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プレイヤーズコンベンション愛知2024
デッキテク:佐藤 啓輔の「エスパー・ミッドレンジ」 ~初代王者の最終構築~
本日から3日間にわたり開催される国内最大級のイベント、プレイヤーズコンベンション愛知2024。初心者でも楽しめるレクチャーイベントやステージイベント、賞金制のオープントーナメント「ジャパンスタンダードカップ」など目白押しとなっている。
なかでも「チャンピオンズカップファイナル」は世界選手権やプロツアーへの参加が懸かった苛烈なイベントであることに間違いはない。一部の招待選手を除き、数度の予選を潜り抜けたプレイヤーのみが参加できるハイレベルトーナメントとなっている。
今回のチャンピオンズカップファイナル シーズン2ラウンド3へ、挑戦する一人のプレイヤーがいる。プレイヤーズコンベンション横浜2024にて初開催となったジャパンスタンダードカップ、その初代王者である佐藤 啓輔だ。
佐藤が選択したデッキは奇しくも前回と同じエスパー・ミッドレンジ。『サンダー・ジャンクションの無法者』加入を経て、なお同じアーキタイプにこだわる理由とは何だろうか。また、構築に変化などはあるのだろうか。
今回はひとつ上のステージで戦う佐藤から、最新のエスパー・ミッドレンジを教えてもらおう。
2 《地底の大河》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 1 《皇国の地、永岩城》 2 《砕かれた聖域》 1 《平地》 4 《不穏な投錨地》 3 《さびれた浜》 1 《天上都市、大田原》 1 《ラフィーンの塔》 1 《島》 3 《闇滑りの岸》 3 《秘密の中庭》 2 《コイロスの洞窟》 1 《難破船の湿地》 -土地(26)- 1 《最深の裏切り、アクロゾズ》 4 《策謀の予見者、ラフィーン》 4 《大洞窟のコウモリ》 2 《敬虔な新米、デニック》 2 《フェアリーの黒幕》 2 《ティシャーナの潮縛り》 -クリーチャー(15)- |
3 《忠義の徳目》 4 《喉首狙い》 3 《喝破》 3 《切り崩し》 4 《婚礼の発表》 2 《放浪皇》 -呪文(19)- |
1 《ティシャーナの潮縛り》 2 《否認》 1 《邪悪を打ち砕く》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《長い別れ》 1 《強迫》 1 《第三の道のロラン》 2 《害獣駆除》 1 《漆月魁渡》 1 《未認可霊柩車》 1 《最深の裏切り、アクロゾズ》 1 《復活したアーテイ》 1 《ギックスの命令》 -サイドボード(15)- |
エスパー・ミッドレンジとは
──「エスパー・ミッドレンジとはどんなデッキでしょうか」
佐藤「白青黒の3色からなる攻撃的なミッドレンジであり、瞬速や《大洞窟のコウモリ》、妨害に長けたクリーチャーを呪文でバックアップしていくビートダウンです。カウンターにクリーチャー除去などインスタントトリックが多彩なのも魅力ですね」
デッキ選択の理由
──「このデッキの選択理由を教えてください」
佐藤「今回は色々なデッキを試しました。それこそボロス召集は最終候補でしたし、アゾリウスコントロールやグルールも触りました。ボロスは押し付けが強いもののマークがキツく、毎回ブン回るは難しく、マリガンも多い。マナベースは強化されたとしても長丁場を戦ううえでは安定性に難があるかなと考えました」
佐藤「対してエスパー・ミッドレンジはカウンターと除去のある対応力の高いアーキタイプです。4色レジェンズ以外極端に不利なマッチアップもなく、そのデッキ自体も数は少数であると考え、このデッキに決めました。サイドボードを含めればどのデッキとも渡り合えるのがエスパー・ミッドレンジの強みですから。ミッドレンジミラーも見越してサイドボードに《最深の裏切り、アクロゾズ》の2枚目も採用しています」
デッキリストの変化と工夫
──「ジャパンスタンダードカップ優勝後、『サンダー・ジャンクションの無法者』が加入したわけですが、デッキの細部に変更が見られます。その理由について教えてください」
《かき消し》を《喝破》へ変更
佐藤「前回は新セットリリース後間もないこともあり、《喝破》を試す時間もありませんでした。ですが、使用してみるとカバーできる範囲が広く、色マナ拘束の厳しさもほとんど気にならず、問題なくデッキにフィットしました。当たり前ですが2マナと3マナではケアしやすさがまったく違いますから」
佐藤「これはメタ的な話になりますが、前回よりも《記憶の氾濫》を使うデッキが増えたのもあります。アゾリウスとディミーアの両コントロールを筆頭に、ティムール・アナリストにも採用されています。おまけのような思われがちな追放もフラッシュバックに効果があります」
