By Sugiki, Takafumi

　グランプリ・静岡2017春もスイスラウンド最終戦を迎え、前ラウンドまでで２敗の上位に残っているプレイヤーにトップ８のカットラインを通過できる可能性が残されている。

　２敗上位の中から、フィーチャーテーブルに迎え入れられたのは、暫定順位11位のソン・チュアン/Sun, Chuan(中国)と12位の伊藤 大明(神奈川)。ソンはグランプリ・名古屋2016でも13勝2敗と好成績を残しており、今回のグランプリでもトップ８の目を残したまま最終戦を迎えた。一方の伊藤はグランプリ・仙台2010でトップ８に入賞した経験があり、2度目のグランプリトップ８を目指してここまで勝ち残ってきた。

　ここまで登ってきた険しい道も、２敗ラインに残れるか残れないかでプロツアー権利という大きな隔たりの上下への歩みとなる。いずれのプレイヤーが２敗ラインに踏みとどまるのか？

　使用するデッキは、ソンは《霊気池の驚異》型の「４色サヒーリ」、伊藤は黒緑のベースに《無許可の分解》をタッチしたような、「ジャンド・巻きつき蛇」デッキとなっている。

　ソンが《サヒーリ・ライ》コンボ、もしくは《霊気池の驚異》からの《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を決めるのか、その前に伊藤が《巻きつき蛇》、《ピーマの改革派、リシュカー》からのビートダウンを完遂するか。このマッチでは、あまり直近のスタンダードでは見られないクリーチャーが止めを刺すこととなった。

ソン・チュアン/Sun, Chuan vs. 伊藤 大明

ゲーム１

　伊藤が《キランの真意号》、《ピーマの改革派、リシュカー》、《屑鉄場のたかり屋》、《歩行バリスタ》X=1、《歩行バリスタ》X=2と順次攻め手を繰り出す。

　対するソンは３発の《蓄霊稲妻》を使って、《ピーマの改革派、リシュカー》、《キランの真意号》、《歩行バリスタ》X=1を順次除去していく。

　しかし、土地が止まってしまっているのがソンにとっては辛いところであり、しかも盤面には討ち漏らした《屑鉄場のたかり屋》、《歩行バリスタ》X=1が残っている。

　ソンは待望の４枚目の土地を引き、《守護フェリダー》をプレイ。対する伊藤は《サヒーリ・ライ》コンボを最も阻害できる盤面を考える。

　結果、《ピーマの改革派、リシュカー》をプレイして《屑鉄場のたかり屋》と《歩行バリスタ》を強化。その後《屑鉄場のたかり屋》のみで攻撃を選択。こうすることで、《歩行バリスタ》も含めた３マナをオープンにしているため《無許可の分解》がプレイでき、しかも当然《歩行バリスタ》は１点を《サヒーリ・ライ》に飛ばすことができる。

　一方のソンは手札に留まっている３枚の《サヒーリ・ライ》を出すことぐらいしかできない。そして《歩行バリスタ》が見えている前では当然コンボを発動することはできず、悲しく［+1］能力を使うのみでターン終了を宣言。伊藤が《無許可の分解》を手札から見せると、ソンは素早くカードを片付けた。

ソン 0-1 伊藤

ゲーム２

　ソンが《導路の召使い》、《ならず者の精製屋》とプレイするも、２枚で土地が止まってしまう。伊藤はソンの土地が止まったことを確認して、すでに展開している《巻きつき蛇》とのシナジーがある《ピーマの改革派、リシュカー》より、ソンの《導路の召使い》に《蓄霊稲妻》をプレイすることを優先。展開を阻害することを徹底する。

　依然として３マナで止まっているソンは《織木師の組細工》をプレイするものの、伊藤の攻め手の阻害にはこのか弱いアーティファクトでは何も役に立たない。

　そして、２ゲーム目はあっけない幕切れを迎える。伊藤が悪魔のように微笑みながらプレイしたのが《現実を砕くもの》！

　《ピーマの改革派、リシュカー》、《巻きつき蛇》とともに攻撃に繰り出して、ソンはライフが一気に６まで落ち込む。

「ここまでたどり着いたのに、たどり着いたのに、あと残り一歩が届かないのか......」 ソンの心の声がフィーチャーエリアを包む。やっとの思いで出せる言葉も、力ない「Go」の一言のみ。伊藤にもその落胆は伝わる。しかし、確実に止めを刺し、次に向かうのがテーブルに対峙した者同士の宿命。

　再び《現実を砕くもの》、《ピーマの改革派、リシュカー》、《巻きつき蛇》を送り込む伊藤を見て、ソンはその健闘を讃え右手を差し出した。

ソン 0-2 伊藤

　ソンの悔しさが、フィーチャーエリアに染み渡っていく。それは観覧席にも伝わり、少しずつ観客が離れていく。ソンは必ずやこの悔しさをバネに再び日本のグランプリに戻ってきてくれるであろう。そして、伊藤２度目のトップ８入りに向けてあとはタイブレーカーの発表を待つのみ。