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マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン2024

インタビュー

優勝者インタビュー:三分の二の圧倒的な栄冠 卯月 祐至

富澤 洋平

 

 大会前、『ブルームバロウ』が加入したからといってスタンダードは大きく変化せず、ゴルガリ・ミッドレンジと版図ランプが支配する世界線に変わりはないと思われていた。しっかりとしたデッキの骨子と確かなカードパワーを内包していたためだ。

 しかしながら、蓋を開けてみればトップ8はすべて別々のアーキタイプであり、決勝戦は予想だにしていなかったダークホース同士の対決となった。特に優勝デッキであるボロス・ミッドレンジは従来のカードプールにあったカードと、『ブルームバロウ』が組み合わさったことによる化学変化により生まれた。そのポテンシャルを鋭敏に感じとり、見事に使いこなしてみせたプレイヤーが今大会を制してみせたわけだ。

 マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン 2024王者にして、2度目の覇者となった卯月 祐至。今大会の優勝者に、早速インタビューをお願いした。(ちなみに卯月とマジックとの出会いなどについて興味がある方は過去のインタビューをご参照いただけると幸いだ)

トーナメントへの準備

--「まずは優勝おめでとうございます」

卯月「ありがとうございます、今回に関しては勝つと思ってなかったのでびっくりです」

--「今回の大会に向けては、どのような準備をされましたか?」

卯月友人1人と協力して、2人で調整しました

--「そのおひとりも同じデッキですか? 結果はどうだったんでしょうか」

卯月「デッキレシピは75枚一緒で参加しまして、自分と友人ともに初日は6-3でした。友人は残念ながらでオポ落ちでしたが、優勝できましたしデッキはよかったと満足しています」

--「具体的な調整過程を教えてください」

 

卯月「選択経緯は1週間前から色々なデッキを試しました。《偉大なる統一者、アトラクサ》を使ったデッキを中心に調整していましたが、中々うまくいかず。友人といいデッキないかと探したところ、ボロス・ミッドレンジを発見しました。最初から使用感は良く、デッキはボロス・ミッドレンジに決定しました。この時点でデッキを手に取ってから大会のデッキサブミット(デッキ提出)までは3~4時間程度しかありませんでした。良い感触がありビビっと来たため、数枚入れかえてデッキを提出しました」

--「デッキ選択の理由はどこにありましたか?」

卯月「決定打は明確にはありませんが、これまでの自分の経験上、自分のマジック感よりも直前の大きな大会で結果を残していたデッキを信じたほうが上手くいく傾向にあるということがあげられます。今回はボロス・ミッドレンジが結果を残しており、デッキの意図はわかりやすいものでした」

--「デッキの強みや元のリストからの変更点などあれば教えてください」

 

卯月デッキのストロングポイントとしては《ウラブラスクの溶鉱炉》があげられます。単体で序盤からゲームを優位に進め、1枚でゲームに勝てるカードです。普通のデッキならフィニッシャーが複数必要だが、このカードは単体で完結しています。新戦力の《世話人の才能》と相性良く、どのレベルともシナジーがありますからね。決勝ラウンドではアブザン・ランプや版図・ランプに対して大活躍しました」

卯月「また、多くのデッキはメインボードから単体や全体除去を採用していますが、このデッキはノンクリーチャーのため効果は薄く、優位性があります。相手の除去を有効に使わせず、その上で副時効果や繰り返し出てくるクリーチャー・トークンでダメージを稼ぎます。《ミレックス》や《噴水港》といった土地だけで戦えるのも強いですね」

 

卯月今のスタンダードでは《太陽降下》が強いと思っているため、すぐに増量しました。元のリストは2枚でしたがトークンとも相性が良く、環境的に追放も意味があります」

--「逆に変更したほうが良かった部分はありますか」

 

卯月「もうちょい墓地対策を増やしても良かったかなと思いました。特に決勝のアゾリウス・メンターはスイスラウンドでも対戦して、負けてまして。《傲慢なジン》への対応カードを考えて墓地対策の増加はあり得ますね」

印象的だった対戦

--「2日間を通じて、印象的だった対戦はありますか?」

卯月「決勝戦で対戦したSoohan Yoonさんですね。初日のスイスラウンドでも対戦していてその時は負け。お互いTOP64に残っているのは確認していたので、誰か倒してくれるだろうと思っていたんですが、まさか決勝戦で再戦することになるとは。『最後の最後で自分が倒さなければか、正直、これは負けたなぁ』と思いました」

 

卯月「こちらの単体除去が3点火力のため、タフネス4の《傲慢なジン》がキツイんですよね。スイスラウンドでは《傲慢なジン》が3ターン目に3度着地し、対処できずに負けてしまいました」

--「環境初期ということで予想外に使われて驚いたカードやデッキはありましたか?」

 

卯月「カードでは準決勝のアブザン・ランプに採用されていた《脚当ての陣形》があげられます。デッキのキーカードである《世話人の才能》をメインボードからテンポ良く対処されるのは厳しかったですね。汎用性も高く、は強いと思いました」

 

卯月「デッキとしては2日目に対戦したメインボード68枚のスゥルタイ・ランプですね。ボロス・ミッドレンジはクリーチャーを主体とした版図ランプやほかのデッキには《太陽降下》で負けませんが、唯一《完成化した精神、ジェイス》がキツく、ライブラリーアウトが負け筋です。版図ランプなんかにも入ってますが、このデッキの場合は切削から《もがく出現》によりゲームの再現性も高く、墓地から何回も出されるため、非常に厳しいマッチアップでした。ボロス・ミッドレンジはだいたい30枚削られたら負けてしまいますからね。運よく勝てました」

優勝賞金の使い道

--「賞金の使い道は決まっていますか?」

卯月「まだ考え中ですが、配信に興味があるのでその機材購入にあてたいと考えています」

スタンダードの魅力とは

--「スタンダードの魅力はどういった部分にあると思いますか?」

卯月「ゲームが長引く傾向にあるため、マジックの対戦を楽しみたい人向けのフォーマットだと思っています。モダンやレガシーと違い、3ターン前後でゲームが終わることはありませんので。スタンダードは互いにがっぷりよつに組んで、どっしりとした対戦を楽しめます

--「最後に、何か伝えたいことなどありましたらお聞かせください」

卯月「自分のスタンスとしては、普段はテーブルトップで友人とカジュアルに遊んだりしていますが、今回のように大会があればそれに照準を合わせて調整をしていきます。そのため、今大会のように参加費無料で誰でも参加できるオープンな大会は非情にありがたいです。そのため大会の開催頻度があがると嬉しいなというのが素直な気持ちです

卯月「MTGアリーナに限らず、過去にテーブルトップで開催されていた日本選手権やThe Finalsのような大型大会が開催してもらえたら最高ですね。近くのイベントでデッキを調整し、大会本戦の権利を取るというようなマジックのサイクルができていたので。また、そのようなマジックライフが復活すると嬉しいですね」

--「ありがとうございました」


 わずか3回の開催にもかかわらず、2度目の栄冠を掴んだ男、卯月 祐至。的確かつ適切なプレイスタイルと直観的に強力なデッキを感じ取る嗅覚の鋭さは、まさに王者に相応しい。

 マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン ツータイムズチャンピオン。その称号は、彼だけのものだ。

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