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EVENT COVERAGE
グランプリ・東京2016
準々決勝:矢田 和樹(千葉) vs. 鈴木 和茂(愛知)
By 矢吹 哲也
今から19年前、マジック:ザ・ギャザリングのグランプリがアジアに初上陸を果たした。その戦いの舞台となったのは、日本の首都、東京。当時の日本のマジック・プレイヤーたちにとってまったく初めての超大型イベントに、彼らは新鮮な体験と興奮を受け、大いに盛り上がったはずだ。
それから長いときを経て、グランプリは東京へ戻ってきた。ここは19年前と変わらず、大型イベントのお祭りを楽しむマジック・プレイヤーたちでいっぱいだ。長い歴史の中で育まれたこのイベントは、今や3300人を超えるマジック・ファンを集めるようになった。
記念すべき今大会のトップ8には、比較的フレッシュな顔ぶれが並んだ。そして、ここで戦う両者もともに、グランプリ・トップ8初入賞のふたりだ。
愛知から参戦した鈴木 和茂にとってここまでの成功は望外のものであったらしく、決勝ラウンドに進出したことで名古屋行きの最終電車がなくなることを覚悟した。「ここまで来たら、最後までやってやりますよ」と熱を込めて言う彼に、対戦相手の矢田 和樹も全力を尽くすことを誓う。
初めて体験する大きなものが懸かった真剣勝負の場に、ふたりは座る。
すでにプロツアーの権利を獲得した両者には、これから先も新鮮な体験が山ほど待っていることだろう。だが今この瞬間は、今しか味わえない。目の前の相手と全力で戦い、今の自分が見られる景色を心ゆくまで楽しもう。
矢田 vs. 鈴木。3,335人のうちわずか8人しか到達できない高みで、彼らは愛するゲームをともにする。 |
矢田 和樹(黒緑サクリファイス) vs. 鈴木 和茂(グリクシス・コントロール)
先手の矢田が《エルフの幻想家》でゲームを始めると、続けて《地下墓地の選別者》。鈴木はそれに対応して《焦熱の衝動》で《エルフの幻想家》を除去し、迎えたターンに《精神背信》を矢田へ差し向ける。公開された矢田の手札は《ズーラポートの殺し屋》《壌土のドライアド》《沼》というもので《精神背信》の対象はなかったものの、これで「魔巧」を達成した鈴木は2枚目の《焦熱の衝動》で《地下墓地の選別者》を焼いた。
先ほど公開された《壌土のドライアド》と《ズーラポートの殺し屋》を展開した矢田は、2枚目の《地下墓地の選別者》も加えて鈴木にプレッシャーを与える。《ヴリンの神童、ジェイス》を繰り出した鈴木は4マナを立ててターン・エンド。
ここで矢田は《ウェストヴェイルの修道院》を設置し、すべてのクリーチャーを生け贄に捧げると早くも《不敬の皇子、オーメンダール》を召喚した。その攻撃が襲い来る前に鈴木は《ヴリンの神童、ジェイス》でドローを進めたが、対処手段はなし。大悪魔から9点のダメージを受け、次のターンの死を宣告される。今の鈴木に破壊不能の怪物を止めるすべはなく、「除去あるんだから(《ウェストヴェイルの修道院》が出てくる前に)除去っとけば」と天を仰いでカードを片付けた。
早い段階で勝負に乗り出し、1ゲーム目を勝ち取った矢田。 |
2ゲーム目、矢田は《膨れ鞘》からゲームを始め、鈴木は2ターン目《ヴリンの神童、ジェイス》、続けて《精神背信》を撃ち込んだ。矢田の《ナントゥーコの鞘虫》《地下墓地の選別者》《精神背信》、残りが土地という手札から、《ナントゥーコの鞘虫》を抜き去ると、《竜使いののけ者》を盤面に加えてターンを渡した。矢田は《地下墓地の選別者》を戦線に加え、横への展開を続ける。
鈴木はこのマッチアップの決定打となり得る《ゲトの裏切り者、カリタス》を展開。矢田は《精神背信》で鈴木の最後の手札を追放すると、《ズーラポートの殺し屋》を着地させてターンを返した。
