー(17)- |
3 《強迫》 2 《切り崩し》 1 《戦慄の奔出》 4 《不浄な別室 // 祭儀室》 4 《喉首狙い》 2 《シェオルドレッドの勅令》 2 《苦痛ある選定》 -呪文(18)- |
2 《苦痛ある選定》 3 《除霊用掃除機》 1 《切り崩し》 2 《鋼と油の夢》 2 《萎縮させる責め苦》 3 《ヴェールのリリアナ》 2 《無力化》 -サイドボード(15)- |
プレイヤーズコンベンション静岡2024にて開催されたチャンピオンズカップファイナルを制した黒単デーモン、そのスタンダード版ともいうべきデッキの姿がジャパンスタンダードカップにもあった。デッキの主役はご存知の通り、《止められぬ斬鬼》と《アクロゾズの放血者》による一撃必殺コンボである。
《止められぬ斬鬼》は戦闘ダメージを与えるたび、“そのプレイヤーは自分のライフの端数を切り上げた半分に等しい点数のライフを失う”。ここに《アクロゾズの放血者》を加えた状態で攻撃が通ると、対戦相手は“自分のライフの端数を切り上げた半分の倍”、つまりはすべてのライフを失うことになる。
このコンボの優れている点は必要枚数の少なさや比較的序盤に決まるマナ総量の軽さではない。コンボパーツでありながらどちらも単体のカードとして完結しているカードパワーの高さ、汎用性にある。特に《止められぬ斬鬼》はその軽さとは裏腹に攻防の主役となるクリーチャーである。仮に相手のライフが初期値のままだったとしても一度の攻撃で11点(2+9)、二度目の攻撃で6点(2+4)と、3マナのクリーチャーとは思えぬほどのクロック速度を誇る。
除去耐性もあり、《苦痛ある選定》や《軍備放棄》以外では対処の難しいクリーチャーである。
新メカニズムである部屋を上手く使えるのも黒単デーモンのメリットである。《不浄な別室 // 祭儀室》はリソースとクロックの両方を供給してくれる有用なカードであり、左の部屋のデメリットすらも右の部屋を解放することで解決できる自己完結したカードとなっている。両方の扉が開けばハンドアドバンテージのみならず、恒久的なダメージソースにもなるのだ。
デッキの性質としてはコンボデッキというよりはミッドレンジ戦略にコンボパッケージが入っているといったほうが正しいだろう。手札破壊と単体除去でサポートして必殺コンボを決めるも良し、上記のクリーチャーや《ドロスの魔神》でビートダウンするも良しの骨太なデッキといえる。
また、同じ戦略でありながら、黒単色から多色化へと舵を切った構築があったため、併せてご覧いただきたい。
6 《沼》 4 《闇滑りの岸》 4 《グルームレイクの境界》 4 《地底の大河》 4 《地底街の下水道》 2 《ミシュラの鋳造所》 1 《不穏な浅瀬》 -土地(25)- 4 《マネドリ》 4 《大洞窟のコウモリ》 4 《止められぬ斬鬼》 4 《アクロゾズの放血者》 2 《ドロスの魔神》 2 《ベイルマークの大主》 -クリーチャー(20)- |
3 《切り崩し》 3 《苦痛ある選定》 3 《喉首狙い》 2 《悪夢滅ぼし、魁渡》 4 《不浄な別室 // 祭儀室》 -呪文(15)- |
2 《苦難の収穫者》 2 《除霊用掃除機》 3 《強迫》 3 《否認》 1 《残虐爪の強奪》 2 《踊る影、魁渡》 2 《死人に口無し》 -サイドボード(15)- |
白単トークン
18 《平地》 2 《沈んだ城塞》 2 《ミレックス》 4 《噴水港》 -土地(26)- 2 《けだものの友、トビー》 2 《永劫の無垢》 3 《ミストムーアの大主》 -クリーチャー(7)- |
4 《世話人の才能》 3 《太陽降下》 3 《人参ケーキ》 2 《大天使エルズペス》 3 《失せろ》 3 《巣ごもりの季節》 3 《別行動》 2 《忠義の徳目》 4 《軍備放棄》 -呪文(27)- |
1 《邪悪を打ち砕く》 4 《石の脳》 2 《エルズペスの強打》 3 《第三の道のロラン》 2 《安らかなる眠り》 1 《セラの模範》 2 《加護をもたらす戦乙女》 -サイドボード(15)- |
