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第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権

チャンピオンの講義
2025年12月13日
マジック世界王者でさえ、友人のちょっとした手助けから上達を得ている。
歴史上、あと2人しか成し遂げていない偉業を振り返る。新たに(再)戴冠したばかりのマジック世界王者セス・マンフィールド/Seth Manfieldの思考は、まさにそこにあった。彼が考え得たことは、いくらでもあった。「第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」での勝利が、彼の『マジック』の歩みにおける5つ目のプレミア・トロフィーであり、ネイサン・ストイア/Nathan Steuerとの同点記録から抜け出しカイ・ブッディ/Kai Buddeに次ぐ単独2位に立ったこと。あるいは、通算14回目のトップフィニッシュによって、前述のドイツの怪物との同率を抜け出し、そのリストで単独4位に輝いたこと(ガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassif、ジョン・フィンケル/Jon Finkel、パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaは依然として何歩か先だが、射程圏内に近づきつつある)。もちろん「第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」のトップ8のゲームを9勝0敗の無敗で走り切ったことで、シャハール・シェンハー/Shahar Shenhar、そして昨年の覇者ハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezと並ぶ、史上3人目の2度目の世界王者となったことに思いを馳せていたかもしれない。おまけに、優勝賞金の10万ドルをどう使うか、あるいは生涯記憶に残るであろう史上初のブラック・ロータス・トロフィーをどこに飾るか。そんなことを考えていたって不思議ではない。
しかし、彼が考えているのは別のことだった。初の世界選手権優勝から約3,600日後、そして2度目の優勝から約36時間後、「Team TCGplayer」のメンバーである彼が考えていたのは、チームメイトがどれほど重要な存在であったか、ということであった。しかもそれは、仲間のマット・ナス/Matt Nassがスタンダード・フォーマットを(またしても)大きく揺るがしたから――マットは実際に揺るがしていたのだが(今週のフランク・カーステン/Frank Karstenの「Metagame Mentor」記事で詳述されている)――というだけではなく、マジック最大の舞台に臨むにあたって、チームが彼のメンタル面にどれほど大きな意味を持っていたか、という点にも起因していた。
「優勝した瞬間は感無量だった。2015年ほどではないかもしれないが、この大会は自分たちが積み上げてきた努力があったから、とても大事だった」とセスは説明してくれた。「直近の数イベントではテストハウスに参加できず、本当に寂しかったし、それが準備にも影響したと思う。世界選手権ではチームメイトとフルで時間を過ごせたのがとても良かったし、あの環境によって、自分のモチベーションはより強くなった。」
世界選手権に向けた準備は、他のどのイベントに向けた準備とも異なる。家族旅行を取りやめる選手がいたり、1晩の睡眠が平均4時間だったという話が出たりするほどで、マジック世界選手権は文字どおり別格のイベントであり、人生最大の大会に出場資格を得た126人のプレイヤーはそのことを痛感していた。テストチームは、他のどのイベントよりも重要である一方で、他のどのイベントよりも人数が限られる厳しさがあるフィールドの塵が落ち着いたとき、少数の有力チームが際立って見えた。そして、真新しいスタンダード環境が用意されたことで、大会前の数週間にこれらのチームが行った調整は、マジックの歴史を形作ることになるのであった。
世界選手権において「Team TCGplayer」は、過去20年間でも特に知名度の高いプレイヤーたちで構成されていた。そこにはマット・ナス/Matt Nass、リード・デューク/Reid Duke、サム・パーディー/Sam Pardee、ガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifといった、元「ChannelFireball」のスターたちも一員だ。往年の「Caw-Blade」の名手たちは、2023年以降の「現代」プロツアーレベルのイベントへと見事に移行し、「プロツアー『カルロフ邸殺人事件』」では画期的な(&環境破壊的な)ラクドス吸血鬼デッキを携えて登場した。ちなみに、このイベントで優勝したのはマンフィールドであった。
