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『カルドハイム』チャンピオンシップ

観戦記事

『カルドハイム』チャンピオンシップ トップ8ラウンド ハイライト

Corbin Hosler

2021年3月29日

 

(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)

 予選ラウンド15回戦を経て、『カルドハイム』チャンピオンシップ王者の座を懸けたトップ8ラウンドの舞台に上がる8人が決した。スタンダードで行われるダブルエリミネーション形式のトップ8ラウンドには、綺羅星のごとき選手たちが名を連ねた。

  • シャハール・シェンハー/Shahar Shenhar(ティムール・アドベンチャー)
  • 八十岡 翔太(スゥルタイ根本原理)
  • アルネ・ハッシェンビス/Arne Huschenbeth(ディミーア・ローグ)
  • アンドリュー・クネオ/Andrew Cuneo(スゥルタイ根本原理)
  • ハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguez(ティムール・アドベンチャー)
  • 茂里 憲之(グルール・フード)
  • グジェゴジェ・コワルスキ/Grzegorz Kowalski(スゥルタイ根本原理)
  • 熊谷 陸(赤単アグロ)
Kaldheim-Championship-Top-8-Double-Elimination-Bracket-01.jpg

 優勝トロフィーと賞金を懸けたチャンピオンシップマッチの場には、最終的にアルネ・ハッシェンビスとグジェゴジェ・コワルスキが立つことになる。ここでは、そこへ至るまでの戦いをハイライトでお届けしよう。

勝者側ブラケット

 開幕を飾るのは、かつて世界選手権を2度制し今大会でも予選ラウンド15回戦を圧倒的な成績で勝ち上がったMPL所属選手シャハール・シェンハーと、「2020プレイヤーズツアーファイナル」での準優勝で頭角を現し、今大会のトップ8入賞者で唯一「赤単アグロ」を使う熊谷 陸の対戦だ。

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シャハール・シェンハー(左写真)、熊谷 陸(右写真)

 

 シェンハーの「ティムール・アドベンチャー」はこの週末を通して素晴らしい働きをしてきたが、この試合では熊谷の攻撃的なゲーム・プランの前に膝を屈することになった。第2ゲームでは、《長老ガーガロス》をもってしても熊谷の攻勢を止めることができなかった。

 

 一方、「ディミーア・ローグ」を使うアルネ・ハッシェンビスは茂里 憲之の「グルール・フード」を2連勝で下し、ライバルズ・リーグ所属のグジェゴジェ・コワルスキはMPL所属の伝説的な日本人プレイヤー八十岡 翔太との「スゥルタイ根本原理」同系対決を制した。残るはもう1人の世界王者ハビエル・ドミンゲスとアンドリュー・クネオによる、MPL同士の決戦だ。

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アンドリュー・クネオ(左写真)、ハビエル・ドミンゲス(右写真)

 

 「ティムール・アドベンチャー」と「スゥルタイ根本原理」のマッチアップには一進一退の攻防が期待されるが、彼らはその期待を裏切らなかった。第1ゲームは、毎ターン打ち消し呪文の脅威をちらつかせてプレッシャーをかけるドミンゲスに対し、クネオは時間をかけて《出現の根本原理》を通せる状況を探った。ゲームの最終盤でついに《出現の根本原理》を放つチャンスを得たクネオだったが、ドミンゲスはライブラリー・トップから《黄金架のドラゴン》を引き込み、決定打を与えたのだった。

 

 次のゲームを勝ち取り試合をイーブンに戻したクネオだったが、勝負の第3ゲームでドミンゲスが《古き神々への拘束》をタイミング良く《神秘の論争》で対処すると、大きく不利な状況に追い込まれた。これでドミンゲスは《恋煩いの野獣》による攻撃でクネオの残りライフを7点まで落とし、クネオが祈るように唱えた《影の評決》をも《襲来の予測》で打ち消すと、次のステージへと歩みを進めたのだった。

 こうして勝者側ブラケット準決勝ではハッシェンビスとコワルスキが対峙し、ドミンゲスと熊谷が雌雄を決することになった。ハッシェンビスとコワルスキの試合では、ハッシェンビスが操る「ディミーア・ローグ」が開幕からコワルスキのライフを残り7点まで追い詰める展開を見せたが、コワルスキがゲーム終盤に放った《出現の根本原理》を打ち消せず、完全に捕まってしまった。

