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グランプリ・シドニー2016

戦略記事

グランプリマスターに王手:セス・マンフィールドのピック

By 伊藤 敦

 昨日紹介したグランプリマスターレースが、驚きの展開を見せていた。

 理論上は逆転の可能性があるとはいえ、基本的に「BBD」ことブライアン・ブラウン=デュイン/Brian Braun-Duinと齋藤 友晴との一騎打ちと思われていたのだが、2日目でかたや齋藤の成績が奮わず、BBDが3敗のプロポイント3点に終わる一方、レース3位だったセス・マンフィールド/Seth Manfieldが何とトップ8入賞を確定させたのだ。

 この状況を表で説明すると以下のようになる。

順位プレイヤーポイント
1Brian Braun-Duinアメリカ53+3
3Seth Manfieldアメリカ48+

 まずBBDは3敗でトーナメントを終えているので、プロポイント3点を加えて56点。

 マンフィールドがこれに追いつくには、現在の48点に加えて8点が必要になる。

 そしてグランプリにおいてプロポイント8点を獲得できるのは......優勝のみ。

 つまりマンフィールドが準々決勝か準決勝で負ければ自動的にBBDのマスターレース1位が確定する......逆に言えば、セス・マンフィールドが優勝すると(同率の場合シーズン内のグランプリで優勝した回数が参照されるため)BBDを逆転するという、とんでもなく熱い展開になっているのだ。

 せっかく齋藤を上回る成績でグランプリを終えられそうで一安心と思っていたところにこの仕打ち、BBDにとってはたまったものではないだろう。なんでも決勝ドラフトが始まる前に「見ていると叫びだしそうだから見たくない」とだけ述べて調整部屋に帰ってしまったとか。

 ともあれ、この激アツの決勝ドラフトを見逃すわけにはいかない。

 ここではプレイヤー・オブ・ザ・イヤー・レーストップにしてグランプリマスターがかかった現時点で世界最強のプレイヤー、セス・マンフィールドのピックをお届けしよう。

finaldraft.jpg
セス・マンフィールド/Seth Manfield

1パック目

(以下、カッコ内は他の候補)

 初手が無駄になったせいとはいえ、ピックできたのはほとんどコモンのみで、カードパワー的には厳しい立ち上がり。

 しかし初手以外はまともなカードがコモンしか見当たらず、シグナルとなるようなわかりやすいカードが回ってこない中で、堅実な《絞首束縛》から《巧妙なスカーブ》へと渡りをつけて流れの良い青に舵を切ったのはさすがの手腕と言える。

 この位置取りを生かして2パック目以降で高レアリティのカードを回収できるかどうかが勝負というところか。

2パック目

(以下、カッコ内は他の候補)

 自引きのレアが噛み合い、デッキのカードパワーを大幅に補うことに成功した2パック目となった。

 ただこの段階ではデッキに入る見込みの非クリーチャー呪文が極端に少なく、バニラの群れに毛が生えた程度のラインナップに過ぎない。

 もちろんレアリティが高いカードもあればあるほど嬉しいので、3パック目でそれらの足りないパーツを確保しにいきたいところだ。

3パック目

(以下、カッコ内は他の候補)

 いきなり初手、《驚恐の目覚め》や《熟読》と比べても迷いなく《腕っぷし》をピックしたのが印象的だった。

 ビートダウンである以上余計な要素はいらないし、何より《腕っぷし》というカードの評価が高いということなのだろう。

 しかし待ち望んだ呪文枠は大分補充できたものの、レアリティという意味では不作な3パック目だったと言える。


 かくしてマンフィールドのデッキは重なったコモンが多い、かなりまとまった形の青白ビートダウンとなった。

 グランプリマスターレース、そしてグランプリ・ニューヨーク2016とグランプリ・サンホセ2016に続く同一シーズンのグランプリ3勝目という偉業の達成を目指すマンフィールド。

 はたしてこの世界最強の男がまたしてもトロフィーを掴むこととなるのか?

 グランプリ・シドニー2016、その最後の数マッチの行方やいかに。

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