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第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権

第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 2日目の注目の出来事
2025年12月7日
第31回マジック世界選手権は土曜日も続行した。2025年最大のイベントは金曜日に開幕し、126名の選手がトップ8進出と、マジックに名を刻む栄誉を争った。これまでの歴史で世界王者となったのはわずか28名のみ。初日を4-3以上で終え、2日目へ進出した61名のプレイヤーには、なお栄冠と優勝賞金100,000ドルを掴む可能性が残されていた。
しかし、その前に残されたのは2025年シーズン最後のスイス7回戦。最初は『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』のドラフトから始まり、その後はカワウソや講義が飛び交う新環境スタンダード4回戦のスプリントへ。すべてが終わったとき、ついに第31回マジック世界選手権のトップ8が決定した。
トップ8進出者の一人目は早々に決まった。2021年の『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップでタイトルを獲得し、トップ入賞6回の実績を持つサム・パーディーが、わずか11回戦で条件を満たしたのだ(唯一の敗北はラウンド3でマックス・ドーレ/Max Doreに喫したもの)。まもなく、同じチームのセス・マンフィールドも続いた。ドラフトを0-2の最悪の滑り出しで始めながらも、そこから10-2まで巻き返し、ラウンド13には生き残りを懸けた戦いではなく、進出確定の報告ができる側になっていた。
ふたりをトップ8へと押し上げたのは、Team TCGplayerのイゼット講義デッキだった。そしてスタンダード新環境で2日間にわたり繰り広げられた激戦の末、かつてTeam ChannelFireballのように環境を切り開いてきた名だたるプレイヤーたちが、今回もまたフォーマットを打ち破ったと言えそうだ。
多くのフォーマットと同じく、マナ生成エンジンを解き明かすことが、このチームが躍進する鍵となった。初動の除去を含む複数の有用な講義呪文が揃っているため、必要な呪文数を稼ぐのは容易で、《ばあば》による呪文軽減が働き、《積み重ねられた叡智》が実質的な《Ancestral Recall》へと変貌する。
トップ8にはさらに複数のイゼット系プレイヤーが名を連ねるなか、プレイヤー・オブ・ザ・イヤー候補である行弘 賢もスゥルタイ・リアニメイトで日曜のステージへと駒を進めた。このデッキは今週末やや影に隠れた存在だったが、スタンダードで6-1という好成績を収めている。プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』を制した彼にとって、今年さらにトロフィーを重ねるチャンスが巡ってきたわけだ。
すべては最も大きな舞台と最大の賞金が懸かった日曜の朝に決着する。ここまでの道のりを振り返ろう。
《心火の英雄》、プレイヤー・オブ・ザ・イヤー獲得
行弘 賢は今大会、他の誰よりも大きな可能性を背負って世界選手権に挑んでいた。今年すでにプロツアー王者となっていた彼は、プレイヤー・オブ・ザ・イヤー争いでも首位に立っていたのだ。世界選手権では大量のポイントが得られるため、そのリードを守るには好成績が必須だったが、それは同時に、カイ・ブッディ/Kai Budde プレイヤー・オブ・ザ・イヤートロフィー獲得の運命を自らの手で掴める唯一の存在であることを意味していた。
そしてトップ8入りを果たした今、その未来は確かに自らのものとした。他の候補者はいずれも追随できず――行弘 賢が2025年のプレイヤー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。
行弘 賢
ドラフトの達人、森山
大会初日、『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』のドラフトがプレミアイベントとして初めて実施され、競技者からほぼ満場一致の高評価を受ける中、いくつかの傾向が見えてきた。多くのプレイヤーが青と白の組み合わせを狙っていたが、皆が狙うものは、当然ながら全員が手にできるわけではない。
これがリミテッドラウンドの大きなテーマとなり、柔軟に方向転換し、環境に適応できたプレイヤーが成功を収めた。例えばエドガー・マガレイス/Edgar Magalhaesは、本来の優先度が低かった白黒サクリファイスへと舵を切り、第1日目に好成績を残した。マジックのドラフトの美しさは、開いている席に座れたときは本当に道が開けるというところだ。そして自分の卓で《戦の犠牲者》が2枚開き、回ってくるのなら――それは間違いなく「空いている」。
世界選手権でリミテッドを唯一全勝で駆け抜けたのは、森山ジャパンの共同キャプテンである森山 真秀だった。彼はこの成功の理由として、環境に合わせ続けた姿勢を挙げている。
「スタンダードもドラフトもかなり練習しましたが、デッキリスト提出後は特にドラフトを中心に調整してきました」と森山は語る。「今週早めにアメリカ入りして、MTGアリーナでドラフトをたくさん回してトーナメントに備えました。白青をドラフトするつもりで来たのですが、完全にはそうならなかったです。ですが両方のドラフトで強い白のカードを取ることができました」
Only one competitor at #MTGWorlds managed the incredible feat of going 3-0 in both drafts – congratulations to Masahide Moriyama on the coveted draft "trophy" finish! pic.twitter.com/OP8R3mLBxe
— PlayMTG (@PlayMTG) December 6, 2025
#MTGWorlds で、両方のドラフトで3-0を達成するという驚異的な偉業を成し遂げたのは、たった一人の参加者だけでした – 念願のドラフト「トロフィー」獲得、おめでとう、森山真秀!
