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神河チャンピオンシップ
神河チャンピオンシップ 初日の注目の出来事
2022年3月11日
(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)
マジックが新しい競技フォーマットを発表することは稀であり、その時はマジックの歴史に残るものとなる。エクステンデッドからモダン、パイオニア、ヒストリック、そして今回のアルケミーまで、最高峰の競技プレイが進化していくのに伴い、このゲームも進化を続けているのだ。
その舞台として「神河チャンピオンシップ」が金曜日に開幕となり、初日は229名のプレイヤーが7回戦を戦った。最初の3回戦には、調整されたカードとMTGアリーナ限定のカードが加わったデジタル限定フォーマット、アルケミーが採用されている。私たちが目の当たりにしたこの最新フォーマットは、過去の古典的マジックを強く思い起こさせた。白単アグロは最もプレイされたデッキとして、そして主要なアーキタイプの中で最も成功したデッキとしてこのフォーマットを先導し、繁栄していたのだ。
ドゥプラとデイヴィスが先頭に立つ
アルケミーに続いて行われたヒストリック4回戦が終わり、順位表のトップに無敗のプレイヤーが2名残った。ジム・デイヴィス/Jim Davisとジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean-Emmanuel Deprazだ。
デイヴィスは、チャンピオン経験者のアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciとイーライ・ラヴマン/Eli Lovemanが取りまとめる、「Andrea Mengucci and Eli Loveman's School for Gifted Magicians」(天才マジシャンのためのメングッチとラヴマンの学校)と呼ばれ、希望すれば誰でも参加できる大規模チームの傘下で準備を進めてきた。この巨大なテントを広げるアプローチは実を結んだと言えよう。チーム内で新フォーマットの対戦数を他者の環境よりも多くこなせた結果、デイヴィスは7勝0敗で初の上位入賞を狙える絶好の機会を得たのだ。
「賞金総額の高いマジックイベントに参加できることに幸せを感じている」と、彼は7勝目を挙げた後に思い返した。「アンドレア・メングッチのチームと一緒に調整してとても楽しかったし、調整期間が短かったにもかかわらず両方のメタゲームの感触をよくつかめていいプレイができたと思う。ヒストリックでは自分が好きでよくプレイしているデッキを使い、アルケミーではチームが作ったグリクシス・デッキを少しいじって使うことにしたんだ。明日もっとプレイできることが楽しみだ、何時間も配信に出ながらも自分のためにプレイするのみ、っていうのはいいよね」
ドゥプラにとっては、何年にもわたって歩んでいるスター街道におけるもう1つのハイライトとなった――去年10月に開催された「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」では高橋優太に敗れ惜しくも準優勝となったが、そこからさらに先へと歩みを進めていく。このフランスのスーパースターは上位入賞4回の戦績を持ち、特に彼によって練りこまれたヒストリックの白青親和デッキによって再び他者の一歩先へ進んでいると自覚しているようだ。
1 《平地》 1 《島》 4 《神聖なる泉》 4 《連門の小道》 2 《さびれた浜》 4 《産業の塔》 1 《皇国の地、永岩城》 1 《天上都市、大田原》 4 《宝物庫》 -土地(22)- 2 《羽ばたき飛行機械》 4 《エスパーの歩哨》 4 《巧妙な鍛冶》 4 《思考の監視者》 -クリーチャー(14)- |
1 《トーモッドの墓所》 4 《月罠の試作品》 4 《ポータブル・ホール》 3 《魂標ランタン》 4 《金属の叱責》 1 《影槍》 4 《イラクサ嚢胞》 3 《ウルザの後継、カーン》 -呪文(24)- |
2 《練達飛行機械職人、サイ》 2 《真髄の針》 3 《ドビンの拒否権》 3 《ガラスの棺》 1 《神秘の論争》 1 《影槍》 2 《勢団の銀行破り》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -サイドボード(15)- |
「このデッキの主な魅力は、《エスパーの歩哨》《ポータブル・ホール》《魂標ランタン》をメインデッキからプレイできるところかな、どれも『イゼット・フェニックス』をかなり阻害できるカードだからね」とドゥプラは説明する。「アーティファクト・デッキなので、それらを大いに活用できるし、《巧妙な鍛冶》で探すこともできる。《思考の監視者》《巧妙な鍛冶》《ウルザの後継、カーン》すべてがカード・アドバンテージを生み出す相互作用を持ち合わせるため、驚くほど復帰力の高いデッキでもあるんだ」