 第2ゲームは呪文の数に恵まれたコワルスキだったが、ランプ系のデッキにとって望ましい枚数の土地が手に入らなかった。そこで《古き神々への拘束》の出番だ。《古き神々への拘束》は《夢の巣のルールス》を除去するだけでなく、デッキから土地をもたらしてくれた。しかしそれでも十分な枚数が揃わず、やがてハッシェンビスが繰り出す軽量クリーチャーの連打は横に広く展開され、勝負は第3ゲームにもつれ込んだ。

Lurrus-of-the-Dream-Den.jpg

 除去と打ち消しを大量に搭載した両者による第3ゲームは、長い一戦になった。《古き神々への拘束》を通すことに成功したコワルスキは続けて《空を放浪するもの、ヨーリオン》を盤面に追加しようとしたが、これはハッシェンビスの《神秘の論争》2連打を受けることになった。これで生まれた隙にハッシェンビスは《物語への没入》を唱え、手札を補充。十全に効果を発揮する《湖での水難》や《無礼の罰》など、しっかりと武器を整えた。

 コワルスキも盤面の状況を巧みに管理し可能な限りの抵抗を見せたが、《湖での水難》に守られた《空飛ぶ思考盗み》がその力を振るい、ハッシェンビスが最後の一撃を加えることになったのだった。

 

 もう1つの準決勝では、ドミンゲスの勢いが止まらなかった。彼の「ティムール・アドベンチャー」は2ゲーム連続で熊谷を打ち倒し、前世界王者をハッシェンビスとの勝者側ブラケット決勝の舞台へ導いた。

 試合では経験も大事だが、卓越したプレイも勝負を動かす。この1年で世界最高のプレイヤーたちを相手に実力を示してきたハッシェンビスだが、今大会におけるドミンゲスとのマッチアップはこれで「3度目」だ。第9回戦での1度目の勝負はドミンゲスが制したものの、最終ラウンドでの対戦ではハッシェンビスが2連勝を飾り、トップ8入賞を決めた。そして迎えた3度目の勝負。ドミンゲスはこのリベンジ・マッチで第1ゲームを素早く奪ったが、ハッシェンビスはその後の重要な場面で今大会最高のプレイを見せ、ドミンゲスを退けた。

 それは、このトップ8ラウンドにおけるハッシェンビスのプレイの巧みさを決定づけた瞬間だった。

 

 こうして、新進気鋭のハッシェンビスは世界を相手に戦えることを示しただけでなく、世界最高のプレイヤーたちをも打ち倒せることを明らかにした。これで彼がチャンピオンシップマッチの席をいち早く確保し、残る1席を懸けた7人の戦いが始まるのだった。

敗者側ブラケット

 敗者側ブラケットの緒戦は「ダビデとゴリアテ」の戦いになった。かたや殿堂顕彰者にしてプレイヤー・オブ・ザ・イヤーのタイトルを保持し、トップ8入賞9回を誇る八十岡 翔太。対するは同じ日本のプレイヤーで今回が初のトップ8入賞となった茂里 憲之だ。

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八十岡 翔太(左写真)、茂里 憲之(右写真)

 

 第1ゲームは「スゥルタイ根本原理」の力が存分に発揮されるものとなった。八十岡はデッキ名に冠される《出現の根本原理》を素早く唱え、そのままゲームを奪ったのだ。しかし第2ゲームは茂里の革新的な「グルール・フード」が土地を詰まらせた八十岡を圧倒し、試合は振り出しへ。

 そして迎えた第3ゲーム。茂里は素早い攻勢で八十岡を追い詰めることはできなかったものの、2枚の《乱動する渦》が八十岡の《出現の根本原理》による勝利を妨げた。それでも八十岡には《星界の大蛇、コーマ》があり、両者は《乱動する渦》によってライフを削られつつ一進一退の攻防を繰り広げた。最後に八十岡は残りライフ9点の茂里に対して合計10点の攻撃を仕掛けたが、2枚の食物・トークンが茂里に6点のライフをもたらし、彼はこの致命打を耐え切った。《運命の神、クローティス》によるダメージと続く八十岡のアップキープに誘発した《乱動する渦》のダメージが加わり、ついに八十岡のライフは底をついた。激戦を乗り越えた茂里が、熊谷との対戦へ進んだのだ。