白単トークンは《世話人の才能》を軸に構築されたデッキであり、トークン生成時にアドバンテージを稼いだり、トークンが攻防の主役となるなどトークン自体が戦略の中心にある。単体のサイズは小さくとも1枚で複数のクリーチャートークンを生成したり、手札を供給してくれるカードが多いため単体除去で損をしにくく、時間をかけて強固なボードを築いていく継戦力の高い戦略である。
《世話人の才能》は自走能力こそないものの、ほかのトークン生成カードと合わせることで無限アドバンテージを生み出してくれる。《人参ケーキ》はその最たる例であり、自分のターンで1枚、相手のターンに生贄に捧げることでさらに1枚のカードをもたらす。
このような細かいカードの組み合わせで強固なボードと潤沢な手札を目指していく。新加入の《永劫の無垢》は《世話人の才能》に近しい役割のカードであり、手札を潤すために活躍する。
トークン生成するカードにも新顔がおり、《ミストムーアの大主》は数で、《けだものの友、トビー》はサイズで優れたカードといえる。
気になる対アグロ性能だが、《軍備放棄》と《太陽降下》に加えて《別行動》が採用されている。使い時は選ぶものの、速攻主体のアグロ、受けに回った時のミッドレンジに刺さりやすく、マナ総量からも初見ではケアしにくいカードである。
さらに、同じ戦略でありながら、白単色から多色化へと舵を切った構築があったため、併せてご覧いただきたい。《ウラブラスクの溶鉱炉》と豊富なインスタントが多色化の利点といえる。
4 《平地》 2 《山》 4 《感動的な眺望所》 4 《戦場の鍛冶場》 3 《優雅な談話室》 4 《噴水港》 2 《解体爆破場》 3 《沈んだ城塞》 -土地(26)- 4 《ミストムーアの大主》 1 《跳ねる春、ベーザ》 -クリーチャー(5)- |
4 《人参ケーキ》 3 《失せろ》 4 《太陽降下》 2 《忠義の徳目》 4 《塔の点火》 4 《ウラブラスクの溶鉱炉》 4 《削剥》 4 《世話人の才能》 -呪文(29)- |
1 《第三の道のロラン》 3 《一時的封鎖》 2 《悪魔祓い》 3 《安らかなる眠り》 4 《イモデーンの徴募兵》 1 《大天使エルズペス》 1 《跳ねる春、ベーザ》 -サイドボード(15)- |
ディミーア加虐者
2 《魂の洞窟》 3 《闇滑りの岸》 4 《不穏な浅瀬》 2 《地底の大河》 4 《地底街の下水道》 4 《グルームレイクの境界》 7 《沼》 -土地(26)- 3 《終末の加虐者》 -クリーチャー(3)- |
2 《切り崩し》 3 《喉首狙い》 4 《推理》 1 《運河浚い》 2 《強迫》 2 《死人に口無し》 4 《幻影の干渉》 4 《三歩先》 4 《完成化した精神、ジェイス》 2 《見栄え損ない》 3 《苦痛ある選定》 -呪文(31)- |
2 《除霊用掃除機》 1 《最深の裏切り、アクロゾズ》 2 《強迫》 2 《切り崩し》 2 《否認》 1 《逃げ場なし》 2 《悪意ある覆い隠し》 2 《苦難の収穫者》 1 《死人に口無し》 -サイドボード(15)- |
ディミーア加虐者は《終末の加虐者》を唱えてお互いのライブラリーを6枚にし、その後《完成化した精神、ジェイス》の[-X]の起動型能力でライブラリー切れを狙うライブラリーアウトコンボである。
《終末の加虐者》が解決されれば《完成化した精神、ジェイス》が着地する前に、手札破壊で捨てさせるか、打ち消し呪文で妨害するかしかない。対応することは可能だが、非常に限られている。
序盤は《三歩先》や《喉首狙い》でゲームをコントロールしつつ、隙をみて《推理》でコンボパーツを集めていく。《三歩先》は状況次第ではドローとして使用したり、手掛かり・トークンのコピーを生成できたりする万能呪文である。
上記のアーキタイプについては山方 裕樹によるデッキテクでも詳細に語られているため、そちらも合わせてご覧いただきたい。
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