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プレイヤーズコンベンション愛知2023
パイオニア群像劇 〜複数の視点からメタゲームの動きを探る〜
『イクサラン:失われし洞窟』発売から1週間というタイミングで開催されたチャンピオンズカップファイナル シーズン2ラウンド1。今大会ではすでにメタゲームブレイクダウンでも取り上げた通り《クイントリウス・カンド》か《地質鑑定士》のいずれかを使用した2種類の「発見コンボ」デッキがメタゲーム上位に台頭し、パイオニア環境の台風の目となっている。
これは、これまで「ラクドス・ミッドレンジ」と「緑単信心」と「アゾリウス・コントロール」の3種のデッキを環境の背骨とし、その他のデッキがそれぞれの立ち位置からメタゲームを刺激する均衡の取れた環境だったパイオニアが大きく動いた歴史的な瞬間と言えよう。
果たしてプロたちはこの環境の変化をどのように捉えているのか? 本記事では、4名の異なるデッキを持ち込んだプロにそれぞれの環境への考察と新デッキ「発見コンボ」への所感を語ってもらった。
「発見コンボ(《クイントリウス・カンド》)」の視点 森山 真秀
森山 真秀
森山「今回、本当はイゼット・フェニックスを持ってこようと思ったのですが、先週発見コンボが勝ってから他のデッキも除去を《塔の点火》にしたりサイドボードに《減衰球》を採るようになって立ち位置が悪くなってしまったことから《クイントリウス・カンド》型の発見コンボを使用することにしました。たぶん対策されているだろうなとは思ったのですが、対策を上回れるだけの爆発力があるのではないかと思ってのデッキ選択です」
森山「しかし、思ったよりもしっかり対策されていてキツいはキツいですね。それに緑単信心やロータス・コンボのような発見コンボに不利なデッキはほとんどいないようですし、このあたりはチャンピオンズカップファイナルのレベルの高さというか、やはりしっかり研究されているなと感じます。ただ、発見コンボ側もまだまだデッキの構成が完成されていないので、付け入る隙はあると思っています」
──「発見コンボもまだまだ発展途上のデッキということですね」
森山「ええ。僕の場合はコンボを捌かれたあとの中盤戦以降を戦うために《奔流の機械巨人》+《マグマ・オパス》を採用しています。あと、アゾリウス・コントロール相手だとサイドボード後に《思考のひずみ》を《ナーセットの逆転》されてしまうので、メインボードから《思考のひずみ》を1枚だけ採用していたりとか。デッキ自体はすでに知れ渡っていますし対戦相手も対策をしてきているので、その対策をどうやって躱していくかがポイントだと感じています。先週から今週の1週間だけでもかなりメタゲームに動きがありましたから」
森山「まだまだ僕もやりこんでいないのでそこまで語れることは多くないのですが、コンボ一辺倒にするのではなくサブの勝ち手段をどこまで追求できるかが今後の発見コンボの課題になってきそうだと感じています」
「発見コンボ(《地質鑑定士》)」の視点 原根 健太
原根 健太
原根「まず、これまでパイオニア環境はバランスが取れているのが大きな特徴だったんだけど、それは裏を返せば環境に変化が起きにくいということでもあった。今回『イクサラン:失われし洞窟』で新しく発見コンボというデッキが誕生したのは待望の変化と言えるね」
原根「反面で、この発見コンボの登場があまりにもインパクトが大きすぎて環境からデッキが減ってしまった。たとえば緑単、グルール、エニグマ・ファイアーズ……ラクドス・サクリファイスなんかは『イクサラン:失われし洞窟』が出る前までは最もいい立ち位置にいるデッキの一つだったけど、発見コンボが出てからいなくなってしまった。アブザン脂牙も何人かいるみたいだけど、発見コンボへの対策のためにデッキリストは大きく変化を余儀なくされていると思う」
原根「だから、今いるデッキはだいたいどれも発見コンボに対してある程度有利なデッキばかりになっている。そういう意味では、今大会では意外と発見コンボは勝ち上がらないかもしれないね。みんな対策してるから」
──「原根さんはなぜ《地質鑑定士》型の発見コンボを選択されたのでしょうか?」
原根「今大会で多いであろう《クイントリウス・カンド》型の発見コンボに強いという点がよいと思ったんだ。それに、《クイントリウス・カンド》型は土地が1回止まるだけでかなり相手に楽をさせてしまうデッキだと思った。対してこちらは土地を2枚置くだけで相手はコンボを警戒しないといけない……でも、やっぱりどの相手と当たってもやっぱり意識されていて難しいね」
