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プレイヤーズコンベンション静岡2024
デッキテク:山方 裕樹の「ディミーア加虐者」 ~最強の系譜を継ぐコンボデッキ~
かつてパイオニアを席巻した《真実を覆すもの》と《タッサの神託者》によるインバーター・コンボ。わずか2枚、最速5ターン目に決まる同コンボは、妨害とドロー要素の豊富な青と黒のカラーコンビネーションも相まって、環境随一の戦績を誇った。
実際、同フォーマットで開催されたプレイヤーズツアー・名古屋2020では、トップ8に5名ものプレイヤーを送り込んだほどだった。まごうことなき最強のコンボデッキであったのだ。
そして時代は流れ、2024年。ジャパンスタンダードカップ:『ダスクモーン:戦慄の館』 Supported by 楽天ブックス(以下、ジャパンスタンダードカップ)にて再び2枚コンボデッキを目の当たりすることになった。カラーボードは奇しくも青と黒からなるディミーアであり、必要パーツも2枚。これは現代へと蘇りしインバーター・コンボか。
実際、ラウンド1のフィーチャーマッチでは、見事コンボを決め勝利をおさめた。
ジャパンスタンダードカップに彗星のごとく現れたインバーター・コンボ改め、ディミーア加虐者について使用者の山方 裕樹に話を聞いた。
4 《沼》 2 《魂の洞窟》 4 《地底の大河》 4 《闇滑りの岸》 4 《地底街の下水道》 4 《不穏な浅瀬》 4 《グルームレイクの境界》 -土地(26)- 4 《終末の加虐者》 1 《苦難の収穫者》 -クリーチャー(5)- |
4 《喉首狙い》 3 《切り崩し》 4 《完成化した精神、ジェイス》 1 《シェオルドレッドの勅令》 4 《三歩先》 4 《推理》 4 《幻影の干渉》 2 《死人に口無し》 2 《苦痛ある選定》 1 《呪文渦》 -呪文(29)- |
3 《否認》 3 《強迫》 2 《洪水の大口へ》 1 《ティシャーナの潮縛り》 2 《悪意ある覆い隠し》 2 《除霊用掃除機》 1 《切り崩し》 1 《死人に口無し》 -サイドボード(15)- |
ディミーア加虐者とは
──「ディミーア加虐者とはどんなデッキでしょうか」
山方「《終末の加虐者》を唱えてお互いのライブラリーを6枚にし、その後《完成化した精神、ジェイス》の[-X]の起動型能力でライブラリー切れを狙うライブラリーアウトコンボです」
山方「メインの勝ち筋である《完成化した精神、ジェイス》以外にも、《不穏な浅瀬》の攻撃でライブラリーアウトを狙えます。このカード自体は土地であるため、スロットを圧迫せずに採用できますし、ゲームをしていく過程で自然と戦場におけるのもメリットです」
──「コンボ以外はどんなカードでしょうか」
山方「ゲームスピードをコントロールする除去と打ち消し、コンボ完成のためのドロー呪文の三要素から構成されています」
デッキ詳細
──「デッキの強みとしてはどんな点があげられますか」
山方「デッキ構成の自由度の高さは明確な強みですね。《終末の加虐者》と《完成化した精神、ジェイス》の2枚コンボなので、それ以外のスロットは自由に割り当てられます。現在は果敢などのアグロが強いため、軽量除去や打ち消しを多めに採用しています」
──「デッキの自由度の高さからもインバーター・コンボに近い感じを受けますね」
山方「コンボが決まるターンの差は別として、インバーター・コンボとの最大の違いは《タッサの神託者》のような単体で弱いカードがない点です。《完成化した精神、ジェイス》はそれ単体でもアグロ以外のマッチアップで効果的ですし、対版図ランプにいたってはコンボせずともフィニッシャーとなりえます。《完成化した精神、ジェイス》のみで勝てるマッチアップがあるのは大きな違いですね」
──「《完成化した精神、ジェイス》はコンボパーツでありながら、《終末の加虐者》を探す役割もあるのでしょうか」
山方「あるにはあるんですが、マッチアップによっては出せない場合があります。《失せろ》や《稲妻のらせん》、《塔の点火》などのプレインズウォーカー対策がある場合、2枚目の《完成化した精神、ジェイス》が必要になる危険性があります。そういった相手には《終末の加虐者》はほかのドロー呪文で引き込み、《完成化した精神、ジェイス》自体は手札でキープしておく必要がありますね」
デッキ選択の理由
──「このデッキの選択理由を教えてください」