テストプレイのプロセスは2025年に向けてアップデートされているが、『マジック』のテストチームの基本的な前提は変わらない。各人が可能になった瞬間から課題に取り掛かり、そして大会の1~2週間前に行われる最重要なテストハウスで、それらが集約される。飛行機に乗り込むずっと前から、ディスコード上で何万ものメッセージがやり取りされるが、国際電話プランが有効になり、アンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciが食べ物の話をし始めたとき、計画はようやく現実の輪郭を帯びるのだ。
陳腐な言い方になるが、「集まり」こそが『マジック』の醍醐味となることが多い。マンフィールドにとって、ワシントンでチームと過ごした時間は、世界選手権シーズン全体の中で最も記憶に残る瞬間であった。マンフィールドが、友人でありチームメイトでもある彼らと再び対面で一緒に取り組めることに心から喜んでいたのは確かだが、彼が同じくらい昂っていたのは、彼らがそこで行っていた調整そのものであった。
「感謝祭の食事を終えたら、そのまま荷造りをして、翌朝の便でシアトルへ飛び、すぐに動き出す準備をする――そんな感じだった」とマンフィールドは振り返った。「直近の禁止改定と、『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』の発売があって、新しい環境だった。つまり、解き明かせる可能性があったのだ。最初からそれにすごくワクワクしていた。今は情報がすぐに広まる時代で、多くはオンラインで起こる。それでも、新環境が始まって1~2週間の時点では、みんなが多少は右往左往している。だからこそ、実際に集まってからは、僕らにとって本当に刺激的な日々だった。」
As always, the gathering is the best part pic.twitter.com/Kt9ByOktJV
— Edgar Magalhães (@EdgarMTG) December 7, 2025
世界選手権2日目は中途半端な結果に終わった。結果には満足しているが、こんなに素晴らしいスタンダード・デッキを活かせなかったのは少し残念だ。『マジック』はハイレベルで、プレイすると本当に謙虚になれるゲームだ。トッププレイヤーたちと競い合い続けたいなら、まだまだ学ぶべきことがたくさんある
いつも通り、集まるのが一番の楽しみ
7-7 at worlds. This was a very humbling experience and made me realize I still have a lot to work on if I want to compete at this level. Grateful for team TCGPlayer for letting me test with them again. GG pic.twitter.com/WKRxLi3AZg
— Nam Dang (@Nammersquats) December 7, 2025
世界選手権は7-7。とても謙虚な気持ちになり、このレベルで戦うにはまだまだ努力が必要だと実感しました。また調整に参加させてくれた「Team TCG Player」に感謝しています。GG
「Team TCGplayer」にとっての「ワクワク」は、他の全員にとっての「悪夢」を意味した。まったく意外でも何でもないが、「プロツアー『霊気走破』」王者マット・ナス――《豆の木をのぼれ》デッキでプロツアーを制し、その後デッキが禁止に繋がった(ナスの戦果の「壁」に並ぶ禁止のひとつに過ぎない)――が、またしてもやってのけたのである。
マンフィールドは、どう動けばいいか分かっていた。
「最初にマットがこのデッキを持ち込んできて、当初はすごく流行ると思っていた緑のクリーチャー・デッキとセット(マッチ)を回していた。彼が『可能性があると思う』と投稿したのを見て、僕はすぐに彼を信じて、次は自分が乗り込んだ」とマンフィールドは明かした。「吸血鬼デッキと似た話だ。テスト用ディスコードで『これは本当に強い』なんて、僕らはそう頻繁には言わない。講義デッキは、実は僕が試した最初期のデッキの1つだった。ちょっと意表を突く感じのデッキで、そういうのはだいたい僕が一番うまく扱えるんだ。」
そして7日後、世界選手権のメタゲームが公開された。会場のほとんど全員が衝撃を受けた。「Team TCGplayer」だけがイゼット講義を発見していたわけではない――世界選手権直前の数時間で、『Magic Online』のデータにも広がり始めていた――が、彼らのリストには独自のアレンジがあった。事前に恐れられていた《アナグマモグラの仔》を軸にしたクリーチャー・デッキに対して、ほとんどのプレイヤーは「まあ戦える」と感じていたようだ。実際の集合後のフィールドが完全に予想通りだった者はいなかったが、講義型が本当に通用するのかは、誰もが興味津々であった。
