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第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権

観戦記事

第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 初日の注目の出来事

2025年12月6日

 

 ついにマジック:ザ・ギャザリング世界選手権が開幕する。

 何百万時間ものプレイ、何千ものゲーム、世界中で開催された数十の地域チャンピオンシップ、そして3度のプロツアー。そのすべてが、ここ――すべてが始まった場所へと収束した。今週末、世界最高峰のマジックプレイヤー126名が集結し、この瞬間のために膨大な準備を積み重ねてきた競技に挑む。 1994年から数えて29人目の世界王者となり、自らの名をマジックの歴史に刻むチャンス。そして、新たな《Black Lotus》トロフィーと、優勝賞金100,000ドルを手にする権利が懸かっている。

 ようこそ、第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権へ。

今日だよ!今日!!! #MTGWorlds だよ!
残念ながらあまり眠れなかったけど、ワクワクしてドラフトの準備万端だよ!! ワーーーーールド!!!
最近リミテッドの腕を磨いてきたから、ドラフトでしっかり結果を出したいな。
さあ、行くぞ!!!!

 2025年の競技マジックシーズンの集大成となる大会のため、選手たちはシアトル郊外に集まった。地域チャンピオンシップを制した者、プロツアーでトップ8入りした者、Magic OnlineやMTGアリーナのイベントを勝ち抜いた者など、到達経路は異なれど、彼らは皆、この最も名誉あるマジックの舞台に立つ資格を勝ち取ってきた。

 大会直前の数週間、その執念ははっきりと示されていた。緻密なドラフト練習、膨大なスタンダードのデータ分析――選手たちはこの大会のためにすべてを注ぎ込んだ。中にはメキシコ旅行をキャンセルした選手もいれば、プロツアー王者コーリー・バークハート/Corey Burkhartは、パートナーから「夜は4時間以上寝るように」と強く言われるほど準備に没頭していた。競技者なら誰もが知っている――そして過去の王者が証言できるように――世界選手権は他とは違う。バスの車体に自分の顔が載る可能性のある、唯一の大会だからだ。

 ベルビューの会場外は冷たい雨が降っていたが、中の熱気はまったく損なわれることがなかった。そして、第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権の1回戦の組み合わせが発表された瞬間、その熱はさらに燃え上がった。確率わずか0.8%の対戦カード――

 2024年マジック:ザ・ギャザリング世界選手権の決勝の再戦だ。

リマッチの時間です!
ハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezとマルシオ・カルバリョ/Marcio Carvalhoは20年間対決を続けており、最近では昨年の世界選手権の決勝で対戦しました! 今、#MTGWorlds が彼らの対戦で幕を開けます!
戦いの模様をライブでご覧ください、今すぐ http://twitch.tv/Magic で!

 開幕戦は息を呑む展開となり、現世界王者にしてプレイヤー・オブ・ザ・イヤーでもあるハビエル・ドミンゲスが、再びカルバリョを下した。こうして世界選手権は幕を開け、復帰組の強豪も、新進気鋭のプレイヤーたちも、いよいよ走り出した。

初めてのRCQから1年経たず、めっちゃすごい1年だった、Sanctumが大好きすぎる :3

ドラフトの焦点: 『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』

 この大会で懸かっているのは、世界王者に与えられる100,000ドルだけではない。総額1,000,000ドルの賞金プールは、62位以内に入ったプレイヤーにも高額な報酬をもたらす。最初の『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』のドラフトが始まるとき、卓につく選手たちからは緊張感が手に取るように伝わってきた。隣にMagicConが併設されていない今回は、会場はより密度の高い――静かと言うより、むしろ集中した空気に満ちた――環境となっていた。

#MTGWorlds において、参加者たちは栄光と夢に輝く世界選手権のトロフィーを賭けてプレイしています!永遠のアイコンである《Black Lotus》にインスパイアされた新しいトロフィーデザインをぜひご覧ください。

すべてのアクションをチェックhttp://Twitch.tv/Magic

 今大会は構築ラウンドが少なく(両日ともブースター ドラフト3回戦+構築4回戦)、その分ドラフトラウンドの重要度はかつてないほど高かった。『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』のリミテッド環境については、事前にチーム間である程度共通認識があり、特に白と青が強い色だと広く理解されていた。ただし情報が広く共有されている分、優位に立つには新たな角度を見つける必要があった。何しろ人生で最も重要なドラフトと言っていい舞台なのだから。

