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マジックフェスト・京都2019

観戦記事

第9回戦:足立 貴明(福岡) vs. 仲田 涼(神奈川) ~震える手にかかるもの~

小山 和志
 
足立 貴明(写真左) vs. 仲田 涼(写真右)

「手が震えてしまう……」

 試合前、確認のためのプロフィール記入のためペンを握った足立貴明がそうひとりごちた。

 グランプリ、初日最終戦。全勝がかかっている上に、たった4卓しかないフィーチャーマッチエリアに呼ばれたとなれば無理もないだろう。その手にかかるプレッシャーは通常の試合の比ではない。

 その足立とは対照的に、グランプリ・静岡2014王者の仲田涼は落ち着いてプロフィール記入、そして試合前のシャッフルを進めている。緊張を隠せない足立との雑談にも気さくに応じ、大舞台での豊富な経験を感じさせる。

 初日最後、土付かずのまま2日目を迎えることができるのは足立か? 仲田か?

 ジャッジの宣言とともに第9回戦が幕を開けた。

ゲーム1

 足立が《神無き祭殿》をタップイン。仲田は《繁殖池》をアンタップインしてからの《ラノワールのエルフ》。「エスパー・コントロール」vs「スゥルタイ・ミッドレンジ」という現スタンダード環境で有力なデッキ同士によるマッチアップだ。

 《ラノワールのエルフ》が《渇望の時》で除去されるが、仲田は《培養ドルイド》でマナをジャンプアップし、足立は《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》で迎え撃つ。

 そして、一進一退の攻防が続く。足立の《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》は仲田が即座に《ヴラスカの侮辱》。仲田の《ビビアン・リード》は足立の《否認》でかわされる。

 お互いに脅威を捌きあった後、仲田は意を決して自らのターンに《培養ドルイド》を「順応」し、ダメージを与えに回る。ヘビーコントロールである「エスパー・コントロール」相手に超長期戦は避けたい。まずはともかく足立のライフを減らさなければ。

 そして、追加の戦力である《マーフォークの枝渡り》が通り、クロックは5点に増大する。

 全体除去が足立の手にあれば仲田は一気に戦力を失うところだった。足立は脅威に回答できるところだった。だが、《ケイヤの怒り》は足立の手札にない。仲田の《ビビアン・リード》こそ《吸収》で退けるが、反撃の狼煙としたい《ウルザの後継、カーン》は即座にトークンに《喪心》が飛び、本体は返しのアタックにより撃ち落とされ、同時に足立のライフは9まで落ち込んだ。

 《薬術師の眼識》で活路を求めるが、仲田のアタック宣言に対し足立は土地を畳むと、手の中にあるカードが土地ばかりであることを苦笑いで明かした。

足立 0-1 仲田

 
仲田 涼
 
ゲーム2

 初動は足立の《アズカンタの探索》。これに対し仲田は2ターン連続で土地をタップインを処理する。この仲田のスロースタートと言える立ち上がりに対し、足立の《思考消去》で露わになった手札は《軽蔑的な一撃》《ハイドロイド混成体》《殺戮の暴君》《翡翠光のレインジャー》に土地という内容。

 足立はここから「コントロール殺し」《殺戮の暴君》を抜き去るのだが……仲田が召喚した《翡翠光のレインジャー》の「探検」により見えたライブラリートップは、よりにもよって先ほど抜き去った《殺戮の暴君》!

 当然仲田はこれをライブラリーに残す。一度着地すれば圧倒的な支配力を発揮し、着地そのものも打ち消すことができない、足立に対しての明確な脅威。数ターン先には間違いなく仲田は戦場に送り出すことだろう。

 ゆっくりはしていられない――そう判断してか、足立は攻めに回る。《人質取り》で《翡翠光のレインジャー》を奪い取り、次ターンにはこれをプレイ。ライブラリートップは《殺戮の暴君》を処理できる《思考消去》。今度は仲田が足立の攻勢に対し回答を提示する番だ。

 仲田は《ハイドロイド混成体》をX=3でプレイする。足立は《思考消去》で《殺戮の暴君》《ヴラスカの侮辱》《軽蔑的な一撃》《ビビアン・リード》という、思わず足立が「うわあ……」と声を上げるほど濃厚な仲田の手札から《殺戮の暴君》……ではなくアドバンテージ源となる《ビビアン・リード》を抜き去る。