鈴木の攻撃をエルドラージ・末裔で防いだ矢田は、《地下墓地の選別者》を追加。しかし《ゲトの裏切り者、カリタス》が立ちはだかり攻撃に出られない。鈴木は《束縛なきテレパス、ジェイス》の忠誠度を上げつつ構え続ける。
矢田はついに《究極の価格》を引き込み、《ゲトの裏切り者、カリタス》を退場させた。鈴木は《束縛なきテレパス、ジェイス》の[-3]能力から《コラガンの命令》を唱え、《ズーラポートの殺し屋》の除去と《ゲトの裏切り者、カリタス》の回収に成功する。
矢田は意を決し、《ウェストヴェイルの修道院》から《不敬の皇子、オーメンダール》を呼び出して攻撃。鈴木を一気に追い詰めた。
続くターン、矢田は末裔・トークンとともに止めの攻撃に向かうが、鈴木は《シルムガルの命令》の「バウンス」効果と「-3/-3」効果でこれを捌くことに成功した。
窮地を脱した鈴木だが、土地を引き込めず《竜使いののけ者》が機能しない。彼は《束縛なきテレパス、ジェイス》で《シルムガルの命令》を「フラッシュバック」し、再度展開された矢田のクリーチャーを除去することで《不敬の皇子、オーメンダール》の再臨を阻むと、《ゲトの裏切り者、カリタス》とゾンビ・トークンで反撃に出た。
《ウェストヴェイルの修道院》からトークンを生み出し、チャンスを伺う矢田。鈴木はようやく6枚目の土地を引き込むと、除去呪文を惜しみなく矢田のトークンへ撃ち込んだ。
《竜使いののけ者》が機能し出すと、ここからは速い。《ナントゥーコの鞘虫》を駆使して天敵の《ゲトの裏切り者、カリタス》を倒した矢田だったが、上空からのドラゴンの襲撃に為すすべなく蹂躙されたのだった。
1ゲーム目の反省を活かし、除去を的確に使用した鈴木がゲームを取り返す。勝負は最終ゲームへ。 |
最終ゲーム、入念にシャッフルを行った両者だったが、矢田がマリガン。6枚となった手札も土地周りに不安の残るものだったが、彼はそれをキープした。
矢田は2ターン目に《精神背信》を撃ち込み、鈴木の《炎呼び、チャンドラ》、《ゴブリンの闇住まい》、《闇の掌握》、残りが土地という手札から《ゴブリンの闇住まい》を抜き去る。続くターンに再びの《精神背信》で《炎呼び、チャンドラ》も追放した矢田だったが、しかし土地を引き込めず動きが続かない。
対照的に順調に土地を伸ばした鈴木は、2枚目の《ゴブリンの闇住まい》を着地させると攻勢に出た。これを《究極の価格》で迎え撃った矢田だったが、一向に緑マナ源を引けず反撃の糸口を掴めない。
鈴木は《コラガンの命令》で《ゴブリンの闇住まい》を回収し、アドバンテージ差を着実に広げた。矢田も《ナントゥーコの鞘虫》を繰り出すのだが、他にクリーチャーが展開できない現状ではチャンプ・ブロックにしか役立たない。
鈴木はそこへ《焦熱の衝動》を撃ち込みチャンプ・ブロックも許さず、矢田を攻め立てた。ようやく《森》を引き込んだ矢田は鈴木の攻撃に対して《集合した中隊》に望みをかけるが、鈴木の放った《シルムガルの命令》が突き刺さる。
次の攻撃に対して、再度《集合した中隊》――繰り出したカは《肉袋の匪賊》と《地下墓地の選別者》。末裔・トークンとゾンビ・トークンがそれぞれ生け贄に捧げられ、鈴木は《闇の掌握》で《肉袋の匪賊》を除去して攻撃を通し、矢田のライフを残り1点へ。
ターンを迎えた矢田は、3度目の《集合した中隊》を放った。だが鈴木の盤面に並ぶゴブリンとゾンビ、吸血鬼、そのすべてを防ぎ切る手段は、もたらされようがなかった。
鈴木 2-1 矢田
戦いを終えた両者は互いの健闘を称え合い、矢田はまだ見ぬこの先の風景を鈴木に託した。
「ありがとうございました、次も頑張ってください」と勝者を送り出した矢田に鈴木は、
「頑張ります。今日帰れなくなっても最後まで頑張ります!」と力強く宣言したのだった。
鈴木 和茂が矢田 和樹を2勝1敗で下し、準決勝へ!
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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