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準決勝: 石井 泰介(神奈川) vs. 宮下 尚之(埼玉)
By Keita Mori
神奈川の石井と埼玉の宮下。ともに三十代の社会人マジックプレイヤーである彼らは、首都圏のグランプリトライアルやプロツアー予選でしばしば顔をあわせるという顔なじみの間柄だ。
グランプリ北九州でチャンピオンに輝き、すでにリミテッダーとしての声望を確立しているのが「マンモス」石井 泰介。
対して、宮下 尚之は関東圏でもまだ知る人ぞ知るというプレイヤーである。しかし、The FinalsやThe Limitsは、むしろ宮下のような新しいプレイヤーが勝ち名乗りをあげるための舞台として知られてきた場所でもあるのだ。
ちなみに、石井は選手として、宮下は裏方として、事前に東京で開催されたイニストラード・オールカードロチェスターイベントに彼らは参加しており、両者ともに貴重な実戦経験とデータを得ている。
これは石井と宮下だけでなく、愛知勢として勝ち上がった"dds666"石田 弘にも共通していることだが、事前にオールカード・ロチェスターを体験しているという事実は、かなり大きなアドバンテージであると言えるだろう。何せ、ライバルたちの多くにとって、それがどんなフォーマットであるか、想像することしかできない世界なのだから。
そんな、特殊極まりない環境を「体験済み」である二人の実際のドラフトぶりについて、その序盤のピックをご紹介し、その上で実際の試合の模様をご覧にいれよう。
(※ドラフト詳細は
こちらの記事をご参照いただきたい)
宮下尚之(青白)
1st:《》
2nd:《》
3rd:《》
4th:《》
石井泰介(青黒)
1st:《》
2nd:《》
3rd:《》
4th:《》
さあ、握手からゲームスタートだ!
Game 1
宮下 尚之
ダイスロールで後手となった石井が7枚をキープし、先手宮下もワンマリガンながら力強い口調で6枚をキープ宣言。
宮下は開幕ターンの《》を2ターン目に即座に変身させ、3点のダメージを与えるという上々の滑り出しを見せた。このとき公開されている呪文は《》だ。
後手の石井も2ターン目に《》召喚という悪くないスタートだが、宮下はエンドステップの《》でデッキを掘り進め、さらにアンタップしてからの《》で《》をバウンスし、3点のアタックを継続した上で、盤面に2/2《》を展開した。
ダメージレースで先行されてしまった石井は《》で3/2飛行《》を無力化しにかかる。
宮下が一瞬3マナ域で足踏みしてしまったところで、石井は《》を召喚。石井はこの飛行クリーチャーをブロッカーとして《》を相打ちにとった。
宮下は土地のプレイが一時的に停滞してしまったとはいえ、ドロー加速で、具体的にはフラッシュバックでの《》によって4枚目の土地を引き当てることに成功し、彼のデッキを代表するスタークリーチャーである《》召喚というアクションへとつなげて見せた。
ライフレースでリードを許してしまっている石井は《》を呼び出すが、宮下はフラッシュバックで《》を詠唱し、敵陣ブロッカーをバウンス。
これによっておともの4/4天使トークンを従えた2/2《》の進撃を妨げるものがなくなり、ライフレースは一気に8対18で宮下が大幅リードという状況となった。
ここで石井は《》を召喚しなおして迎撃要員としたかったのだが、宮下は《》でこれをタップし、ブロッカー排除にかかる。石井はレスポンスで《》を起動。宮下は先ほどと同様の総計6点のアタックを敢行する。
ここで石井は《》で天使トークンを除去しにかかったが、宮下は満を持してコンバットトリックを投入した。

この《》が解決され、残りライフ8点の石井がこのターンに受ける戦闘ダメージは6点から8点に格上げされてしまうこととなった。
石井 0-1 宮下
Game 2
石井 泰介
両者入念なるサイドボーディング考察を行い、第2ゲームが開幕した。
先手をとった石井が呼び出した1/2《》が1点のダメージを刻み、その後に《》を呼び出すも、宮下が《》のスピリット破壊モードを活用して即応という序盤の攻防が展開される。
石井が続く脅威として召喚しにかかった《》を宮下が《》で打ち消し、石井の《》が静かに1点クロックとしての機能を果たした。
ここで宮下は《》によるドロー加速を行い、5ターン目を迎えた石井が《》で手札を検閲しにかかった。
石井の前に開示された宮下の手札内容は、各1枚ずつの《》、《》、《》、《》という内容。
石井はここで《》を追放させ、対戦相手の手札に残ることになったカードを丁寧にメモするのだった。静かに宮下は《》でドローし、石井も淡々と1点クロックでの攻撃を行う展開。
次のアクションは宮下が呼び出した《》をめぐる攻防だった。この「ルーター」を見た石井は1/2クリーチャーでのアタックを継続してから、第2メインステップに《》を使用。
ここで手に入れた《》を使用し、《》は召喚酔いから醒めることなく墓地を肥やすカードの一枚となった。
そして、次なる脅威をプレゼンテーションしたのは石井だった。まごうことなき初手ピックであった《》を召喚し、盤面は一気に引き締まった。

