EVENT COVERAGE

グランプリ・静岡2017春

戦略記事

注目のデッキ:「黒赤エルドラージ」

By 矢吹 哲也

(この記事はグランプリ本戦1日目に取材したものです)

 先週末、遠く離れたスペインの地で、日本人プレイヤーが注目を集めた。

BCN_t5moments4.jpg
グランプリ・バルセロナ2017カバレージより

 「グランプリ・バルセロナ2017での出来事トップ5」(リンク先は英語)記事にて取り挙げられた高尾 翔太と井上 徹の両名の活躍は、当該記事にて以下のように評されている。

第4位:エルドラージが環境に一石を投じるとき

 《巻きつき蛇》の凋落に心を痛めていた私たちの前に、胸を熱くする新たな挑戦者が現れた。日本からはるばるやって来た高尾 翔太と井上 徹の両名は、実に革新的な「黒赤エルドラージ」を今大会で披露し、停滞を見せる現在のメタゲームに一石を投じたのだ。

 両名はトップ8入賞を狙える勢いで初日を駆け抜けた。高尾は8勝1敗、井上は7勝2敗で2日目に進出したが、最終的には20位の井上が高尾の成績を上回ることになった。

 このデッキには《屑鉄場のたかり屋》、《歩行バリスタ》、《キランの真意号》、《致命的な一押し》、《無許可の分解》、《ピア・ナラー》といった現環境の主力がふんだんに盛り込まれており、特にゲーム序盤は旧来の「黒赤アグロ」だと対戦相手に誤認させることができた。そういう相手は、突如現れた《難題の予見者》と《現実を砕くもの》による猛攻を受けることになるのだ。

(当該記事より引用し訳出)

「停滞している現在のメタゲームに一石を投じた」。まぎれもなく偉業である。彼らは環境を支配する強力なデッキへの挑戦を続け、ついにその状況を打破し得る糸口を見つけたのだ。

 あれから1週間。彼らは再びエルドラージとともにグランプリへやって来た。バルセロナでは惜しくもトップ8入賞を逃したが、手応えは十分だ。さらなる結果を残すべく意気込む高尾と井上に、直接話を聞いてみよう。


高尾 翔太(写真右)と井上 徹(同左)

 高尾 翔太は、エルドラージに可能性を見た。

 きっかけは仲間が使用していた「赤青エルドラージ」とMOPTQで上位に入賞した「黒単エルドラージ」を目にしたときだと彼は言う。

「《現実を砕くもの》と《オラン=リーフの廃墟》の強さに目をつけたのが始まりです。ただ、黒単も赤青も除去に不安があり、大型クリーチャーを突破する手段が欲しいと考えました」

 そこで「黒赤」。環境最強除去である《無許可の分解》の採用だ。

 これを採用したことでプレインズウォーカーへ対処する手段も増え、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》や《サヒーリ・ライ》といった現環境の中心となるカードへの耐性がついた。また、このデッキの強みとして、高尾は「《歩行バリスタ》を強く運用できる」点を挙げる。

「《オラン=リーフの廃墟》のおかげで、他のデッキより多くの+1/+1カウンターを置くことができます。《屑鉄場のたかり屋》を墓地から戻すときにサイズを上げられるのもポイントですね」

 《オラン=リーフの廃墟》は、高尾、井上両名ともにこのデッキのキーカードだと考えている。高尾が言うには「初手に一番欲しい」カードとのことだ。

「マリガンにも影響します。土地5枚呪文2枚の手札なら、《オラン=リーフの廃墟》があればキープ。なければマリガン、という風に」


デッキの強みを語る高尾と井上

 完成までの経緯を尋ねると、井上は「(高尾が)持ってきた時点でほぼ完成していました」と言った。彼らが一番力を入れたのは、マナベースの調整だった。土地が詰まってしまうことが敗因になりやすいため、最終的に25枚に収めたのは勇気の要る決断だったという。

 また、高尾はサイドボードに《膨らんだ意識曲げ》の採用も検討したが、「現出」で生け贄に捧げるクリーチャーに乏しく、{B}{B}の捻出も難しいだろうと判断した。

 こうして、現環境を支配している「機体」系と「サヒーリ・コンボ」系に対して有利を取れる「黒赤エルドラージ」が完成し、グランプリの大舞台で華々しい活躍を見せた。メインから採用された《歩行バリスタ》と《難題の予見者》が「サヒーリ・コンボ」を阻み、《現実を砕くもの》や《無許可の分解》が「機体」デッキの《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を打ち倒した。

 ただし現在はその数を減じているものの、「黒緑」系には弱いと両者は語る。とりわけ《新緑の機械巨人》は《無許可の分解》でしか対処できず、突破しにくいとのことだ。それから《霊気池の驚異》にも手札破壊では対処し切れず、厳しいだろうと見通しを明らかにした。井上は、「《現実を砕くもの》の強みが明らかになって、意識されるようになったこともツライですね」と付け加えた。

 先週の構成からの変更点としては、サイドボードに搭載されていた《戦争に向かう者、オリヴィア》をメインへ投入。

「マナベースに不安はあったものの、投入するだけの力はあります」と井上は伝説の吸血鬼に信頼を寄せる。戦場に残ったときの脅威は、たしかに今大会でも見受けられる

 そして空いたサイドボードの枠には、《飲み込む炎》を採用した。「《無許可の分解》と同様に、クリーチャーとプレインズウォーカーを同時に対処でき得る1枚なので、これを選びました」と高尾は採用理由を語った。

 彼らの活躍があってか、今大会ではこの「黒赤エルドラージ」を選択したプレイヤーがちらほら見受けられる。まだ大きな勢力を築くには至っていないかもしれないが、最後に同系対決におけるプランを尋ねた。

「あまりしっかりとしたプランは持っていませんが、《致命的な一押し》が効きにくい《戦争に向かう者、オリヴィア》をメインにしたことで、有利な形になっていると思います。同系を意識するなら、黒マナを濃くしてサイドに《豪華の王、ゴンティ》を取るかもしれません」

 第4回戦の現時点で、土地事故に苦しめられた高尾は2敗とやや奮わないものの、井上は全勝をキープしている。

 エルドラージの侵攻は、まだ続く。

高尾 翔太
グランプリ・静岡2017春 / スタンダード (2017年3月18~19日)[MO]
5 《
4 《
4 《凶兆の廃墟
4 《オラン=リーフの廃墟
4 《産業の塔
4 《霊気拠点

-土地(25)-

4 《屑鉄場のたかり屋
3 《ピア・ナラー
2 《作り変えるもの
2 《戦争に向かう者、オリヴィア
4 《難題の予見者
4 《現実を砕くもの
4 《歩行バリスタ

-クリーチャー(23)-
4 《致命的な一押し
4 《無許可の分解
4 《キランの真意号

-呪文(12)-
1 《ゴブリンの闇住まい
3 《ショック
3 《精神背信
2 《焼夷流
2 《飲み込む炎
2 《グレムリン解放
2 《反逆の先導者、チャンドラ

-サイドボード(15)-
  • この記事をシェアする