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第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権

第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 トップ8注目の出来事
2025年12月8日
第31回マジック世界選手権は2日間で14回戦を終え、最後に残ったのは、歴代の世界選手権王者がその名を歴史に刻んできた、あの見慣れた日曜の舞台だった。 しかし、長年競技シーンを見てきたファンにはお馴染みのステージでありながら、今回の世界選手権トロフィーは完全に新しく――そして圧倒的な存在感を放っていた。
その美しいトロフィー――そして賞金総額1,000,000ドルの中から優勝者に贈られる100,000ドル――は、これから始まる3つの最重要ラウンドを勝ち抜く者を待っていた。
プレイヤー・オブ・ザ・イヤー
ただし、トップ8の舞台に唯一かかっていなかったタイトルがある。行弘 賢はワシントンでの活躍により2025 プレイヤー・オブ・ザ・イヤーに輝き、すなわち《心火の英雄》を追い越せる者はいなかった。プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』王者は、偉大な成果を振り返り、喜びと感謝の思いを語った。
「プレイヤー・オブ・ザ・イヤーを獲った日本人選手は何人か知っていますし、彼らの活躍を間近で見てきました。今度は自分の番だと思うと本当に嬉しく思います。この名誉ある賞を勝ち取れたことは光栄です」と彼は語る。「ずっと夢見ていたことで、この大会に来た理由の一つでもありました。また同じ場所に辿り着けるとは限らないからこそ、この結果を本当にありがたく感じています」
彼はTeam MSDと森山ジャパン、旅を共にしてきた仲間への感謝も口にした。
「もともとキャリアのほとんどは一人でプレイしてきましたけれど、昨年からチームで動くようになったんです」と行弘は言う。「Team MSDや森山ジャパンの皆と練習を重ねる中で、モチベーションを保ち、支えてくれる素晴らしい仲間に出会えました。彼らのおかげで自分のレベルは一段上がったと思います。ここまで来られたのは一人の力じゃありません」
行弘 賢
準々決勝
プレイヤー・オブ・ザ・イヤーが確定し、次はトップ8。最初の対戦は行弘 賢 vs セス・マンフィールド。歴代3人目となる二度目の世界王者を狙うマンフィールドにとって、試合展開は理想的な滑り出しとなった。デッキの核となる2種類のコスト軽減要素――《ばあば》と《美術家の才能》――が揃い、さらに《嵐追いの才能》が続く。対する行弘はリアニメイトデッキの性質上、呪文は引き込むが土地が来ない。盤面は差が広がり、あっという間にトップ8第1ゲームが決着。マンフィールドの二度目の世界王者への挑戦は好スタートを切った。
第1ゲームがマンフィールドのデッキの爆発力を示したとすれば、第2ゲームは粘り強さを示したと言える。序盤に互いがリソースを削り合う展開の中、マンフィールドは《忍耐の記念碑》を1枚、さらに2枚と次々に着地させた。これはTeam TCGplayerのイゼット講義に加えられた重要なカードであり、その理由がまさにこの試合で明らかになった。リソース交換が続く中でもマンフィールドはカード品質で上回る交換を選択でき、さらに《忍耐の記念碑》の追加効果も最大限に活用できた。
マンフィールドは着実にリソース差を広げていくが、行弘もただでは退かなかった。《ベイルマークの大主》を複数展開して手札を維持しつつ、なんとか《忍耐の記念碑》を削ろうと食い下がる。しかし3枚目の《忍耐の記念碑》が戦場に並び、ライフも18と余裕のある状況では勝負の趨勢は明白だった。全く性質の異なる2ゲームだったが、結果としてマンフィールドは2-0とリード。事前評価で不利とされたマッチアップを押し返して見せた。
