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プレイヤーズコンベンション愛知2023
デッキテク:黒田 正城の「アゾリウス・ミッドレンジ」 〜スタンダードに現れた青き閃光〜
『イクサラン:失われし洞窟』リリース直後からスタンダードで話題となっていたのは《魂の洞窟》や《骨集めのドラコサウルス》であり、パイオニアでの活躍まで考慮して《嘶くカルノサウルス》くらいであった。
そのためアゾリウス・ミッドレンジの登場は理外の一撃となった。それこそ青いクリーチャーデッキといえばアゾリウス兵士やエスパーが真っ先に思いつくが、既存の構築を離れて新しいカードをふんだんに採用したデッキとなっている。その中心にあるのが縦横無尽に領域を展開する1枚の機体、《地底のスクーナー船》である。
2 《平地》 2 《島》 4 《ミレックス》 4 《不穏な投錨地》 1 《天上都市、大田原》 1 《皇国の地、永岩城》 4 《アダーカー荒原》 4 《さびれた浜》 4 《金属海の沿岸》 -土地(26)- 4 《遠眼鏡のセイレーン》 3 《敬虔な新米、デニック》 2 《内なる空の管理人》 4 《ティシャーナの潮縛り》 -クリーチャー(13)- |
4 《かき消し》 4 《地底のスクーナー船》 4 《忠義の徳目》 4 《婚礼の発表》 3 《放浪皇》 2 《邪悪を打ち砕く》 -呪文(21)- |
1 《痛烈な一撃》 2 《ゴバカーンへの侵攻》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《否認》 2 《失せろ》 2 《エルズペスの強打》 2 《太陽降下》 2 《トカシアの歓待》 -サイドボード(15)- |
この新進気鋭のデッキを紹介してくれるのはBIGMAGIC所属プレイヤーである黒田 正城。マジック黎明期から今にいたるまで活躍を続けているレジェンドであり、プロツアー神戸04で日本人初のプロツアーチャンプ、数多のグランプリ入賞といった輝かしい経歴を持つ。最近ではマジックの公式放送で見覚えのある方も多いのではないだろうか。
もし、彼の名前を聞いてもピンとこない方もこのポーズを見ればわかるかもしれない。
登場したばかりの情報の少ないアゾリウス・ミッドレンジについてキーカードやほかの青系デッキの差異を中心に伺った。
アゾリウス・ミッドレンジとは?
一アゾリウス・ミッドレンジとはどういったデッキなのでしょうか。
黒田「簡単にいえば軽いクリーチャーとカウンターを組み合わせたクロックパーミッションに分類されるデッキやね。このデッキは元々ゆうやん(細川 侑也)が作ったデッキでね、関西の大会で使おうとしたんだけど間に合わなくて。代わりに《地底のスクーナー船》2枚だけ入れたエスパーミッドレンジ使ったんよ。その時はトップ8で負けたけど、《地底のスクーナー船》の感触が良くて4枚使いたいと思ったのが始まりかな」
一同じ青絡みのビートである兵士やエスパーより優れている点はどういった点でしょうか。
黒田「エスパーだと《地底のスクーナー船》スタートしても3ターン目に安定して殴れないことが多くて。タップイン処理でプレイターンがズレたり、《婚礼の発表》ではすぐに搭乗できないし。《地底のスクーナー船》自体は高性能でも攻撃できないと意味がない。エスパーミッドレンジは活かしきれていないと感じたんよね」
黒田「対してアゾリウスは《不穏な投錨地》こそあるものの、ほかはアンタップインの土地ばかり。1ターン目から《遠眼鏡のセイレーン》、《地底のスクーナー船》で3マナをオープンにしたまま攻撃にいけるんよ。エスパーだとタップインの処理の関係上、こう上手くはいかない」
黒田「デッキ全体を軽量化していて、《忠義の徳目》や《ティシャーナの潮縛り》のようなインスタントタイミングでプレイ可能なカードも多い。自分のターンでの動きは最小限に抑えて、リアクションスペルを挟みながら立ち回りたいんよね。《ティシャーナの潮縛り》と《かき消し》の二段構えで。これはエスパー・ミッドレンジではできない流れかな」
キーカードは『イクサラン:失われし洞窟』より来る
一キーカードはズバリ。
黒田「《地底のスクーナー船》と《ティシャーナの潮縛り》やね。《地底のスクーナー船》はデッキのエースで《密輸人の回転翼機》に近いレベルのカード。《地底のスクーナー船》は採用率の高い除去に対して耐性をもっている点もあるね。ソーサリーは当たらないし、《切り崩し》や《喉首狙い》では対処できず無敵に近い」
黒田「《地底のスクーナー船》で攻撃しながら《ティシャーナの潮縛り》と《かき消し》を構えるのが理想の動きで。隙を作らず3ターン目から攻撃に行くために1マナからプレイする必要があるんよ」