 「大会前の段階で、マルチカラーの『講義』デッキは過小評価されていると考えていて、面白い構築の方法も見つけていたんだ。3色の同盟者デッキに関しても高く評価していた」と語るのは、Team Cosmos Heavy Playのリミテッドにおけるリーダーであり、20年ぶりに世界選手権へ戻ってきた元プロツアー王者、デビッド・ルード/David Roodだ。「21年前、世界選手権でトップ8をかけた勝負に敗れた。今ではもう年寄りさ。この瞬間を楽しんでいるよ――世界選手権には20年に1回くらい出ればいいと思ってる。」

 優位を探していたのはCosmos Heavy Playだけではない。このレベルのフィールドでは、どこで差をつけられるかを正確に把握することこそ重要だ。強いデッキを知ることは一つのスキルだが、強いとされるデッキをあえて取らない局面を判断するのもまた別のスキルである。

 「1パック目ではかなり迷って、最初の4ピックで4色触っていたんだ。ただ黒だけは触らなかった」と語るのは、最終的に白黒サクリファイスを選択したエドガー・マガリャンイス/Edgar Magalhaes。「でもその後、黒のカードが流れてきて、《ナマズワニ》を回収できた瞬間に黒に行くと決めた。2パック目で《戦の犠牲者》を流してもらった。これはサクリファイスにとって超重要なカードなんだよね。さらにパック3で開封されればまた回ってくると踏んでいたし、実際にそうなった。」

 マガリャンイスのドラフトした《戦の犠牲者》2枚入りのデッキは、ほぼすべてのゲームで活躍し、2-1の成績に貢献した。この結果により彼は2日目へ駒を進めることができた。『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』のドラフト環境は上振れ幅が大きいが、30年前から変わらぬ基本――「席が示すカードをドラフトせよ」――を守ることで勝利を掴めることを証明した形だ。

 ドラフトラウンドを無敗で抜けたのは14名。その中にはプレイヤー・オブ・ザ・イヤー候補のトニ・ポルトラン/Toni Portolanの姿もあった。こうして大会は次のフェーズへ移行する。「ビビ大釜」デッキの禁止、そして『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』の発売後、初の大規模イベントとして注目を集めたスタンダードラウンドだ。

『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』の影響を数値で見る

 このセットは一体どれほど環境に影響を与えたのか? ここはメタゲームのメンター、フランク・カーステン/Frank Karstenに任せよう。

  • ジェスカイ・コントロール、ジェスカイ・アーティファクト、スゥルタイ・リアニメイトなど、11デッキは『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』のカードを一枚も採用していなかった。しかし残る115デッキ――つまり全体の91%――は新カードを少なくとも1枚は使用していた。これは最新セットが環境に入る比率としては特別ではなく、2023年世界選手権では93%、昨年の世界選手権では100%、プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』だった。
  • 『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』のカード採用枚数そのものが注目に値する。比較対象として、2023年世界選手権では『エルドレインの森』の新カードは792枚(スタンダード全体の10.0%)、世界選手権 30では『ダスクモーン:戦慄の館』の新カードが979枚(11.6%)だった。当時はいずれも最新セットだ。プロツアー『霊気走破』では新カードは全体の5%、プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』では3.1%だった。ところが今大会では、『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』のカードは1,472枚採用されており、全カードの15.6%を占める。これは大きな跳ね上がりと言える。
  • 中でも最多使用デッキであるイゼット講義では、呪文の少なくとも半数が『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』のカードだった。
  • 最も使用率の高かった4つのデッキ(イゼット講義、ティムール・カワウソ、バント気の技、イゼット・ルーティング)は、4つ合わせて全体の過半数を占めた。競技マジックのスタンダードではいずれも事実上「新しい」デッキだ。

 どう見ても、『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』が新たなスタンダードの中核となっている。

 

 イゼット・講義は世界選手権直前の数日でオンライン上で突如台頭したが、実際のところ、世界選手権出場チームの多くはこのデッキの存在を把握しており、《アナグマモグラの仔》が跋扈する環境を想定して練習していた。しかし同じ考えのチームが多数存在したため、結果的に《アナグマモグラの仔》の採用は非常に多くなり、さらにそれを倒すことを目的としたデッキ、そして週末時点で最有力と目されていたバント・気の技への対策デッキも数多く持ち込まれることになった。

