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グランプリ・シンガポール2017

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ワールド・マジック・カップ優勝おめでとう! 日本代表メンバーに聞くチーム戦の極意

By 矢吹 哲也

 ついにやってくれた。

 ワールド・マジック・カップ2017の優勝候補の一角と目されていた日本代表は、前評判通りに勝ち進み、会場を沸かせ、見る者を魅了するプレイを見せ、そして見事に優勝トロフィーを日本へ持ち帰って来たのだ。

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ワールド・マジック・カップ2017を制した日本代表チーム。(写真左から)原根 健太、八十岡 翔太、渡辺 雄也。

 彼らが挑んだチーム戦フォーマットは、来年、2018年に大きく注目される。

 マジックの25周年を記念して8月に開催される「マジック25周年記念プロツアー」は「3人チーム構築戦」で行われ、それに伴い来年は多くのグランプリやプロツアー予選、プロツアー地域予選でチーム戦フォーマットが採用されるのだ。

 日本開催のグランプリでも、3月のグランプリ・京都2018は「3人チーム構築戦」、10月のグランプリ・名古屋2018は「チーム・リミテッド」で行われる。来年はプロ・アマ問わず、チーム戦の機会が多くなるだろう。

 このタイミングで、日本代表がチーム戦世界一となった。来年のチーム戦のイベントに参加しようと考えているプレイヤーの皆さんにとって、最高の模範がここにいる。凱旋帰国から間もなくしてシンガポールでのグランプリへと遠征している渡辺 雄也、八十岡 翔太、原根 健太の3名から、チーム戦フォーマットの戦い方を学ぼう。

 ワールド・マジック・カップ2017日本代表チームの3名に、大会を振り返っての感想と今年1年の感想、そしてチーム戦フォーマットの攻略について尋ねた。

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ワールド・マジック・カップ2017を振り返って

――改めてWMCを振り返っての感想をお願いします。

渡辺「僕が今大会で思ったことはひとつだけですね。『ヤソつええな』と」

(一同笑い)

八十岡「(どこで聞かれても)毎回それじゃん!」

渡辺「隣でずっと見てたんですけど、『こいつつええな』と」

原根「(プレイを)最初から間近で見ることってあまりないので、そこでしか得られない学びを得ましたね。結果も最高の終わり方ができたので、良い思い出になりました」

八十岡「去年僕がキャプテンで出場したときは0-4の最速ドロップだった。そこから1年間、力を溜めた甲斐がありましたね」

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渡辺の感想にツッコミを入れる八十岡。

――勝因をひとつだけ挙げるなら?

八十岡「個々の力がどのチームより高かったのは間違いないです」

渡辺「それから、3人ともお互いのことをよく理解していて、準備段階の役割分担がスムーズにできたのも大きいですね」

八十岡「知り合い同士だからコンタクトも取りやすいし意見も出しやすかった。メンバー間に物理的に距離があると、直接会って意見交換するのも難しいので」

今年を振り返って

――プロ・ポイント・シーズンとしてはまだ振り返る段階ではありませんが、年の瀬が迫る今、今年1年を振り返っていかがでしたか?

渡辺「成績自体は良い1年だったんですけど、決勝の大事なところで負けることが多々あったので、個人的にはそこが悔しく、歯がゆい1年でしたね。結果には満足しています」

原根「一番動きのある1年でした。シルバーになってゴールドに登って、その後の日本選手権で勝って、ワールド・マジック・カップも取って......本当に動きが激しかった」

八十岡「あとは落ちるだけだな~(笑)」

原根「あとは落ちないように(笑)。今は実力がしっかりついたから勝ってるわけじゃなくて、たまたまうまく行っているだけだと思うので、その感触があるうちにしっかり固めてものにしていきたいです」

――八十岡さんはいかがですか?

八十岡「去年10月(プロツアー『カラデシュ』)に勝ってプラチナ・レベルと世界選手権の参加が確定しまったので、今年は全体的にギアを下げたというか、マジックにそこまで力を入れた年ではなかったですね。9月に新シーズンに切り替わってからまた本格的にやり始めた感じです。シーズンはまだこれからですが、ぼちぼち勝てているので、このままいければいいかなと思います」

チーム戦の攻略法

チーム戦ならではの要素

原根「WMCとかチーム戦のグランプリとか見てて思うのは、チーム内の実力のバランスが取れていないとき、つまりキャプテンの力が突出しているときに、そのキャプテンが他のふたりを引っ張って本来以上の実力を引き出せるのはチーム戦ならではだと感じますね」

八十岡「僕はチーム構築けっこう好きで、デッキを構築する段階での戦略があるのが良いですね。やり込んだチームがかなり勝てるフォーマットだと思います」

八十岡「それから個人的には、昔はプレイ中の相談はナシだったんですがアリになって、それはあまり好きじゃないですね」

原根「昔は(相談)ナシだったんですか?」

(渡辺、八十岡頷く)

