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マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2018
2日目ドラフト全勝者たち
2018年9月22日
初日の競技ではドラフト全勝を達成したのは3人のみだったが、このような小規模なトーナメントでは組み合わせのシステムが通常とは異なるため、2日目の『ドミナリア』のリミテッドで3-0を達成したプレイヤーはもう少し多かった。
3つのドラフト・ポッドから4人以上の全勝者が出るのは少し奇妙に聞こえるかもしれないが、これは組み合わせの方法によるものだ。組み合わせを決定する際、ポッド内の成績で(例えば1-0と1-0というように)組むのではなく、通算の成績で(例えば8-3と8-3というように)組み合わせることになる。大きなトーナメントであれば、ポッド内はほぼ同じ成績のプレイヤーで構成されるため、この差が意味を持つことはほぼない。一方このような小さいトーナメントであれば、この差はより顕著に現れることになる。これにより、特定のポッドに3-0が複数出ることになったり、逆に1人も出なかったりするのだ。今回、2つのポッドで複数の全勝者が現れた。
ハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguez、マット・ナス/Matt Nass、アレン・ウー/Allen Wu、シャハール・シェンハー/Shahar Shenhar、そしてセス・マンフィールド/Seth Manfieldはそれぞれ3回戦を順調に勝ち抜いた。例えばマット・ナスは自分の知る唯一の方法でそれを成し遂げたようだ。全勝者全員に、それぞれどのようにドラフトで成功を収めたのかを聞いてみた。
アレン・ウー
マジック25周年記念プロツアーの覇者であるアレン・ウーは、自身のデッキを「3-0デッキ」とは呼びたがらなかったが、一応その結果を出したことは認めた。冗談めかして彼は、「昨日は『3-0デッキ』だと思ってドラフトしたんだけど、結局1-2だったんだよね」と言った。
ドラフトの席次がはっきりしていて、また《包囲攻撃の司令官》と2枚の《魂回収》を中心としたデッキが組めたため、彼にとってはより簡単なものになった。彼は白ウィニーと2回対戦することになったが、彼いわく「これは僕のデッキにとって一番いいマッチアップだね」とのことだ。「多分2ゲームで3回《包囲攻撃の司令官》を出してるし、これじゃ相手に勝ち目はないと思うよ」
彼は《魂回収》のようなカードが特に良いという理由が2つあると言う。「第一に、ゲームは長くなりがちだけど強いカードはその間にだいたい処理されてしまうからだね。もしそれを二度三度使えるなら、それはすごく有効なんだ」
彼に最後のスタンダード・ラウンドについてどう考えているかを聞いたところ、多くのマジックプレイヤーが答えるように、肩をすくめて「どうだろうね、先のことはわからないよ」と言った。その答えは禅問答のようだったが、私は彼が残る4回戦を英雄的に駆け抜けることを期待している。
シャハール・シェンハー
次に声をかけたのは、世界選手権連覇経験のあるシャハール・シェンハーだった。彼は今回のドラフトの流れをあまり良く感じていなかった。ルイス・サルヴァット/Luis Salvattoが彼の上家だったのだが、「彼が僕のお気に入りのアーキタイプの青赤をやっていたんです」と言う。シェンハーは最初の数枚でやりたい方向に進めようとしたが、結局それを捨てて方針を変えざるを得なかった。「無理やりやろうとすることさえできませんでした、カードが全く来なかったんです!」
そこから彼は黒緑の対応力のあるデッキを組むことになったが、それも最善とは言えない状況だった。「使える神話レアやレアが欲しかったけど手に入りませんでした。残された手は、対戦相手にカードを使われないようにすることでしたね」
彼は結局それをうまく成し遂げたが、その一因はデッキリストの共有にあっただろう。彼は《ボーラスの手中》を使われる可能性について知ることができたのだ。「あれは僕のデッキみたいに大型クリーチャーが多いデッキには特によく効くカードです」と彼は言う。しかし、彼はそれを事前に知ることができたため、《雑食のサリッド》を対策として活用することができたのだ。「《雑食のサリッド》を引くまで大物を出さないようにしたんです……なかなか大変でした」
ウーとは違い、シェンハーは最後のホームストレートに良い気分で向き合っている。「今の成績は構築のおかげですからね。昨日のドラフトで0-3した後、3-1して持ち直したんです」 希望は常にあるものだが、特にこのドラフト3-0によって、シェンハーは良いポジションで一日を終える可能性が高まっている。
