by 伊藤 敦

　残念ながら初日落ちしてしまったプレイヤーたちのデッキの中にも、見るべきものはある。

　ここでは今回初日落ちしたものの、シルバーレベルに到達するためのプロポイントを求めてグランプリ・シャーロット、グランプリ・コペンハーゲン、そしてここシンガポールと、モダングランプリ３連戦をこなしながらデッキを調整してきたという齋藤 友晴の力作「ギフトツイン」について、インタビューをお届けしよう。

齋藤 友晴

――《けちな贈り物》をフィーチャーしたグリクシスツインというのは、一体どのような経緯で思いついたんでしょうか？

齋藤「『この３週間何使おう』って考えたときに、とにかく《瞬唱の魔道士》《稲妻》デッキが多いな、って思ったんだよね。特にグリクシスコントロール/グリクシスデルバー/グリクシスツイン/純正ツインあたり。で、これだけ環境が進んでもまだ生き残ってるデッキってことでとりあえず純正ツインを使ってみたんだけど、双子コンボのプレッシャーはゲームを長引かせる要因なのに、双子というデッキが長期戦に弱いことが気になった」

――そこそこ長引いても耐えられますけど、やっぱりゲームが長引くと《欠片の双子》とか使いどころなくて手札に集まってきますしね。

齋藤「そこで、今度はグリクシスカラーに着目した。このカラーは、《黄金牙、タシグル》《グルマグのアンコウ》《コラガンの命令》という最近のカードによって強化されたことで活躍しているアーキタイプたちだけど、それだけに『グリクシスカラーで何が最強か』は、コントロール/デルバー/ツインと固まりきってない。だから研究の余地があると思った」

――なるほど。で、そこからなぜ《けちな贈り物》に？

齋藤「......実はよくわからないんだよね」

――！？

齋藤「《瞬唱の魔道士》と《コラガンの命令》で長期戦を強く戦う、というコンセプトを考えていたら、いつの間にか《けちな贈り物》が入っていた。たぶんだけど、『モダンマスターズ』に収録されていて『モダンマスターズ 2015年版』には再録されなかったカードというのを考えていて、そういや《けちな贈り物》ってあったな、強いカードなのに使われてないな......と頭の片隅に引っかかっていたのがうまく引っ張り出されてきたんだと思う」

――このデッキの《けちな贈り物》はどのように使うんでしょうか？

齋藤「基本的には、『《瞬唱の魔道士》と《コラガンの命令》をサーチすると何でも撃てる』というテクニックをベースにしていて、たとえば相手がちょっともたついたら、《瞬唱の魔道士》《コラガンの命令》《黄金牙、タシグル》《けちな贈り物》と持ってきたら大体勝ちだね」

――《堀葬の儀式》と《大修道士、エリシュ・ノーン》《エメリアの盾、イオナ》みたいなコンボは入れていないんですね。

齋藤「必要性を感じなかったからね。でも最初の方はもっと汚いレシピで、《やっかい児》と《鏡割りのキキジキ》まで入れて《けちな贈り物》を撃つだけでコンボを揃えられるようにしたりとか、カウンターとハンデスを限界まで散らしたりとか、いらないカードもいっぱい入ってたんだけど、グランプリで戦いながら調整していって、先週のグランプリ・コペンハーゲンの段階でこのメインは完成していたかな」

――このデッキの強みはどこにあるんでしょうか？

齋藤「グリクシス同型に強いことだね。長期戦において《けちな贈り物》は通れば勝ちみたいな必殺技だし。あとはモダンはデッキの種類が多いからサイドボードの種類も散ってしまいがちだけど、《けちな贈り物》があるとサイドボードの１枚差しも難なくサーチできるので、デッキの構造がモダンに噛み合っているというのもあるね」

――ああ、確かに《けちな贈り物》があると『１：１：１：......』みたいなサイドボードが逆に利点にもなりえますね」

齋藤「他にも、コンボパーツが少なくて双子パーツがサイドアウトしやすいのも利点だね。メインで《詐欺師の総督》などをプレイすると相手は『双子専用サイド』みたいなのをよくしてくるんだけど、こっちはサイド後にはグリクシスコントロールにできるから、相手のサイドプランを空かすことができる」

――なるほど。コントロールにして《集団疾病》とか置かれたら思わず笑っちゃいますね。

齋藤「あとはサイドボードの《墓所のタイタン》かな。コントロールプランをとったときにこのカードだけで勝てちゃう、超簡単なフィニッシャーだね」

――ありがとうございました。

　新しいアーキタイプだからこそ、研究・改良に挑戦したときの効率は高くなる。

　《けちな贈り物》の使い方含め、ぜひ参考にしてみて欲しい。