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第28回マジック世界選手権

インタビュー

偉大なるストイアの物語

Corbin Hosler

2022年11月4日

 

 ネイサン・ストイア/Nathan Steuerは彼のカードを念入りに調べつつ、対戦相手をちらりと見やった。対戦相手と目を合わせるのはかなり勇気がいることだった。これはつまり、彼にとって人生最大の試合であり、競技マジックプレイヤーとしての彼の将来を決定づけるものであり、その空間における最高のプレイヤーの一人と相対していた。これはチャンピオンが誕生する瞬間であり、マジック世界選手権を追い求める道中で、スターたちは台頭するか、落伍するかだった。

 そしてストイアはなんとか緊張を抑えたが、すべてのドローステップがまるで最期の瞬間かのように汗が噴き出した。すべてが懸かっているかのように、世界選手権の舞台でリード・デューク/Reid Dukeのような殿堂顕彰者と対戦しているかのようにプレイした。

 時は2015年、若きネイサン・ストイアは初めてのグランプリ2日目でプレイしていた。

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ネイサン・ストイア、グランプリ・サンディエゴ2015・2日目にて

 

 彼の頭の中では世界選手権の舞台にしかいなかったのかもしれないが、彼は殿堂顕彰者のリード・デュークと実際に対戦していたのだ。

「それが、僕がグランプリ・サンディエゴ2015で覚えている大部分です。フィーチャーマッチの機会を得て、リードを倒してキャリアで最高の成績を残せたことですね」とストイアは回想した。「本当に素晴らしいプレイヤーを倒せたと感じたのはその時が初めてだったと記憶しています」

「今、私は世界選手権で、彼の隣でプレイしています」

 第28回マジック世界選手権優勝に至るまで、長い旅路だった。

 ストイアが初めてマジックを手にしたのは2010年のサマーキャンプでのことだった。そして競技プレイで上り詰めていった。すぐに地元のゲームショップで週に6~7日プレイするようになり、それからすぐにグランプリ、Magic Online、MTGアリーナでプレイするようなった。

 彼自身を含む周囲の期待に応えただけではなく、それを超えた「天才」の稀有な例だ。何年も前の、初めてのグランプリ2日目でデュークと対峙した時ですら、ストイアは次世代の優秀なマジックプレイヤーに数えられており、彼はそのことを真摯に受け止めていた。彼は自分より優秀なプレイヤーに教えを請い、地元の新進気鋭のプレイヤーたちと練習を重ね、彼のマジックの憧れの一人であるデュークと対峙した緊張の瞬間に、心の中にひっそり生まれた夢を育ててきたのだ。

 その彼を形作ってきた経験は、第28回マジック世界選手権の最終幕でも、殿堂顕彰者、老練な世界選手権の参加者、そして最高の力量を持つ対戦相手と毎試合対峙した時も、新鮮なまま心に残っていた。

「世界選手権は他の何よりも精神的な負荷が重かったですね」 敗者側ブラケットから驚異的な活躍を見せ、決勝戦でイーライ・カシス/Eli Kassisを打倒した数日後、ストイアは自らを振り返りながら語った。「すべての対戦が強烈な経験であり、戦いでした。そのすべてを乗り越えて優勝したとは信じられないくらいです。プレイを始めた時や、プロツアーに参加できると分かった時以来抱いていた持っていた夢というか、おとぎ話なんです」

 ストイアを最もよく知る人たちは、12年間彼がマジックにすべてを捧げてきたのを見守ってきた。そして、世界選手権の舞台で、ディスプレイに何から何まで機能が満載された状態で、ついにゲームが報いるのを見る機会に恵まれたのだ。つまり、ストイアが人生の半分以上抱いてきた夢の実現だ。

甥の@Nathansteuer1がマジック:ザ・ギャザリングの世界選手権で大活躍している!Twitchで観戦していて、内容はよくわからないけれど非常に誇りに思う!

 この夢はあまりにストイアの心に深く刻まれたものであったため、彼は驚異的な活躍の間そのことに考えを巡らせることができなかった。トーナメントの間ずっと彼は感情を露わにしていて、トップ4に「勝てば抜け」の試合で敗北を喫した記憶に残る瞬間もそうだった。試合を落とした時、彼は世界選手権の希望が12年前に生まれた夢とともに目の前で消えていくのを見た。

 だが歴史とタイブレーカーが彼に味方した。ストイアは最終戦で負けはしたものの第28回マジック世界選手権のトップ4入賞を成し遂げたのだ。そして、ここから先はご存じの通りだ。しかし、20年の生涯がそのことをできるだけ頭から遠ざけようとした。