 

 続くクネオの「スゥルタイ根本原理」とシェンハーの「ティムール・アドベンチャー」による対戦は、『カルドハイム』チャンピオンシップのスタンダードの試合で最高の一戦だった。試合は一進一退の展開を見せたが、勝負を決するシェンハーの攻撃の場面でクネオのサメ・トークンをバウンスした《些細な盗み》が決着の一手となった。

 クネオは最後のドローで全体除去を引き込めず、彼の戦いはここで幕を閉じたのだった。

 

 次は熊谷と茂里、日本の期待の星たちによる対戦だ。熊谷が選択した「赤単アグロ」と茂里が選択した「フード」デッキは、この週末を通して熱戦を生み出してきた。「赤単」は今大会のスタンダードで3番目の人気を集めていたが、トップ8まで残ったのは熊谷ただ1人であり、《恋煩いの野獣》や《グレートヘンジ》を擁する茂里のデッキに対しては一方的に不利な相性だった。「フード」デッキがひとたび機能すれば、そのライフ獲得とカードアドバンテージに赤いデッキはついていけない。茂里はまさにそれを実行し、2つのゲームを素早く勝ち取ったのだった。

 

 そしてシェンハーはコワルスキと対峙する。「ティムール・アドベンチャー」と「スゥルタイ根本原理」の対戦だ。コワルスキのスゥルタイ・デッキは想定通り第1ゲームを素早く奪い、戦いは第2ゲームへ。技術的な問題が発生したことで第2ゲームは再試合を余儀なくされたものの、2体の《長老ガーガロス》が生み出すカード・アドバンテージでシェンハーを突き放した

 

 舞台に立つ人数が減り、チャンピオンシップマッチの前に残るはあと2試合となった。コワルスキが勝者側ブラケットへ戻るには、茂里とドミンゲスを打ち破らなければならなかった。

 どちらの試合も決して楽な戦いではなかった。茂里の「グルール・フード」は3ゲームとも力強い戦いを見せたが、勝負を決する第3ゲームで重要な3枚目の土地を置けず、コワルスキが《出現の根本原理》を唱えるために必要な時間を与えてしまった。コワルスキは敗者側ブラケット決勝へと進出する。

 

 最後は、コワルスキと同じくハッシェンビスを相手に4回目となるマッチを取って優勝しようという気概を持つドミンゲスとの決戦だ。

 両者のデッキ、「ティムール・アドベンチャー」と「スゥルタイ根本原理」はこれまでも激しい消耗戦を繰り広げてきたが、この試合でもその通りの展開になった。消耗戦のさなかの決断は、ゲームが進行するにつれて強い影響を与える。コワルスキは隙のないプレイで第1ゲームを勝ち取ったが、第2ゲームは致命的なミスを犯して落とすことになったのだ。

 それは《出現の根本原理》に関するものだった。《再誕の海門》をアンタップ状態で出すにはライフの支払いが必要になるが、盤面の状況を見るにそれは難しかった。だから彼は、「勝負を左右する1マナ」を用意しないまま引き金を引いてしまった。

 

 苦悶に満ちた時間を終えたコワルスキは、最後の戦いへ挑むためにもう一度気持ちを切り替えなければならなかった。そして今度は盤面もマナも万全の状態で《出現の根本原理》を唱え、アルネ・ハッシェンビスが待つチャンピオンシップマッチの席へのチケットを掴んだのだった。

 

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グジェゴジェ・コワルスキ(左写真)、アルネ・ハッシェンビス(右写真)

 

 こうして、世界選手権準優勝の悔しさを乗り越えたグジェゴジェ・コワルスキと、勢いに乗ったアルネ・ハッシェンビスによる最後の戦いの舞台が整った。『カルドハイム』チャンピオンシップ王者の座は、果たしてどちらのものになるのか。

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RESULTS

対戦結果 順位
最終
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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