《ティシャーナの潮縛り》の採用
佐藤「《ティシャーナの潮縛り》の役割は大きく2つのデッキへの対策です。《感動的な眺望所》を手に入れたボロス召集は安定性を手に入れたといえるでしょう。展開力と速度があり、安定性もある優れたデッキです。また、新デッキとしてティムール・アナリストがあげられます。《斡旋屋一家の潜伏先》などのフェッチランドでマナを伸ばしていく戦略です。このどちらに対しても《ティシャーナの潮縛り》は効果的なのです」
佐藤「たとえば序盤の3、4枚目の土地として置かれた《斡旋屋一家の潜伏先》の誘発型能力を打ち消すだけでも、相手を減速させながらクロックも用意できる一石二鳥のカードといえます。中盤以降は《事件現場の分析者》の起動型能力や《間の悪い爆発》の遅延誘発型能力すらも対象にとれる何かと便利なカードです」
佐藤「もちろん、版図ランプの《偉大なる統一者、アトラクサ》や《怒りの大天使》、《力線の束縛》はいうに及ばず。実際、チャンピオンズカップファイナルに一定数いたのでメインボードでの採用は正解といえますね」
《黙示録、シェオルドレッド》の不採用
──「ミッドレンジの定番だった《黙示録、シェオルドレッド》の解雇理由はいかがでしょうか」
佐藤「スペースがカツカツで枠がなく、さらにこれ単体で勝てるゲームが減ったというのが理由です。現在は瞬速付きのプレインズウォーカーである《放浪皇》や除去耐性のある《最深の裏切り、アクロゾズ》を優先しています」
佐藤「メタゲーム的にコントロールが増加傾向にあり、《黙示録、シェオルドレッド》は打ち消しや除去で対処されてしまい、まず定着しません。4マナという大ぶりなアクションは青系全般に《三歩先》でいいように咎められてしまいます。対コントロールを考えるうえでは同じ4マナを支払うならばプレイするタイミングを選べる《放浪皇》や除去体制のある《最深の裏切り、アクロゾズ》優先すべきなのです」
佐藤「とはいえ《黙示録、シェオルドレッド》自体のカードパワーは高く、ボロス召集やティムール・アナリストには優先的に出したい1枚。あくまでも枠がかち合ってしまった結果、《放浪皇》などを採用しただけなのです」
──「ここからは『サンダー・ジャンクションの無法者』のカードに注目していきます。佐藤さんのエスパー・ミッドレンジでは《秘密の中庭》と《害獣駆除》が採用されていますね」
マナベースの変化
佐藤「《秘密の中庭》の加入の恩恵は大きく、序盤に安定してデメリットなしの2色土地を確保できるようになりました。同じファストランドである《金属海の沿岸》と比較して、後手で《切り崩し》を構えらえるようになった点は魅力的ですね。これまでは《闇滑りの岸》やダメージランドしかなかった部分にちょうどフィットしています。後手で相手の2マナ域を対処しつつ、《敬虔な新米、デニック》や《大洞窟のコウモリ》で切り返す理想的な展開がより円滑に可能になりました」
佐藤「ファストランド自体は万能ではなく、4枚目以降の土地である場合、タップインとなってしまいます。4ターン目に2マナの妨害とクロックを両方構えたいため、そのタイミングでファストランドを置きテンポが崩れるのはさけたいところです。今のマナベースが最善かは不明ですが、色マナカウントは十分ありますし、ある程度は狙った通り構えられています」
新カード《害獣駆除》の評価
──「《害獣駆除》、コレはまさに…」
佐藤「わかりやすくボロス召集用のサイドボードです。トークンを含めてボードを一掃してくれます」
──「同じボロス召集対策といえば、以前は《一時的封鎖》が筆頭でしたが利点はありますか」
佐藤「《害獣駆除》のポイントは自分に被害はない点です。《大洞窟のコウモリ》や《敬虔な新米、デニック》を展開していたとしても、一方的に相手のボードのみを流すことが可能です。今まで展開をこらえて《一時的封鎖》後に出していた《敬虔な新米、デニック》も、序盤からダメージレースを牽引してくれます。戦線を維持しつつ使用できるのが《害獣駆除》の最大の強みです」
──ありがとうございました。
同じアーキタイプといえど、メタゲームの変化やカードプールの拡張、プレイヤーの環境理解とともに構築は変化していく。佐藤は最適化されたデッキとそれに至る過程を懇切丁寧に語ってくれた。カードの選択肢の意図、不採用の理由など環境を勝ち抜くための情報を余すことなく教えてくれたのだ。
佐藤は生まれ変わった新たなデッキを手に、チャンピオンズカップファイナルへと挑戦する。愛機であるエスパー・ミッドレンジとともに頂点を目指して。
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