この環境はまだ未知にあふれているが、この2名の大胆な選択は彼らを完璧な結果へと導き、また土曜日の試合が始まって結果が積み重なった後も上位を維持しそうだ。
6勝1敗ですぐ後ろにつけているのは、プロツアー・チャンピオンのカイ・ブッディ/Kai Budde、ピオトル・グロゴウスキ/Piotr Głogowski、グレッグ・オレンジ/Greg Orangeといった面々だけでなく、ネイサン・ストイア/Nathan Steuerやアーロン・ガートナー/Aaron Gertlerなどの若手スターもいる。
アルケミーの出現
マジックにおいて新フォーマットのプロデビューほどに興奮できるものはほとんどなく、例えば大人気のモダン・フォーマットの最高峰として象徴的な2011年の「プロツアー・フィラデルフィア2011」のようなイベントの盛り上がりは、マジックプレイヤーの語り草になっている。
つい最近では、ここ2年間のヒストリックで紆余曲折があり、そのつど何かしらのデッキが脚光を浴びてきていた。奇抜なコンボ・デッキが登場しては消え(《渦まく知識》や《記憶の欠落》も登場したが消え)、そして《大釜の使い魔》を《魔女のかまど》にくべ続けるプレイヤーもいたわけだが、「神河チャンピオンシップ」でもそれは多く行われていた。
アルケミーは調整されたカードが新天地で輝く機会を与えてくれるものだが、まさにそれが初日に見られたものだった。
白いカードに偏りつつも多様化したメタゲームの中で最も注目されたのは、世界王者・高橋優太の「ナヤ・ルーン」デッキだ。
1 《森》 1 《草茂る農地》 4 《枝重なる小道》 2 《日没の道》 4 《岩山被りの小道》 3 《針縁の小道》 1 《ハイドラの巣》 1 《フロスト・ドラゴンの洞窟》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《皇国の地、永岩城》 4 《見捨てられた交差路》 -土地(23)- 4 《気前のいい訪問者》 4 《樹海の自然主義者》 4 《無常の神》 4 《ルーン鍛えの勇者》 3 《スカイクレイブの亡霊》 -クリーチャー(19)- |
3 《精霊との融和》 4 《強力のルーン》 4 《速度のルーン》 3 《持続のルーン》 4 《スカルドの決戦》 -呪文(18)- |
2 《聖戦士の奇襲兵》 1 《スカイクレイブの亡霊》 4 《ポータブル・ホール》 2 《タミヨウの保管》 2 《レンジャー・クラス》 2 《勇敢な姿勢》 2 《放浪皇》 -サイドボード(15)- |
各種ルーンと合わせて(《樹海の自然主義者》でコストを軽減しつつ)《ルーン鍛えの勇者》を活用するこの構成は、粘り強いカード・アドバンテージ・エンジンを特徴とし、この大会で使われると予想されるさまざまなデッキに対して有利に思える。そして高橋とチームメイトの斉藤徹にとって、このデッキは期待通りの成果を発揮したようだ――アルケミーで斉藤は無敗、高橋も2勝を挙げている。
しかし大会が進行するにつれルーン・デッキは、《スレイベンの守護者、サリア》、《スカイクレイブの亡霊》、そして《精鋭呪文縛り》という常套手段を頼みとする「白単アグロ」の後塵を拝するということが明らかになってきた。白のクリーチャーに内蔵された「課税」効果によってこのデッキは低速デッキに先んじることができ、かのレジェンドでさえ通常のルーチンから外れてこのデッキを選択するに十分な内容だった。
もちろん、元世界王者であるパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaにとって、それは彼が「彼自身」をプレイするのに一役買うことになった。
17 《冠雪の平地》 3 《皇国の地、永岩城》 1 《フロスト・ドラゴンの洞窟》 4 《A-不詳の安息地》 -土地(25)- 4 《有望な信徒》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 1 《束の間の霊魂》 4 《エメリアのアルコン》 4 《スカイクレイブの亡霊》 2 《精鋭呪文縛り》 1 《粗暴な聖戦士》 4 《審問官の隊長》 4 《シガルダ教の福音者》 3 《A-光輝王の野心家》 -クリーチャー(31)- |
2 《ポータブル・ホール》 2 《放浪皇》 -呪文(4)- |
3 《束の間の霊魂》 2 《輝かしい聖戦士、エーデリン》 2 《精鋭呪文縛り》 1 《粗暴な聖戦士》 1 《夜明けの空、猗旺》 1 《ガーディアン・オヴ・フェイス》 2 《ポータブル・ホール》 2 《勇敢な姿勢》 1 《放浪皇》 -サイドボード(15)- |