山方「先ず知られていない可能性が高いという点ですね。いわゆるローグデッキ的な立ち位置のコンボデッキです。今大会直前までパイオニアの練習をしていたこともあり、少ない練習でも簡単に勝てるようなデッキを探したところ、このデッキにいきつきました。元々は除去コントロールを使用する予定でしたが、長い時間をかけてアグロと接戦を繰り広げるよりも、アグロの干渉できないコンボで勝つほうが楽だなと思いこのデッキに決めました。6マナで《終末の加虐者》をポン出しして、ターンが返ってくることを祈るだけですからね」
山方「《終末の加虐者》さえプレイできれば通常とはまったく別のゲームが始まります。仮に《完成化した精神、ジェイス》がなくとも《不穏な浅瀬》でも同様にライブラリーアウトを狙えます。対アグロの観点では非常に簡単なデッキです」
山方「また、もしマナに余裕があれば《終末の加虐者》自身を除去することで、待っているだけで相手が先にライブラリーアウトすることになります。誰しもがライフ以外を競うゲームに慣れているわけではないため、このデッキであればあまり練習していないスタンダードでも勝てるのではと考えました」
デッキリストの変化と工夫
──「元のリストから工夫した点などはありますか」
山方「元々はMOリーグの5-0から見つけましたが、そのリストは《終末の加虐者》が3枚でした。コンボに特化することでミスを減らすと同時に、対アグロを見据えてドローやサーチで《終末の加虐者》を探す手間を省く意味でも4枚に増量しました」
山方「《呪文渦》の枠はドロー呪文でしたが、汎用性を求めて両方の役割を持つこのカードに入れかえています。それと流行の《忌まわしき眼魔》をメタって《苦痛ある選定》を多めに採用しています。《喉首狙い》でも対処可能ですが、追放以外では《救いの手》で再利用されてしまいますので」
主要なデッキとの相性
──「今回のメタゲームブレイクダウンの上位デッキとの相性を教えてください」
山方「得意なデッキとしては直線的な果敢、ゲームレンジの長い版図ランプ、手札破壊以外でコンボを止めることができないゴルガリ・ミッドレンジがあげられます果敢に対しては除去と打ち消しでゲームを長引かせ、クリーチャーが1体以下ならば《完成化した精神、ジェイス》で止め、《終末の加虐者》を引くのを待つだけ」
山方「版図ランプは序盤のマナ加速を打ち消し、ゲームをスローダウンさせ、コンボを決めます。相手の《豆の木をのぼれ》の誘発回数次第では、《終末の加虐者》がなくとも《完成化した精神、ジェイス》単体でライブラリーアウトを狙えることを覚えておきましょう。メインボードに打ち消し呪文を取られていない限り、こちらのコンボに干渉しようがありません」
山方「また、一見すると無駄になりそうな《死人に口無し》ですが、相手の勝ち手段を追放しつつライブラリーを圧縮してくれるため、《完成化した精神、ジェイス》のサポート役として有用です」
山方「ゴルガリ・ミッドレンジは相手の《大洞窟のコウモリ》次第といったところでしょうか。こちらのプランがバレてしまったり、重ね引きされて除去のテンポを狂わされると厳しくなりますが、それ以外は問題ありません。《大洞窟のコウモリ》から軽量クリーチャーを連打されて押し切られるのが一番の負け筋ですね」
──「では苦手なデッキはどのアーキタイプでしょうか」
山方「ディミーアカラーのミッドレンジとコントロールです。コンボ特有の打ち消し呪文かと思われるかもしれませんが、《魂の洞窟》のおかげで意外と何とかなったりします。真打は自身のフィニッシャーでもある《不穏な浅瀬》です。《終末の加虐者》をプレイした返しに攻撃されてしまうと、先に自分がライブラリーアウトしてしまいます」
山方「アゾリウス眼魔は体感五分五分、いかにクロックをさばけるか除去次第といったところです。単なる除去呪文では《救いの手》で再活性されてしまうため、追放する必要があります。そのために《苦痛ある選定》を増量しているくらいなので」
──「解説いただいた以外に苦手な戦略はありますか」
山方「土地が強いデッキは苦手ですね。具体的には《噴水港》を採用しているデッキには、それ1枚で制圧されてしまいます。《解体爆破場》のような対策カードを採用できないわけではないですが、《終末の加虐者》をプレイするターンが遅れてしまう可能性がありますので。変更の余地はありますが、現状は黒マナを出せる土地のみに統一しています」
──ありがとうございました。
山方は明朗快活にディミーア加虐者について解説してくれた。かつての最強デッキと同じカラーのコンボデッキであるディミーア加虐者は、スタンダードにおける新たなインバーター・コンボとなりえるだろうか。
『ダスクモーン:戦慄の館』がもたらした恐怖と戦慄がスタンダードそのものを覆い隠す存在となるかどうかは、今後のトーナメントシーンで明らかになることだろう。
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