 《ハイドロイド混成体》と《翡翠光のレインジャー》が相打ちに。ここで《薬術師の眼識》で足立はリソースを補充。さらに《アズカンタの探索》が《水没遺跡、アズカンタ》に変身を遂げる。

 さらに足立が3枚目となる《思考消去》で仲田の手から《殺戮の暴君》を取り除くと、手札に除去呪文を抱える仲田は積極的にアクションを取ることができない。《水没遺跡、アズカンタ》への《暗殺者の戦利品》も《否認》されてしまい、ひたすらに足立がアドバンテージを得ていく展開が続く。

 仲田の手札には《喪心》《軽蔑的な一撃》といったリアクションカードが集まるのに対し、7枚いっぱいに有効牌を手にする足立。

 勝負あったか……と思われたが、仲田が引き込んだ《ビビアン・リード》になんと足立は打ち消し呪文を合わせることができない。召喚したばかりの《正気泥棒》が撃ち落とされてしまう。そして、仲田の土地は2枚がアンタップ状態だ。

 《水没遺跡、アズカンタ》により《最古再誕》を手に入れた足立だが、度重なる《思考消去》により、仲田が《軽蔑的な一撃》を抱えていることは明らかになっている。

 足立は逡巡の後に8枚の土地から《ウルザの後継、カーン》をプレイする。これに対し、仲田は少考に入る。現状、《ウルザの後継、カーン》は通したくないカードだ。《ビビアン・リード》と違って自らダメージ源を作ることができ、アドバンテージを得ることもできる。とはいえ、仮にセットランドされなければ《最古再誕》はこのターンにプレイされることはない。アンタップさえできればもう1枚の《軽蔑的な一撃》を構えることもできる。

 仲田は《ウルザの後継、カーン》に《軽蔑的な一撃》を使うことを決断する――

 ――足立はそれになんの抵抗もせず《ウルザの後継、カーン》を墓地に置くと、土地をセットし《最古再誕》を提示した。

足立 1-1 仲田

 
足立 貴明
 

 3ゲーム目が始まる前、互いのデッキのシャッフルを終えた後、仲田が自らのライブラリーをこぼしてしまう。そして、マリガンを決めた後のシャッフルのときに、もう一度。

 そう、何度もフィーチャーマッチを経験してきた仲田であったとて、プレッシャーは等しく受けているのだ。果たして、この初日最後の試合を、大きなプレッシャーを乗り越え9勝目を手にするプレイヤーはどちらか?

 
ゲーム3

 初動は仲田の3ターン目、《翡翠光のレインジャー》。これが2枚目の《翡翠光のレインジャー》を見せる。返す足立は《正気泥棒》で迎え撃つが、仲田が《暗殺者の戦利品》で処理し、機先を制する。

 足立が《アズカンタの探索》でドローの充実を図る一方、土地が4枚で止まってしまった仲田。2枚目の《翡翠光のレインジャー》で土地を探しに行くか、《軽蔑的な一撃》を構えるか。《翡翠光のレインジャー》で活路を見出そうとするが……5枚目の土地を置くことができない。

 そして、さらに悪いことに《翡翠光のレインジャー》たちが2枚の《肉儀場の叫び》で流され、クロックが消滅してしまう。

 ここでフルタップとなった足立に対し、仲田はアンタップインの土地を引ければ手札に控える《ビビアン・リード》で一気に主導権を握れるのだが……ドローは望む土地ではなく、《強迫》。唯一、足立に残った有効牌《ケイヤの怒り》を捨てさせることになるが……よりによって足立は《正気泥棒》を引き込み、さらにまごつく仲田を尻目に攻撃を通すと、あろうことか《殺戮の暴君》が足立のもとに寝返ってしまう!

 仲田は《採取 // 最終》の《採取》で2体の《翡翠光のレインジャー》を回収し、《マーフォークの枝渡り》とともに横に並べ《殺戮の暴君》への防波堤とするが、足立は《人質取り》で《翡翠光のレインジャー》を奪うと、ダメ押しとばかりに《思考消去》を仲田に打ち込む。

 一瞬、手札を公開しようとした仲田だったが、途中でその動きを止めると、笑顔で目の前の初日全勝者を称えたのだった。

足立 2-1 仲田

 

 ゲームが終わると、足立は嬉しそうにフィーチャーマッチエリアの外で待つ友人たちに向けて手を振った。そこに試合前のような緊張感も震える手もなく、堂々とした手付きで仲間の祝福を受けたのだった。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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