一1マナ域には《遠眼鏡のセイレーン》に加えて《内なる空の管理人》まで採用されていますね。
黒田「追加した《内なる空の管理人》は搭乗要員だけど、《遠眼鏡のセイレーン》と地図・トークンと組み合わせれば毎ターン育てていける。エスパー・ミッドレンジだと1ターン目から動けないから《ティシャーナの潮縛り》を構えながら《地底のスクーナー船》で攻撃に向かう理想的な動きが取れない」
一《ティシャーナの潮縛り》の具体的な対象を教えてもらえますか。
黒田「まずは《群れの渡り》(の土地サーチ能力)。ランプでいうと《偉大なる統一者、アトラクサ》と《怒りの大天使》の天使2種かな。ほかには《黙示録、シェオルドレッド》やプレインズウォーカー各種、クリーチャー化する土地、培養器・トークン」
一思っていた以上に対象が多いんですね。
黒田「そうそう、一つだけ注意を。《ティシャーナの潮縛り》はデメリットも同時に消してしまうのを忘れずに。《装飾庭園を踏み歩くもの》の土地サーチを打ち消すと同時にブロック参加条件も失ってしまうから」
一上記のカードから想像するに版図ランプに特に効果的なカードなんですね。
黒田「今回はメイン4枚取ったけど、ランプに利くからサイドボードも合わせて4枚取ったほうがいいね。エスパーミッドレンジでも同様の動きはできそうだけど、理想の3マナ域は《婚礼の発表》、次いで《策謀の予見者、ラフィーン》。この時点で8枚あって、《ティシャーナの潮縛り》を取るスペースはない」
その他のアゾリウスのメリットは?
一ほかにもアゾリウスの利点はありますか。
黒田「そうね、アゾリウスにした意味は《不穏な投錨地》にもあるね。これだけで今日何点削ったことか。単体でも優れたダメージソースだし、《忠義の徳目》があればこれのほかにアンタップ状態の土地が1枚あれば、攻撃しつつ《かき消し》を構えられてマナの節約になる」
一色を減らしたことで除去の薄さは気になりませんか?
黒田「打ち消し呪文あるし、メインには《邪悪を打ち砕く》、サイドボードに《失せろ》とってるし十分かな」
──対象の広い《失せろ》よりも《邪悪を打ち砕く》を優先している理由は?
黒田「なんだかんだ言って地図・トークンを与えるデメリットが無視できなくて。対処したいカードを《婚礼の発表》と《黙示録、シェオルドレッド》と具体的に想定するなら《邪悪を打ち砕く》で対応できるからね」
黒田「理想をいえば《敬虔な新米、デニック》は《フェアリーの黒幕》のほうがデッキに合っていると思うけど、流石に線が細すぎるかなと。《地底のスクーナー船》で《敬虔な新米、デニック》を育てるだけで赤単アグロに優位に立てる」
デッキ相性とサイドボード
──マッチアップの得手不得手はいかがでしょうか。
黒田「実はまだ対戦数が少なくて、そこまではっきりとはわかってないんよ。ただ構造的に版図ランプには有利だと思うが、もう少し練習が必要かな。気を抜けるマッチアップではない。動きが一手早い分、エスパーミッドレンジにも有利に立ち回れるはずだと思う」
一サイドボードはどんなカードを用意しましたか
黒田「意外なカードでいうと《ゴバカーンへの侵攻》かな。対コントロール用のカードだと思いがちだけど、クリーチャー同士の殴り合いでも役に立つ受けが広いカードよ。1マナクリーチャー、《地底のスクーナー船》で3ターン目に《ゴバカーンへの侵攻》をプレイすれば相手の手札に制限をかけつつ《光盾の陣列》で護身完成。この動きはなかなか返せない」
黒田「残りはランプ用に《軽蔑的な一撃》と《否認》を2枚ずつで、息切れ防止用に《トカシアの歓待》」
一ここまで聞くと弱点は皆無に思えますが。
黒田「《スレイベンの守護者、サリア》がね、キツイのよ。先手2ターン目の《スレイベンの守護者、サリア》がね。《地底のスクーナー船》、《かき消し》、《忠義の徳目》と2マナ域は呪文が多くて、身動きが取れなくなっちゃう。だから本来複数枚取るべき《痛烈な一撃》を《エルズペスの強打》と割ってるくらいだからね」
—ありがとうございました。
黒田は終始アゾリウス・ミッドレンジについて楽しそうに語ってくれた。カードの選択肢に始まり動かし方、警戒すべきカードなど知識と経験に裏打ちされた情報を余すことなく教えてくれたのだ。
突如としてスタンダードに現れた青き閃光は柔軟な攻め手と高い対応力を持っており、今後もメタゲームの一角に食い込んでいくはずだ。《地底のスクーナー船》への乗船を迷っている方は、一度触れてみてはいかがだろうか。
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