次はサイドボード入りのゲーム。事前にはマンフィールドが巻き返しを狙うターンだと考えられていたが、実際にはあと1勝で準決勝へ手が届く状況にいた。そして第3ゲーム、再び《ばあば》と《美術家の才能》の初動が決まり、一気に加速する。行弘も干渉呪文で食い下がろうとするが、マンフィールドの講義デッキが生むカードアドバンテージと選択肢の前に追いつくには至らなかった。 ゆっくりと、しかし確実に――セス・マンフィールドは準決勝へ進出。プレイヤー・オブ・ザ・イヤーの挑戦はここで幕を閉じた。
ここでメインカメラは別の準々決勝へと移った。対戦は元世界王者ジャン=エマニュエル・ドゥプラ vs デリック・デイヴィス。デイヴィスは今大会最後の無敗プレイヤーだったが、2日目に連敗を喫し、最終ラウンドでトップ8残留を賭けて戦う状況に追い込まれていた。 ここではデイヴィスのイゼット講義が、ドゥプラのイゼット・ルーティングと激突する。ミラーマッチというほどではないが、共通のカードも多いマッチアップだ。
中継が入ったのは第3ゲーム、1勝1敗のイーブンで迎えた場面だった。戦場には『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』の1マナクリーチャーが双方から並ぶ。ミームの母《ばあば》、そして知名度は高くないがルーティング側の確かなアタッカーである《トラアザラシ》だ。 サイド後の最初のゲームでは、この《トラアザラシ》に《逸失への恐怖》が加わり、デイヴィスのライフを11まで削る。しかしデイヴィスは盤面を掃除し、ライフ二桁を残したまま中~終盤へ突入。盤面のクリーチャーはほぼ一掃された状態で勝負は続いた。
第3ゲームは長期戦の様相を呈し、互いにデッキを掘り進め、出てきたクリーチャーを即座に除去するシビアな展開となった。しかし、脅威の引きが安定していたのはドゥプラの方だった。《トラアザラシ》、《逸失への恐怖》、そして最終的にはネイサン・ストイア/Nathan Steuerの姿を模した《精神の決闘者》が並ぶ。《精神の決闘者》が何度も成長する大きなターンで、わずかだが決め手となるダメージを押し込み、試合の主導権を握った。
しかし、デイヴィスもここで終わらない。先手を握った第4ゲーム、序盤から一気に攻め立て、《精神の決闘者》2体を乗り越える展開に持ち込み、ドゥプラにカードを片付けさせた。勝負の行方は第5ゲームへともつれ込む。
最終ゲームはまさにカワウソ祭りとなった。両者が《嵐追いの才能》を中心に据え、難解なコンバットが続く接戦。ライフはドゥプラ7、デイヴィス8。 ドゥプラが5マナで《量子の謎かけ屋》をキャストし、土地をすべてタップして追い上げを図った瞬間、デイヴィスは勝利を確信する。彼は手札の除去呪文2枚を公開し、さらに場に残るカワウソも添えて見せた――その瞬間、デイヴィスの準決勝進出が決まった。
準々決勝の締めくくりは、オーストラリアのショーン・ヘンリー vs アーネ・フーシェンベスのティムール・カワウソミラーマッチ。爆発力の高いアーキタイプ同士の対決は荒れた展開となったが、ヘンリーは3ゲーム連続で圧倒的な盤面を形成することに成功。特に《除霊用掃除機》が稼働し、プロツアー王者フーシェンベスの墓地利用を封じたことが大きかった。主導権を握ったヘンリーが試合を決め、残る準々決勝はあと1組となった。
最後の対戦は、イゼット講義で構築ラウンドを唯一無敗のまま最初にトップ8入りを決めたサム・パーディーと、自作の講義デッキで挑む日本のプロフェッショナル、芝田 輝良の一戦。中継が切り替わった時、芝田の盤面には恐ろしい光景が並んでいた。《忍耐の記念碑》、《嵐追いの才能》、そしてレベルアップ済みの《美術家の才能》が2体。
