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プレイヤーズコンベンション愛知2023

戦略記事

デッキテク:松本 友樹の「ジェスカイ・レジェンズ・コンボ」 ~レジェンド同士は惹かれ合う~

富澤 洋平(撮影者:堀川 優一)


 スタンダードで伝説のクリーチャーを多用したデッキといえば、どのような戦略を思い浮かべるだろうか。

 真っ先に思いつくのは《離反ダニ、スクレルヴ》から《スレイベンの守護者、サリア》、《策謀の予見者、ラフィーン》と流れるようなビートダウンが魅力のエスパー・レジェンズだろうか。直線的な攻めを好む方ならナヤ人間、システマチックなゲームを好むならば魂力土地を使いまわす《大スライム、スローグルク》デッキあたりが候補となる。多少の戦略の差こそあれど、いずれのデッキも伝説クリーチャーを並べてコツコツとライフを削っていくフェアデッキに分類されるアーキタイプである。

 その伝説のクリーチャーの集合体、いわゆるレジェンズをコンボデッキまで昇華させたプレイヤーがいる。

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 その男の名は松本 友樹。BIGMAGIC所属のプレイヤーであり、複数のグランプリでの優勝経験を持つ強豪。プレイヤーとして華々しい戦績のみならずデッキビルダーとしても名をはせており、『運命再編』期のモダンにおけるエスパー・メンターは代表作である。

 松本がスタンダードオープンへと持ち込んだデッキこそ、コンボタイプのジェスカイ・レジェンズだった。スタンダードで新しいコンボデッキと聞いて興奮を抑えきれず、松本にインタビューをお願いすることにした。

松本 友樹 - 「ジェスカイ・レジェンズ・コンボ」
プレイヤーズコンベンション愛知 2023 / スタンダードオープン (2023年11月25〜26日)[MO] [ARENA]
1 《皇国の地、永岩城
3 《シヴの浅瀬
4 《英雄の公有地
2 《平地
4 《魂の洞窟
4 《金属海の沿岸
4 《戦場の鍛冶場
3 《アダーカー荒原
1 《天上都市、大田原
-土地(26)-

4 《侵攻の伝令、ローナ
4 《大変成家、アンクタス
2 《勇敢な旅人、ケラン
4 《離反ダニ、スクレルヴ
4 《苛まれし預言者、エルス
4 《復興の領事、ピア・ナラー
4 《太陽の執事長、インティ
2 《敬虔な新米、デニック
-クリーチャー(28)-
2 《カイラの再建
4 《伝説の秘宝
-呪文(6)-
2 《第三の道のロラン
1 《邪悪を打ち砕く
2 《エルズペスの強打
2 《ゴバカーンへの侵攻
3 《失せろ
1 《痛烈な一撃
1 《カイラの再建
2 《否認
1 《デジェルとハゾレト
-サイドボード(15)-
レジェンズコンボとは?

――ジェスカイレジェンズとはどんなデッキなのでしょうか?コンボ部分を教えてください。

松本「複数の伝説のクリーチャーと《伝説の秘宝》を組み合わせたコンボです。メインパーツとなるのは《侵攻の伝令、ローナ》、《苛まれし預言者、エルス》、《大変成家、アンクタス》、《復興の領事、ピア・ナラー》、《伝説の秘宝》です。最速4ターンキルが可能ですが、コンボパーツであるクリーチャー同士の相互作用が多く、慣れるまでは時間のかかるデッキです。かなり練習のしがいのあるデッキで、一人回し好きな方におすすめですね」

回転

松本「上記の5枚が揃っている状況で《伝説の秘宝》でマナを出し、《侵攻の伝令、ローナ》をコストにあてて自身をアンタップ、再度マナを出して2マナ確保します」

松本「《侵攻の伝令、ローナ》がタップされたことで《大変成家、アンクタス》のドロー効果が誘発しますが、《苛まれし預言者、エルス》で置換され追放領域へ2枚のカードが置かれます。ここまで大丈夫ですか?」

――はい、何とか。

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松本「追放領域へ置かれたカードの内1枚が2マナ以下の伝説のクリーチャーならば、先ほどのマナを使ってプレイします。伝説クリーチャーをプレイしたことで《侵攻の伝令、ローナ》がアンタップしつつ、《復興の領事、ピア・ナラー》の効果で飛行機械・トークンが生成されます」

回転

松本「アンタップした《侵攻の伝令、ローナ》と先ほどプレイしたばかりの伝説のクリーチャーをコストに《伝説の秘宝》をアンタップすることで再度2マナが生成されます。追放領域に2マナ以下の伝説のクリーチャーがある限り、上記のループを繰り返せます。追放領域へ置かれた2マナ以下の伝説のクリーチャーは実質フリースペルとなり、この行程を繰り返した分だけ飛行機械・トークンを生成できるという仕組みです」