3日後、答えは出た。講義デッキは通用したどころではない。「Team TCGplayer」が仕込んだ《美術家の才能》+《忍耐の記念碑》という「必殺パッケージ」は、その水準をはるかに超えて結果を残した。同じ構築を選択したトップ8入賞の芝田輝良も含め、TCGplayer版講義デッキの対フィールド勝率は61%にまで膨れ上がった。一方で、他のイゼット講義全体を合算すると50%未満に収まったのである。
「テストハウスを出る頃には、このイベントは本当に『条件が揃ってきた』感じだった。調整にものすごく時間をかけたし、リミテッドにも手応えがあった。メタゲームを見る前から、僕は『ベストデッキはこれだ』って分かっていた。デッキの多くが、そう感じさせる出来だった」とマンフィールドは語った。「吸血鬼のときも多少はそういう感覚があったけど、ここまでじゃない。普段の僕はデッキ選択のプロセスにすごく迷うのに、今回はチームの勝算に自信があった。もしキャリアの中で、最も大きなアドバンテージがあったと感じるデッキを1つ挙げろと言われたら、それがこれだ。別に僕らだけが使っていたわけじゃないけど、『自分達のビルド』を使っていたのは僕らだけだった。大会に入る前から、すごく良い予感がしていたんだ。」
| 1 《アグナ・ケラ》 7 《島》 2 《山》 4 《マルチバースへの通り道》 4 《リバーパイアーの境界》 4 《尖塔断の運河》 -土地(22)- 4 《ばあば》 -クリーチャー(4)- |
3 《愛着を捨てる》 4 《積み重ねられた叡智》 4 《美術家の才能》 3 《ブーメランの基礎》 4 《爆裂の技》 4 《火の技の修行》 3 《アイローの表演》 1 《飲めば潤う!》 4 《忍耐の記念碑》 4 《嵐追いの才能》 -呪文(34)- |
1 《愛着を捨てる》 1 《削剥》 1 《無効》 1 《舷側砲の一斉射撃》 1 《アイローの表演》 1 《飲めば潤う!》 2 《否認》 1 《紅蓮地獄》 2 《量子の謎かけ屋》 2 《魂標ランタン》 1 《呪文貫き》 1 《塔の点火》 -サイドボード(15)- |
それは、世界選手権で悲惨な走り出しの0-2スタートによって、僅かに曇った「良い予感」であった。しかしマンフィールドは立て直し、『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』ドラフト最終ラウンドで勝利をもぎ取り、そのまま構築ラウンドへ突入した。そこで彼のデッキは、宣伝文句通りの強さを余すところなく発揮したのである。決勝で芝田輝良を3-0で一蹴した頃には――準々決勝の相手(そしてプレイヤー・オブ・ザ・イヤー)行弘賢を相手にしたときも、準決勝でデリック・デイヴィス/Derrick Davisを相手にしたときも同じく3-0だったのだが――この週末の「最強デッキ」は止められないこと、そして、すでに『マジック』において成し得ることをすべて(それ以上に)成し遂げてしまった、殿堂入りプレイヤーにして二度目の世界王者となった男もまた止められないことが、誰の目にも明らかになっていた。
今回の世界選手権タイトルと、マンフィールドの世界選手権での初優勝との間には、もう1つ別の違いがある。観戦パーティーに、新しいメンバーが増えていたのだ。
「10歳と3歳の子どもがいるんだけど、家族と一緒に観てくれていた。みんなが応援してくれてね。優勝したとき、子どもたちは泣いていたって聞いたよ。地元の『Dungeons & Dragons』グループも、全員観てくれていた。家からの応援と、会場にいるチームの応援、その両方があって本当に最高だった」とマンフィールドは語る。「去年は世界選手権でトップ4に入って、ハビエル相手に5ゲーム目までもつれた。あのときは、もしかしたらチャンスを取り逃がしたのかもしれないって感じていた。でも今回はもう一度チャンスが来て、やり切ることができた。」
今後に向けて、マンフィールドの世界選手権優勝が『マジック』にとって何を意味するのか、これは疑いようがない。彼はとっくの昔に「最高峰の1人」としての地位を確立していた。そして今や「史上最高の1人として、どこに位置づけられるのか」というレガシーの議論が、正面から俎上に載ったのだ。だがマンフィールド本人にとって、世界選手権優勝は何を意味するのか。勝てるものはすべて、しかも2度勝ち切った男の次は何なのか?
「まだ全部を消化している最中だ」と彼は認めた。「僕は『マジック』をプレイするのが大好きだし、この大会で状況もすごく良くなった。主要イベントへの出場資格も揃っている。2026年は地域チャンピオンシップやスポットライト・シリーズ・イベントにも出ていきたいし、どの大会にも最高の自分で臨みたいんだ。」
I won #MTGWorlds!!!
— Seth Manfield (@SethManfield) December 8, 2025
#MTGWorldsで優勝!!!
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