セス・マンフィールド
「僕は微妙なマナ・コストの、緑白の中くらいのクリーチャーデッキを使ったんだ」と、前世界王者(そして新たな殿堂顕彰者!)は自身の3-0達成デッキを評した。しかし、彼の言は必ずしもそのデッキを悪く言うようなものではなかった。少し考えたのち、彼は「僕だけの話じゃなかったね」と言った。全員が微妙に弱いデッキを使うことになったのだという。
「もしこれがグランプリとかオンラインだったら、誰かが卓の中で一強になっているんじゃないかと心配しただろうけど、ここではそんなことは普通起きないからね」 一部のプレイヤーが昨日のドラフトを評して、世界選手権のドラフトとプロツアーのドラフトの相違点として指摘したことだが、この場でカードが見落とされるようなことはないということだ。マンフィールドは続けて、「卓の誰かと変に協調する人もいないしね。リード・デューク/Reid Dukeも間違ったカードを流してきたりなんかしなかった」と例を挙げた。
この後のラウンドに対する温度感で言えば、マンフィールドは自身の期待をうまく制御していると言えるだろう。「大会の序盤が本当に悪かったけど、スタンダードで複数勝てれば、ちょうど真ん中くらいで終われるはずなんだ。まあ悪くないね」 彼の台詞は、このトーナメントが実際どういうものなのか、というのを端的に表しているだろう。前世界王者、そして次のプレイヤー・オブ・ザー・イヤー候補が「真ん中くらい」で満足できる、それだけレベルの高い場なのだ。
マンフィールドは、ルイス・サルヴァット/Luis Salvattoとのプレイヤー・オブ・ザー・イヤーを懸けたプレイオフに興奮しているとも話してくれた。「サルヴァットはいい人だし、そこでいろんなことをやりたいと思ってるんだ。多分、複数のフォーマットをやることになるだろうからね」 彼にどんなフォーマットをやりたいかを聞いたところ「ウィンストン・ドラフトだね」と即答してくれた。それは2人向けに考えられたドラフトの変種で、カジュアルなプレイではよく行われるものだがトーナメントの場で使われたことは一度もない。「あれは独特の選択肢を作るんだ」と彼は言う。「自分がカードの束に何を残したのか、相手が何を取って何を取らなかったのか、ということをチェックしながら自分のデッキを作るんだ。間違いなく、2人で行うドラフトとしては最高のものだよ」
ハビエル・ドミンゲス
昨年の世界選手権トップ4のハビエル・ドミンゲスにとって、彼の全勝ドラフトは相当に研究された『ドミナリア』のリミテッドにまだ余地があることを示すものだった。『ドミナリア』環境について熟知していたにもかかわらず、今回彼は今までやったことのないようなデッキをプレイすることになり、相当な緊張を覚えたのだ。
「正直、とても満足の行くデッキとは言えないんだ。《ケルドの炎》2枚はアーキタイプなんて言えるものじゃないでしょ?」と、初戦の前に言っていた。超攻撃的で本体を狙い続ける《ケルドの炎》デッキは見ること自体まれで、成功するのはさらにまれなものなのだ。「まったくもってやりづらかったけど、今回のドラフトで成功する唯一の方法だと思ったんだ」
彼は《シヴの火》2枚から入ったが、そのまま平凡な赤いカードをピックするだけで1パック目を終えた。ここで《ケルドの炎》1枚をピックしたのも、この時点ではサイドボードの選択肢であった。しかし、2パック目に入ってしばらくしても「良い」カードが流れてくることはないまま、ドミンゲスは《猛り狂い》を見つけた。ここで、彼の頭の中で歯車がはまり、それをピックしたのだ。そしてもう1枚の《ケルドの炎》もピックした。「そこでようやく、『ひょっとしたらいけるかも』って思ったんだ」
最後のパックも決して良くなかったが、ドミンゲスは『ドミナリア』のリミテッドが一般にどういうものかを知っていたため希望を失ってはいなかった。「パワーレベルという意味ではなく、カードの方向性が一貫しているという意味で構築デッキに近いものを組むべきなんだ」と、ドミンゲスは『ドミナリア』でのリミテッド戦略を説明する。方向性を決定したなら、プレイできる水準のカードに目移りするよりもその方向に残るべきだ、と。
話を進めよう。彼は極めて経験豊富なベテランではあるが、それでも今までやったことのないアーキタイプをプレイすることになったため、最後のドラフトラウンドでは緊張を覚えていた。「とてつもなく深いデッキだね。大半のカードはデッキと深く結びついているし、選択肢はとにかく多いんだ。多分これは英雄譚を使うデッキに共通することだろうけどね」 しかし、深いからと言ってやりたいことがすべて可能なわけではない。ドミンゲスは、こうした珍しいアーキタイプをドラフトできるかどうかにはそのフォーマットでの経験が必要だと言う。「5手目に《ドミナリアの大修復》を見つけたなら、多分大修復デッキを組むことはできるだろう。でも、そのためにはどのカードがなぜ必要で、そして何が入らないのか、ということを知らなければいけないんだ」