――一度タップしたり呪文を唱えたりするだけで、クリーチャーの誘発型能力が連鎖する難解なコンボですね。一体どのように構築されたのでしょうか。

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松本「実はMTGアリーナで見つけたデッキを自分でアレンジしたんです。というのも最近はほとんどスタンダードをプレイしておらず、MTGアリーナでブロンズ帯からスタートしたくらいなんです。たまたま対戦した相手がこのデッキの原型を使っていまして。一目見て気に入って、使われたカードからデッキを想像し、調整を続けた結果がこのデッキです」

――MTGアリーナというとメタゲームの回りが早く、いわゆるトップメタ以外は淘汰されそうな印象がありますが。

松本「高ランク帯はそうかもしれませんが、ブロンズ帯はさまざまなデッキがひしめき合う群雄割拠の環境です。ほかにもシミック探検や恐竜といった新セットのカードをふんだんに使用したデッキにも当たりましたし、デッキの原石の宝庫ですよ」

コンボへ至る道筋

──メインとなるコンボはわかりましたが、枚数が多いこともありすぐには揃わなそうですね。

松本「必要牌が多いのは事実ですが、デッキを掘り進む効果を持つクリーチャーが多く、見た目以上に揃いやすくなっています。《侵攻の伝令、ローナ》、《苛まれし預言者、エルス》、《大変成家、アンクタス》の内2枚が組み合わさるとドロースピードも倍速に変化しますからね」

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松本「相手の妨害がない前提になりますが、4ターンで30枚程度掘ることも可能なドロースピードなんです。そのためコンボパーツは多くとも、ドローエンジンさえ確立されていれば引き込むことは難しくありません。それに《苛まれし預言者、エルス》は《太陽の執事長、インティ》で代用できたりと、意外と組み合わせは多くありまして」

──《カイラの再建》もクリーチャーを探すためでしょうか。

松本「《カイラの再建》はクリーチャーのみならずアーティファクトも出せるため、主に《伝説の秘宝》の水増し要因として採用しています。だいたいX=2でプレイし、足りないパーツを探したりますね」

コンボ以外のカードについて

──ここまでに出てこなかったクリーチャーの役割を教えてください。

回転

松本「《勇敢な旅人、ケラン》や《敬虔な新米、デニック》はコンボにはほとんど寄与しませんが、出来事や降霊のおかげで1枚でカード2枚分の効果を持つため全体除去からの立て直しを図るカードです」

──『イクサラン:失われし洞窟』の《太陽の執事長、インティ》はいかがでしょうか。

松本「《太陽の執事長、インティ》は必須パーツではありませんが、《侵攻の伝令、ローナ》と並ぶと《苛まれし預言者、エルス》の代用となり、掘り進むスピードが各段にアップします。同時にカードを捨てるたびに+1/+1カウンターが配置も配置できますし、ほかのクリーチャーと比べて、攻撃力が高く、序盤からライフを詰めていけるものポイントです。コンボが決まらなかった際のビート要員であり、捨てる効果と組み合わせれば以外とダメージを稼げます」

松本「《侵攻の伝令、ローナ》や《大変成家、アンクタス》以外に魂力でも誘発したりと、シナジーの多いカードです。序盤から細かくライフを削りプレッシャーをかけていくと、相手も呪文を構えずらくなり、結果的にコンボをしかける隙が生じることになります。正直《太陽の執事長、インティ》がいなければこのデッキ自体が成立しなかったと思えるほど、ゲームを動かすのに大事なカードです」

デッキの得手不得手

──デッキ相性についても簡単に教えてください。

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松本「クリーチャーを使ったコンボの宿命ですが、除去の多いデッキを苦手としています。単体除去と全体除去を組み合わせは非常に厳しく、アーキタイプではゴルガリミッドレンジや伝統的な青白コントロールがあげられます」

松本「流行のアゾリウスミッドレンジのように除去が薄かったり、ランプ戦略のように細かい妨害の少ないデッキに対しては有利に立ち回れます。全体除去頼みとわかれば事前にある程度備えられますからね」

──コンボときくと打ち消し呪文も厳しそうですが。

松本「《伝説の秘宝》はどうにもなりませんが、《魂の洞窟》の加入により打ち消し呪文には耐性があります。フィニッシャーの《復興の領事、ピア・ナラー》まで含めてほとんどが人間ですから」

―ありがとうございました。


 スタンダードにクリーチャーを使ったコンボデッキが生まれるなど誰が予想しただろうか。このデッキは『イクサラン:失われし洞窟』から加わった《太陽の執事長、インティ》と《魂の洞窟》、そして松本持つ非凡な構築力により完成へと至った。

 複数のルートを持つこのコンボデッキは情報が少ないことも相まって、一見するとただのミッドレンジ戦略と見間違いかねない。この誤認や錯覚こそコンボの魅力のひとつであり、新たなデッキを構築する意義なのだろう。既存のデッキにはない新しい刺激を求めている方は、一度触れてみてはいかがだろうか。

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