By 矢吹 哲也

　およそ600人の精鋭は、残り８人に絞られた。

　日本代表を決するこの戦いで最後の試練に挑むのは、まさに「日本選手権」にふさわしい錚々たるメンバー。今からワールド・マジック・カップ2017での日本代表の活躍に胸が高鳴る思いだ。

　だがその中で、服部 健はそれぞれのテーブルにつくプレイヤーたちを見渡し「いやあ、すごい。一般人僕だけじゃないですか」と言葉を漏らす。そう、この中でプレミア・イベントのトップ８経験がないのは服部だけ。彼はこの日本選手権で名だたる強豪たちを相手に渡り合い、不戦勝０から勝利を重ねて、ついに自身初のトップ８入賞を果たしたのだ。

　一方の玉田 遼一にとっては、この舞台は慣れたもの。再びの日本代表への意気込みを尋ねると、「そりゃもちろんなりたいですよ。むしろ僕以外あります？」と強気の姿勢を見せる。

　彼らが日本代表になるために必要な勝利は、あとふたつ。

　６年ぶりの「日本選手権王者」のタイトル獲得までは、あと３つだ。

　「決勝ラウンドもドラフトでやりたいくらいです」と「生粋のドラフト好き」であることを公言する服部だが、今大会では構築ラウンドでも合計６回戦で５勝１敗の好成績を収めている。彼が選択したのは、かつての覇者「マルドゥ機体」だ。つい先週行われたグランプリ・ワシントンDC2017での優勝を含め、再びこのデッキにスポットが当たるのを見て今大会での使用を決めたという。

　そして対する玉田のデッキも「マルドゥ機体」。「このデッキには愛着がある」と語る彼は、昨シーズン一貫してこのデッキを使用し続け、そのまま今大会にも持ち込んできた。

玉田 遼一(マルドゥ機体) vs. 服部 健(マルドゥ機体)

　ヘッドジャッジによる開始の合図がかかると、玉田は即手札をキープ。服部も静かに頷き、第１ゲームが始まった。

　玉田の初手は《スレイベンの検査官》。服部は《模範的な造り手》で受けて立ち、玉田は《屑鉄場のたかり屋》を盤面へ追加する。

　しかし序盤の動きは服部の側が強力だった。彼が２ターン目に《キランの真意号》を繰り出すと、玉田も「なんやこの展開は！」と苦笑する。

　それでも玉田は迎えたターンに《霊気圏の収集艇》を繰り出し、絆魂を活かしてライフ・レースを仕掛けた。６点の強打で服部のライフを残りひと桁へ落とすと、反撃は《致命的な一押し》で和らげる。

　玉田は《霊気圏の収集艇》を盤面に残して《屑鉄場のたかり屋》での攻撃を続け、《ラムナプの遺跡》を設置してターンを渡した。ゲームは早くも最終段階だ。

　しかしそのターンの終了時に服部は《無許可の分解》を放ち、玉田の《スレイベンの検査官》を除去しながら彼のライフも残り７点に落とし込むことに成功した。

　そして迎えたターンの反撃は６点。玉田は《産業の塔》にライフを支払いながらも《鋭い突端》をクリーチャー化。しかしそこへ２枚目の《無許可の分解》が撃ち込まれ、玉田のライフは底を突いたのだった。

　第２ゲーム、玉田は２ターン目に《キランの真意号》を繰り出したものの続くターンに展開が続かず、そこへ《削剥》を撃ち込まれる。服部は返しのターンにこちらも《キランの真意号》を盤面へ送り、《屑鉄場のたかり屋》を追加すると《キランの真意号》へ「搭乗」させて攻撃。しかしこれは玉田の《無許可の分解》を受けることになった。

　玉田は２枚目の《キランの真意号》を繰り出すが、それを動かす者がいない。一方の服部は２体の《スレイベンの検査官》と《屑鉄場のたかり屋》で玉田のライフを脅かす。

　続けて３枚目の《スレイベンの検査官》を展開した服部だが、玉田は返しのターンに《模範的な造り手》を引き込み、《キランの真意号》による反撃を始めた。

　服部もダメージ・レースに挑みたいところだが、玉田は《乱脈な気孔》を構えており反撃に出られない。それでも《削剥》で《キランの真意号》を対処すると、今度は服部の時間になった。

　玉田は《乱脈な気孔》をクリーチャー化したものの、服部はそこへ《無許可の分解》を差し向け、さらに大きなダメージを与えることに成功した。この攻撃で残りライフ４点と追い詰められた玉田だが、最後に引き込んだカードを見て「ワンチャンあるかも......？」と《霊気圏の収集艇》を着地させる。

　だがしかし、服部は攻撃後２枚目の《無許可の分解》を撃ち込み、決着を付けたのだった。

玉田 0-2 服部

　服部に金星を許した玉田だが、その顔に後悔の色はない。「次も頑張ってください。僕を倒したからには勝っていただかないとね」と激励を送ると、「もう現環境終わるからあまり意味ないけれど、（マルドゥ機体同系で）早く試合終わったし、ちょっとデッキについてでも語りますか」と今環境最後の感想戦を始めるのだった。

服部 健が玉田 遼一を２連勝で下し、準決勝へ。日本代表を懸けた戦いに挑む！