スタンダードの注目デッキ

 このフィールドは多くの競技者を驚かせた。講義が最多使用となったこと、そしてこの1ヶ月でスタンダード環境が大きく変貌していたことは、チームから度々驚きの声が上がるほどだった。赤単専門家(かつ第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 トップ8入賞者)のクイン・トノーリ/Quinn Tonoleはこう語る。 「期待していた環境にこのデッキを登録して満足だったんだ。なら今回の結果に文句を言う筋合いはないよね。」

 その通りと言えるだろう――トノレはスタンダードで4-0という完璧な成績を収めて2日目に進出した。フィールドにいた他の赤単使い、パーシー・ファン/Percy Fangとウィリアム・アラウージョ/William Araujoも同様にこのアーキタイプの愛好家として知られている。最終的に3名の合計勝敗は9勝3敗と大きく勝ち越した。

 そして、この日の注目カードを語るうえで《ばあば》の名前を外すことはできない。

 

 この一見地味な1マナクリーチャーが、スタンダード環境をひっくり返したと言っていい。講義のパッケージが青赤で十分に機能するため、《ばあば》は初手からリスクが低く、必要十分なサイズとルーティング能力を持つ“無難な1ターン目の動き”として採用できる。そしてその後、デッキが自然に墓地へ講義を溜めていくと、《ばあば》の価値は跳ね上がり――さらに《蓄積した知識》も同様に爆発力を得る。

 この2枚が揃えば、まさに“自作《Ancestral Recall》”が完成するわけだ。

 このデッキを操ったデリック・デイヴィス/Derrick Davisは7勝無敗のパーフェクトレコードで予選ラウンドを突破し、7回戦終了時点で唯一の全勝プレイヤーとなった。

Derrick Davis - 「イゼット講義」
第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 / スタンダード(2025年12月5~7日)[MO] [ARENA]
8 《
2 《始まりの町
4 《マルチバースへの通り道
4 《リバーパイアーの境界
4 《尖塔断の運河
-土地(22)-

4 《ばあば
2 《渦泥の蟹
-クリーチャー(6)-
4 《嵐追いの才能
4 《ブーメランの基礎
4 《爆裂の技
1 《乱動するドラゴンの嵐
2 《アイローの表演
4 《火の技の修行
4 《積み重ねられた叡智
4 《愛着を捨てる
2 《食糧補充
3 《飲めば潤う!
-呪文(32)-
2 《否認
1 《本質の散乱
2 《削剥
2 《倦怠の宝珠
2 《除霊用掃除機
2 《アイローの表演
1 《乱動するドラゴンの嵐
1 《食糧補充
2 《スパイダーセンス
-サイドボード(15)-

Derrick Davis

 

結局、この《Ancestral Recall》は悪くなかったね。なんて日だったんだろう。けど、明日もまだ仕事が残っている。

 初日の構築ラウンドでもう一つ大きな注目点となったのは、ティムール・カワウソの活躍ぶりだった。大会前には使用率2位だったが、6-1以上の成績を収めたプレイヤー数では最多となり、7名中3名が同デッキを使用していた。その中にはレイ・ザン/Rei Zhang、堀 雅貴、そしてプレイヤー・オブ・ザ・イヤー候補のトニ・ポルトランが含まれる。残り3枠は、スゥルタイ・リアニメイトの原根健太、ゴルガリ・ウロボロイドのチャールズ・ウォン/Charles Wong、そして講義のサム・パーディー/Sam Pardeeが占めた。

 世界選手権のメタゲームブレイクダウンはこちら、今大会で最もスパイシーなデッキの紹介はこちら、そして全スタンダードデッキリストはこちらで確認できる。

展望

 2日目へ進出したのは61名。残る世界王者候補たちは土曜午前9時に戻り、最後の『マジック:ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』ドラフトに臨む。その後スタンダードの最終スプリントを経て、第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権のトップ8が決定する。現状デイヴィスが一歩抜けているとはいえ、フィールドが小さくラウンド数が限られる以上、他の挑戦者たちにも十分にチャンスがある状況だ。

 大会の模様は太平洋時間12月6日午前11時(日本時間翌28時)より、twitch.tv/magicでライブ配信される。ぜひチェックしてほしい。(訳注:日本ではマジック日本語公式YouTubeチャンネルにて配信されます。放送情報はこちらから)

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