「ボロス召集」の視点 佐藤 レイ
佐藤 レイ
佐藤「『イクサラン:失われし洞窟』以降、ボロス召集は純粋に強化されたね。《内なる空の管理人》が強い!地上が膠着したときに打破してくれて、1マナ域がより強くなったよ」
──「発見コンボの台頭の影響はどうでしょう?」
佐藤「あんまり関係ないね。他のデッキ……たとえば緑単信心とか、あとはフェアデッキ全般と比べれば発見コンボの影響はあんまり受けてない方だと思う。メインボードに《スレイベンの守護者、サリア》が入って、サイドボードに《ドラニスの判事》の枠を採ったくらいかな? 元々白も赤もサイドボードカードの選択肢は多くて、俺は召集の種にできるクリーチャーカードを優先して採用しているけど、みんなそこまで大きくリストは変わらないんじゃないかな。基本は先手ゲーの認識だよ」
佐藤「でも、《地質鑑定士》型はちょっとキツいな。相手も速いしこっちのクロックが間に合わないことがある。《クイントリウス・カンド》型は五分〜ちょい有利だと思ってるけど、どっち相手でも基本的に《スレイベンの守護者、サリア》とかを除去の的にして1ターン稼いで、稼いだターンで削り切れるかどうかみたいな展開を目指すことになるね」
佐藤「強いて言うならラクドス・ミッドレンジが減っちゃったのは若干向かい風かもしれない。ボロス召集はラクドス・ミッドレンジにちょっと有利っていうのが強みだったからうまみは減ってる。それに今大会でもボロス召集は多いみたいだし、ただただデッキパワーが高いからいつもより警戒されてる気がするかな。もう少しガードが下がってるときに使いたかったな」
「アゾリウス・コントロール」の視点 細川 侑也
細川 侑也
細川「最近はラクドス・サクリファイスとボロス召集、それから(白青じゃない)ロータス・コンボが調子よかったんだけど、発見コンボが出てからラクドス・サクリファイスとロータス・コンボがいなくなったね。他にも緑単やアブザン脂牙なんかもいなくなって、この1週間で環境は大きく変わったよ」
細川「俺の使ってるアゾリウス・コントロール目線だと、発見コンボ相手はどちらの形相手だとしても悪くない……というか、かなり有利だと思ってる。《失せろ》、《ドビンの拒否権》、《かき消し》、《方程式の改変》、《魂の仕切り》と5種類ものカードがコンボ成立を妨害することができるし、サイドボード後の《思考のひずみ》に対しては《ナーセットの逆転》が抜群に効く。最近は相手も《ナーセットの逆転》対策に《龍王ドロモカ》や《殺戮の暴君》を取っていることがあるけど、こちらも《即時却下》などで対応できるからね」
細川「何より、発見コンボが登場したことでこれまでどうやっても五分以上にならなかったラクドス・ミッドレンジやラクドス・サクリファイスが減ったのは追い風だね。といっても、今大会は思ったよりラクドス・ミッドレンジが参加しているみたいだけど……逆にイゼット・フェニックスなんかは元々有利だったからもう少し残っててくれたらいいのに、と思った」
細川「俺(アゾリウス・コントロール)目線、今大会はどれだけ発見コンボと当たれるかが重要な大会だと思ってるよ。これまで(インタビュー時点でラウンド4終了)も4回発見コンボと当たって勝ってるからね」
「発見コンボ」そのものを使用するプレイヤーと、それを打倒する立場のプレイヤー。それぞれの視点から環境について語ってもらった。誰もが口を揃えるのは、デッキが増えたことよりも他のデッキが減った、もしくはいなくなったことの影響だ。特にラクドスはミッドレンジ型が大幅にシェアを減らし、サクリファイスに至ってはほとんど消滅したに等しい影響を受けており、既存デッキはこれにより立ち位置が必然的に変わってくることとなる。
また、環境を支える三本の矢の一つだった緑単信心もいなくなっており、「発見コンボ」の台頭の影響は間違いなく大きい。インスタント除去など対戦相手にインタラクティブに対応できる手段のないデッキは、ボロス召集のような先鋭化したデッキ以外は生き残れなかったということか。
果たしてこの大会の結果によってパイオニア環境は今後どのように揺れていくこととなるのか? カバレージではこの先も大会の模様を追っていくのでぜひご覧いただきたい。
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