八十岡「プレイ中の相談があることで試合がかなり間延びするようになりました」

渡辺「チーム戦では引き分けが起きやすいんですけれど、チーム内の相談が大きな原因になっていますね。ひとつひとつのプレイで相談すると、適正にプレイしても時間がかかってしまう」

八十岡「最後1卓が残るとやばいですね。3人話し合うと絶対(プレイが)決まらないですからね。3人が一致するプレイなんてなかなかないですから、言い合いになる。チーム内で事前に方針は決めておいた方が良い」

渡辺「ワントップのチームだったらその人が最終決定権を持つんですけど、実力が横並びのチームが相談で盛り上がり始めると、対面で待ってる側は『早くしてくれ』ってなります(笑)」

八十岡「そうやって議論が白熱したせいで手札が透けたりとか結構ありますからね。だから例えば僕の場合、グランプリ・京都2013のときはもう多数決にしようって決めてました。ふたりの意見が一致したらそれに従う」

――プレイ中の相談は控えた方が良い?

八十岡「基本的にはしない方が良いですね。最初から付きっきりなら問題ないですけど、途中で相談しても、相談された側は過程がわからないので、その状況を見ての判断しかできない。『これ持ってそうだ』といった部分は伝わらないんです」

渡辺「そのゲームをしている人が情報を一番多く持っているわけだから、本来はその人が最終決定権を持つべきです。そこを横から『こうじゃないか』と干渉すると泥沼にはまる危険がある」

八十岡「『ここはこうじゃない?』って言われて、『いや、あれ持ってそうだから』というやり取りをするだけで時間がもったいない」

渡辺「そのやり取りで手札が相手に伝わってしまう可能性もあるので。『除去持ってるな』という風に」

原根「実際、僕もWMCで相手が3人で相談しながらプレイする状況になったんですけど、何か引く度にそれぞれの表情に出ていましたね。ひとりはポーカーフェイスでも、もうひとりがかなり表情豊かで、土地引いたりしたのがこっちに伝わってきました」

原根「あとはさっきまで3人で喋っていたのに急に黙り込んだり。『分岐点が来たな』と感じ取れました(笑)。そういうところで情報が出てきてしまう。プレイ中の相談は利点ばかりではないです」

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練習段階でのコミュニケーションの重要性

渡辺「ワールド・マジック・カップで勝てなかった時期は、世界選手権も併催されていて僕自身の練習時間が取れなかったというのもあるんですが、メンバー間の距離が遠くて全員で集まれる機会がなく、練習が不十分でした」

渡辺「その後ちょうど世界選手権とワールド・マジック・カップの日程が離れた年(2015年)に、玉ちゃん(玉田 遼一)と津村(津村 健志)が代表になり、玉ちゃんが頻繁に東京まで来てくれたんですね。津村と楊さん(楊 塑予)と僕は東京近辺にいたので、かなり集まりやすかった。プランやデッキ選択などを話し合う機会が多く持てた結果、トップ8入賞を果たせました。チーム内で共有できているものが多ければ多いほど、勝ちには近づくなというのが実感できた年でしたね」

八十岡「僕が代表だったときも全員で集まれる日が1回くらいしかなくて、またそれぞれが忙しく練習時間も十分に取れませんでしたね。やっぱり全員がきちんと練習できないとチーム戦はキツい。特に僕のときは練度が大事なモダンだったんで、大会に向けてうまくできなかったのが敗因のひとつかと」

原根「僕もグランプリで経験してきましたが、チーム戦は方向性が固まった状態で全員がしっかり練習できれば結果につながりやすいフォーマットですね。ただこの『全員が』という部分が難しくもあります。ひとりで全部やるのは厳しいので」

「チームワーク」とは

――最後に、マジックのチーム戦における「チームワーク」とは何だとお考えですか?

渡辺「んー、難しいですね。『チームメンバーのことをどれだけ知っているか』じゃないでしょうか」

原根「ひとことで言えば、『信頼』ですね」

――八十岡さんは?

八十岡「まあ、大して必要ないんじゃないですかね」

(一同笑い)

原根「まあ、『信頼』もそれの裏返しではありますね(笑)。あまり干渉せずに、『しっかりやれよ』と」

八十岡「(大会が)始まる前はチームワーク大事ですよ。でも始まってからは必要ないですよ。なぜならゲーム自体はひとりで戦うので。だから始まってからチームワークとか言い出すのは良くない方向へ行きそう」

渡辺「始まってからはすべて任せられるくらいになっておく。それこそが本当の『チームワーク』なのかな」

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 インタビュー中も息の合ったかけ合いで話をしてくれた3名。彼らのチームワークの良さは疑うべくもない。

 来年は、世界中でチームでの戦いが多く待っている。皆さんもぜひ仲の良い友人と、切磋琢磨する仲間と、チームでのマジックを楽しんでみてほしい。

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