ドラフト6回戦+構築8回戦(通常より2回少ない)という形式だったため、今大会では例年以上にリミテッドで結果を残すことの重要度が統計的に高かった。そのため、今まで以上にチームはリミテッドに時間を割き、小規模なチームでの調整環境や準備期間の制約の中でも、徹底した研究が行われた。
その努力が実を結んだプレイヤーがいる一方で、世界最高峰の競技者であってもドラフトが噛み合わないことはある。ドラフト力向上を狙って大会に臨んだプロツアーファイナリストのイアン・ロブ/Ian Robbも結果的に構築できず、近年もっとも勢いのあるプレイヤーでさえ、この舞台ではドラフトが伸び悩むことがあると証明する形となった。
This was my Worlds draft deck, just copied @zevin_faust Trebuchet aggro draft strat. Felt very happy with my deck after so many Single Elim 0-1s, still went 1-2 but what can you do pic.twitter.com/WK7CIBiNxm
— Simon Nielsen (@MrChecklistcard) December 6, 2025
これが自分の世界選手権のドラフトデッキだ。@zevin_faust の《火の国の海軍の投石機》アグロドラフト戦略をそのまま真似した。
シングルエリミネーションで0-1が続いてたから、今回のデッキは結構気に入ってたんだけど……結果は1-2。でもまあ仕方ないよな
一方で、ドラフトでつまずいたからといって終わりではなかった。セス・マンフィールドと行弘 賢はどちらも初回ドラフトを1-2で終えたものの、36時間後には揃ってトップ8入りを果たし、勝利を喜んでいた。
その理由は言うまでもなく、スタンダードでの圧倒的な活躍にあった。
スタンダードにおける講義の学び
第31回マジック世界選手権のスタンダード環境は、近年でも屈指の「読み合いの広さ」を持っていた。前回のプロツアー以降にローテーションだけでなく追加の禁止も行われ、さらに『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』が大きな影響を与えると予想されていたため、事前にメタゲームを読み切る材料はほぼ存在しなかった。 ローテ後のキーデッキと予想されていたディミーア・ミッドレンジの使用者は少数に留まり、週末に向けての注目は《アナグマモグラの仔》に集中した(もっとも、結果的にディミーアも健闘はしている)。
その結果、《ばあば》と、『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』のコモン/アンコモンを軸とした講義デッキはほとんど注目されないまま進行した。オンラインで増え始めたのはデッキリスト提出直前のほんの数日で、各チームも他チームの調整状況を把握できていなかった。 ゆえにメタゲーム最終集計が公開された時、会場の多くが大きな驚きをもってそれを受け止めたのだった。
「今のスタンダードは以前より遥かに厳しい環境だよ」とTeam Cosmos Heavy Playのキャプテン、アンソニー・リー/Anthony Leeは語る。「どのデッキも、その気になれば一瞬で試合をひっくり返せる。」
その評価は、今回台頭したイゼット講義にもまさに当てはまっていた。
— Sam Pardee (@Smdster) December 6, 2025
しかし、躍進したのは講義だけではなかった。最終的なトップ8には4つの異なるアーキタイプが名を連ねた。そして複数のデッキが青赤を基盤にしていた中、常に「意外性」を武器にする行弘 賢は今回も例外ではなかった。彼が6-1という成績でトップ8に持ち込んだスゥルタイ・リアニメイトは、大会序盤の時点では多くのプレイヤーから軽視されていたのだ。
ドラフト1-2 スタンダード3-1で2日目へ。明日はドラフトもスタンダードも勝ち越すゾイ!