パーディーが立て直しを試みるも、日本のマジック・マスターは粘り強く維持。最後は呪文の連打で押し切り、芝田 輝良が勝利を決めて準決勝の組み合わせが出揃った。
準決勝
準決勝の組み合わせが決定した。 ショーン・ヘンリー vs 芝田 輝良(カワウソ vs 講義) セス・マンフィールド vs デリック・デイヴィス(講義ミラーマッチ)
まずは芝田 vs ヘンリー戦から。1ターン目から双方のカワウソが並び、《美術家の才能》を展開した芝田に対し、ヘンリーは勝利の軸に据えるべく《轟く機知、ラル》を着地させて守りに回る。しかし芝田は一気に反撃のターンを迎える。1マナ呪文を4枚連続で唱え、ヘンリー側のブロッカーを除去、自身のカワウソを5/5に強化して《轟く機知、ラル》を戦場から追放。ヘンリーはほぼ投了寸前となり、勝負は素早く2ゲーム目へ移行した。
第2ゲームはヘンリー側に展開の流れが来る。《嵐追いの才能》に続き《アナグマモグラの仔》と除去を絡め、さらに《稲妻罠の教練者》で手札を補充してアドバンテージを拡大。そして再び《轟く機知、ラル》を着地させ、今度は盤上に定着。このまま押し切ったヘンリーが1-1とタイに戻し、勝負はサイドボード入りのゲームへ。
第3ゲームでも再び 《轟く機知、ラル》が登場し、先手側に勝利の鍵を握らせる。しかし今回は芝田が《轟く機知、ラル》を定着させ、ヘンリーは十分な土地を引けずに苦戦。芝田はあと1勝で世界選手権決勝へ。後手ながら、勝利まであと少しのところまで迫った。
決勝に進むためには、芝田はカワウソの壁を突破しなければならなかった。ヘンリーの盤面には《稲妻罠の教練者》が3体、対する芝田は《忍耐の記念碑》と《美術家の才能》で体勢を整える。カワウソによって攻め続けるヘンリーに対し、芝田は2つの強烈なエンジンで手札質を向上させ、ライフを犠牲にしつつ盤面処理を進める。 そして勝負の分岐となるコンバットでカワウソを2体除去。次のターンに芝田がアンタップすれば盤面は完全に傾くと判断したヘンリーは手を差し伸べ、握手で健闘を讃えた。 こうして芝田が世界選手権決勝進出を決めた。
残る決勝進出枠はあと1つ。候補は殿堂プレイヤーのセス・マンフィールドか、スイスラウンド唯一の無敗進行者だったデリック・デイヴィスか。中継が入った時点では、第1ゲームでデイヴィスがレベルアップ済みの《嵐追いの才能》を2体展開し、互角に戦っていた。しかしマンフィールドは着実にリソースを積み上げる。まず《美術家の才能》を置き、続けて《忍耐の記念碑》を設置。エンジンが揃うと盤面掌握に移行し、デイヴィスが手札を維持できない間にアドバンテージ差が広がっていく。時間はかかったものの、一度エンジンが機能し始めるとマンフィールドは止まらず、そのまま第1ゲームを制した。
第2ゲームも展開は第1ゲームをなぞるようだった。デイヴィスは《嵐追いの才能》から入り、マンフィールドは《美術家の才能》+《忍耐の記念碑》の形で応戦。殿堂プレイヤーは再びライフを守りつつ、盤面で致命的な差が付かないよう耐えながら、エンジンを担うカードによってじわじわとアド差を広げていく。デイヴィスが更に《嵐追いの才能》を追加しても、カード供給でマンフィールドが上回り続ける。こうしてサイド前の2ゲームを連取、マンフィールドはあと1勝で再び世界選手権決勝の舞台へ。
そして第3ゲームでは一切の迷いがなかった。マンフィールドは3戦連続で同じ戦略を踏襲する。序盤のカワウソを抑え、《美術家の才能》と《忍耐の記念碑》でドロー品質を上回る形へ。イゼットミラーを制する組み合わせが再び盤面を支配し、ライフが危険圏に落ちることもなく勝利。こうしてミラーをストレートで突破し、セス・マンフィールドは二度目の世界王者を狙う決勝進出を確定させた。
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