世界選手権を通じての話では、ドミンゲスは優勝という話をするのを避けようとし、まだ余裕といった様子をみせた。「ほら、勝ったとしても別に大きく変わることはないんだ。同じ飛行機に乗って、同じ家に帰って、同じ彼女と過ごすんだ。結果と幸福を結びつけるべきじゃない。ただ、もし勝ったときどう感じるかもまたわからないね。きっとすごく興奮するんだろう」 そして、彼は「ここにいること、ここでプレイできること自体が嬉しいんだ。自分にとって、それ自体が報酬だよ」と結んだ。
ドミンゲスは、この世界選手権で得る素晴らしい感情の余地を失うことなく、一方理性的に自分の到達点を眺めている(このインタビューをした時点で、彼はすでにトップ4を確定させていた)。『ドミナリア』も、まだまだドラフトに隠された可能性があるという驚きにより、良いセットであることを改めて見せつけたのだった。
マット・ナス(らしき人)
ゲームに奇妙な余地があるというなら、そこにはマット・ナスがいると考えるのは悪い賭けではないだろう。《ニクス生まれのお調子者》を構築で使ったとして知られるナスは、達成感を得られる場所を探求し続けており、このドラフトも例外ではない。
残念ながら、何人ものプレイヤーにインタビューをしようとすると、何人かを取り逃がすことがある。神出鬼没のナスを捕まえることは予想以上に難しいものだった。幸い、彼の親友であり、よく一緒にいるチームメイトであるサム・パーディー/Sam Pardeeを見つけることができた。彼はナスを他の誰よりもよく知っている。彼は喜んで、ナスのふりをしてインタビューを受けることに同意してくれた。「よし、降りてきた降りてきた!」とパーディーは言った。
「そうだね、彼はこのデッキをプレイできてマジで嬉しかっただろうね」と(ナスのふりをしている)パーディーは言う。「リミテッドでのコンボデッキだから、そりゃ強いよね。《炎のチャンピオン》2枚と《炎の番人、ヴァルダーク》、そしてそれとコンボできるカードが5枚近くあったんだ」 ナスは《小剣》、《世界の盾》、《激情の怒り》、そして《悪魔的活力》によって対戦相手に悪夢を強いることができたのだ。
「ただ、一番良いところは、一見普通のデッキに見えることなんだ」と、パーディーはナスのドラフトデッキを評している。「ほら、除去も豊富だし、マナ・カーブの一番上には《転生するデアリガズ》がいるんだ。これじゃあこのデッキの本質はわからないよ、わけがわからないね」
ここで、ついに本物のナスが現れたが、パーディーは引き続き演じ続けたのでインタビューは続けられることになった。このドラフトデッキが10点満点で何点かを聞いたところ、「まあ間違いなく9.5点だろうね」とパーディーは言った。
やり取りを笑いながら見ていたマイク・シグリスト/Mike Sigristも会話に加わった。「完璧だね。マット・ナスのは9.5で、それでサムのは5.5だ。」
パーディーは心から同意して、「そう、それが本物のマット・ナス……おお、本当だ!! これは素晴らしいんだ、見てよ!」とさらに演じ続けた。
演技のあと、ナスは次のラウンドに送り出された。本物のナスいわく、「もちろん僕も興奮しているよ。もうひとつ勝てば、世界選手権での通算勝利数でサムに追いつけるしね!」
パーディーはしてやられたといった風に肩をすくめた。「まさにそれはそのとおりだね」 パーディーはナスとのやり取りで楽しんだのだろうが、ナスもまた最後には笑っていたのだった。
8 《沼》 8 《山》 1 《森》 -土地(17)- 2 《炎のチャンピオン》 1 《悪意の騎士》 2 《死花のサリッド》 1 《エイスサーの滑空機》 1 《這い回る偵察機》 1 《炎の番人、ヴァルダーク》 2 《スキジック》 1 《雑食のサリッド》 1 《血の炎、ガルナ》 1 《転生するデアリガズ》 -クリーチャー(13)- |
1 《悪魔的活力》 1 《シヴの火》 1 《激情の怒り》 1 《火による戦い》 1 《臓腑抜き》 1 《意趣返し》 2 《焦熱の介入》 1 《小剣》 1 《世界の盾》 -呪文(10)- |
(Tr. Keiichi Kawazoe)
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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