「《エメリアのアルコン》、《スレイベンの守護者、サリア》、《スカイクレイブの亡霊》などがルーンに対してとても良いと考えて私たちは『白単』を選んだ。最もプレイされるデッキは『ルーン』だと考えていた」と彼は語る。「多くの人がそうであったように、私たちのその考えは間違っていたことが分かったけれども、それでもこのデッキは良いと思う、強力かつ積極的なデッキなので理論上相性の悪いデッキとの対戦でも多くの勝利を奪えるからね」
最もよく知られているデッキ以外では、参考にするための過去のデータがほとんど無いこの未知なるフォーマットに対し、独自の方向性で探索することで多くの成功がもたらされた。
デイヴィスが用いて初日を無敗で終えることとなった「グリクシス・ミッドレンジ」デッキを取り上げてみよう。このデッキは《鏡割りの寓話》とともにこの3色にある強力なクリーチャーをまとめ上げ、またゲーム後半では《街裂きの暴君》のコピー・トークンを生み出してゲームを素早く終了させられるのだ。
1 《沼》 1 《山》 4 《憑依された峰》 4 《荒廃踏みの小道》 2 《難破船の湿地》 4 《清水の小道》 3 《嵐削りの海岸》 4 《河川滑りの小道》 2 《目玉の暴君の住処》 1 《バグベアの居住地》 -土地(26)- 4 《税血の収穫者》 2 《墓地の侵入者》 4 《街追いの鑑定人》 3 《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》 2 《街裂きの暴君》 -クリーチャー(15)- |
2 《強迫》 2 《炎恵みの稲妻》 2 《電圧のうねり》 2 《削剥》 2 《パワー・ワード・キル》 4 《鏡割りの寓話》 4 《漆月魁渡》 1 《不笑のソリン》 -呪文(19)- |
2 《無効》 2 《夜鷲のあさり屋》 2 《マインド・フレイヤー》 2 《強迫》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《魂転移》 3 《食肉鉤虐殺事件》 1 《不笑のソリン》 -サイドボード(15)- |
ビッグチームによる別のデッキ――ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasと同志による「オルゾフ・ベンチャー」――は、メタゲーム全体のシェアと同じ比率で3勝0敗を獲得している。ジム・デイヴィスが用いた「グリクシス・ミッドレンジ」のようなミッドレンジ・デッキ、アグロ・デッキ、コントロール・デッキのいずれもこの日の開始時の状態におおむね比例した結果となっており、それはますます(明白にアグレッシブな)「白単アグロ」と(明確にアグレッシブな)「ナヤ・ルーン」の顕著な違いを検討せざるを得ない状況だ。
アルケミー3回戦はほんの始まりにすぎない――2日目にはさらに4回戦が待ち構えている。初日は何が機能し、何が機能しなかったかを確認する最初の機会だった。金曜日終了後の3勝0敗メタゲームの状況は以下の通りだ。
アーキタイプ | デッキ数 | 3-0率 |
---|---|---|
白単アグロ | 9 | 31.0% |
マルドゥ・ミッドレンジ | 4 | 13.8% |
ナヤ・ルーン | 3 | 10.3% |
オルゾフ・ベンチャー | 2 | 6.9% |
ラクドス・サクリファイス | 2 | 6.9% |
エスパー・クレリック | 1 | 3.4% |
ゴルガリ・ミッドレンジ | 1 | 3.4% |
グリクシス・ミッドレンジ | 1 | 3.4% |
グルール狼男 | 1 | 3.4% |
イゼット・カラミティ | 1 | 3.4% |
イゼット・ライブラリーアウト | 1 | 3.4% |
ジェスカイ日向 | 1 | 3.4% |
マルドゥ・サクリファイス | 1 | 3.4% |
ラクドス・ミッドレンジ | 1 | 3.4% |
先を見据える
最新のフォーマットで行われた7回戦と、そこで行われたいくつかの記憶に残るゲームは終わり、日曜日のトップ8入賞と「第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」への参加権利が懸かった上位陣の戦いにすべての注目が集まる。
土曜日には100名以上のプレイヤーが再び相まみえ、「神河チャンピオンシップ」トップ8に至るまでにはアルケミー4回戦に続けてヒストリック4回戦と合計8回戦が待ち構えている。
(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa)
「神河チャンピオンシップ」 日本語版放送ページ・放送日程
日本語版放送出演者
- 実況:石川朋彦(@katuobusi717)
- 実況:ブルナー実久(@mksnake007)
- 実況:海老江邦敬(@kuroebi_games)
- 解説:黒田正城(@masashiro41236)
- 解説:森山真秀(@SakeIzumo)
- and more...
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