「正直なところ、世界選手権優勝を考えないようにするために多くのエネルギーを費やしました。週末を通して、自分の心を抑えるために戦った気がします。世界王者や、あの舞台、そしてすべてが素晴らしいものでしたが、私はただ1年間を通じて行ってきたように、マジックをプレイするために集中したかったのです」

「決勝戦に進出した時でさえ、その考えを頭の中から追い出しました。まさに最終ゲームで、盤面で有利になった時に初めてようやくそのことを考え始めたのです」

 言い換えれば、ストイアはこの世界選手権において、このアメリカ人が過去2年間でふたつのMagic Online Champions Showcaseタイトルが示している通りオンライン・トーナメントを次から次へと制覇し、世界選手権において想像しうる最も困難なマジックの対戦を渡り切ったことで明らかになってきたことを最後に気づいた人間かもしれない。

 つまりネイサン・ストイアが現在世界最高のプレイヤーであることを。

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第28回マジック世界選手権の勝者側準決勝で戦うストイア

 

 名高いマジックのプロのキャリアは10年以上にも及び、その名声はしばしば月単位ではなく年単位のものさしで測られる。このような大きなトーナメントで変化がここまで示されることは滅多にない。第28回マジック世界選手権には、過去のプロツアー王者や殿堂顕彰者もいれば、リード・デュークと対戦するチャンスを期待して成長し、競技プレイのMTGアリーナ時代に成人を迎えた若者もいた。

 世界選手権に参加した32人のプレイヤーはこの種の最高のプレイヤーで埋め尽くされた。ストイアはこの数年、一握りの若手注目プレイヤーと調整を重ねてきた。そのなかにはデイヴィッド・「Tangrams」・イングリス/David Inglisやサイモン・ニールセン/Simon Nielsenといったこの世界選手権への出場権を経たプレイヤーたちも含まれている。この変化はマジックの競技シーンを魅了し、来る2023年に行われるプロツアーにおいて、間違いなく主要な筋書きとなるだろう。

いつものように@ReidDukeと@MSigrist83を応援するけれど、 @MtgJulianと@Nathansteuer1を観るのはワクワクする


王様たちが仕事をしている間、僕はひとりのファンの少年になってしまうね

 ストイアは最高のマジックのプロプレイヤーが一生をかけて追い求めてさえ達成できないものを手にしている。世界選手権は他のトーナメントではなしえない方法で変化をもたらすが、現王者の次なる目標は何だろうか?

 実は、2015年からさほど大きくは変わっていないのだ。

「プロツアーで優勝したいですね」と、彼は笑いながら言った。テーブルトップの競技的なプレミア・プレイは、プロツアーの復活という形で、フィラデルフィアでの「Magic Con」で目にすることになるだろう。「本当にトップ8に入りたいですね。優勝することは、リストの最後の欄にチェックを入れるようなものですね。でも、まずは来年帰ってくる最初のプロツアーに向けて練習することからスタートですね。世界選手権でしたように、できることはすべてやって、トップ8に入れればうれしいですね」

 これまで競技マジックにおいて設定してきた目標をすべて達成してきたプレイヤーの言葉としてはずいぶんと控えめだ。しかし、彼はすでに次のイベントを見据えており、そしてまた世界選手権のタイトルを追い求めている間はできなかったマジックの別の側面を探求する時間も増えている。

「マジックを人に教えるのはとても楽しいマジックの一側面だとわかったんです。僕が成長するにあたって、周囲の優秀なプレイヤーや大人の人たちがイベントでプレイすることやこのゲームの腕前を上げることに多くの手助けをしてくれました。今は教えることにより多くの時間を使い、他のプレイヤーにそれと同じことをしています」

 当面の間は、ストイアにはこれまで以上のことが期待できるだろう。彼はすでに今年の優勝前から来年のマジック世界選手権の権利を獲得しており(そう、現在彼は権利2つ分を手にしている)、彼は世界最高の調整チームにあり、最高のプレイヤーであり続けている。多くのタイトルを手にしており、2023年のマジックの世界は2022年と同様、ストイアと彼の仲間たちによって定義づけられることになるだろう。

 おっと、ひとつだけ違うことがあるかもしれない。

「カードに自分の顔が載るのが待ち遠しいですね。できれば、競技レベルのカードがいいな!」とストイアは熱く語った。「以前の優勝者たちが自らデザインしたカードをプレイするのを見てきましたが、それは素敵なことです。今週、ウィザーズ社と最初の打ち合わせの電話をしましたが、その時に初めて自分が世界チャンピオンであることを実感できました」

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