対する宮下は手札破壊呪文を使われた際に見せていた《》を起動し、墓地のカードを1/1飛行スピリット・トークンへと転生させた。ここで、宮下はひと呼吸おいてから石井の墓地に手を伸ばし、その内容をじっくりと確認しにかかった。
しばらく考え込んでから、宮下は《》で《》を敵軍ライブラリーの最上段へと送り返し、《》を1/1飛行スピリット・トークンに纏わせて3点アタックを敢行。
ここでの3点は食らってしまった石井だったが、アンタップを迎えてから-3/-0修整を与える《》ですぐさま無力化することに成功した。
石井は《》を再展開。もちろん、と、宮下はフラッシュバックでの《》で再度バウンス。
しかし、あくまでバウンスは問題の先送りにほかならず、とうとう《》が着地。まもなくこれが2/2飛行の吸血鬼・トークンを生み出すモードへと突入したことにより、盤面を石井が掌握しはじめた。さらに石井は《》をフラッシュバックし、墓地を肥やし、手札に選りすぐりの一枚を加える。
ここで石井は2/2飛行の吸血鬼・トークンと1/2《》でアタック宣言。0/3飛行となったスピリット・トークンでの2/2飛行ブロックを宮下が宣言し、1点のダメージが通ることとなった。ここまでの地道なアタック継続により、宮下のライフは12点という水準である。
アンタップした宮下は《》を展開し、ターンエンドを宣言。もちろんエンドステップに《》から吸血鬼・トークンを生成した石井は、2体に増えた飛行トークンたちでアタック宣言。
宮下はブロック宣言後に《》を《》で破壊し、これによってサイズが3/3となったスピリット・トークンが2/2吸血鬼を討ち取ることができそうな盤面となったが、ここで石井はブロックされたほうの吸血鬼・トークンを《》で生け贄にささげての2/2ホムンクルス・トークンを生成。
地上戦力と航空戦力という違いはあれど、頭数を減らさずして2点のダメージを通して見せた。
攻める石井を宮下がどう受けきるか、というライフレースを前提にした攻防がここまでの展開の総括となるだろうが、とあるカードを宮下が引き当てたことにより、ふたつの青いデッキをめぐる試合に新たな軸が加えられることとなった。

宮下が呼び出したコモンカードは《》。これは3マナの2/3クリーチャーで、「他のクリーチャーが死亡するたび、プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、自分のライブラリーの一番上のカードを自分の墓地に置く」というライブラリー攻撃能力を備えている一枚だ。
もちろん、《》でのトークン量産からのダメージレース完走を目指している石井は、3/3に戻っていた敵陣の飛行スピリット・トークンに2枚目の《》をエンチャントし0/3へと再調整。勇躍してアタック宣言を行った。
ここでの石井のアタック宣言に対し、宮下は静かに「ちょっと待ってください」と一言かけてから、お互いのライブラリーの残り枚数を確認しにかかった。《》で掘り進んだ宮下の残り山札は17枚。対して、《》を使用してきた石井のそれは14枚であった。
「まあ、そうだよな。」と口には出さないものの、小さくうなずいてから石井は攻撃クリーチャーの指定に取り掛かった。飛行クリーチャーである2体の吸血鬼・トークンがアタックし、0/3飛行スピリット・トークンが1体を受け止めて2点が通る。ライフは8対17で石井リード。
アンタップした宮下は《》呼び出し、静かにターンエンドを宣言。
もちろん《》で吸血鬼・トークンを呼び出してから、アンタップを迎えて石井はアタック宣言。
3体に増えた飛行2/2吸血鬼・トークンたちのアタックを、宮下は《》から呼び出した飛行1/1スピリット・トークンと飛行0/3スピリット・トークンでブロックした。
戦闘中に宮下は《》でスピリット・トークンを3/3に強化するが、ゲインライフさせないために石井は《》を起動。タップ状態の黒い吸血鬼・トークンはアンタップ状態の青いホムンクルス・トークンの材料となった。
「残り6だよね?」と確認してから、石井は《》を召喚してターンを終了した。
そして、ここまで防戦一方だった宮下がここで一気に反転攻勢の動き(!?)を見せた。宮下は《》と1/1飛行スピリット・トークンでアタック宣言。おともの4/4天使・トークンを含め、7点のダメージを石井はすべてスルーした。いかにも唐突な、あるいは不自然な挙動。
そして、その理由は戦闘後に明かされた。

《》。ここで宮下が生き残らせることを選択したクリーチャーはもちろん、《》。苦しげな表情で石井が選んだのは《》。
このソーサリーが解決されることにより、両陣営あわせて10体のクリーチャーが墓地へと送り込まれ、それによって《》の山札攻撃能力は10回誘発された。もちろん、対象はすべて石井のライブラリーだ。
これにて、石井の残りライブラリーは2枚!
宮下は地上に《》を展開しさらに《》から1/1飛行スピリット・トークンを毎ターン1枚ずつ展開できる万全の構えでターンを返す。しかも、手札にはバウンス呪文《》とタップアウト呪文《》という二枚を抱えているのだ!

第1ゲームは、《》と《》という軽いクロックによる高速ダメージレースを、宮下がバウンスとタップアウトのバックアップを活用して「殴りきる」という試合だった。
一転して第2ゲームでは攻守が入れ替わり、危険なライフ水準まで宮下が追いつめられるというゲーム展開だった。しかし、彼は《》と《》のシナジーを活用して、なんとそこからライブラリーアウトでの勝利という鮮やかな逆転劇を演じてみせているのだ!
石井 0-2 宮下
宮下 尚之、堂々の決勝進出である。
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