— 行弘 賢/YUKUHIRO KEN (@death_snow) December 6, 2025
| 1 《沼》 2 《ウィローラッシュの境界》 2 《地底の遺体安置所》 1 《迷路庭園》 4 《繁殖池》 1 《島》 3 《ウェイストウッドの境界》 1 《魂の洞窟》 3 《花盛りの湿地》 1 《マルチバースへの通り道》 1 《地底街の下水道》 3 《湿った墓》 -土地(23)- 2 《苦難の収穫者》 4 《最後の贈り物の運び手》 3 《簒奪者、アーデン》 4 《スーペリア・スパイダーマン》 4 《繁殖蜘蛛》 4 《不注意な読書家》 1 《峰の恐怖》 4 《ベイルマークの大主》 -クリーチャー(26)- |
4 《誉れある死者の目覚め》 4 《苦々しい勝利》 3 《花粉の分析》 -呪文(11)- |
1 《網撃の精鋭》 3 《大洞窟のコウモリ》 4 《脅迫戦術》 1 《緊急の検死》 2 《災厄の占い師、グラルブ》 1 《魂の洞窟》 1 《破壊の嵐孵り》 2 《魂標ランタン》 1 《否認》 1 《舷側砲の一斉射撃》 -サイドボード(17)- |
『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』の影響は、上位2デッキだけに留まらなかった。発売初期には最も危険なアーキタイプと評価する声もあったバント気の技コンボは上位卓で苦戦した一方、《嵐追いの才能》を軸としたティムール・カワウソは健闘し、最終的にショーン・ヘンリーとアルネ・ハッシェンビスをトップ8へと押し上げた。
さらに言えば、『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』はフィールド全体に影響を与え、その結果として世界選手権のカメラが捉えた忘れがたい瞬間がいくつも生まれた。
— PlayMTG (@PlayMTG) December 6, 2025
An incredible Avatar's Wrath leads Sam Pardee to another win at #MTGWorlds! He advances to 9-1 and is one win away from locking up a spot in the Top 8! pic.twitter.com/jLpTXLwt2e
驚異的な《アバターの怒り》がサム・パーディーを再び勝利へと導く!
これで戦績は9-1、トップ8確定まであと1勝!
Congratulations to #MTGWorlds Day 1 undefeated player Derrick Davis!
— PlayMTG (@PlayMTG) December 6, 2025
Which feels better, Derrick – being 7-0, or drawing three cards for a single blue mana? pic.twitter.com/LpJMLrkxEK
#MTGWorlds 初日を全勝で突破したデリック・デイビス、おめでとう!
デリック、どっちが最高の気分?――7-0の成績か、それとも青1マナでの3枚ドロー?
ローグデッキの中では、リミテッドの名手として知られるベン・スターク/Ben Starkが称賛に値するだろう。彼はゴルガリ・ドラゴンで6-2という好成績を収めた。一方で《ウロボロイド》系は全体的に苦戦し、初日の印象的な試合でジェニファー・ローズ=ホロウェイ/Jennifer Rose-Hollowayが披露したジェスカイ「バーン」コントロールは、地域チャンピオンシップ王者である彼女にスタンダード5-3、最終順位トップ35という成果をもたらした。
She called it Jeskai Burn, and then she won by pointing a Lightning Bolt at her opponent's face just to really make her point!
— PlayMTG (@PlayMTG) December 6, 2025
Jennifer-Rose Holloway wins Round 5 with Jeskai . . . Control? at #MTGWorlds – catch more Magic live now at https://t.co/GF4H5s6srS pic.twitter.com/8xB0JCFA2q
彼女はそのデッキを「ジェスカイ・バーン」と呼んだ。そして実際に対戦相手の顔面へ《稲妻》を撃ち込み、言葉通りの勝利を決めてみせた!
ジェニファー・ローズ=ホロウェイが#MTGWorlds ラウンド5を勝利。デッキはジェスカイ……コントロール?
試合の続きは http://twitch.tv/Magic でライブ配信中!
総じて第31回マジック世界選手権は、スタンダードの持つ魅力を余すことなく示した大会だった。アグロでは2日目へ進出したクイン“赤単スペシャリスト”トノーリを擁する赤単が平均以上の成績を残し、コンボではスゥルタイ・リアニメイトが結果を出し、「Grancestral」系デッキ(《ばあば》+《積み重ねられた叡智》のパッケージ)も存在感を放った。現スタンダードは多彩で、そしてまだ伸び代がある。
展望
トップ8が出揃い、競技者たちは2025年シーズンの祝祭と集大成となる決戦のため、明朝ふたたび会場へ戻ってくる。大会の模様は太平洋時間の午前10時よりtwitch.tv/magicおよびPlay MTG公式YouTubeチャンネルでライブ配信される。お見逃しなく。(訳注:日本の配信情報はこちらから)
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